【感想・ネタバレ】すべての、白いものたちののレビュー

あらすじ

アジア初のブッカー国際賞作家による奇蹟の傑作が文庫化。おくるみ、産着、雪、骨、灰、白く笑う、米と飯……。朝鮮半島とワルシャワの街をつなぐ65の物語が捧げる、はかなくも偉大な命への祈り。

ノーベル文学賞受賞!

ハン・ガン作品、どれから読んだらいいかわからない……という方には、個人的には『すべての、白いものたちの』をお勧めしたいです。
詩のように淡く美しく、それでいて強く心をゆさぶる名作です
ーー岸本佐知子

生後すぐに亡くなった姉をめぐり、ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、朝鮮半島の記憶が交差する。
文庫化にあたり、訳者の斎藤真理子による「『すべての、白いものたちの』への補足」、平野啓一郎による解説「恢復と自己貸与」を収録。

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Posted by ブクログ

 こんな小説もあるんだなと思った。
しろいものを集めて、それを基調として、独自の静謐な世界を創り出すことに成功している。
 生死の交わるところに生があるということ。
 この小説の独自性は卓越していると感じたし、他のハン・ガン作品も読んでみたいと感じさせられた。
 韓国の作品を読むのは、少年の頃に読んだ「ネギを植えた人」以来だったが、文学性の高い素晴らしい作品だった。

 韓国では、死者に着せる装束を寿衣と呼ぶというのが、印象に残ったが、国語辞典を調べたら、普通に載っていた。スルメをアタリメというのと同じ発想なのだろうか。

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2026年08月10日

Posted by ブクログ

エッセイでありながら、まるで美しい詩のように読まれた。

個人的な記憶が異国の集団記憶と重なり、生と死、そして「いきること」への普遍的な思索へと広がっていく展開が素晴らしい。時折立ち戻って吟味したくなるような表現が、要所に宝石のように散りばめられている。ある日突然、世の中の喧騒から一歩離れて読みたくなる、そんな一冊だ。

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2026年07月22日

Posted by ブクログ

この蒸し暑い梅雨時期に読む感じじゃなかった、ずっと冬だった。
短編というより散文詩のような、白いものと亡き姉にまつわる短い物語が続きます。

原書がどんな感じかわからないけど、訳者の言葉の選び方にいろいろ想像が広がって流し読みできない感じ。じっくり読み返し。
平野啓一郎氏の解説を読んで、さらにまた読み返すことになりました。そういうことだったのかぁ。

冷たくてひたすら静かな雰囲気。図書室で借りたのですが、手元に持っていたくなりました。

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2026年07月18日

Posted by ブクログ

著者が亡き姉に思いを馳せ白いものを挙げていくお話

死者を悼み、静けさの中で白と向き合う
読んでいると美術館を歩いている気持ちになる

夏に韓国に行くからきっとまた読む

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2026年07月15日

Posted by ブクログ

白という色について、詩集のようにさまざま描かれています。韓国の本なのに、やたらと心にスッと入ってくる。また、読み返したい本です。

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2026年06月14日

Posted by ブクログ

すごいなぁ。なぜ白いものを説明しているだけなのに世界が地球を超えて宇宙に広がっていく感覚があるんだろう。ネットフリックスもSNSも何もいらないくらい世界は美しいものに溢れているしそれだけでエンタメ。そこに生きている私たちも不完全でも美しい。読書しているのに瞑想しているような感覚。これからもずっと読み返したい。

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2026年06月11日

Posted by ブクログ

出会ってしまいました!!

小説という枠組みを越え
詩のようであり、祈りのようでもある
息を呑むほどに美しく静謐な文学世界_

 

この世界に存在する「白」という
色彩のなかに潜む
儚さや生と死の記憶にそっと触れたとき…
胸の奥にひんやりとした
けれど不思議と温かい一筋の光が
差し込んできたような感覚を覚えました

あまりの美しさにしばらく言葉を失い
幾重にも寄せては返す余韻が広がりました

 

この作品が紡ぎ出すのは
世界に散らばる「白いもの」をめぐる
かつてないほど純度の高い言葉たち…

生まれてまもなく、たった数時間で
この世界から去ってしまったという
著者の「かつていたはずの姉」の存在や

その失われた命の記憶が
さまざまな「白いもの」の
肌触りや匂い、きらめきを通して
静かに優しくたぐり寄せられていきます…

 

まるで一編の長い詩を
五感で浴びているかのようで…

ハン・ガンさんの言葉は
傷ついた魂の最も柔らかい部分に
そっと指先で触れて
その悲しみや痛みを丁寧に
そして静かに洗い流してくれたように感じました

 

その装丁が象徴するように、この作品自体が
世界の不条理や痛みに傷ついたすべての人を
そっと包み込む「おくるみ」のようだと
感じました

生きることの切なさ…死が持つ厳かさ…
それらをこれほどまでに美しく
気高く描かれた文学に出会えたことに
ただただ深い感謝を捧げたいです!!

