あらすじ
ここにもある袴田事件、免田事件、財田川事件、足利事件の理不尽。
生きるということは、かくも哀しく美しいものか。照らし出される司法の闇、冤罪の虚構、人間の絆。作家の才能に嫉妬する。―堀川惠子(ノンフィクション作家・代表作『教誨師』)
突然、父親を奪われた少女に救いは訪れるのか? 事件の謎は戦前から令和まで引き継がれ、慟哭の結末は我々に生きる意味さえ問いかける、前代未聞かつ究極の「冤罪」ミステリー。世代を超えて社会の歪みと戦い続ける者たちの行き着く先とはいったい何なのか。
時代を超えて受け継がれる法律家の矜持に心が震えた。―五十嵐律人(作家・代表作『法廷遊戯』)
わたしはこれ以上のリーガルミステリを知らない。―染井為人(作家/代表作『正体』)
冤罪と冤罪で翻弄されたものたちが辿る刮目のドラマ。戦中、時局に媚びる社会情勢の中で苦悩する弁護士のギリギリの戦いは、本人が戦場に送られて戦争が終わってからも、正義を信じる弁護士や検事により引き継がれる。彼らが報われる日は来るのか? 社会のひずみを壮大なスケールで活写したリーガル・ミステリーの雄の渾身作。
感情タグBEST3
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今回の直木賞候補、大本命ばかりでは?!
読み応えがものすごい。こんな浅い感想しか出てこなくて悲しい。
登場人物の人生を、命をリレーしながら辿り着いた先にある真実。感情。彼女の語り口がまた物語に没入させるのよ…
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第16回山田風太郎賞受賞作品。
めちゃくちゃ良かった。最後の最後まで飽きさせずに読ませる力量のある作品。今月は良い作品が多いけど、1-2を争う良い小説だった。
第1部 弁護士の吾妻は倒れていた少女ナミコを拾う。どこの子かわからない。仲間の弁護士花田が、殺人犯で今は名古屋の拘置所に入っている谷口の娘だと教えてくれた。ナミコは津の拘置所に父が入っていると思って日参しているようだ。吾妻は波子を連れて名古屋拘置所に谷口に会いに行く。谷口は冤罪だと吾妻に告げる。
第2部前編 辰二は船乗りだが、してもいない強盗殺人の容疑者として拘束されるが、同時刻の目撃情報のおかげで釈放される。その時の弁護士伊藤先生のところでお世話になっている。
谷口の再審が始まっていたが、最高裁まで行ってもダメだった。また新証言があり、再審準備している間に死刑執行される。
第2部後編 辰二がなんと検事になっている。轢逃げ事件があり、被害者が身元不明だったが、ある亡くなった社長の愛人だとわかった。
その社長家族には殺人の疑いをかけられたことがある人間がいた。その人について辰二は捜査する。ついに真犯人を確信するが、表には出せない。
第3部 谷口事件の再審は続いていたが、苦戦を強いられていた。DNA鑑定で証明しても判決が覆らない。最後に意外な真実が浮かび上がる。
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冤罪事件を暴く可く、ある弁護士が証拠集めに奔走。しかし虚構が邪魔をし、無罪に持ち込めない。真実のバトンは80年に渡り『神都法律事務所』に引き継がれてゆくのだが…
まさかの結末に愕然とした。正義、冤罪、人権、人間の心の成長や情味など、様々な角度で深く考えさせられる一冊だった。
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これはめちゃくちゃ面白い!
