小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
一色さゆりさん初読です。東京藝大出身、アート・ミステリーで主に活躍されているそう。
本作は、一色さんの実の祖父(日本初の聾学校理髪科を卒業し理髪店を開業)をモデルに、孫娘の新人作家が「親子3代にわたるつながり」を綴った物語です。
ただし、主人公は祖父ではなく作家の〈私〉で、祖父の半生を小説に仕立てていく過程を描いた作品です。祖父母(聾者)の理不尽な差別や自立への壮絶な苦労、その子ども(コーダ:聾者の親の聞こえる子ども)の孤独や寂しさ、孫である〈私〉の作家として産みの苦しみとルーツを辿る苦悩まで、過去と現代を行き来しつつ描き、深い内容となっています。
聾者・コーダそれぞれが感じている -
Posted by ブクログ
ネタバレ最初、どういう風に物語が進んでいくのか想像もつかなかったが、薫子のところにプレゼントが届いたところからもう一段階ギアが入ったように物語に引き込まれていった。
薫子は生前春彦に関わりあった人々に出会いながら、徐々に姉である薫子が見ていた春彦とは別の一面を知っていくことになる。同時に物語では、「人を生む」ことの重みや、それ自体の是非を問う。
生きるのが上手そうな春彦が、強くて何にも靡かなそうなせつなが、本当はどう思っているかは誰にもわからない。それぞれがそれぞれの事情や、生きづらさを抱えながらも必死に生きている。春彦がせつなと恋人関係ではなくとも、せつなに残したいことが多くあり、それ以上の絆で結 -
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Posted by ブクログ
カフネって言葉の意味とても素敵だなと思った。
主人公の薫子は弟を亡くし、不妊治療もうまくいかず夫とも離婚。荒んだ生活を送っていた時、弟の元恋人のせつなに温かい手料理をふるまわれた。せつなの料理を食べた薫子は、立ち直る気力を取り戻していく。
私も子どもが部活の試合で負けて落ち込んだり、顧問に怒られたりして帰ってきたら、何も言わずとりあえず子どもの好きなご飯をたくさん作っている。
ちょっとでも元気になってもらえるように。
食べることは生きること。
辛い悲しいどうしようもない時ほど美味しいものを食べて、明日を生きる活力にしたい。
でも、この本に出てくる登場人物たちは様々な事情で食事を作ったり -
Posted by ブクログ
なんでこんなことしてんだろ、と思うことのないまま大人になることなんて、ない。
その誰もが持つ「なんで」を物語を導く「謎」として提示したミステリーだ。
その謎を解くカギは、随所にある。よくある後出しじゃんけんのようなズルはない。
主人公と一緒に解くことができるようにカギが配置されている。
一方で、読者はこの主人公よりも年上なので、その背景にあるものも見えるので、
主人公が翻弄されている伏線も、もうひとつの謎解きとして浮かび上がってくる。
この1冊の中に、大きな3つの謎が入れ子になっているのだ。
①人生の「なんで?」の謎
②主人公を鍵穴とした時代背景の謎
③主人公が直面している暗号の謎
若干のご