ざわついていた心がすーっと凪いでいくような
私にとって生涯忘れることのできない
大切な宝物のような作品になりました♡

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2026年06月07日

Posted by ブクログ

具体的な何かというより、言葉にしてない、できない感情を、少し心地よく震わせてくれる感覚をもらえる気がします。

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2026年04月27日

匿名

購入済み

美しい世界

白をテーマにして次々に繰り出される白い世界。
失ったものを抱えながら白い世界に吸い込まれていくような感覚。
何よりもこれが翻訳された作品とはまったく感じずに本の世界に入り込むことができました。

#切ない #エモい

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2025年11月12日

Posted by ブクログ

なんとなくわかるようでむずかしい、後書きがあったことで理解ができた部分もあり助かった。
読み終わりは確実に残る余韻に不安と安心がまざってざわりとするが、祈りによるものか、あたたかく血の通った希望みたいなものも私の中に置いていった。

うつくしいものほどこわい。
美術館に置かれたそれぞれの白い展示を次々に見て歩く、名残惜しいけど歩みを進める、そんな感覚でページを進め、すぐに読み終わった。
においや感触すらも伝わってくるような言葉選びと作者の柔らかでやさしい思考がつまっている。

自分がこの世に生きていること、そんな偶々の出来事、わかっていても生活に注目して見落としている祈りや問いかけ。
日々のあゝ苦しい、しんどい、そんなことを差し置いてただ輝かしくそこに在る、自分の生を実感することができると言うだけでも手元に迎えられてよかった一冊。

ただすべて、すべてのいのちが、今日はあたたかいふとんでねむってほしいとそんな気持ちにならざるを得なかった。

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2026年08月14日

Posted by ブクログ

一度目読んだときは物語なのか、詩の連作なのか混乱もありつつ、表現の美しさに、そして読み続ける中で、言葉で表現できない死と生の深みを文章に惹き込まれた。
作者のあとがきを読んで再読すると、物語として見える世界が確立され、それぞれの章での主人公での視覚で物語を味わえる。
いやはや深い。他の作品も読みたくなりました。

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2026年08月08日

Posted by ブクログ

白いものをめぐる短い文章の連なりが、生と死、喪失、祈りへと静かにつながっていく。はっきりとした物語ではないのに、一つひとつの言葉が胸の奥に沈み、読み終えてもしばらく余韻が消えなかった。多くを語らないからこそ、読む人自身の記憶や感情が入り込む余白がある。

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2026年07月29日

Posted by ブクログ

はっきりした言葉が書かれているわけではないけれど、読み始めから終わりまで、ずっと白い、冷たい、部屋の中にいる気持ちになる。
作者自身もずっとこのような気持ちだったのだろうか。自分が生まれなかったかもしれないとか、姉と比べてしまうこととか。
私は姉の立場なので余りピンとこないが、お姉ちゃんがいることが羨ましくもあったり(実際にいたのだから)、想像することもあるのかと思う。
22歳で一人で出産したと言っていた。私と同じような歳で、そんな壮絶な出来事を味わっていることに自分の弱さを感じる。私の悩みがちっぽけに思えた。息を吸って、吐いて、好きなことをして、本を読んで、人と話せること。それだけで十分生きていける。

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2026年07月06日

Posted by ブクログ

ハン・ガンさんの二冊目。
まず、タイトルに惹きつけられた。
真っ白な「ハヤン」でなく、生と死の寂しさをたたえた白い色「ヒン」の物語。散文詩の研ぎ澄まされた言葉の中に著者の痛みを感じた。

1 私
2 彼女
3 すべての、白いものたちの

おくるみ、産着、タルトック、霧・・と白いものたちの65の短編が綴られる。

「産着」は哀しみと痛みを感じる一編。
人里離れた官舎に住んでいた父と母。
たった一人で赤ん坊を産んだ母の「しなないで しなないでおねがい。」悲痛な叫びが聞こえてきた。

