あらすじ
ここにもある袴田事件、免田事件、財田川事件、足利事件の理不尽。
生きるということは、かくも哀しく美しいものか。照らし出される司法の闇、冤罪の虚構、人間の絆。作家の才能に嫉妬する。―堀川惠子(ノンフィクション作家・代表作『教誨師』)
突然、父親を奪われた少女に救いは訪れるのか? 事件の謎は戦前から令和まで引き継がれ、慟哭の結末は我々に生きる意味さえ問いかける、前代未聞かつ究極の「冤罪」ミステリー。世代を超えて社会の歪みと戦い続ける者たちの行き着く先とはいったい何なのか。
時代を超えて受け継がれる法律家の矜持に心が震えた。―五十嵐律人(作家・代表作『法廷遊戯』)
わたしはこれ以上のリーガルミステリを知らない。―染井為人(作家/代表作『正体』)
冤罪と冤罪で翻弄されたものたちが辿る刮目のドラマ。戦中、時局に媚びる社会情勢の中で苦悩する弁護士のギリギリの戦いは、本人が戦場に送られて戦争が終わってからも、正義を信じる弁護士や検事により引き継がれる。彼らが報われる日は来るのか? 社会のひずみを壮大なスケールで活写したリーガル・ミステリーの雄の渾身作。
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正義が失われたとき、
私たちは何を信じて生きればいいのだろう。
『神都の証人』大門 剛明
読み終えたあと、しばらく言葉が出なかった。
幸せだった日常は、ある日突然、音もなく壊れてしまう。
父親が一家惨殺事件の犯人として、死刑判決を受けたのだ。
ただ一人残された幼い娘・波子。
「お父ちゃんを助けて」
その切実な声から、長く果てしない戦いが始まる。
✧
重くのしかかるのは、「冤罪」という現実。
物語の発端は昭和18年、戦時下の日本。
「お国のために」がすべてに優先される時代に、
個人の正義はほとんど意味を持たなかった。
秩序の維持が最優先。
国があってこその人民。
そんな社会で、死刑囚を救おうとする弁護士は
「変わり者」として冷たい視線を向けられてしまう。
それでも彼らは、立ち止まらない。
昭和から平成、そして令和へ。
気が遠くなるほどの年月をかけて、想いは受け継がれていく。
誰かが倒れても、約束だけは次へと手渡されていく。
✧
本書には、衝撃を受ける瞬間が3つある。
第一部、第二部、そして第三部のラストだ。
そのたびに思わず言葉を失ってしまった…
何度も見つかる新たな証拠。
それでも、あっけなくかき消されていく現実。
「再審」に辿り着くまでの道のりが、
これほど険しいものだとは知らなかった。
誰かが極端な悪人だったわけではない。
きっと皆、自分の手の届く範囲を守ろうとしただけ。
良心に蓋をしながら、
一人の命と、国の正しさを天秤にかけてしまった。
そして、あのラスト。
ここでこの事実を突きつけてくるのか、と息をのんだ。
人は、あまりにも弱くて、あまりにも業が深い。
読み終えたあと、行き場のない感情が
胸の中をぐるぐると回り続けている。
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第174回直木賞の候補作ということで初の大門さん作品。
タツの言うとおり、人はただ生まれて死んでいくだけ。でも、それだけじゃ割り切れない。
人が人を裁くこと、自分の心の向くままに生きることの難しさを思い知らされた。
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山田風太郎賞
直木賞候補
直木賞候補ということで読み始める。著者の本を読むのは初めて。
最初から最後まで、ページをめくる手が止まらない。ちょっと荒唐無稽な点もないでもなかったが、面白さがまさった。
袴田事件などもあったが、冤罪事件に立ち向かう弁護士たちの正義感が素晴らしい。
戦時中など、人権などない時代ゆえ、弁護士が非常に軽んじられていて、街中の子供たちからも『お前ら、正業につけや』とやじられるほどだったが、冤罪事件を晴らすため闘った弁護士、吾妻から物語は現在まで続いていく。
法的安定性(判決がころころ変わってはいけない)という言葉をたてに、再審を妨害する検察にも怒りがわいた。
また、伊勢神宮がある宇治山田市(現伊勢市)は神都と、住民は神領民といわれ(現在でもそうらしい)、戦前は神が宿る世界一の都市になると庶民は信じていた。二十年に一度の式年遷宮もからめ、軍国主義下の空気をうまく描いていると思った。
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大門さん初読み。法務を仕事にしているので興味はあったが、これまで手を出せてなかった。死刑囚死亡後の相続人による再審請求に隠された真実の物語。再審請求まで大変な時間を有する中で、取り組む弁護士や検事が奮闘する物語で、多くのエピソードが胸を打つ。推理部分の落としどころも冴えてて、やられたと思うが、ラストに至って真実までの展開が、なるほど山田風太郎賞か納得してしまう。直木賞候補になって出会うきっかけとなって嬉しい。このウルトラ技へのプロセスへの評価次第では十分受賞範囲内と感じた。