うなったね。
500ページも一気読みののめり込みだった。
昭和→平成→令和と80年にわたる大河ドラマ。
時代を超えて冤罪に立ち向かう人々。
その人から人へと受け継がれていく正義の心。
本当に素晴らしい作品だった。
最後10ページくらいで衝撃の事実判明(笑)
これはとんでもない作品でした。
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第一部から
司法は死んだも同然な昭和18年、お木曳が行われていた日に、一家惨殺事件が起きた。自白、目撃証言、血液型鑑定、右腕の傷跡…それらの証拠によって逮捕された波子の父
だが「わしは無実や」「お父ちゃんを助けて」と親子の声を聞き、冤罪の死刑囚を助けたいと、弁護士吾妻太一が動き出す
昭和特有の文章や裁判用語を読むのにちょっと苦戦したけど、昭和から令和と時代は移りかわりながら、ちょっとずつ真実に近づき、苦難があっても、それでも大きな敵に立ち向かっていく、なんか日曜劇場のようなハラハラドキドキ感でとてもおもしろかった
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冤罪は本人の人生も、
その周りの人の人生も変えてしまう
それを明らかにするのにとてつもなく時間がかかることは実際の事件のニュースで知っていたが、この作品の中で
時代ごとに主人公を変えながら進む長くて苦しいもどかしい戦いに気が遠くなる
冤罪が認められる難しさとともに
読み進めて知った真相に息苦しさを感じてしまった
読み応えはあったが一気に読めた。
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昭和18年、伊勢で一家惨殺事件が起こり死刑判決を受けたのは谷口喜介だった。
だが谷口は、その日は娘の波子と神宮に出かけていた。
冤罪を訴える少女と出会った弁護士の吾妻太一は、無罪の証拠を得るため戦うのだが、彼の元に赤紙が…
吾妻のあとを伊藤捨次郎が…
そして、本郷辰治が…
伊藤乙彦、伊藤太一の兄弟が…
昭和、平成、令和と事件から80年…と再審請求が続く。
戦時中の事件とは言え、こんなに簡単に冤罪が作られ、司法の闇に打ちのめされるというのは耐えがたいことである。
けっして諦めない少女の人生はいつ明けるのだろうかと何度も気を揉んだ。
「正義」とは、どこにあるのかと考えさせられた。
Posted by ブクログ
さすが直木賞受賞作品です!
納得です
ん?
さすが直木賞受賞作です!
力作です
ん?
さすがの直木賞受賞作です!
圧巻です
ん?
他に直木賞候補作の、
『白鷺立つ』もなかなかの作品でしたが残念ながら及びません
『女王様の電話番』は及びません
『家族』はまったく及びません
(途中で読むのやめちゃいました)
ん?
『カフェーの帰り道』は?って…
まだ読んでません
そのうち読みます
けど、直木賞受賞作品は『神都の証人』でええやん!って思います
それぐらい素晴らしい作品です
ん?
第174回直木賞受賞作は『カフェーの帰り道』やで!って
それぐらい知っとるわ!
Posted by ブクログ
昭和18年に発生した強盗殺人事件の犯人とされた谷口喜介。彼は娘の波子と一緒に神宮の式年遷宮のお木曳を見学していた。アリバイはあるのに当時の警察の違法な取り締まりもあり、有罪とされ死刑となる。波子は父親の無罪を勝ち取るために80年を戦う。その間に弁護士や検事がどんどん代わる。正義を追究する法曹界の人たちの闇と光と信念と、その先に見える正義の根っこを見たような気がする。
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冤罪で投獄された男性。戦時中とはいえ、あまりに杜撰な捜査と裁判。昭和から平成、令和へ。罪を隠したいという意識は他人事ではない。一人一人の胸にあるもの。善人であれ悪人であれ冤罪はよくない。
