小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
相当に最高の一冊かもしれない。
キューバで社会主義の残がい(?)から自由主義の良し悪しを見て、モンゴルの大草原から自分の居場所を感じて、アイスランドの間欠線から自己肯定感を得る。その感性の鋭さもスゴいのだけど、その全てが昇華されてあとがきに詰まってる。もうほんとにあとがきがハイライト。
この国の人間は「世間」から逃れて生きることは難しい。それを理解して、自分のボンネットの中身が全て自分の腑に落とすことができたら、もっと自分を認めて生きていけるのかもしれない。
そんで、そのために自分のいまの視界にないものを見に行くことが重要なのかも。
自分の殻に閉じこもってちゃダメだ。でもこれすらも押し付けられ -
Posted by ブクログ
喪失のお話だけど、悲しみに充ちた雰囲気ではなく、悲しみを分かち合ったり、ケアされたり。人と繋がることで主人公が変わっていく。
あたたかい。寂しい。あたたかい。
こんなふうに思いが通じ合うことやみんなが温かく優しいことは、現実では難しいのかもしれない。だけど、こういう物語はすごく救いになる。
(以下ネタバレ。)
子ども時代から、主人公に近づく人たちが度々いるのに、人へ関心がない主人公。周りを寂しくさせていて、そのことにピンときていない。主人公も確かに誰かと繋がることを求めていて、だけど、うまくできなくて、どんどん閉じていって。話ができる動物たちとだけ過ごすようになっていく。
主人公が初めて -
Posted by ブクログ
『少年X』に暴行を加え、死に至らしめた『少年A』。少年院を退院後、土木作業員として働きはじめた『少年A』は寮の部屋で遺体となって発見された。めった刺しにされていた、という。犯行後すぐに自首してきた犯人は、『少年X』の母親の田村美雪だった。インターネット上で『少年A』の情報を集めていた田村美雪は、同時期に同じ少年院で生活を共にした『少年B』の密告をもとに、『少年A』を殺害した、と語る。盛んにメディアで取り上げられたこの事件は、「目には目を事件」と呼ばれた。少年院で共に同じ時間を過ごした『元少年五人』のうち、果たして誰が、『少年B』だったのか――。
ネタバラシにはならないよう気を付けますが、未 -
Posted by ブクログ
本作では、女性と結婚の問題も一つの大きなテーマとして描かれている。仕事か出産か、という選択を扱った章もあり、もし自分が実際にこの問題に直面したら、とても苦しいだろうなと感じた。どちらも選ぶことはできないのだろうか、と考えさせられる。
また、ノアちゃんと旦那の離婚に至る経緯も印象的だった。いつか結婚相手ができたら、この章を一緒に読み、同じ状況になったときどう考えるか話してみたい。妻はメンテをサボりがちになるが、旦那にゆっくりできる安心感を求める。一方旦那はセックスレスはパートナーへの虐待だといい、浮気をする。離婚してからその浮気相手と付き合ってよっていう順番の問題でもない気がするし…。 -
Posted by ブクログ
『アルプス席の母』は、タイトル通り「母」が主人公の物語だった。
高校球児の母親ではあるものの、主人公自身は野球について詳しいわけでもなく、ごく普通の一般人。
それでも、息子が高校野球の世界に足を踏み入れたことで、本人の意思とは関係なく、その環境に少しずつ巻き込まれていく。
読んでいて印象的だったのは、主人公が決して「特別な存在」として描かれていないこと。
物語は主人公だけで完結せず、息子の同級生やチームメイト、周囲の大人たちなど、たくさんの人が自然に関わってくる。
誰かが絶対的に正しいわけでもなく、全員が味方というわけでもない。
その距離感がとても現実的で、読んでいて強く引き込まれた。
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Posted by ブクログ
韓国社会に興味があるためこの本を読みました。大きな衝撃を受けたのは、韓国の出生率が2023年には0.72になったということでした。(14P)先進38カ国で1を切った国は韓国のみということです。日本は同じ年で1.20となっており、ちなみに2024年は0.75となり、0.03上昇しました。日本は1.15でした。国の人口を維持するためには、2.1が必要とされています。では、どうして韓国の出生率が落ち込むのかということですが、ひとことで言えば「生きづらさ」が原因のようです。具体的には「社会の競争圧力」及び「経済的な困難さ」が理由ということです。(27P)
競争圧力とは、子どもが名門校に入れるように過剰