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直木賞ノミネート作品ということで拝読。
戦時から今の令和の時代まで、途方もない時を巡り、事件の真実に辿り着く。
こんなにも人の想いが受け継がれていく物語は、他にないのでは。
この物語は、時代の流れに沿って、3人の人物の視点で展開されていく。
それぞれの苦悩や迷いが丁寧に描かれていて、それ故に読んでいる読者側もしんどくなる。
ただ、そのしんどさの中でも、この3人の信念は煮えたぎるほど熱いものだった気がする。
そして、信念を貫き通すことは、大切な誰かを傷つけてしまうリスクもある。
人は、時として、誰かの親であったり、子であったり、配偶者であったり、恋人であったりする。
どれかの立場であろうとすると、信念を曲げないといけなくなる時がくるかも知れない。
それも間違いではないのだと思う。
ただ、その後に待っているのは苦悩だったりする。
自分はどうするだろうか。
ある登場人物がそうであったように、大切な人を守るために信念を曲げるのだろうか。
この作品は、司法の闇と同時に、人間の心の闇にも光をあてているのだと思う。
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昭和十八年、宇治山田市で起こった一家殺人事件で犯人として逮捕された谷口喜介は死刑判決を受けた。彼は無実を訴えるものの、時代が変わっても判決は覆ることはない。父親の無実を信じる波子を中心に、冤罪事件の重さとそれに立ち向かおうとする人々の戦いを描いたリーガルミステリです。
証拠物件の適当さといい取り調べの横暴さといい、戦時中日本の時代情勢がそういうものだったから、と言ってしまうのは簡単ですが。しかし時代を経ても冤罪を雪ぐことはなぜこんなに難しいのでしょうか。もちろん判決の揺るぎなさというものがなければその判決に安心できないというのも納得はできますが、それでも冤罪の被害者からするととんでもないことです。そして人権が今ほどに重く捉えられなかった当時においても、谷口喜介の冤罪を信じながらも表立って動けなかった人たちの多いことに哀しさを覚えました。これもまた時代だけの問題でもないのかもしれませんが。
多くの時代を経て、再審請求に関わった多くの人たちの奮闘が熱い物語。そしてミステリなので読者としてはやはり真犯人が気になってしまうところなのですが。「真犯人なんぞ、どうでもええ」というのにははっとさせられました。再審請求の主眼は冤罪から被害者を救うことであって、真犯人の訴求ではない、ということに気づかされます。確かに冤罪事件は稀なものだけれど、だけれどあってはいけないことだと心底感じました。
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テーマ 冤罪事件を親子に渡って解決しようとする弁護士 戦中から戦後 伊勢
何十年にわたってようやく無罪が立証できるところで、実は、真犯人が---だったとは。
これを立証すれば、自分は家族は弁護士をやっていられないばかりか 普通の生活はできないだろう さて どう進めるのだろうか
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昭和十八年四月、宇治山田市内の民家に侵入し、一家三人が皆殺しにされるという事件が起きた。逮捕されたのは谷口喜介は死刑が確定している。検事から弁護士になったばかりの吾妻太一は偶然、夜道で苦しむ少女を救助する。彼女は死刑囚である谷口喜介の娘だという。面会した吾妻は谷口から、『わしは無実や』と聞かされる。吾妻が目撃証言者である伊藤乙吉を探すことに。しかし彼は闇米購入の取り調べの際中、脳溢血で亡くなってしまった、という。しかし頭部に不審な大きなこぶがあった。
というのが、本書の導入。私は恥ずかしながら本書を読むまで知らなかったのですが、実際にあった事件、正木ひろしの「首なし事件」がモチーフになっているそうです。ひとつの事件をめぐって、昭和十八年からはじまり、令和のほぼ現在にいたるまで続く法曹関係者たちの長い長い闘いを、その事件に大きく携わることになった吾妻太一、本郷辰治、伊藤太一の三者の視点から描いた作品になっています。
もしかしたらラストの決着の付け方、そこに付随する登場人物の性格設定が受け入れられない、というひともいるかもしれませんが、ある意味ではそういう展開だからこそ、この作品は徹頭徹尾、『冤罪』の物語だということが際立つ異様な迫力を生んでいるようにも思ってしまいました。『理由』までもが、昭和十八年のあの日に立ち返っていくように。
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ちょっと落ち着いたのでじっくり読もうと思っていたら、貸し出し期限内には読み終えないなと思って、延長しようとしたらちょうど直木賞候補になってしまい、あっという間に予約数がいっぱいになって延長できなかった...
