【感想・ネタバレ】襷がけの二人のレビュー

あらすじ

オール讀物新人賞で注目を浴びた新鋭、初の長編小説

裕福な家に嫁いだ千代と、その家の女中頭の初衣。
「家」から、そして「普通」から逸れてもそれぞれの道を行く。

「千代。お前、山田の茂一郎君のとこへ行くんでいいね」
親が定めた縁談で、製缶工場を営む山田家に嫁ぐことになった十九歳の千代。
実家よりも裕福な山田家には女中が二人おり、若奥様という立場に。
夫とはいまひとつ上手く関係を築けない千代だったが、
元芸者の女中頭、初衣との間には、仲間のような師弟のような絆が芽生える。

やがて戦火によって離れ離れになった二人だったが、
不思議な縁で、ふたたび巡りあうことに……

幸田文、有吉佐和子の流れを汲む、女の生き方を描いた感動作!

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Posted by ブクログ

女性のための女性の物語。
生きて、作って、食べて、
戦中、戦後を生き抜い二人の女性。
年齢も立場も違えど、形を変えながら固い絆で繋がる二人の人生が尊く、愛おしい。
今年最後の本に相応しいので、これにて完!
また来年たくさんのよい本と出会えますように。

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2024年12月25日

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大正から戦後を舞台にした 二人の女性の不思議な絆。
本当にどう言ったらいいのだろう。二人の関係。

立場が変わっても仲間の様な、師弟のような。奥様だった千代の優しさ、純粋さが
女中頭だった初にも通じ。きっと二人で戦後を乗り越えていくのだろう。二人なら乗り越えられる。

女性二人の友情の話⁈

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2024年12月16日

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ネタバレ

戦後間もない昭和24年。盲目の三味線師匠、三村初枝宅の女中となった鈴木千代。実は戦争前、初枝は千代の家の女中だったのだ。

なるほど、こう書いてみると二人の立場も襷がけなんだなぁと読後に分かる。襷をかけて力いっぱい生きようという意味も込めているんだなぁと感嘆。

太平洋戦争をはさむ波乱の時代を、女の絆で乗り切ってきた千代と初枝の物語。有吉佐和子や田辺聖子らが描いてきた昭和女流文学のテイストを強く感じる作品だった。家事の苦労、夫との不和、妾の存在、おせっかいババアのうっとうしさ、実家の確執。それらの話を徹底的にひっくり返す東京大空襲。

たくましく生きてきて、これからも生きていくであろう、2人(いや3人になるのか)のラストがとても良い。なお、下ネタチックな一連のシーンは「ドラマ化するなら覚悟してやれよ」という作者の矜持に思えたのは、考えすぎ?

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2024年11月19日

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感想を書き忘れていた。4カ月以上経ってしまったが、覚えていることを記録。
初めての作家さん。純粋に楽しめた。朝ドラを観ているかのよう。大きな商家のお嫁さんと女中さんの関係が、上下や主従と言うよりは、それぞれが仕事としてその立場を務めているように描かれていたのが、とても新鮮だった。だからこそ、立場や状況が変わっても、共に働いた戦友として、心のつながりを持ち続けることができたのだろう。
性的な描写へのこだわりにやや違和感あり。そこの整理がつかなかいまま、感想を書き忘れてしまった。

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2024年11月02日

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とても面白かった。大正から昭和にかけて、暗い時代に生き抜いた女性たちのお話。でも話自体は暗くなくて、日々の生活の様含めて軽妙な描写も多く、ストーリーの全体の雰囲気は明るい。
戦果の影響や当時の社会的地位の低さなどの困難はあれども、女性の逞しさやどんな時代にも日々の明るさはある点などを、感じつつ、気持ちよく読み終えることができた。

