小説・文芸の高評価レビュー
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なんて私好みな小説。SF特有の難解なところもほとんどなく、人間ドラマが主軸だった。
火星で暮らす人は地球から支援物資をもらって生活しているが、地球は旨味の無くなった火星から手を引こうとしているという両者(両星)の関係性がまず面白い。圧倒的に地球の方が有利で、火星は従うしかないのではないかと思いきや、火星も新たな物質を切り札に地球から独立しようとしているので、両者間の緊張は段々高まっていく。
物語は火星の研究者、火星の自治警察の捜査員、火星から地球へ旅行する学生、地球のISDAに在籍する職員の4人の視点が入れ替わり、物語が進んでいく。どの人物も好感が持てるし、皆、地球と火星が対立することなんて -
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ネタバレ今回の成瀬も最高!
初作は最終章で成瀬の迷いや意外な繊細さが明らかになり、成瀬も人間だと思う反面期待を裏切られた感もあったが、今回は成瀬の一人称はなく、周囲から見た成瀬っぷりが炸裂しっぱなしだった。
成瀬に憧れて共にパトロールをすることになる北川みらい、成瀬に振り回されつつ浅はかな思考と抜群の行動力で成瀬を読み誤る成瀬の父親の慶彦、成瀬がアルバイトするフレンドマートで「お客さまの声」への投書(=クレーム)を繰り返す自分が少し嫌でありつつもバイトの成瀬から真剣に万引き犯の特定への協力を依頼され見事に検挙に繋がったうえに成瀬から「状況がわかりやすく店員視点では気付かない貴重な意見」と言われ喜びに満 -
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プロ野球選手会が労働組合となって間もないころに、ヤクルトの選手会が脱退を発表し、そのときヤクルト選手会長の角選手が「選手と球団は『おもてうら一体であり』」と読み上げていて、「筋肉脳はこんなのも読めないのかよ」と思った記憶がある。実際は全然違った。オーナー側からのしょうもない圧力で言わされていたんだ。ばかにしてごめん、角さん。そしてただの「ゼッコーチョー男」としか見ていなかった中畑清に対する印象ががらっと変わった。中畑さん、アンタすごいよ。
たしかに、選手会が労働組合になる前はどんないい選手でもオーナーや監督に嫌われれば懲罰人事でトレードか出場機会を奪われて飼い殺しというイメージがあった。それが -
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ピカソの《ゲルニカ》を実際に目にした翌日、原田マハの『暗幕のゲルニカ』を読んだ。教科書で知っていた一枚の絵は、実物では想像以上に巨大で、名作が並ぶ美術館の中でも圧倒的な存在感を放っていた。その迫力と、言葉にできない物悲しさが強く心に残ったまま、この小説を読み始めた。
物語は、《ゲルニカ》に魅了された二人の女性の視点から交互に描かれる。ひとりは、ピカソが《ゲルニカ》を制作する過程を最も近くで見つめたドラ・マール。もうひとりは、現代のニューヨークでMoMAのキュレーターとして働き、9.11で夫を失った瑤子である。時代も立場も異なる二人だが、彼女たちの人生は《ゲルニカ》を軸に静かに呼応していく。
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シジュウカラに対する最強の推し活本だと感じた。
作者は鳴き声の微妙な違いに気づいたことをきっかけに、この世界に深くのめり込んでいく。非常にマニアックな着眼点だが、その細分化された世界観は、人間社会ともどこか通じるものがあるように思えた。
アニメや映画でも、伏線回収を気にして細部まで注視するファンは少なくない。それと同じ構造が、この研究にもあるのではないだろうか。
一方で、最も難しいのは「どうすれば他人に理解してもらえるか」という点だと感じた。どれほど画期的な発見であっても、再現性がなければ他者の理解は得られない。発見そのものだけでなく、他人に納得してもらうための実験方法についても、相当な