戦前に起きた事件だったゆえに余計に再審請求への道というのはとても険しいのだなと。しかも死刑は執行されてしまっているし。
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3代に渡り冤罪を得ようと奮闘する弁護士。そして引き継いだ弁護士、代議士と様々な人らの働きによって裁判をやり直そうとするが一度決まった判決を覆すのは至難の業。挫折、屈辱を乗り越えていく話に加えて浮浪児だった人や家族の中で出来の悪かった人のドラマもあり物語の中にひきずりこまれていく。舞台がよく知る三重県伊勢市だったのもよかったのかも知れないが冤罪の難しさを知る。
雪冤をテレビで観たけど同じ作者だった。あの話も父親の息子の無実の訴えと息子が何故恋人を殺害したと言ったのかの苦悩だった。判決を覆す難しさをこのドラマで最初に知ったことを思い出す。
Posted by ブクログ
冤罪をテーマに描いたミステリー
だがその一言では言い表せない素晴らしい作品だった
この作品では主人公が三代に渡る
理想に燃える弁護士
浮浪児から検察になり、特別な女性のために冤罪を証明しようとする検察官
最後に落ちこぼれだったが、父の意思を継いで冤罪を追及する弁護士
それぞれの生き様が鮮明に描かれている
最後まで飽きさせないミステリーであり、大河ドラマのような読み応えのある作品だった
正義とは何かという問いに応える作品かもしれない
Posted by ブクログ
昭和、平成、令和にかけて、とある一家惨殺事件の犯人だとされていた人物の冤罪を晴らすべく戦うひとびとの物語……だけにとどまらず、その時代ごとの正義や悪、そして生活について書かれた帯び通り、究極の「冤罪」大河ミステリーでした。特に、冤罪を晴らそうとする男性たちーー弁護士や検事ーーの性格や生まれた環境が当たり前だけれど違っていて、でも、腹のど真ん中に据えた「正義とはなにか」、「どうしたら冤罪を晴らせるのか」には各々一本太い芯が通っていて、読んでいて、声を出して泣きました。スマートに綺麗に成し遂げる形ではないからこそ、そのある種の不器用さにもまた涙しました。私はアルコール得意ではないけれど、熱燗片手に読みたい、そんな本でした。
Posted by ブクログ
直木賞ノミネート作をすべて読んでみようとまず手に取った本。
読み終わるのに3週間ほどかかりました。
ひとつの冤罪事件に80年以上かける…
壮大な物語でした。そして結末は最後の最後まで予想できなかった。最後の5ページほどになってもくーーっっ!と思いながら読み終えました。
Posted by ブクログ
おもしろかった〜!
ある冤罪を解決するために、世代を超えて、人々が尽力する物語。
そして、この冤罪の解決の先にあるのが、、。
こういうことってありますよねえ。
片方を立てたら、片方が立たなくなる。
世の中ってこんなもんです。
全員にとってポジティブであることなんてないわけで、視野を狭くしないと、進めていけないこともあります。
どこまで視野を狭くするか、最近よく考えます。
Posted by ブクログ
1943年に起こった殺人事件が冤罪だったことを80年かけて証明していこうとする、壮大&長大な話。
分厚いのに長いと感じさない。意外性に満ちてるのとキャラ造形の巧さ。なぜそんなに時間がかかるのかの説明も巧い
Posted by ブクログ
戦中。三重で一家惨殺事件が起こるが犯人とされる男は8歳の娘と祭りに出かけていた。
◎
弁護士の吾妻が事件を解く。
殺人現場から走り去る犯人を見たと証言した乙吉は警察署で死ぬ。頭に殴られた痕があっても脳溢血判定。
証人の息子の捨次郎は遺体の首を切り落とし、法医学者の元に持っていき司法解剖をすると、外傷とのこと。弁護士会総出で挑む。
大立ち回りで裁判を転がすも、被告人の暴行警察官が首吊り自殺をしたとのことで、裁判が終わる。
ちょっと追い掛ければすごい技で返してくる…
その暴行警察官から死ぬ前に書いた手紙が届く。そこには本当は目撃者が嘘の証言をしたと言いにきたが、今更撤回すると天皇陛下のお墨付きで死刑にしたのが嘘などとは許されないので殴ったことが書かれていた。刑務所長や検察官などに話すも、これだけだと厳しいと言われ、なんと赤紙が届いて出征し死んだ。
◎
砂利を運搬する船に乗って名古屋まで行った戦後生まれ。時は昭和30年ぐらい。名古屋で落ちてた時計を売ったら、強盗殺人容疑で逮捕。前回の証人の息子が弁護士として助けに来る。その男は弁護士の事務所で働いて、波子が好きになるが、証人も出てきたのに、父親の死刑が執行されてしまい、波子は旅立つ。後に検事になったらしい