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最初は戦時下の弁護士の立場が描かれ、何気に受難の時代だなどと思ってたら、中盤は激しい正義と高揚と落胆の繰り返し、秘密の暴露まで。少し都合よくても、こんな激しい作品をまた読みたい。作者さんを追いかけてみます。
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エンヤ、それエンヤ。
「お木曳(おきひき)」とは、伊勢神宮の式年遷宮(20年ごとの社殿の建て替え)に使うご神木を、伊勢市民が力を合わせて神宮へ運び入れる、伊勢の伝統的な民俗行事です。御用材を運ぶ方法により、内宮では五十鈴川を使う「川曳(かわびき)」、外宮では陸路を「陸曳(おかびき)」と呼び、独特の「わん鳴り」という音を立てる木製の「奉曳車(ほうえいしゃ)」で運ぶ様子は、伊勢のまちが最も盛り上がる行事の一つです。
次の遷宮は2033年、昨年御用材の伐採が行われ、その後8年間にわたり各種祭りや行事が行われるということです。
お木曳は第一次が今年、第二次が来年行われる予定です。
神都ビール飲みたい
Posted by ブクログ
戦中から令和まで
80年間を描いた冤罪ミステリー
昭和18年4月20日、事件は起きた。
伊勢神宮の二十年に一度のお祭り・御木曳は、すごい人出と掛け声で賑わっており、見物に訪れていた父と娘も楽しい時間を過ごしていた。
ところが…
父・谷口喜介は強盗殺人の犯人として逮捕されてしまう。
その犯行時刻は御木曳の見物をしていたのだから、もちろん無実だ。
残された8歳の娘・波子はどうなってしまうのか…
冤罪における死刑ほど怖いものはないと感じた。
いくら乱暴な時代とは言え、恐ろしさと憤りで胸が破裂しそうだった。
罪を晴らすのに80年って…
あまりにも長い…長すぎる。
弁護士などこの事件に関わった人々は、タスキを繋ぎながら世代交代し証人を探す。
しかし、あと少し!という所で届かず、時が過ぎる。
8歳だった波子は90歳…
壮大な大河ドラマだが、章ごとに主人公が変わるのも良いし、20年に一度の御木曳の描写が印象的で、読み応えのある一冊だった。
あぁ~
冤罪って怖い。
Posted by ブクログ
この長編リーガルミステリーは圧巻でした。
涙も流しました。
大門氏の作品は何作か読みましたが、これは特別でした。
戦中、戦後の世で、まだ科捜研も存在せず、証拠品も充分な調べがつかない中で起きた強盗殺人事件で冤罪が生まれました。
それを取り巻く、検事や裁判所の司法の闇、様々な問題が世代を越え裁かれていくけれど冤罪が晴れないまま死刑が執行されました。
その娘、周りの弁護士たちの絆も含め、不条理な死を考えさせられました。
お薦めです!
ぜひ一読してみてください。
読後感は心地いいです!
Posted by ブクログ
山田の街 懐かしい風景が脳内で鮮やかに蘇って来ました とても面白かった 冤罪事件をテーマに
戦時中のとんでもない濡れ衣 そして死刑執行 戦い続ける遺族 全ての登場人物が印象深い 丁寧に人物が描かれ最後までびっくりの展開 素晴らしかった
Posted by ブクログ
面白かったー!戦時中に冤罪で死刑になった男の無実を証明する長い年月に渡る弁護士や検事たちの闘いの日々。戦中の横暴な官憲による取り調べや天皇や国家の前で平然と一般市民を蔑ろにする裁判、現代の複雑であまりにも時間のかかりすぎる裁判制度、、あらゆることが壁となって立ちはだかるのにも屈せず、時代を超えて継承されていく信念、執念、絆。もう夜中に読んでいても何度も「え⁈」と声をあげてしまうほどの、そんな展開なの⁈みたいなことが続き、2日間一歩も外出せず引きこもって500ページいっき読み!舞台の伊勢地方の方言で紡がれる語り口調にも気持ちよく引き込まれて、ある父娘をめぐる怒涛の80年の歳月の流れに飲み込まれた。人物もみな魅力的で、誠実だったりカッコよかったりチャーミングだったりとこんな人と仕事したいなとか会ってみたいなと思わされる人たちが束になって命をかけて挑むこの冤罪を晴らす戦いをハラハラしながら応援した、とても刺激的な読書時間だった。