選び抜かれた言葉で情景が紡がれる。
たとえば「波」の一編。
遠くから走ってくる冬の海が迫り、高くそそり立った瞬間に真っ白に砕け散る波の様子がありありと見えた。
「はるかな海の静かな海流は無数の魚たちの鱗のよう。数千、数万もの波頭が輝きひらめき、身を翻す」…やはり詩人だと思う。

主人公の私の生を、彼女(生まれて2時間で亡くなった姉)に託す二章では、歩んだであろう彼女の人生が綴られていく。

小説の中の母の叫びで、映画『光州5・18』を思い出した。
最後に結婚式の集合写真が徐々に白黒となり消えていくシーン。「死なないで」「私たちを忘れないで」の声が今も耳から離れない。この小説の写真もすべて白黒で、読むうちに彼女がこれを書きたかった思いに触れた気がした。
斎藤真理子さんの素晴らしい訳で、この本を読めたことにも感謝したい。

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2026年06月06日

Posted by ブクログ

著者の生に関する人々。両親、姉、弟、自身との関係について。生後すぐに亡くなった姉についての物語が描かれています。姉が生まれたときの両親、その死に対しての両親。異国の地を歩きながら、姉がその地で生きた場合について思いを巡らせ、そして姉が生きていたら自分は生まれていなかっただろう不思議ともいえる確率について考え、読者もまた考えさせられるものがあります。それらを考えるのに、白いものにまつわる話から、一つ一つの話を結びつけていって、その独特の解へと辿り着くようになっています。エッセイのようにバラバラに感じる文章になっているので取っ付きにくいのかと読み始めると、ちゃんと全てがつながっていて、そしてそれぞれの伏線がちゃんと丁寧に回収されていって、この表現難しい感覚を読者と共有できるようになっています。気持ちや想いや感傷などを伝える方法に、こんなやり方があったのかと驚かされるものがありました。

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2026年05月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2026/04/16 - 2026/04/17

柔らかな綿でキュッと心を締め付けられるような苦しさと、まだ誰も踏み入れていない新雪のような静謐さがずっと交互にやってきて、ページを進める手を止めることができなかった。

ハン・ガンの本はこれが初めてで、正直、このご時世にノーベル賞を獲った人が女性であり、アジア人であった、ということが読むきっかけだった。受賞で話題になった際に、すぐに購入したが、「韓国文学について知ってからのほうがいい」などの情報が多く、勝手に億劫になり、今まで読んでいなかった。

しかし、読んでみたら、私にはとてもすんなり、まるで水が染み込むように心の中に文章や物語が溶けていった。
特に、二章の「もしも」は私にとって違和感や不明瞭がなく「ああ、あなたはお姉さんなのね」と理解できた。

ハン・ガンの繊細でやさしい文章は、世界の残酷さと、それでも美しく愛おしいということを読者に自覚させてくれる。生を自分ごとにしてくれる、そんな文章である。

p103-l8
ある記憶は決して、時間によって損なわれることがない。苦痛もそうだ。苦痛がすべてを染め上げて何もかも損なってしまうというのは、ほんとうではない。

この文章もそうだ。ハッとさせられるほどの現実の苦しさと、それでいてその中に確かに光る何かを教えてくれる。
最後の章は、涙を流しながら読むことになった。
別の本のあとがきで翻訳者の斎藤が、彼女の作品を「陽だまりとと血だまり」と書き記していたが、私がこの本で感じた苦しみと希望は、この表現にとても近い。
著者の他の作品も読んでみたいと思った。

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2026年04月27日

Posted by ブクログ

ハン・ガン『すべての、白いものたちの』(斎藤真理子訳、河出文庫)読書ノート

2024年ノーベル文学賞受賞作。韓国人として、アジアの女性作家としても初めての受賞である。

書誌と構成
原題『흰』(2016年)。65の短い断章。三部構成。
「1 私」
「2 彼女」
「3 すべての、白いものたちの」
いものの目録から始まる。おくるみ、うぶぎ、しお、ゆき、こおり、つき、こめ、なみ、はくもくれん、しろいとり、しろくわらう、はくし、しろいいぬ、はくはつ、寿衣。誕生から死までの弧を、白いものでなぞっている。