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2024年09月05日

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裕福な家に嫁いだ地味で平凡な女性千代とその家の女中頭のお初との大正から昭和にかけてのシスターフッドの物語。 寡黙な夫と心通わせられない千代はお初、女中のお芳とともに家事を取り行う日々。時代の変化とともに家族、周囲の人々、社会環境が変わりゆく中で、互いの秘密を共有する二人はより一層支え合うように暮らしていく。 大空襲により生き別れた2人が紆余曲折を経て、立場が逆転した状態で再会。この再会が冒頭に描かれるため、終盤まで読み進めたあと、立ち返って読み直してしまった。 「死ぬまで一緒にいる」お初さんの言葉に胸熱。

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2024年09月01日

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作品紹介にあるように、確かに幸田文から有吉佐和子、それに続く小説。この二人の作家が大好きなので、期待して読んだ。

目に浮かぶような描写。猫のトラオが抜けになっているのが現代的?で読みやすい。

3人。いいなぁ
読後感もいい

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2024年04月22日

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昭和24年、鈴木千代が口入屋(職業紹介所)から斡旋されて三村初衣という三味線のお師匠さんの家を訪ねる場面から始まる
千代は目が不自由な初衣の家で住込みで働くのだ…
しかし初衣はその昔、千代が嫁いだ先の女中…
つまり千代が奥様だった
東京大空襲で目が見えなくなっていた初衣と喉を痛め銅鑼声の千代
千代は素性を隠して初衣に仕えることに…
そして場面は大正15年
千代の祝言の日に変わる…
そして二人は互いにかけがえのない存在になっていく

表紙からも想像するように市井の普通の生活が描かれているようで…途中からこれはミステリなのかしら?と思いながらこの作品にどっぷりはまった!
(ミステリではなかった…(笑))
なかなかのネタがぶっ込まれていて(失礼…)
びっくりしたけど、だからこその二人が深いところの繋がりになっているのかしら…と思ったり…
でも男性ウケはしない作品ではある…
とにかくたくましく生きる二人の女性に同性の私としては拍手!
そして丁寧につくられる料理の数々に、こんなに便利な時代なのに面倒くさがる自分に反省…

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2025年09月04日

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朝ドラ「あんぱん」とドラマ「めおと日和」で、ちょうど同じ時期に戦前戦中の暮らしが描かれていたことがきっかけで、こちらの本に興味を持ちました。

工夫しながら丁寧に家事をして日々を過ごしている様子が好印象でした。ご飯もおいしそう!
タケのように噂好きな人はいるでしょうが、基本的には他人の暮らしが見えず、自分たちの小さな生活に集中している感じが、今のSNSまみれの生活よりも精神上安定するのかなと思いました。
悩みはあるけれど、知らないことは知らないでいいし、できないことはできないと割り切る感じ。

千代とお初さんの、奥様と女中でありながら、師匠と弟子、親子のような、踏み込みすぎずお互いを気遣い合う関係が素敵でした。戦後再会できて本当に良かった。
お芳ちゃんとの3人での再会、きっとおいしい食事を作って盛り上がるでしょうね!参加したーい!

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2025年08月30日

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世代も育ちも違う女性達のシスターフッド。
意地悪な人や理不尽な環境があっても、
味方になってくれる人がいたら乗り越えられるかも。

タキさん、嫌い。
噂話をばらまくせいで、放送局呼ばわりされている叔母を思い出す。縁を切りたいけど、未亡人になった母はご近所だからって妙に頼ってしまっている。
家族とはいえ、人の友人関係に口出すべきじゃないんだけど。

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2025年08月11日

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 太平洋戦争を挟んで、ひょんなことから二人で一緒に生活していくこととなった二人の女性の出会いと別れ、そして再会の物語です。

 物語は、主人公がとある女性の家に住み込みの女中として働き始めるところから始まる。その女性は、盲目だがしゃんとした人で三味線のお師匠をしている。彼女は、主人公にとっては戦時の混乱の最中に生き別れになった、誰よりも近しい人だった。大正十五年の嫁入りから、昭和二十年三月十日の東京大空襲の日まで、ずっと同じ家で過ごしてきた。その日々の中には様々な想いや葛藤があったけれど、つましい中にもたくさんの楽しみを見つけていく彼女たちは、生き生きとその時代を生きていたのだと感じられる一冊となっている。