Posted by ブクログ
正義が失われたとき、
私たちは何を信じて生きればいいのだろう。
『神都の証人』大門 剛明
読み終えたあと、しばらく言葉が出なかった。
幸せだった日常は、ある日突然、音もなく壊れてしまう。
父親が一家惨殺事件の犯人として、死刑判決を受けたのだ。
ただ一人残された幼い娘・波子。
「お父ちゃんを助けて」
その切実な声から、長く果てしない戦いが始まる。
✧
重くのしかかるのは、「冤罪」という現実。
物語の発端は昭和18年、戦時下の日本。
「お国のために」がすべてに優先される時代に、
個人の正義はほとんど意味を持たなかった。
秩序の維持が最優先。
国があってこその人民。
そんな社会で、死刑囚を救おうとする弁護士は
「変わり者」として冷たい視線を向けられてしまう。
それでも彼らは、立ち止まらない。
昭和から平成、そして令和へ。
気が遠くなるほどの年月をかけて、想いは受け継がれていく。
誰かが倒れても、約束だけは次へと手渡されていく。
✧
本書には、衝撃を受ける瞬間が3つある。
第一部、第二部、そして第三部のラストだ。
そのたびに思わず言葉を失ってしまった…
何度も見つかる新たな証拠。
それでも、あっけなくかき消されていく現実。
「再審」に辿り着くまでの道のりが、
これほど険しいものだとは知らなかった。
誰かが極端な悪人だったわけではない。
きっと皆、自分の手の届く範囲を守ろうとしただけ。
良心に蓋をしながら、
一人の命と、国の正しさを天秤にかけてしまった。
そして、あのラスト。
ここでこの事実を突きつけてくるのか、と息をのんだ。
人は、あまりにも弱くて、あまりにも業が深い。
読み終えたあと、行き場のない感情が
胸の中をぐるぐると回り続けている。
Posted by ブクログ
80年にも及ぶ長きにわたり国家権力と
闘い続けた人々の物語。
昭和18年に起きた一家惨殺事件、
逮捕されたのは、谷口喜介。
彼はその日、娘の波子と神事のお木曳き祭りに
行っていた。父親の冤罪を晴らすため、
娘の浪子は弁護士の吾妻太一に助けを求める。
一人の死刑囚の無実を勝ち取るために、
昭和から平成、令和、
吾妻太一から本郷辰治、伊藤太一へと
弁護士たちの意志が受け継がれていく。
いつになれば証拠は明らかになるのか。
あともう少しというところで
いつも壁が立ちはだかり、振り出しに戻る。
尽力する人々の、気の遠くなるような道のり。
冤罪は晴れるのか、真犯人は?
最後まで目の離せない物語だった。
ただ、最後の最後で、えっー!‥と、
思わず叫んでしまった。
これまでの闘いは何だったの‥?
長い闘いを終えた波子さんの最後の独白は、
全てを赦しているような、そんな感じを受けた。
Posted by ブクログ
かつて神都であった伊勢の式年遷宮。そのお木曳を見に行った父娘の父親が、殺人事件の犯人として逮捕され、死刑判決を受ける。冤罪を晴らすため、証拠を捜し、証人を追い求め、裁判を繰り返すが、判決は覆らない。裁判は昭和、平成、令和と時代を重ね、弁護士も3代引き継がれ、80年という長い時を費やすこととなる。冤罪が、本人や家族だけでなく、周囲の人々の人生まで大きく変えてしまうことが、苦しいほど伝わってくる。
それでも法の下の正義を自らの矜持を持って遂行する弁護士の姿が、世代ごとに人物を変えて描かれる。戦時下で子供が弁護士に向かって「正業に就け」と罵倒(??)するのに驚いた。そんな時代があったのか‥今作では弁護士になる苦労のようなものはあまり描かれず、割とあっさり取得できている‥とか思ってしまったのは余計なお世話か。文鳥は籠から逃したりせずちゃんと飼って欲しかったな‥
最後の裁判がどうなるのか。真実は正しいのか。その後の彼らの人生の行先は変わるのか。
未読の「百年の時効」も、昭和から一つの事件を追い続ける物語と聞いた。どこか共通する印象を受け、そちらも読んでみたいと思っている。
