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Posted by ブクログ
命を、生きる意味をかけてチェスを指す人々。みんな頑張っててそれでいい作品だった。感動した。
今のところの今月イチ作品かな。
透は小学生だが、全身型特発性神経不全症という病気で入院中。突然身体の一部が動かなくなる病気で、入院したらいつまでなのかわからない。そんな日々に同室の輝がチェスを教えてくれた。
まずは定石を覚えて、タクティクス問題を解くといいらしい。チェス熱は子供達の間で広がった。みんな病気と闘いながら、切磋琢磨していく。輝は手術して退院した。透は前向きに頑張っている。中学生になった。輝は交通事故で亡くなった。
樽山は進学校の開化高校2年生。白血病で入院していた瑠偉とチェス部に入っている。チェスのプロになりたい。今は日本の上位5人に入るキャンディデイトマスターだ。合コンで知り合った白井さんにチェスを教える。
大会に出る。同い年の望木透もキャンディデイトマスターになっている。最近透に勝てていない。3日目の4回戦に樽山は透と当たった。勝てると思ったのに負けた。プロを目指すことを諦めるが、白井さんに怒られる。下級生の指導にあたったり頑張る。
盲目の冴理を大学入学させる気はないと親に言われる。冴理は親にピアノを強制されていたが、その圧がひどくて逃げた。妹がピアノを弾くようになり、家に居場所がなくなる。チェスにのめり込んだ。
信生は樽山を襲ったワルだ。母が父を刺し殺し、自分も少年院に入っていた。チェスを始めて樽山も追い越してグランドマスターになった。だが生きていくのには苦労している。競馬で当てて、アメリカに。
チェスワングランプリの日がやってきた。優勝賞金1億円。出場資格は日本のチェス国籍を持つ人。透、瑠偉、樽山夫妻、信生、冴理。3000人から絞り込まれて32人進出している。大会は進んでいく。
Posted by ブクログ
手に取ったきっかけは書店で目についたからだが、読もうと思ったきっかけは第3章の『プロモーション』で盲目の少女、冴理がツリザキに格下扱いされるシーンが良かったからだ。そしてその後の展開も。
だけど全部読んでみて思ったのは、『物語の主人公みたいな背景がないと、チェスはできないのか』だった。この小説では、登場人物の誰もが重い過去、病気、複雑な家庭環境といった強力な背景を背負わされている。連作短編だから、仕方ないといえばそうだ。構造上、すべての主人公が読者の気を惹く人間でなければならないのだろう。だけど、読み進めるにつれてバックボーンTCGを見てる気分になり、ちょっと悲しかった。
最初に見たときから、私はツリザキが好きなのだろうと思う。考え方がシンプルだからかもしれない。それとも、彼が一番純粋に思えるからだろうか? 彼には常に未来がなく、今しかない。刹那的だが、ある意味で、誰よりも自然体だ。
彼の中ではチェスがあまりにも絶対で、相手との関係性とか礼儀とか配慮とか、そういう社会的な薄皮が育っていない感じがする。言ってしまえば、まあ、子供なのだろう。
また、中国人訛りの怪しいキャラクターであるヤンさんも個人的に大好物で、作品の良いアクセントになっていた。
あ、あと、コルトは良いよね。ロマンがあって。銃ってとにかく金属臭いし重いし、ああなるほど、必要以上に触りたくないな、と思ってはいるが。
全体として少しドラマチック過ぎる部分が目につくものの、何気に夢のない話でもある。何故なら、チェス『も』出来る人間ではなく、チェス『しか』出来ない人間でなくては、勝てないからだ。
5章は映像的で、読んでいて一番速度が乗った。漫画など別媒体への展開も映えそうに見える。そして同時に、結末が読めてしまっていることに愕然とした。構造上、勝者はこの人だろう、とどこか確信めいたものがずっと頭の片隅に存在していたからだ。
章立てや目的がはっきりしているため、読後感は少年漫画のようにスッキリ。物語よりも、その骨組みが面白かった。
しかし、よく考えたらこの小説、かなりの人数が退場している気がする……。
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