作品一覧

  • 私の女の実

    私の女の実

    小説・文芸

    3.8
    1巻2,376円 (税込)
    ノーベル文学賞受賞作家が二十代後半に発表した短篇小説集 解説:桜庭一樹 ノーベル文学賞作家ハン・ガンの初期から近年に至るまで、未邦訳の小説を斎藤真理子個人訳で贈る《ハン・ガン コレクション》第1巻。 『菜食主義者』の前身である表題作をはじめ、変化していく社会の中で個人が抱える闇と傷を凝視した、生命力みなぎる初期の短篇8篇。 「私の女の実」:高層マンションの13階に妻と暮らす夫は、妻の体に痣があることに気づく。結婚後4年に及ぶ生活の中で妻が心を削られてきたからなのだが、夫はそのことに気づかず、妻はしだいに言葉を失っていった。ある日、ベランダに出ていた妻の体の一部が植物になっているのを見つけた夫は、大きな植木鉢を買ってきて妻を植えるが… 「日暮れ時に犬たちはどんな気持ちだろう」:貧困と父親の暴力に耐えかねて母親は出て行き、酒飲みの父と暮らすことになった少女テリョン。学校に行くこともできない少女は空腹を抱えつつ、母との思い出を拠り所に、父や周囲のことにじっと目を凝らす。 「赤ちゃん仏」:人気のニュースキャスターで完璧主義者の夫と暮らすイラストレーターの「私」は、普段から化粧もしない地味な女性。だが、自分だけが知る夫の秘密がある。彼の体には子供の頃に負ったやけどの跡が全身にひろがっている… 「ある日彼は」:体一つで上京した彼は、新聞・雑誌社に本を配達する仕事をしている。ソウルの埃と煤煙がひどいため、彼は配達中に何度も顔を洗う。冬のある日、ミンファと出会ったのも顔を洗った直後だった。彼から本を受け取るとき、ミンファは悲鳴をあげた。彼の頬が裂けて血が出ていたのだ。再度配達に行った際、ミンファに「横顔、すてきですね」と言われた彼は彼女をデートに誘う… 【目次】 日本の読者の皆さまへ  ハン・ガン 私の女の実 日暮れ時に犬たちはどんな気持ちだろう 赤ちゃん仏 ある日彼は 赤い花の中で 九つの物語 白い花 線路を流れる川 あとがき ハン・ガン 解説 声なき人の代わりに 桜庭一樹 訳者あとがき 斎藤真理子
  • 光と糸

    光と糸

    小説・文芸

    4.1
    1巻2,200円 (税込)
    世界は、なぜこれほど暴力的で、同時に、なぜこれほど美しいのか? 著者自身が構成を編み上げた、ノーベル文学賞受賞後初の作品がついに刊行。光へ向かう生命の力への大いなる祈り。 「最初から最後まで光のある本にしたかった」 ――ハン・ガン 「人間性の陽溜まりと血溜まりと。その二つが常に隣り合っていて、どちらかへ行こうとしたらもう一つも絶対に通らなくてはいけない。ハン・ガンの小説にはそんなところがある」 ――斎藤真理子 ノーベル文学賞受賞記念講演「光と糸」全文、創作についてのエッセイ、5編の詩、光を求めて枝葉を伸ばす植物をめぐる庭の日記、そして著者自身による写真を、著者自らが編んだ、ハン・ガン自身によるハン・ガン。 過去が現在を助けることはできるか? 死者が生者を救うことはできるのか? ――本文より ***** 目 次 光と糸 いちばん暗い夜にも 本が出たあと 小さな茶碗 コートと私 北向きの部屋 (苦痛に関する瞑想) 声(たち) とても小さな雪のひとひら 北向きの庭 庭の日記 もっと生き抜いたあとで 訳者あとがき *****
  • 回復する人間

    回復する人間

    小説・文芸

    4.3
    1巻2,376円 (税込)
    ノーベル文学賞受賞作家による珠玉の短篇集 大切な人の死や自らの病、家族との不和など、痛みを抱え絶望の淵でうずくまる人間が一筋の光を見出し、ふたたび静かに歩みだす姿を描く。 『菜食主義者』でアジア人初のマン・ブッカー国際賞を受賞し、『すべての、白いものたちの』も同賞の最終候補になった韓国の作家ハン・ガン。本書は、作家が32歳から42歳という脂の乗った時期に発表された7篇を収録した、日本では初の短篇集。 「明るくなる前に」:かつて職場の先輩だったウニ姉さんは弟の死をきっかけに放浪の人になる。そんな彼女を案じていた私に3年前、思わぬ病が見つかる。1年ぶりに再会した彼女が、インドで見たというある光景を話してくれたとき、小説家の私の心は揺さぶられる――ウニ姉さんみたいな女性を書きたい、と。 「回復する人間」:あなたの左右の踝の骨の下には穴があいている。お灸で負った火傷が細菌感染を起こしたのだ。そもそもの発端は姉の葬儀で足をくじいたことだった。ずっと疎遠だった姉は1週間前に死んだ。あなたは自分に問いかける。どこで何を間違えたんだろう。2人のうちどちらが冷たい人間だったのか。 大切な人の死や自らの病気、家族との不和など、痛みを抱え絶望の淵でうずくまる人間が一筋の光を見出し、再び静かに歩み出す姿を描く。現代韓国屈指の作家による、魂を震わす7つの物語。 [目次] 明るくなる前に 回復する人間 エウロパ フンザ 青い石 左手 火とかげ
  • 別れを告げない