 太平洋戦争の時代を挟んで戦前、戦後と続く一連の中で、主人公たちがどのように生きてどのように日々の暮らしを見つめていたのかを知ることができる、良作だと思います。戦時中の悲惨さや悲壮な気配はあまりなく、日々の中でちょっとしたことに楽しみを見出しながらも力強く毎日を生きている女性の姿が浮かび上がるようです。
 時代小説と言うには古くなく、現代の感覚で見るには少し異なる時代感覚という、絶妙なところをバランスよく描かれているという印象でした。それにしても、料理が美味しそうです。家庭料理でもそんな美味しいものを手間暇かけて作っていたのか、と冷静に感心する自分と、単純にとても美味しそうだと感じている自分がいた気がします。どんな時代でも、美味しいものを追求することは幸せを追求することと同じなんだろうなと感じます。
 インターネットで簡単にレシピを知ることができる昨今ですが、やはり『家の味』は万人受けするレシピとは似て非なるものだと思うのです。プロではないけれど、これが『我が家の味』と言える、美味しい料理を持っている家庭は素敵だと思います。

 二人の女性の出会いと別れと再会と、そしてその先の未来を見せてくれる壮大な(でもある意味とてもミニマムな)物語でした。最後の余韻もとても素敵でした。こんな生き方を、私もしてみたいものです。

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2025年05月02日

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直木賞候補に上がっていたときから気になっていた小説。
大正時代から昭和にかけて、婚家の女中頭であった初枝と、嫁いできた千代、それに年下の女中、およしの3人の人生を描く。
千代の結婚と、東京大空襲が二人の運命を翻弄していくが、さらに二人の女ならではの事情が絡んでいく。育った環境も、それまでの人生も全く違う二人が一つ屋根の下で暮らし、山田家の男たちと暮らしていく。千代は夫との関係に悩むが、初枝にも事情があった。
女が耐え忍ぶばかりの話かと思ったらそうではなく、男たちにも事情があり、時代を感じさせる。千代は印象が薄いくらいの目立たない女で、苦労知らず、世間知らずであるのに、初枝はそういうおおらかなところが千代の良さだと言ってくれる。千代は、初枝、そしてお労と共に強かに時代を生き抜く。

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2025年04月09日

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ネタバレ

昭和の頭から戦後の二人の市井の女性を描いた物語。

祖母の名前が主人公と同じ(正確には祖母は鈴木千代子)だったり、
祖母も結婚前までは芸者の置屋で育てられていたとのことで三味線などの芸事がうまかったことなど、
物語の中に祖母の面影を思い出しながら読ませていただきました。
時代的には不幸なのでしょうが、主人公たちの性根が素晴らしいので、読後感も爽やかでした。

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2025年03月28日

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不思議な味わいのある作品です。
女性2人の敬称しがたい絆を描いた作品。
男性のバディものは結構あるけれど女性の人生苦楽を共にしたバディものは珍しい。いい言葉がみつからなくてバディとゆうてみたが、そこには収めたくない関係性ですね。

2024.11.30
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2024年11月30日

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千代とお初さんの昭和初期から終戦後までが描かれている。
父親の親友の息子のもとに嫁ぐ事になった千代、そのうちにはお初さんという女中さんがいた。
千代の結婚生活は決して順調なものではなかったが、お初さんや同年代の女中のお芳さんと仲良く暮らしていく。
順風満帆ではない千代とお初さん、それでも前向きに生きている姿に清々しい感動を覚える。
立場が逆転してもこだわることなく生きていける二人がいい。
そんな関係が築ける相手がいることは大変幸せなことだろう。
戦争で身体だけでなく心も傷ついた人達がいっぱいいた時代だったんだ。
とにかく千代の生き方、お初さんの生き方、どっちも素晴らしく爽やか。
長編だったが読みやすく、次が気になって読み終えた。