語り手は破壊と再建を繰り返した街(ワルシャワを思わせる)に滞在する。母が22歳のとき一人で産んだ最初の子は、早産で二時間しか生きられなかった。タルトックのように色白の女の子だった。その姉が生きていたら、自分はこの世に生まれていなかった。「私」は自分の生を姉に貸し与える形で、この本を書く。


感想
Audibleとは相性がよくなかった。最初に聴いたときは、いくつかのエピソードのつながりがつかめず、もう一度聞き直した。断片が独立していて、音だけで追うと途切れやすい。
それでも一回目から印象に残ったのが、「私は姉が欲しかった」の項だった。そこから全体がつながった。会ったことのない姉への、はっきりした欲求が、白いものの羅列を一つの祈りの方向へ向けた。あの箇所がなければ、ただ美しい断章の連なりで終わっていたかもしれない。

印象
自分の感受性を試されるようで、書きにくい本である。言葉は静かで凝縮されていて、白いものの質感は確かに残る。雪、塩、米、骨、霧、白い笑い。それぞれが短いながら独立した美しさを持っている。
しかし、ノーベル賞を取るほど感動できたかと問われれば、微妙だ。詩的な完成度は認める。生と死のあわい、白の両義性(純粋さと喪、誕生と残骸)、破壊された都市と一度死んだ命の重ね方は、よく考えられている。それでも、胸の奥まで揺さぶられるというより、距離を置いて眺める感覚のほうが強かった。

ハン・ガンの他の作品が持つ、身体の痛みや歴史の重さに比べると、こちらはより内向的で、個人的な層に降りている。それが美しくも、やや閉じている印象を与える。再聴してつながったあとでも、その感じは残った。

読む(聴く)こと自体が、傷にガーゼを当てるような作業になる本だとは思う。ただ、自分にとっては、その作業が十分に自分のものになったとは言い切れない。

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2026年08月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まず著者名が良い。これだけで半分勝利したようなもの。アンマン、ガンマン、「ハン・ガン」。完璧な4文字。漢字も「韓江」で象徴的だ。更にノーベル文学賞受賞――もはや読まずとも名作。次にあえて読点で区切った意味深長なタイトル。これで興味を惹かないわけがない。駄目押しの神秘的かつ微妙に慈愛を醸し出している表紙は、目にした時点でうっすら感動するだろう。でも「ノーベル賞受賞」の帯は最高にダサい。せっかくのオーラを打ち消している。

詩のようで日記のようで私小説でありそれら全てを成す、流麗で無駄のない文章は惹き込まれる。
しかしある種のコンセプトが見えてくると、少しつまづく。
中途半端に意図が解るために、説得力が弱まってしまった。
これは曖昧なままの方が面白かった。
ともかく全体としては「響く」「打つ」というより、ゆっくり滲透するような文章が良い。
内容を一言でいうならピース(peace)ということだろう。

生命の尊さみたいなことは感じられるが、所詮白さを失った便所の壁の落書きな自分には理解不可能な私的領域の話ではある。
二章の「彼女」は、あるはずだった姉の生を、作者の生と同化させ姉目線でシュミレートしていると読んでいたが、どうやら誤読で姉が語り手となり、作者の人生を見守っている叙述であるらしい。
なんにせよそれは脳内で作り上げた架空の人物を下敷きにした妄想にすぎず、結局、どこまでも作者の腹話術、イタコ芸なのでは?という疑惑がある。

一度も会ったことの無い死者の気持ちなど解るはずもなく、逆に会ったことがある場合で考えても、尚更白いものではない。
その個性を白いものとするのは傲慢と偏見ではないか。
勿論相手の立場で考えることは重要なのだが、この場合は対象を想像している自分自身の声、意識の焦点が結ぶ像なのだ。
だからその意識的な感情の操作――強引な喪失感の生成疑惑と、それを使って感傷に浸る自分に酔いしれているような感じは作為的で若干鼻につくが、そこで「白いものとは何か?」という思考のあることが重要になる。

様々なモチーフから、生と死、破壊と再生、無垢、純粋、鎮魂、願い、一瞬の儚さ、永遠などのメタファーみたいなのはなんとなく、わかるのだが、これはワルシャワで見た映画のあらすじが象徴しているが、最も強く連想するのは、二度と戻らないもの、戻れない地点、失われた生命や瞬間であると思う。

