あらすじ
ここにもある袴田事件、免田事件、財田川事件、足利事件の理不尽。
生きるということは、かくも哀しく美しいものか。照らし出される司法の闇、冤罪の虚構、人間の絆。作家の才能に嫉妬する。―堀川惠子(ノンフィクション作家・代表作『教誨師』)
突然、父親を奪われた少女に救いは訪れるのか? 事件の謎は戦前から令和まで引き継がれ、慟哭の結末は我々に生きる意味さえ問いかける、前代未聞かつ究極の「冤罪」ミステリー。世代を超えて社会の歪みと戦い続ける者たちの行き着く先とはいったい何なのか。
時代を超えて受け継がれる法律家の矜持に心が震えた。―五十嵐律人(作家・代表作『法廷遊戯』)
わたしはこれ以上のリーガルミステリを知らない。―染井為人(作家/代表作『正体』)
冤罪と冤罪で翻弄されたものたちが辿る刮目のドラマ。戦中、時局に媚びる社会情勢の中で苦悩する弁護士のギリギリの戦いは、本人が戦場に送られて戦争が終わってからも、正義を信じる弁護士や検事により引き継がれる。彼らが報われる日は来るのか? 社会のひずみを壮大なスケールで活写したリーガル・ミステリーの雄の渾身作。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
3代に渡り冤罪を得ようと奮闘する弁護士。そして引き継いだ弁護士、代議士と様々な人らの働きによって裁判をやり直そうとするが一度決まった判決を覆すのは至難の業。挫折、屈辱を乗り越えていく話に加えて浮浪児だった人や家族の中で出来の悪かった人のドラマもあり物語の中にひきずりこまれていく。舞台がよく知る三重県伊勢市だったのもよかったのかも知れないが冤罪の難しさを知る。
雪冤をテレビで観たけど同じ作者だった。あの話も父親の息子の無実の訴えと息子が何故恋人を殺害したと言ったのかの苦悩だった。判決を覆す難しさをこのドラマで最初に知ったことを思い出す。
Posted by ブクログ
冤罪をテーマに描いたミステリー
だがその一言では言い表せない素晴らしい作品だった
この作品では主人公が三代に渡る
理想に燃える弁護士
浮浪児から検察になり、特別な女性のために冤罪を証明しようとする検察官
最後に落ちこぼれだったが、父の意思を継いで冤罪を追及する弁護士
それぞれの生き様が鮮明に描かれている
最後まで飽きさせないミステリーであり、大河ドラマのような読み応えのある作品だった
正義とは何かという問いに応える作品かもしれない
Posted by ブクログ
山風賞受賞作。やっぱ安心のブランドやね。本作もなかなか。冤罪の父と、その娘との物語。かなりのボリューム感を誇るし、内容も同一の事件を各視点から繰り返し語られるから、ともすれば冗長とも取られかねない。それを拒むのは、実際の冤罪に思いを致した場合、永遠に続くとも思えるような無力感に心当たるから。そのやり切れなさをも見事に現出している点でこの物量は必然だし、問題提起力も強いものとなる。