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2024年11月07日

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裕福な家に嫁いだ千代と、その家の女中頭の初衣。二人の四半世紀に渡る物語。
冒頭のシーンで女中頭だった初衣が思わぬ姿になり、その雇い主だった千代が逆に住み込み女中として初衣の家で働き始めるところが描かれている。
戦争の混乱による影響だと思われるが、一体何が起きたのか興味を掻き立てられる。
そこから物語は遡り、大正15年の千代の嫁入りから始まる。

千代と初衣の関係は傍から見れば奇妙だが、楽しい。
決して雇用主と女中という上下関係はなく、共に家を切り盛りする同僚のようでもあり、千代が嫁入りするまで家を切り盛りしていた初衣が様々なことを教える先輩のようでもあり、もう一人の若い女中・お芳と共に三人姉妹のようでもあり、何でも話せる友人のようでもあり。

その後、お芳が嫁入りし千代の舅も夫も去ると、千代と初衣の関係は厳しい時局もあり更に深まっていく。

千代は実の家族と打ち解けることはなく、また夫とも心を通わせることはなかった。
舅は優しい人だったが、それ以上の交わりはなかった。
そして夫の死後出会った男ともまた心が通わないままだった。
それは千代の男運が悪いのか、彼女自身の問題なのか。
一方の初衣もまた過去に様々な事情を抱えており、千代が嫁いだ家での立ち位置も複雑なものだった。

予想していた内容とは違い、結構性的な要素が多かった。だがかといって卑猥な印象は受けないし、妖艶な話でもない。
切なく哀しく、滑稽でもある。
千代に初衣がいてくれて良かったと思う。
そして初衣にも千代がいてくれて良かったと思う。

『大変かもしれませんけど、二人一緒なら、どこへでも行けます。だって、生きているんですもの』

最後の場面でのこの言葉に二人の関係や二人の強さが表現されている。
数々の困難や数々の苦しみ悲しみによる傷を乗り越えた先のサッパリとした清々しい強さが美しかった。

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2024年09月30日

Posted by ブクログ

はじめての著者さんでしたが、すきっと、読み終えました。
テレビドラマを見終わった感じかな。次作もあれば、読んでみたいです。

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2024年09月25日

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最初面白くないと思ったけど 面白かった
淡々としたお話だけど そうだよねと思えた

花電車は若い頃どちらの意味も読み聞きしてて 久しぶりって感じ 私よりわかい作者なのによく知ってたなと思った ま 時代劇かくひともいるから当たり前か
戦争
は、経験してないのにいうのもなんどけど よく描かれてると思った 二人 互いに、一緒に生きていくんだなと思った それまでの人生に無駄はないと思った

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2024年09月24日

Posted by ブクログ

大正~戦後を生きた女性の話ということで、読んでいて辛いシーンが多いのでは…と身構えていたもののの、戦争ではなくヒューマンドラマが話の中心だったので想像以上に読みやすかったです。
千代やお初さんを好ましいと思えるか否かで、読みやすさはだいぶ違ってくるとは思うのですが……。
私は千代を通してこの時代ゆえの女性の生きづらさがリアルに感じられて、気付けばすんなりと物語に没入し、千代を見守るような応援するような気持ちで読んでいました。
千代自身飢えることはない境遇で例えこの時代では恵まれていた方なのだとしても、千代の決して良いことばかりでなく理不尽なこともどうにもならないことも沢山ある人生を彼女なりに歩んでいく姿に胸が温かくなりました。
一日読み耽ったのもあり、読後は何だか自分も千代やお初さんと一緒に過ごしていたかのような気持ちになって、物語の終わりが寂しくも感じました。
個人的にとても好きなオススメの一冊です。

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2024年08月14日

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最初の数ページ(数行)で、文章の読みやすさと美しい日本語に驚嘆である。最後まで何か一本筋の通った凛とした文体が力強く作品を引き締めてくれている。
もちろんストーリーも滋味豊かで、キャラクターはたくましく生き生きと動いている。
傑作である。

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2024年08月03日

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大正時代末期に、ちょっとお金持ちの家庭に嫁いだ千代とその家の女中さんが心を通わせる。そんな家庭でのこの時代の日常が描かれる前半は退屈で、読むのをやめようとしたけれど後半の空襲に遭う辺りからは動きがあり読み進めた。