誰しも最初は白いものとして誕生する。
しかし、この社会で生きていると絶え間なく人を傷付け、傷付けられる。
むしろ汚し汚されることは一般的で、あげく推奨されている。それが無理な者は退場になるほどだ。
そうして白いカンバスは、無残なことに〈やりすぎたジャクソン・ポロック〉のようになってしまうだろう。
だから白さを取り戻すべく、白いものについて考える。しかし儚く消えた生命の白さが、自己の存在を上書きし肯定してくれるとは思えない。

本作のコンセプトにある欺瞞は原作者亡き後に作られ続ける、形骸化した長期引き伸ばし作品などにも通じている。
意思を継いでいる、生きていれば褒めてくれるはずだ、こう考えるだろうと言っても、それは偽物作りの正当化であり、外野が儲けるためにやりたい放題やっている、という構図しかない。またそれを評価する者も外野である。
時を止めたものはそこで終わるしかなく、それを無理矢理に動かすというのは傲慢であり冒涜なのだ。
白いものを塗りつぶす。それが本来不可逆であるはずの、歴史というものの性質なのかもしれないが。

白いものは届かない時間の中で、白いままそこにあるから、貴重なのであって、姉や死者の白さは継承されない。失われた白さは戻らない。
人は他人で、それぞれ生き方があり、それは肉親さえもそうで、姉にも姉の人生が本来あったはずだ。
だからコンセプト的には、作者のイタコ芸になってしまうが、それと分かつ着想が「白いもの」なのだろう。
実用的なイタコ芸に「白いもの」は無駄な部分だ。しかしこの無駄なことを考える、その無意味さが意味を持つ。

到達できない座標の確認で、今居る座標が確かなものになる。
自己の足場(自意識と言って良いか)が安定することで、他の存在を認めることができる。その想像力が人を謙虚にさせ、他者へのリスペクトに繋がる。
そうやって世界はいくらか平和に近づく。
まあそう上手くは行かないだろうが、レイ・ブラッドベリが『華氏451度』で言う余暇とはそういうことではないのか。
思考の余白、その白を埋めないことの可能性。
本作品はある意味、アンチ情報供給過剰社会みたいな内容だ。
そこでは、自分に直接関係の無い情報にひたすら反応している。それは「白いもの」への思索と同様に実際的な意味では無駄といえる。
しかしその「無駄」の中身は大きく違う。
自分と関係する、しかし絶対に手の届かない領域への思い。
それは与えられた信仰ではない。自己の存在確認作業による一つの発見、創造だ。
最終的に「白いもの」は作者と別れ天に昇って行くのだろう。

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2026年08月16日

Posted by ブクログ

読み終わった後の訳者の解説で読み方がわかった
また再読したら大分印象が変わると思う

ここまで抽象的に感じる小説ははじめて
文章が綺麗だなと思った、けど、綺麗を感じる文章が原文で読めないのはすこしもどかしかった
ネイティブじゃないと本当の綺麗さはわからないから難しいけども

「もう少し経ったら、残りの部分も完全に透き通ってしまうだろう。翼はもはや翼ではないものになり、蝶はもはや蝶でないものになるだろう。」

「産着が寿衣になった。おくるみがひつぎになった。」

アジア初のブッカー国際賞作家による奇蹟の傑作が文庫化。おくるみ、産着、雪、骨、灰、白く笑う、米と飯……。朝鮮半島とワルシャワの街をつなぐ65の物語が捧げる、はかなくも偉大な命への祈り。

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2026年08月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まっしろな「ハヤン」ではなく生と死の寂しさをたたえる「ヒン」を題材として、生後2時間で亡くなった姉の死と私の生について描かれた本。
あとがきを読むまでわからなかった。第2章に出てきた「彼女」は、第1章にでてきた「私」の生を受けて歩いている姉の姿だと。

感性が研ぎ澄まされないと理解しにくく、殺伐とした通勤電車の中で読むには難しい本。それでもソウルやワルシャワの街の風景や生活が綺麗だと思った。

詩のような

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2026年08月02日

Posted by ブクログ

2026/45
「白」のお話
おくるみの話が生命を感じられて好き
私は2月生まれなので、生まれた時の季節を感じられるのも良い
あなたは大切な人であり、あなたは清潔な眠りに守られるべきで、あなたが生きてることは恥ではない(p85)
「흰(ヒン)」ってなんだろう?と思ったけど、生と死の寂しさの色について書いていたのね
余白が印象的で、無音の中で読みたくなる作品でした

