あらすじ
アジア初のブッカー国際賞作家による奇蹟の傑作が文庫化。おくるみ、産着、雪、骨、灰、白く笑う、米と飯……。朝鮮半島とワルシャワの街をつなぐ65の物語が捧げる、はかなくも偉大な命への祈り。
ノーベル文学賞受賞!
ハン・ガン作品、どれから読んだらいいかわからない……という方には、個人的には『すべての、白いものたちの』をお勧めしたいです。
詩のように淡く美しく、それでいて強く心をゆさぶる名作です
ーー岸本佐知子
生後すぐに亡くなった姉をめぐり、ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、朝鮮半島の記憶が交差する。
文庫化にあたり、訳者の斎藤真理子による「『すべての、白いものたちの』への補足」、平野啓一郎による解説「恢復と自己貸与」を収録。
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Posted by ブクログ
最初は美しい散文だなと思って読んだが、著者の言葉や解説を読んで、替わりに生きるという構造に気づき、一気に深みが増した。そこまで深く読めなかった自分が歯痒い。何回読んでも新しい気づきを与えてくれそうな本。
Posted by ブクログ
多くの読者の感想のように、文体は散文詩のようで、読めば深い心の底にある思いに気づく。
過ぎた者たちや風景の懐かしさだったり今手に取っているものもいつか消えていくという寂しさだったり、それが時間によって、傷が治るように次第に癒され、さまよっていた過去が浄化されていくことだったり。
心の深層に隠れていたものを鮮やかに語り、それを読み解き、自分の中でとらえどころがなかった出来事や時間がすべてが過去になっていくという。通り過ぎて、ある、あったと思って生きていた時間はもうとうに過ぎ去っている。ということ。
人すべてに通じる生きることの普遍は、身近にある白いものに託して、思い出す過去の、今も湧き上がる悲しみについて、風景を見ている現実すべてが象徴的に幻想的につづられている、それらはどうしようもない人の生き方に凝縮されていく。うら悲しいものたちが白いものに宿って、何度も思い出される。
4時間しか生きてなかったという姉のこと。人里離れた寂しい官舎で、母が一人で生み、亡くなった姉を父が山に埋めたこと真っ白いおくるみに包んで。
そんな日々、今となってはあると見えてない、ないと見えて密かに心を締めつける、生きている人のすべてを言葉にすれば、どんな形であれ 同じ思いや感じるものの中にあり記憶の底に沈めて来たものがある。
紡がれる言葉はほとんど悲しみに近い。ともに生まれ共に生き老いていく。ほとんどの情景は悲しみに近く白いものは日常にともにあるものの象徴のように目に入る。
文庫のわずか200ページ足らずの中に詩集の様な空白の多いページをつい繰り返して読んでしまう。
姉の代わりに生まれて今まで生きてきた命の継承のような日常。白いおくるみに包まれて山に埋められた姉がいれば私は生まれなかったかもしれない。今周りで見る白い者たちを見ることはなかったもしれない。
子供にも恵まれ、異郷の友人に招かれて、破壊から立ち直った国で暮らしてみる。新しい息吹の中に立ってみる。
そこにも白いものはある、思い出される。
ふしぎなほど近しく思える、自分の生にも死にもよく似ているこの都市へ
姉がやってくることを考える。
もう一度あの人に会いたいときが来るとしたら、きっとそのとき。
若さも肉体もなく、
何かを熱望する時間がすでに尽きたとき。
邂逅のあとに残されたこと
永遠にすべてのものとの決別の時私も会いたい人が一人だけいる、遠くから見るだけでもいい。
涙ぐんでしまう、こんな一行が並んだ、一瞬と永遠が詰まった一冊だった。
Posted by ブクログ
かなり心にきた
読んでた時の感情の起伏がめちゃくちゃ気持ちよくて幸せやった
記憶消してもう一回一から読みたい
間違いなく今まで読んできた小説の中でもトップに入ってくる
大事な人たちにおすすめしたい
Posted by ブクログ
ノーベル文学賞を受賞した作家の本という事で読んでみる事に。喪失と寂しさを抱えた一人の女性が静謐な筆致で姉の事を想像しながら心の隙間をそっと埋めようとするとても優しい文章だった。
冒頭の母が最初に産んだ子供、つまり私の姉が生後たったの数時間で亡くなる描写に涙が止まらなかった。
「一人で子供を産んで産着を着せる。か細い声で泣くその手のひら程の赤ん坊を抱いて何度となくそうささやきかけた。初めは閉じていた赤ん坊のまぶたが1時間で嘘のようにぱっちりと開いた。その黒い瞳を見つめてまた呼びかけた。
