過去に戻れると噂のある喫茶店『フニクリフニクラ』を訪れた客と、その大切な相手とのつながりを感じられるシリーズ四作目です。
シリーズ『コーヒーが冷めないうちに』も四作目。訪れる客との会話から少しずつそこに働く従業員たちのことも垣間見えて、四作目ともなるとまるでこちらがその喫茶店の常連客になったよ
...続きを読むうな気すらしてきます。毎話のように語られる『過去に戻るための面倒くさいルール』についても、既にそのルールを知っている常連客がそれを初めて聞く人の反応を楽しみながら眺めている、というような感覚で見るとそれはそれで楽しめるので、あまりしつこい感じは受けません。
今回訪れた四人は、妻に、愛犬に、プロポーズされた相手に、父に、それぞれ会いに過去に戻っていきます。
戻ることに、どんな意味があるのか。
現実を変えることができないのに、相手に何かを伝えることに意味なんてあるのか。
そんな葛藤を持ちながらもそのコーヒーを淹れてもらう彼らが、それを飲み干した後に未来を変える何かを手にしていたらいいと、毎作楽しみに読んでいます。
今回は、どれも胸を締め付けられるようなお話でした。基本的にオーディブルでの視聴で読んでいますが、作業中に涙で顔面が大変なことになってしまって、人がいないタイミングで良かったと思いました。
過去に戻れるのは、たった一度だけ。
その一度が、コーヒーが冷めてしまうまでのわずかな時間が、何かを変える。
その瞬間を見たくて、またシリーズの次作を手に取るのだろうと思います。