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2026年07月27日

Posted by ブクログ

エッセイのように感じた
ずっと冷たい冬の中の世界
亡くなったひとへの記憶と白いものたちへの繋がり
こういうのってずっと記憶に残るんだろうな
ハン・ガンさん初めて読んだけど言葉選びが好きだった(訳によるのかもだけれど)

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2026年07月18日

Posted by ブクログ

生と死にまつわる白く冷たい断片が、静かに配置されている。上手くは言えないが、美しく私的で内省的な一冊。audible。

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2026年07月10日

Posted by ブクログ

色々な白いものについて集めたエッセイというか、詩というか…。とても静かで、きれいで、厳かな言葉たち。生まれてすぐに死んでしまった姉のことがこの人の中ではとても大きな影響があったのだろうなと思う。

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2026年07月08日

Posted by ブクログ

すべてを知らなくても、知ろうとしなくても、僕らは想像することができるから、見ただけではわからないことも、何かしらの手がかりをもとに、ほんのすこしでも想い描くことができたなら、他人行儀な目の前の光景だって、きっとこの手の中に包み込んでみたくなるような、主体性を持った“僕の世界”になるのだろう。

手ごたえや確信がなくても、たとえば一日中、雨音が止まなくても、いずれ雨雲の端が現れて、何事もなかったかのような空が顔を出すだろう。憂鬱な雨降りの最中にも、空の色を想像してみたら、ほんのすこしでも軽い気持ちがしてきそうな、そんな気にもなるかもしれない。気持ちが変われば、何かがもっと、変わるかもしれない。

僕らは、そんなふうにして、生きることや、世界との関わりを見つめることができる。逃げたいときには逃げるだろうし、直視できない物事だって、見て見ぬふりして上手いこと避けることだって、できるようになってゆく。

重さや軽さを語り出したら、きりがないかもしれないけれど、それぞれ大事なものは、内に秘めてる。そんなことすら、想像を介して理解の助けになるだろう。

白いものには、白いものなりのグラデーションがあるのだろう。白は、ただ白いだけじゃないのだから。白色にもいろんな“白”があって、そんな“白”の存在も、知らないよりは、知っていたほうがいいかもしれない。

せっかく覗き込んだ世界なのだから。

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2026年06月21日

Posted by ブクログ

感性が芸術すぎて言葉が頭に入ってこず、Audibleで読み聞かせしてもらいながらページを目で追った
悲しかったかも
結構悲しかったかも
悲しい話が頭に入ってこないのかも、わたし、現実逃避民だから

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2026年06月14日

Posted by ブクログ

小説?詩?エッセイ?
ジャンルがよくわからないけど、ストーリーよりも詩的な美しい言葉を噛み締めるような特別感があった。
でも詩のようなわかりにくさがあるので、好みはわかれそう。
私は内容的にはあまりピンと来なくて、audibleで2回聴き直したけど、やっぱり内容は響かなかった。
だけど言葉の心地よさは感じられる不思議な本。

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2026年06月14日

Posted by ブクログ

「白」をテーマにさまざまなシーンを描いている、そう、絵を見てるよう。そこでは空気が凛として澄み切り少しだけ寒さも感じる。

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2026年05月23日

Posted by ブクログ

難解だった。興味が続かず、最後までもはや義務感で読み切った。多分原語でよめば感動や理解度が全く異なるかもしれない。

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2026年05月07日

Posted by ブクログ

まだ成熟しききっていない韓国文学で、「韓国人」アイデンティティを萌芽させた第一人者として著者がいるのかもしれない。だからノーベル賞を受賞したのかなと思ったり、、まだこの作品しか読んでないから分かんないけど^_^

正直、他ノーベル受賞者の作品を読んだときのような世界観の壮大さや思想哲学に触れた感覚は受けない。けれど古代から中国という大国の影響を受け続け、日本に支配され、k-popで世界に繰り出す歴史を歩む、まさに「これから」を創り上げている国に生まれた作家なのだという印象。(ちなみに作品内容は全く関係ない)

急遽いくことになった韓国旅行で、ずっと読みたかったハンガンデビューできて嬉しかったなー
文庫本が良かったからこれにしたけど、次は菜食主義者を読みたい。私も一冊読んだだけで作者のこと語っちゃ駄目だね♪

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2026年05月05日

Posted by ブクログ

ハン・ガンさんの本を初めて読んだ。
解説を読んでもまだちょっとよくわからなかった。
他の本も読んでから、また読んで理解したい。

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2026年04月26日

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