「死なないでお願い」さらに1時間して赤ん坊は死んだ。死んだ子供を胸に抱いて横たわり、その体が次第に冷えていくことに耐えた。もう涙は出なかった。」
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途中の章からは私が姉が生きていればと妄想する章になっている。
「お姉ちゃんがいたらなともう子供時代があった。母が病気の時にコートを羽織って薬局に行き帰ってくるお姉ちゃん。これは簡単だよ、単純に考えてごらん、と数学の問題集の余白に方程式を書いてくれるお姉ちゃん。足の裏にとげが刺されば、そこに座ってごらんとスタンドを持ってきて足の裏を照らし消毒した針でとげを抜いてくれるお姉ちゃん。闇の中にうずくまっている私に近寄ってくるお姉ちゃん。短くぎこちないハグ。いいから起きなさい、ご飯食べよう。」
姉はこの世に生を受けて2時間で死んでしまった。生きていればそんな些細な日常を私と一緒に過ごしていたのだろうか?姉をこの世に蘇らせて生身の体を与え、心にぽっかり空いた隙間を埋めてくれる夢の中のお姉ちゃん。
Posted by ブクログ
ハン・ガンの「すべての、白いものたちの」。
とても良かった。
生まれて2時間で亡くなった姉を思いながら書いた物語。
美しく、心に沁み入るような詩的な文章で、ひとつひとつの言葉が雪の結晶のように繊細ではかなげで、読んでいると心が静かに張り詰める感覚になる。
余白が多く、読み手に多くを委ねられているので、一文一文をどういう感情なのか、何を語っているのかを丁寧に心に落とし込み、沁み込ませながら読まなければならないのは少し労力がいるけれど。
第二章「彼女」を読んでいる途中で迷子になりそうで、一旦はじめから読み返してみて、それでなんとか物語の世界観をぼんやりとつかめたような気がした。
Posted by ブクログ
ノーベル文学賞を受賞した筆者の本の中で読みやすそうだったため、購入しました。この本の中では、当時22歳だったお母さんが家でいきなり破水し、連絡しようにも村に1台しかない電話があるお店まで歩いて20分もあるため、筆者のお姉さんになる方を一人で産んだが、2時間後に亡くなったというくだりが印象に残っています。お母さんは「しなないでおねがい。かぼそい声で泣く手のひらほどの赤ん坊を抱いて、何度となくそうささやきかけた。」とあります。私も生きていて欲しかったと思っています。(22P)
この本はどのページも文章が透明感に溢れています。スッキリとした気持ちになりたい方にお薦めします。
Posted by ブクログ
白いもの〜とても儚く優しいものだったり、強烈なものだったり。詩的な美しい文章で綴られていたかと思いきやズドンと悲しみが押しよせたり。ふとした時に何度も目を通したくなる一冊となった。
匿名
美しい世界
白をテーマにして次々に繰り出される白い世界。
失ったものを抱えながら白い世界に吸い込まれていくような感覚。
何よりもこれが翻訳された作品とはまったく感じずに本の世界に入り込むことができました。
Posted by ブクログ
初めは短編集のように一貫性のある物語だと気付かずによんでいました。解説を読んだ後に、自分の読み方が全く違ったことに気づかされました。
生と死についての新しい着想。表現の仕方がとても美しいです。ただ1回で理解するのは難しい本でした。
Posted by ブクログ
初めて著者の本を読みました。途中で私のイメージが追いつかなくて迷いながら読み進めました(訳者の補足のおかげで理解することができました)。白く静かな空間に著者の私的な感情が溢れていて、著者の姿になのか自分自身の何かになのか、はっきりと区別ができませんが胸を打つものがありました。著者の他の作品を読んだ後に、もう一度この本を読もうと思います。
Posted by ブクログ
すごく良かった。
序盤はなかなかその世界観についていけなくて、途中から物語として読むことを半ば諦め詩集として読んだ。
解説を読んでからもう一周、今度は物語的に読んでみた。
でもやっぱり言葉にとても感動した。
好きな章段がいっぱいあった。
いいタイミングで読めたと思う。
白く笑う
白く笑う、という表現は(おそらく)彼女の母国語だけにあるものだ。途方に暮れたように、寂しげに、こわれやすい清らかさをたたえて笑む顔。または、そのような笑み。
あなたは白く笑っていたね。
例えばこう書くなら、それは静かに耐えながら、笑っていようと努めていた誰かだ。
その人は白く笑ってた。
こう書くなら、(おそらく)それは自分の中の何かと訣別しようとして努めている誰かだ。