◎
後編は検事になった本郷の話。昭和60年。伊勢市の轢き逃げ事件で検事の本郷と弁護士の証人の息子が交差する。昭和30年ぐらいには調子の良かった悪友がコソ泥で逮捕されたり。伊勢の式年遷宮の祭りで波子を探す。犯人と思しき岡麟太郎が戦争中に死んだと思われてたが生きている気がしてくる。轢き逃げの被害者が岡の社長の愛人。無人島にて監禁されてる岡麟太郎を発見する。
当時の第一発見警察官が、証拠物件血止めのシャツを持って現れる。犯人の母親から岡麟太郎が11人も殺していることを聞き、そして波子を見つけて一緒に再審要求を戦っていくことを決めた時に暴力団員に刺し殺された。
◎
捨次郎の息子の太一31歳が主人公。平成13年ぐらい。兄はエリート弁護士。自身は落ちこぼれて就活中。再審を高裁まで行くも認めない判決で、捨次郎が急逝。
時代は令和に。太一は弁護士になり、結婚して裁判官の嫁と小5の娘がいる。その嫁がアメリカに単身赴任し、太一は伊勢へ。娘と波子が仲良くなり、麟太郎の葬式で娘が麟太郎の歯を抜いて持ち帰りDNAをゲット。ただ、そのまま使えないので、匿名の犯人からの手紙をでっち上げて弁護団の知らない本郷の部屋で見た検察の情報を混ぜる。だが、なんと太一の兄の乙彦は父親の捨次郎から真犯人は父親の乙吉と聞いていた。シャツのボタンが違うのがきっかけで。なので乙吉の歯にすり替えて提示しDNAが一致する。しかしタイミング悪く財布を落として死んだ、当時火事場泥棒をした曽我さんが真犯人だと言われた。
兄弟は真実を語ったのか、後に余韻を残す。最後の語りの波子も、生きているのか、れいなのか…
めっちゃ壮大な長い冤罪の話。どんでん返し付き。すごい。
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弁護士のことを三百と罵る。明治時代の無資格弁護士を指して三百代言という。300文(安価)でいい加減。
尾崎咢堂(おざきがくどう)は憲政の神様、世界平和を訴え衆議院議員に二十五連続当選の江戸末期から昭和初期(戦後)の政治家。
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山風賞受賞作。やっぱ安心のブランドやね。本作もなかなか。冤罪の父と、その娘との物語。かなりのボリューム感を誇るし、内容も同一の事件を各視点から繰り返し語られるから、ともすれば冗長とも取られかねない。それを拒むのは、実際の冤罪に思いを致した場合、永遠に続くとも思えるような無力感に心当たるから。そのやり切れなさをも見事に現出している点でこの物量は必然だし、問題提起力も強いものとなる。
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無実の罪を着せられた末に死刑が執行されるという、現実世界では「起きていない」はずの出来事を描くのは、いくら小説とはいえ勇気のいることだと思う。著者は冤罪をテーマにした作品を数多く発表しているそうだが、もうこの志だけで評価したくなる。
昭和から令和にかけての約80年にわたる物語をこの程度の長さで収め、かつリーダビリティの高い読み物としてまとめ上げているのはまさしくプロの技といった趣だ。
しかしながら本作には看過できない問題があり、墓から頭部を掘り出して持ち運ぶとか、息子の事件を隠ぺいするために無人島に島流しするとか、葬儀場に忍び込んで奥歯を盗むとか、さすがにそれはあり得ないでしょといった感じで、リアリティ部分がおざなりになっているように見える場面が数多くあったのは非常に残念だった。
また新事実が明らかになりそうになるとキーパーソンが死んでしまう展開も、一度ならともかく何度も繰り返されるのはちょっと安易すぎるように感じられた。
Posted by ブクログ
まずは犯人がおじいさん、お父さんだったのか。
そして司法試験に受かった人が多くてびっくりした。
でもタツが殺される辺りまでは想像できていましたので、ストーリーはある程度予想通りでした。が、最後の歯が予想の範疇を越えましたが。
歯をすり替えるって無理があり過ぎでは?
でもこの本は「無実を証明する」ことが主眼であって犯人が誰かは警察の仕事だよ。そこは求めちゃいけないよ。って言っている気がする。テレビの見過ぎかな...