Posted by ブクログ
直木賞の候補になっていて、あらすじを見て気になったので読んでみた。
かなりボリュームがある本で読むのに時間はかかったが、読み応えがあり読んで良かったと思える本。
昭和18年に起きた一家強盗殺人事件で、無実の罪に問われた谷口喜介。
当時8歳である娘の波子とその周囲の人達が、人生をかけて冤罪に立ち向かう話。
時代が変わり、世代を超えて、なんとか無罪を…の思いの元に、弁護士や検事達が奮闘する。
やはり身近に法曹界の人間がいるとその道に進もうとなるのか、あまりにも次から次へと皆が弁護士になっていくので出来すぎでは…という思いも抱きつつ(まあ小説だし)、一度死刑執行されてから無罪を勝ち取ることがどれだけ大変なことなのか考えさせられた。
この小説内で書かれる戦中戦後の弁護士の扱いや警察のあり方を見ていると、そういう冤罪事件が少なからずあったんだろうな…とも。
正義とは何か、という問いを突きつけられた。
Posted by ブクログ
好みの社会派ミステリ。戦時中から令和まで、時代を超えて一つの冤罪事件を軸に、それぞれの信念で闘う。
ニュースで何十年も前の再審事件を見ても、どこか他人事ではなかったかと省みる。法の安定性という言葉の下に今も冤罪で苦しんでいる人がいるのかもしれない。
Posted by ブクログ
何十年にも渡る冤罪事件の終わりがこんな形になるなんて、因果応報と言うべきなのか、真実が運命を手放さなかったと言うべきなのか…壮大な物語を読むことができて読書の醍醐味だなと。
Posted by ブクログ
第174回直木賞候補作
冤罪事件を扱って、司法と正義を描く
非常に考えさせられるテーマ
ページ数が多いが、読ませる文章と展開で不思議とすらすら読めた
Posted by ブクログ
第174回直木賞候補作とのことで、手に取りました。
『神都の証人』は、5作品の中で一番の厚みを持つ作品です。
498ページという大ボリュームですが、年末年始に一気読みしてしまいました。
テーマは「冤罪」。
私をページをめくる手から離さなかったのは、読んでも読んでも姿を現さない「真犯人」への執着でした。
その正体を知りたい一心で、物語に引きずり込まれていったのだと思います。
とにかく、真犯人にたどり着くまでが長い。
「あと一歩で事件解決なのでは?」
そう思った矢先、さまざまな事情によってキーマンとなる人物が命を落としてしまう。
これを運命のいたずらと言わずして、何と言えばいいのでしょうか。
事件の真相が明らかになるまでの時間は、昭和から平成、そして令和へ。
三つの時代をまたいで、ようやく辿り着く結末です。
父親の無罪を証明したいと願う波子は、事件当初は8歳。
すべてが終わりに近づく頃、彼女は90歳になっています。
無実を証明することの困難さを、時間の重みとして突きつけられる物語でした。
当然のことですが、時代が変われば弁護士も関係者も変わります。
人物相関をある程度把握しておくことが、後半で描かれる事態の重大さを理解するうえで重要になってきます。
物語は章ごとに、三人の人物を軸に進んでいきます。
以下、個人的に印象に残った点を書いていきます。
【第一部 我妻太一】
おそらく、この人物が生きていれば、事件はもう少し早く解決していたのではないか。
そう思わずにはいられません。
最後の詰めの段階で、戦争に召集され、事件から身を引かざるを得なくなる。
この描写が『カフェーの帰り道』の時代と重なる部分があり、胸に迫るものがありました。
三人の中で、もっとも正義感と行動力を備えた人物だったように感じます。
【第二部 本郷辰治】
戦後日本における冤罪の実情を語るうえで、彼の存在は欠かせません。
一度「犯罪者」と見なされた人間が、無罪を証明することの難しさは、戦前と大きく変わっていない。
たとえ無罪となり社会に戻れたとしても、世間の目と戦い続けなければならない現実があります。
彼がどのように厳しい社会を生き抜いていくのか。