Posted by ブクログ
読後に皆さんの感想を眺めていくと文庫本の後書きがいいらしい。読みたいがハードカバーで読んだため無念、確認出来ない。
でも手に取った時にビックリしたのは、違う質の紙がいくつも混ざっていた事。文庫本もそうなのか?最初は何かの間違いなのかと思った。でもそんなはずはない。途中でハッとする。
そうか、
白いものたちの
だから同じ白でも違う白の紙を意図的に使ってるんだと気付く。
途中フォントが違う作品もあった。
静謐な雰囲気に細やかな仕掛け、モノクロ写真の挿入と本そのものが。全てが。白いものたちのだった。
詩のような散文のような。
訴えてくるテーマは重いけどそれが白というフィルターを通って透き通っていく感じ。
以前読んだ別れを告げないも冬が雪が非常に印象的だったが、この作品もやはり冬の季節と雪がとても印象的だ。雪国で地に足をしっかりつけて生きてきた人の言葉たちだと思う。
ノーベル賞受賞者の作品だからというのはどうしても重み付けがされてしまう。それでも私の中では印象に残る作品。
Posted by ブクログ
まるで詩集のような、散文といった方が良いのかな。これは小説なのか。
各セクションごとに余白のページが設けられ、その演出がより小説というよりは散文集の印象を与える。
透明感があり、静かな文章。白という言葉のためか、静かな冬の日を連想させる。余白は余韻のためにあるのかな。白い静寂な時間を堪能してから次へ進むような。映像的な文章。
最初は「私」という章で、作者の過去の記憶かと思わせる、産まれてすぐ亡くなった姉について。次章「彼女」はその姉についての文書と推測されるので、記憶ではなくて創作なのだと思う。姉の存在についてが事実なのかは不明。後書にもなかったと思う。
亡くなった姉が主軸としてあるので、静寂さはずっと寄り添う死に寄るものも大きい。一冊の中での具体的な死は三つ、姉、兄、犬。
最後は再び私が主人公。改めて生きていくわけだがあくまでも静かで、姉を心に、共に生きていくのだとわかる。
姉の死に囚われた一人の女性の物語。心の危うさのようなものを感じるのは私だけかな。
作者ハン・ガンの私小説なのであれば美しく昇華させていると思うし、全て創作ならば本当に上手いと思う。
韓国の小説に興味を抱いたことはなかったのだけど、素晴らしい作家がいるものだ。ノーベル文学賞、なるほど。
他の作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
初めは「詩集なのか?この一冊で作者は何を言いたいんだろう?」と理解できず読み進めていたが、読んでいくうちに“私”と“彼女”の存在を何となく認識し、またあとがきなどの文章で作品が描かれた経緯、意図が記されていて、なるほどと納得した。
文量はかなり少なく余白の多い作品なので、二週目三週目と読んで思うままに考え、感じたいと思う一冊だった。
Posted by ブクログ
読み終わった後、不思議な感覚だった。
解説に書いてある通り、形式は詩の様な、でも何となく物語の様な、読むというより歩くという表現がしっくりくるような。
なんだか、読んでる間ずっと静かさを感じることができた。
Posted by ブクログ
小説というよりは、小説とエッセイの間のような書き方で、文章が詩のような自由で優しい感じを受けました。
最初22歳の女性と25歳の男性の子がハン・ガンさんの姉だということがわからなく、そのまま読み進めてしまいました。あとになって姉だということに気づいて、衝撃を受けました。初めの方に書いてあった「おくるみ」の所がかわいそうという感情を持ちました。
ソウルからポーランド・ワルシャワに移り住む前と後で「白い」ものについて、いろいろと表現しておりました。「白い」といってもいろんな種類の「白」があるという事が書いてあってなるほどなぁ、て思いました。「「少年が来る」という小説を書き終えた後、しばらくどこかで休む」と書いてあって。改めて「少年が来る」という小説がいかに重要であるかということを思い知らされました。
全体的に面白かったです。
Posted by ブクログ
この物語は、生と死を「白いもの」によって表現している作品だと感じた。ここで描かれる白は、決して掴むことのできないもの、手に入らないものの象徴である。そこに確かに存在しているようで、実際には触れられない。あったのかもしれないし、なかったのかもしれない。目で見ているのか、それとも見えていないのかさえ判然としない。その曖昧さそのものが、この作品における「白」なのだと思う。
