小説・文芸の高評価レビュー
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名作でした。日本は欧米に比べて容姿で人を差別する文化が強いと聞いたことがある。誠のように、「ふくよかな人=努力ができない人」と見て、その人の性格や生き方を決めつけてしまう風潮が日本にはたしかにある。そんな世の中で、梶井は自分が楽しく生きるやり方を見つけ出した。対して、里佳や伶子は世の中に少しずつ反抗しながらも、ルールの中にどうにか快適さを見つけようとする人たちだ。梶井の行ったことは倫理的にも法的にも悪ではあるが、里佳と一緒に梶井の心に迫れば迫るほど、共感できる部分が出てきた。日本がもっと個人主義ならばこの事件は起きなかったかもしれない。けど里佳のように集団の心地よさとその維持方法に気づけば、も
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何か特別なことが書かれてるわけでも事件が起こるわけでもないけど、なんとなく「ちょっと丁寧に生きてみよう」って心にポッと火が灯った。
お茶やってみたいとは思わないけど、普段意識してこなかった自然の音や匂いや色にも目を向けて、季節の変化を楽しみたい。
あと「会いたいと思ったら、会わなければいけない」って言葉はかなり刺さった。
追記:映画化もしてるということで早速観てみた。
若干原作と違う設定はあるものの(武田先生の年齢ぐらい?)、実写版を観てここまでしっくりきたの初めて。
俳優陣の演技力が素晴らしいのはもちろんだけど、映像はきれいだし音も心地よくて原作のイメージをうまく補填してくれる。
「面白い -
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久しぶりにシャールさんに会えて嬉しい。その一言につきます。
シャールさんの言葉の数々に、胸が温かくなる。
マカンマランシリーズのスピンオフ。
ジャダを初め、マカンマランに関わる懐かしい人たちの視点で物語が進んでいく連作短編集
ラストはシャールさんの視点で話が進んでいくのは面白い。
今回は日本を飛び出して、台湾へ
シャールさんが作るご飯はほとんど出てこないけれど、台湾の食べ物、特に薬膳料理がとても美味しそう。
『生きていくことも、また旅だ』
『幸せこそ、手軽であるべき』
良い言葉だなぁとしみじみ
台湾が舞台とあり台湾の歴史から、世界情勢、災害のことにもふれ、平穏に過ごせることが当たり前で -
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『完璧な遺書』
「殺すつもりなんかなかった…」という犯人の語りから始まる。
大好きな倒叙がついに来た!(゚∀゚)
犯人は周りの気持ちも状況も、勝手に自分に都合よく解釈してしまうタイプ。
その勘違いぶりが気持ち悪くて、正気を疑うような言動が出てくる。
倒叙なので、犯人の独りよがりな頭の中の自問自答が面白い。
語り手である犯人の目を通して、火村の鋭さを体験できるのが最高に面白い。
火村が核心に触れるような質問をするたびに、思わず心の中で「火村先生さすが!」とガッツポーズ。
こんな嫌な奴が相手だからこそ、スカッとした。
でも正直言うと、犯人にはもっと白を切って粘ってほしかった!倒叙好きとしては、 -
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読んでいて何度も挫折しそうになるくらい辛かった。乃里子の、五郎に対する気持ちが痛いほど分かって苦しくって仕方なかった。言い寄れないというより、言い寄らせてもらえないあの感じ、すごくわかる。家で2人きりになっても、ベッドに座っても、たとえ裸になっても女としてみてもらえない感じ。どれだけ自分がみじめで辛くて泣きたくなるだろう…そんな男が自分にはない奔放さがある親友に言い寄っていたと知った時、どれだけ辛かっただろう。でも乃里子は本当に偉かった。私だったら美々を心底憎んだだろうに。乃里子はプライドが高かったわけじゃない、頑張ってなかったわけじゃない、女としての魅力がないわけじゃない。それでも一線を張ら
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ラフカディオ・ハーンの代表的な怪談が42編、テーマ別に全6章に分けられており、池田さんの訳がとても読みやすいです。
第6章は、内匠尽語楼という人の編纂した『狂歌百物語』の翻訳と紹介で、ハーンのイラストつきです。
難しい漢字に振り仮名があり、小学校高学年ぐらいから大人まで楽しむことができます。あとがきも充実しているので、作品理解に役立ちます。
まずは、子供の頃に聞いた「耳無し芳一」「雪女」をあらためて読むことができ良かったです。それ以外に知らない話がたくさんあり、どれも読み応えのあるものばかり。
漫画日本昔話のようでとっても愉快な話(団子をなくしたおばあさん」)、男女のちょっといい話(「 -
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ネタバレチューダが今回もかわいくて、ちょっとした行動に頬がゆるみます。無邪気さがそのまま人間の生死に直結する場面では、緊迫しているのに、物語には滑稽さが漂っていて、その振れ幅が面白いです。
医療の知識が竜という存在と結び付いていくことで、「体の大きさが違うだけで、同じ治療でもこんなに世界が変わるのか」と毎回思います。人間なら些細な処置で済むことが、竜ではまるで別の問題として立ちはだかり、その視点の広がりが想像で補えないところもあるのが、ちょっと悔しいです。
動かない翼の対処法が東の国の骨接ぎにあるというくだりは、わくわくします!4巻もとても楽しみです。