そして、その先で見出した人生の目的を、どう果たしていくのか。
非常に読み応えのある章でした。
また、「人は一人では生きていけない」ということを、改めて突きつけられる章でもあります。
人は人との関係の中で生き、支えられ、生かされている。
そんな当たり前の事実を、考えずにはいられませんでした。
【第三部 伊藤太一】
ここまで広げられてきた物語の風呂敷を、一気に畳む役割を担う人物です。
物語は、ほぼピンポイントで真犯人と思しき存在に焦点を当てながら進んでいきます。
しかし、この結末は……。
辛い未来しか想像できません。
読み終えたあと、本をパラパラとめくり、付箋を貼った箇所を振り返っていました。
その中で、特に胸に刺さった言葉があります。
我妻のセリフです。
「正義は刃です。その刃で利を得る者と傷つけられる者が出てくる。正義の価値とは、それを振りかざすことで傷つく者への考慮なくしてはあり得ません。その犠牲はどうしても必要なのか。どんなに憎い相手であろうと、切り捨てて終わりでは話にならない」
すべてを読み終えたあとに、改めてこの言葉の意味を考えてみてもいい。
そんな余韻を残す一冊でした。
Posted by ブクログ
第174回直木賞の候補作ということで初の大門さん作品。
タツの言うとおり、人はただ生まれて死んでいくだけ。でも、それだけじゃ割り切れない。
人が人を裁くこと、自分の心の向くままに生きることの難しさを思い知らされた。
Posted by ブクログ
昭和の終戦間際から令和までを時代背景とする壮大なリーガルミステリー。冤罪を立証しようと奔走する熱い信念を持った複数の人物の視点で物語が進行して行きます。ご都合主義的に場面転換して行くため、今一つ物語に没入出来ませんでした。
作中には描かれていませんが、全てが解明された後の人間模様が気になります。
Posted by ブクログ
「迷っているなら自分に問いかけてみるといい。君にとってその信念は志し半ばで諦める程度のものなのか、命を懸けるべきものかどうか。もし、後者なら、時を間違えるな。常に機を探れ。」
「正義は刃です。その刃で利を得る者と傷つけられる者が出てくる。正義の価値とは、それを振りかざすことで傷つく者への考慮なくしてはあり得ません。その犠牲はどうしても必要なのか。どんなに憎い相手であろうと、切り捨てて終わりでは話しにならない。」
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500ページを超えるリーガルミステリー。長編は嫌いではないものの、本作はさすがに色々な意味で「長い」と感じた。一つの事件の再審請求が昭和18年から令和に至るまで続き、その間に弁護士までもが世代交代していく。冤罪を晴らすために、これほどの年月が必要なのかと、制度の重さを痛感させられる。
物語は終盤にかけて二転三転し、ラストは予想外で強い印象を残した。読み終えて、あらためて冤罪のない社会であってほしいと、強く願わずにはいられなかった。
Posted by ブクログ
無実の罪を着せられた末に死刑が執行されるという、現実世界では「起きていない」はずの出来事を描くのは、いくら小説とはいえ勇気のいることだと思う。著者は冤罪をテーマにした作品を数多く発表しているそうだが、もうこの志だけで評価したくなる。
昭和から令和にかけての約80年にわたる物語をこの程度の長さで収め、かつリーダビリティの高い読み物としてまとめ上げているのはまさしくプロの技といった趣だ。
しかしながら本作には看過できない問題があり、墓から頭部を掘り出して持ち運ぶとか、息子の事件を隠ぺいするために無人島に島流しするとか、葬儀場に忍び込んで奥歯を盗むとか、さすがにそれはあり得ないでしょといった感じで、リアリティ部分がおざなりになっているように見える場面が数多くあったのは非常に残念だった。
また新事実が明らかになりそうになるとキーパーソンが死んでしまう展開も、一度ならともかく何度も繰り返されるのはちょっと安易すぎるように感じられた。