白は単独では強く主張しない。黒い目、木々の陰影、赤い血といった明確な色があるからこそ、白はかえって浮かび上がり、私たちはそれを「見る」あるいは「感じる」ことができる。白とは、何かが欠けている状態であり、周囲の色によってのみ、その存在が認識されるものなのではないだろうか。
白いものを追い求める行為は、『白鯨』のムービー・ディックを追うことと同じように、永遠の無——それは生であり、同時に死でもあるもの——を追いかけることに近しい。白を追い続ける者は、やがてその白に取り憑かれていく。この作品の中でも、すでに手に入らない姉の死、その息遣いの記憶、窓から溢れる光、壊された都市の風景が、白とともに描かれている。白は喪失そのものであり、同時に、喪失を感じ続けるための感覚でもある。
白いものを感じることで、人は生と死を同時に意識する。生きることも死ぬことも、人間が選び取れるものではない。ただ、生きているあいだに、そこにある色や気配を感じることしかできない。死とは、何かがある状態ではなく、何もない状態——白(無)が広がっているだけなのだと、この作品は静かに問いかけているように思えた。
Posted by ブクログ
邦題の付け方がいい(原題を直訳すると「白い」(ただし連体形活用)なのだそう)。
「小説」らしいが、1~数ページで終わる散文の束+途中に挟まれる写真(写真は、韓国語版とも英語版とも異なるものだそう)で、散文詩集のような体裁にも見える。私自身の読後感としては、文芸作品というよりも、言葉多めの現代アート作品の鑑賞に近いものを感じた。
Posted by ブクログ
純文学にハマるきっかけになりそう
今まで純文学の楽しみ方の一つの「文章の手触り」みたいな部分全く魅力を感じていなかったけど、この本読んで雰囲気を掴めた気がする。
プロローグの時点で、
「滴り落ちる時間のしずくの一滴一滴は、カミソリの刃で作った玉のよう」とか想像を掻き立てる文章だ思ったし、
寒くなって霜が降りてきたら「木々は葉を落として次第に軽くなる。石や建物などの固いものたちは、微妙に重くなったように見える」みたいな何となくわかるけどそんなこと思ったことなかったなみたいな感覚が楽しみ方なんだろうなと思えた。
まだ当然よくわかんねーみたいなとこが大半だったけど↑の感覚が得られただけで読んでよかったな
文章がかなり詩っぽくて小説感ないからうっとならず最後まで読めた気もする
たくさん読んだら味する文章な気がするからまた読むけど、カロリー使うのでしばらくは眠らせよう
Posted by ブクログ
邦訳ゆえ仕方ないが、基本的に平易な文体で記述されているので表現に関してはやや深みに欠ける印象。他方、訳者解説等が素晴らしく、そこを合わせての作品ではないか。
Posted by ブクログ
詩のような回顧録のような。
不思議な構成。
著者はとつとつと白いものについて綴る。
真っ白ではない。
もやのような。
グレーがかった…そんな白。
純粋や清らかさを表現した白ではなく、哀しみに包まれたような白。
冬のワルシャワ。
低く雲が垂れこめた世界は冷たい空気と静寂に包まれていて…。
著者は生後すぐに故郷で亡くなった姉に想いを馳せる。
若くして赤ん坊を亡くした彼女の母親にも。
それからこの地に残された大戦の爪痕からその哀しみに触れては言葉を紡ぐ。
それはまるで、白いものたちにさげる鎮魂歌のよう
タイトルのあとには、読者たちはどのような言葉を続けようとするのだろう
吟味されつくした訳文がとても美しく、余韻が半端ない
Posted by ブクログ
冒頭『白いものについて書こうと決めた。』から始まる。
おくるみ
うぶき
しお
ゆき
こおり
、
、
作者の日記のような内容。
それを自分から生まれてすぐに亡くなった姉が生きていたらと見立てて進んでいく。
私自身これまで馴染みのない作品だった。
確かに他の方のレビューにもある様に文章は美しかったが残念ながらグッとくるものがなかった。
初読みの作家さんというより韓国の方の作品は初めて。
そういう事もあり、これにめげず他の韓国文学も挑戦はしたい。
Posted by ブクログ
読んでいると自然と情景が目の前に広がり不思議と白いものたちが頭の中に浮かんでくる。
白いものたちの神聖さや寂しさが込み上げてくる文章の中で自分自身の壊れたものを積み上げ、死や生と向き合う時間になった。
Posted by ブクログ
短編集。いえ、もっと短い散文集?
「白いものたち」に対する作者のイメージが簡潔で詩的な文章で綴られています。
静かだけど思いは深い、そんな印象を受けました。
特に何度も繰り返される物語に、作者の思いの深さが表れている気がしました。