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2025年08月23日

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裕福な家に嫁いだ千代と、その家の女中頭の初衣。
「家」から、そして「普通」から逸れてもそれぞれの道を行く。親が定めた縁談で、製缶工場を営む山田家に嫁ぐことになった十九歳の千代。実家よりも裕福な山田家には女中が二人おり、若奥様と呼ばれる立場になる・・・。
夫とはいまひとつ上手く関係を築けない千代だったが、元芸者の女中頭、初衣との間には、仲間のような師弟のような絆が芽生える。

千代と初衣の不思議な縁が独特のハーモニーで紡がれた、血縁や男女の婚姻関係で作られないシスターフッドの物語だった。千代は実母との折り合いも悪く、夫との関係もうまくいっていない。つまり家族との縁が薄い。玉の輿のような嫁ぎ先とはいえ夫と心身共に交われずに苦しんでいる千代は、初衣に悩みを打ち明けた。初衣は千代の性器を見せてもらい確かめることにした。そこまでと一瞬たじろいだが、嫌らしさを感じさせずにあっけらかんとした気持ちに切り替わったのは、動揺する千代に、初が芸者時代に覚えた“花電車”の秘技の話だった。想像したら可笑しくてたまらない。千代と初衣の年齢差は母娘といってもおかしくないぐらいの20年の開きがあるのだから、娘を案じる母心だったのだろうとも思え妙に得心。
やがて戦火によって離れ離れになった二人だったが、不思議な縁で、ふたたび巡りあうことになる。
嶋津輝さんが料理を作る描写に力を入れたと語っていた通り、3人が手分けして料るお菜は手が込んでいて美味しそうだ。
途中、千代のパーソナリティが今一つ私には伝わって来ずにイライラ。そののんびりした性格があったからこそ、義父のお妾さんであった初衣を受け入れることができたのだろう。夫に女性が居て子供まででき婚家を去ろうと決心する千代に、初衣は『食べていく術がないならば早まらずに妻の立場に居座りなさい』とアドバイスする。さすがと膝を打った私。ついに、千代は30代で寮母の職に就き自立し人並みの恋をした。

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2025年06月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大正~戦後までの女の友情物語。

裕福な家に嫁いだ嫁と女中が仲良くなり、その精神的結びつきは家族以上となる。太平洋戦争がはじまり、お互いの所在が分からなくなるのだが、戦後何年か経ち、逆の立場で邂逅することになる。

おいしそうなごはんがたくさん出てくるなあ、ほんわかした空気の物語なのかなあ、と思って読んでいたら、ちょっとあなたたちお風呂で何を見せ合っているのとびっくり展開だった。

旦那ひどいなーと思ったら、倍返しくらいの仕打ちを作者からくらっていた。
(旦那の死後、妻が寮の男との営みで「旦那よりうまい」的な感想をほのめかすシーンなど、、)

独特の展開を見せつつ、戦争に関しては割と淡々と物語が進んでいく。なんだかんだで最後に残った二人が幸せになれそうでよかった。

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2025年05月31日

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清々しく、心が浮き立つようなラスト。
裕福な家に嫁いだ千代と、元芸者の女中頭・初衣。
二人の女性の生きざまを、見届けられてホッとしています。

戦前から戦後へ、人々の暮らしを描きながら、二人の女性の生き方を描く。
女性の役割は、「後継ぎの男児を生んで、家庭を守る」というもの。それが「普通」とされていた時代。
役割を全うできないと離縁されてしまったり、そうでなくとも肩身の狭い思いをすることになる…。

そんな「普通」に当てはまらない千代とお初さんの日常に引き込まれました。
性描写に驚く場面もありますが、とても丁寧な暮らしぶりや揺れる千代の気持ちが描かれていました。
料理にしろ、掃除にしろ、粛々とこなしていく姿は感心させられるものがあった。

