あらすじ
オール讀物新人賞で注目を浴びた新鋭、初の長編小説
裕福な家に嫁いだ千代と、その家の女中頭の初衣。
「家」から、そして「普通」から逸れてもそれぞれの道を行く。
「千代。お前、山田の茂一郎君のとこへ行くんでいいね」
親が定めた縁談で、製缶工場を営む山田家に嫁ぐことになった十九歳の千代。
実家よりも裕福な山田家には女中が二人おり、若奥様という立場に。
夫とはいまひとつ上手く関係を築けない千代だったが、
元芸者の女中頭、初衣との間には、仲間のような師弟のような絆が芽生える。
やがて戦火によって離れ離れになった二人だったが、
不思議な縁で、ふたたび巡りあうことに……
幸田文、有吉佐和子の流れを汲む、女の生き方を描いた感動作!
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
カフェーの帰り道が面白かったので、こちらも読んでみました。
少しずつ時が進んでいくのはカフェーの帰り道と同じ。ただ、視点がずっと千代さんなので、より感情移入してしまう。
前半の茂一郎と上手く行かないもどかしさ、タケさんの嫌な感じ。モヤモヤしつつも、お初さんとの暮らしにほっこりさせられる。
戦後のお初さんとの再会は本当に嬉しくって!!
引き込まれるように一気に読んでしまいました。とても面白かったです!
Posted by ブクログ
襷がけをして家事に勤しむ2人の姿と、長い人生をかけて交差する2人の関係性を掛けているんですね…
おっとりした千代さんと芸妓あがりで粋なお初さん。主従関係が入れ替わりながらも長い間連れ添った2人の関係性が羨ましい。
義父の妾と嫁という間柄で、お互いに軽蔑しようと思えばできたのに、尊敬しあって支え合う2人の心根の良さが沁みました。
お料理シーンが大変多く出てくるので、昔の手の込んだ旬の食材を使ったお料理が美味しそうで美味しいそうで…現代では高いお金を払わなければ食べられなくなりましたが、手間暇かけて自分と誰かのためにお料理したくなりました。
Posted by ブクログ
なんと、まともな男性(個人的な感想)は1人?2人しか出てこなかった…ように思える
親都合での結婚、女中の仕事や妾の存在など、この時代ならではの女性の苦労も多いほか、戦争描写がある為、実際に胸が詰まり読んでいて苦しくなる場面もかなり多かった。
その反面、幸せな場面を描くのも上手で、読んでいる自分もまるでその空間に混ぜて貰っているような気持ちになる。
容姿も良く、仕事ができ、人からも愛されるお初さんでも、人には言えない過去を抱えていて、そしてその過去に対して後ろ指を刺されているんじゃないかと何十年経っても心配しているところに人間味を感じた。
主人公の千代は幾度と大変な思いをして、何度か環境が変わったけれど、すべての過去の地続きが最終的に繋がっているようで、勝手に自分まで安心した。
千代とお初さん、(そしてお芳ちゃん)皆愛おしくて、途中の苦しさもさることながらラストはホッと胸を撫で下ろすことができて良かった。
千代が幸せで、お初さんが幸せならそれで良かった。
Posted by ブクログ
HKさんのおすすめ。
千代は、三味線のお師匠さんである初衣の家で働く女中。
初衣は東京大空襲で目が見えなくなっていたため黙っていたが、
千代は東京大空襲の夜まで初衣と一緒に暮らしていた。
千代が主人で初衣が女中として。
いや、千代の義父の妾として。
「カフェーの帰り道」と同じ作者だったが、
それよりももうちょっとしっとりした感じだった。
製罐工場の社長の妻として不自由のない暮らしをしていた千代が、
夫とは心の通わぬまま別居になり、
義父も亡くなり、もう一人の女中と三人で暮らしている様子は幸せそうだった。
さらに、大空襲をきっかけに、
独身寮の住み込み女中として自立できて、
そこで悲しい恋もし、初衣と再会できて良かった。
狸のような、でも小心者の飼い猫、トラオがかわいらしかった。
Posted by ブクログ
直木賞候補に上がっていたときから気になっていた小説。
大正時代から昭和にかけて、婚家の女中頭であった初枝と、嫁いできた千代、それに年下の女中、およしの3人の人生を描く。
千代の結婚と、東京大空襲が二人の運命を翻弄していくが、さらに二人の女ならではの事情が絡んでいく。育った環境も、それまでの人生も全く違う二人が一つ屋根の下で暮らし、山田家の男たちと暮らしていく。千代は夫との関係に悩むが、初枝にも事情があった。
女が耐え忍ぶばかりの話かと思ったらそうではなく、男たちにも事情があり、時代を感じさせる。千代は印象が薄いくらいの目立たない女で、苦労知らず、世間知らずであるのに、初枝はそういうおおらかなところが千代の良さだと言ってくれる。千代は、初枝、そしてお労と共に強かに時代を生き抜く。