このアンソロジーを一言で表すなら、「とても怖い」。とにかく怖い描写や不気味な描写が多い。
澤村伊智『サヤさん』ある霊能者に出会った小学生の話。前半の怪異に襲われる不気味さ、不条理さと、後半の物語の真相、謎の残るラスト。どれをとっても怖い。『予言の島』を事前に読んでおくとなお良い。
加門七海『貝田川』
...続きを読む実話の様な怪談、その真偽は不明。フィクションだと思っているのに、そうだと断言することが出来ない。
名梁和泉『燃頭のいた町』「現世」と「異界」の境界が曖昧になり、いつしか怪異に襲われる。だが、この話は怪異より人間のほうが怖いと思う。
菊地秀行『旅の武士』旅をする武士を中心として語られる時代劇怪談。連続殺人事件の真相は不明。ラストに謎が残る。
霜島ケイ『魔々』人間の怨み、呪いの力は恐ろしい。大きく膨れ上がって、人やものに被害をもたらす。やはり人間は怖い。
福澤徹三『会社奇譚』色々な会社で起こった奇妙な出来事。ただの偶然か、それとも何らかの因果によるものか。原因がわからない怪異が一番怖い。
三津田信三『何も無い家』その家には「何も無い」が「何か」がいる。特に怪異は出てこないが、闇の中に何かがいるような錯覚に囚われる。いや、実際に「何か」はいるのかもしれない。ラストもとても不気味である。