嬉しいことも、悲しいことも、人生いろいろ。さまざまな人の人生が複雑に絡み合って思いもよらないこともあるけど、それでも毎日は続いていく。

千代とお初さんの関係性が素敵でした。
気安いのに、お互いが相手を敬う気持ちを感じる。
ここからまた何かが始まりそうな、楽しい予感のする素敵なラストでした。

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2025年04月03日

Posted by ブクログ

裕福な家に嫁いだ千代とその家の女中頭の初衣。
この2人の激動の人生の物語。時代は大正から第二次世界大戦終戦後まで。これはまた朝ドラみたいな感じかな?と読んでみました。

千代はいい家に嫁いだものの幸せとは言えない。
初衣は仕事ができて優しい女中。でも世間からはあまりいい目では見られていない。2人ともこの時代だと認められない存在みたいな感じなのかな?こんなにいい人たちなのに、なぜ?と思い悲しくなる。
でもこの2人はそんなことには負けずに懸命に生き抜いた。戦時中は女だけで暮らしていると、大変だろうし怖い思いをいっぱいした思う。よく頑張った。すごいな。周りの人にも理解者がいて良かった。

千代と初衣の関係が羨ましい。奥様と女中頭の主従関係というのは初めからなくて、なんて言えばいいのか。歳の離れた姉妹?先輩後輩?一番しっくりくるのは親友、生涯の友なのかなぁ。それも少し違う気がするし、ソウルメイトの方が合っているのかな?とにかくこの2人の関係が好き。
途中で私は一体何を聞かされてるのだろうか?という箇所があった。千代がかなり深刻に悩んでたので初衣が相談にのっているのだけど、全てをさらけ出していた。私はすごいなと思ってしまった。信頼し合ってるから出来るのだろうな。

千代と初衣、ずっと仲良く穏やかに暮らせるといいな。
朝ドラみたいだけど、少し違うかな。

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2025年03月03日

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ここに2人の女がいる。
1人は千代。地味で目立たない。名前からしても平凡。醜くはないが、美しくもなく、引っ掛かりがないせいか、他人の印象に残りにくい。どこか人の気持ちに鈍いところもあり、悪気はないのだが、とにかくぱっとしない。
もう1人はお初。粋でしゃきしゃきしており、何でもてきぱきとこなす。人のよいところを伸ばすことにも長けていて、教え上手。以前は芸者として働いていたという。
このあまり似通ったところのない2人が出会い、大正から第二次大戦後までを過ごし、強く温かな絆で結ばれていく、そんな物語である。

第1章は「再会」と題される。すでに戦後である。
盲目の初衣は住み込みの女中を探している。その家を千代が訪れる。表題からしても、2人は旧知の仲のようなのだが、千代は自分の正体を明かさずに女中として働こうとしている。かつて2人の主従関係は逆転していた。千代が若奥様で初衣、つまりお初が女中。
わけあって離れ離れになったが、千代はどうしても再び、お初と暮らしたかったのだ。
千代は昔とは声が変わってしまっており、盲目のお初はどうやら千代が自分の知っている千代だとは気づいていないようである。
では2人はどんな風に知り合い、その後、どんな人生を送るのか。それが2章以降で語られる。

出版社紹介には「女性たちの大河小説」とあるが、その言葉から想像するほど大上段に振りかぶったお話ではない。
2人をつなぐのは台所仕事であり、掃除であり、家の中のこまごまとした雑事である。
若奥様の千代は、夫とはあまりうまくいっていないが、お初や、もう1人の女中であるお芳と家の切り盛りをするのは楽しく、日々を丁寧に送っている。実家でも一通りの家事はしてきたが、お初が作る洒落た料理は目新しく、目の前が開けるようだった。

千代が夫とうまくいかないのには理由があり、それは追々明かされる。ちょっとびっくりするような設定だが、まぁそういうこともあるのかもしれない。
一方、何でも器用にこなしているかに見えるお初にも秘密はあった。
お互いの心の傷を明かした2人は、家族とも友人とも言えないが、そのどちらでもあるかのような間柄となっていく。そしてともに手を取り合って暮らしてきたのだ。
あの日が来るまでは。

千代はヒロインとしては地味なのだが、とはいえ、一見愚鈍にも見えるその生き方には芯の通ったところがある。
人生、思い通りにいかないことはままあるが、結局は置かれたところで、地道にやっていくしかないのかもしれない。
絵に描いたような完全無欠のヒロインではないからこそ、いつの間にか千代を応援したくなってくる。同時に、どこか読み手側もそっと励まされるような感触がある。

主役の2人に加えて、脇役の描写も多様で楽しい。
どこか冷淡な母、気のいいお芳、何かと嫌味を言いに来るタケ、捉えどころのない夫の茂一郎、瀟洒な舅・高助。
中で印象に残る名脇役は飼い猫、トラオである。「虎雄」とは名ばかりで飛び切り臆病、見た目は狸。千代が嫁にいってしばらくは、千代に怯えて姿を見せなかったほどの臆病者だが、そのうちにこっそり傍にいつき、物語の重要なアクセントになっていく。

派手さはないが、温かな余韻を残す物語である。

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2024年11月25日

Posted by ブクログ

戦争を潜り抜けた2人の友情に心打たれる。
昭和の頃の庶民の生活が細やかに描かれ、主人公の生活をリアルに想像しながら読んだ。今の社会を生きる世代からは、昭和初期の生活や社会制度はとても不思議に感じ、こんな時代だったんだなとしみじみ思った。
今のように男女平等、人権が謳われる時代じゃなかったけれど、のんびり屋でも、我慢強く、逞しく生きる主人公に読んでいる自分も力をもらえた気がする。

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2024年10月31日

Posted by ブクログ

主人公は鈴木千代、製缶会社の長男に嫁ぎ、そこで出会ったのが三村初衣。花嫁と女中という関係ながら、何事にも秀でた初衣にいろいろなことを教わりながら、婚家で日々を過ごしていく。東京大空襲が二人を引き離すが、やがて、盲目の三味線師匠と住み込み女中として再会し、また二人で暮らすことになる。
大正から昭和、震災があり、戦争があり、そんな時代背景にも二人は翻弄される。
いわゆるシスターフットものといったら、よりわかりやすいのか?人には言えない秘密も共有する
二人だから、閨のはなしや、性器の形状の話など、あけすけな表現も違和感ないエピソードになっていた。怖がりな猫のトラオを大切にしてるところが、とてもよかった。

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2024年10月11日

Posted by ブクログ

いいの、いいの。もうね、小難しいことを並べるのではなくて、こういうのがいいのよ。ヒリヒリするものを身を切りながら読むのはワカモノの特権かと思うぐらいに、最近はホッとするものばかり読んでる私。こんなふうに希望もちょっと添えてくれたら読後感サイコーね。

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2024年08月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2023下半期 第170回直木賞候補作品

時代は大正末期から戦中戦後。
裕福な家に嫁いだ千代と
その家の女中頭、お初の物語。

千代は実母への複雑な想いや
夫と心も体も深まらないことが寂しくもあるが
お初ともう一人の女中さんと3人での
仲良く丁寧な暮らしを送っていた。
文章も大変読みやすく、スルスル読めていたが
途中で左のピラピラの話で
ビックリ仰天。
あわわ、そんなことって、、とページを捲る手が更に止まらず、、、、
私ったらなんて下世話なんでしょう。
しかしこのエピソードいるのかな。
ただ相性が悪かったて話じゃダメだったのかな。

空襲で離れ離れになってしまう千代とお初?
のんびりお初さんに守られながら
平和に暮らしていた千代は戦後初めて
自分で職を見つけ、一人生きていく。
そして初めて恋をする。
何の問題もなく
お相手と愛し合えた千代さん。
本当に良かった。
結局ピラピラではなく、愛情の問題だったのだね。

そしてお初さんとの再会。
戦中戦後の苦労を超えて
仲睦まじく暮らしていく。
幸せな料理がたくさん出てきてほんわか幸せな終わり方でした。

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2024年05月07日

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