    別れを告げない

    小説・文芸

    4.1
    1巻2,475円 (税込)
    ノーベル文学賞受賞作家の最新長篇! 作家のキョンハは、虐殺に関する小説を執筆中に、何かを暗示するような悪夢を見るようになる。ドキュメンタリー映画作家だった友人のインソンに相談し、短編映画の制作を約束した。 済州島出身のインソンは10代の頃、毎晩悪夢にうなされる母の姿に憎しみを募らせたが、済州島4・3事件を生き延びた事実を母から聞き、憎しみは消えていった。後にインソンは島を出て働くが、認知症が進む母の介護のため島に戻り、看病の末に看取った。キョンハと映画制作の約束をしたのは葬儀の時だ。それから4年が過ぎても制作は進まず、私生活では家族や職を失い、遺書も書いていたキョンハのもとへ、インソンから「すぐ来て」とメールが届く。病院で激痛に耐えて治療を受けていたインソンはキョンハに、済州島の家に行って鳥を助けてと頼む。大雪の中、辿りついた家に幻のように現れたインソン。キョンハは彼女が4年間ここで何をしていたかを知る。インソンの母が命ある限り追い求めた真実への情熱も…… いま生きる力を取り戻そうとする女性同士が、歴史に埋もれた人々の激烈な記憶と痛みを受け止め、未来へつなぐ再生の物語。フランスのメディシス賞、エミール・ギメ アジア文学賞受賞作。
  • ギリシャ語の時間

    ギリシャ語の時間

    小説・文芸

    3.8
    1巻1,980円 (税込)
    ある日突然言葉を話せなくなった女。 すこしずつ視力を失っていく男。 女は失われた言葉を取り戻すため 古典ギリシャ語を習い始める。 ギリシャ語講師の男は 彼女の ”沈黙” に関心をよせていく。 ふたりの出会いと対話を通じて、 人間が失った本質とは何かを問いかける。 ★『菜食主義者』でアジア人作家として初めて英国のブッカー国際賞を受賞したハン・ガンの長編小説 ★「この本は、生きていくということに対する、私の最も明るい答え」――ハン・ガン
  • すべての、白いものたちの

    すべての、白いものたちの

    小説・文芸

    3.8
    1巻935円 (税込)
    アジア初のブッカー国際賞作家による奇蹟の傑作が文庫化。おくるみ、産着、雪、骨、灰、白く笑う、米と飯……。朝鮮半島とワルシャワの街をつなぐ65の物語が捧げる、はかなくも偉大な命への祈り。 ノーベル文学賞受賞! ハン・ガン作品、どれから読んだらいいかわからない……という方には、個人的には『すべての、白いものたちの』をお勧めしたいです。 詩のように淡く美しく、それでいて強く心をゆさぶる名作です ーー岸本佐知子 生後すぐに亡くなった姉をめぐり、ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、朝鮮半島の記憶が交差する。 文庫化にあたり、訳者の斎藤真理子による「『すべての、白いものたちの』への補足」、平野啓一郎による解説「恢復と自己貸与」を収録。

ユーザーレビュー

  • 私の女の実

    Posted by ブクログ

    さみしさが、読むほどに募る。
    吐き出すことのできない、行き場のないさみしさ。
    いっそあなたには、鳥になりたいと、遠くへ飛んでゆきたいと願ってくれと思う。

    だがあなたは立ち去ることを選ばずに、静かに閉じてゆく。
    その眼差しは自らの内へ、選んだことと選べなかったことの境目へと向けられる。
    残されるのは沈黙だけだ。

    ままならぬ、と独りごちる。
    母親との関係、夫との関係、冷たい都市に満ちる閉塞感だけではない。
    自分自身の心が、自分にとってままならない。

    それでも、今ここにあるのは閉じ切った哀しみではない。
    彼女たちの頑なさの内側に秘められたしなやかさ、自らを見つめる眼差しの確かさは、かりそめの地に根を下ろしながらも遠い光へ向かって枝葉を伸ばす若木なのだ。
    暗闇と光へーその両方に向かって、身体を引き裂くようにして伸びてゆく。

    本書は、遠く離れた地でそれぞれの孤独に生きるものにとって、密やかに、だが確かにつながっている、同じ時代を生きていると感じさせてくれる。
    僕らは孤独な木ではない。
    たとえ、言葉にする術を持たずとも、ささやかな葉ずれはきっと、あなたに、僕に届く。

    ーーー
    “木々が見ている方向はいつも、陽のあたる方だ。運動場のあの木は明るい場所で育ったおかげで円く堂々と枝を伸ばしたが、日陰に立つ木々の枝は例外なく切実に曲がっている。ある木は光の中で生まれ、ある木は日陰で生まれるのか。
    だがいずれにしても、その葉は等しく青く輝く。
    その葉は日差しに向かってまっすぐに伸びていく。“
    ー「赤い花の中で」より

    0
    2026年10月03日
  • すべての、白いものたちの

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    後書きを読むと、2回読むことになる。
    1回目と2回目でうまく言い表せないけど何かが違う
    いつか歳を取ったらまた読む気がする。

    0
    2026年09月21日
  • すべての、白いものたちの

    Posted by ブクログ

    幼少の時のイノセントな記憶と呼応する。なぜここまでに共振するんだろう。この小説を読んで思い出す人がいる。心の奥、雪がしんと降る窓の奥で背を向けて。この窓ではない奥の窓を見つめている。

    0
    2026年09月11日
  • すべての、白いものたちの

    Posted by ブクログ

    恥ずかしながら、ご本人のあとがきを読んでからやっと本書全体の世界が理解できた。これを日本語訳した斎藤真理子氏の手腕にも脱帽。

    0
    2026年09月03日
  • 光と糸

    Posted by ブクログ

    「世界はは何故これほど暴力的で苦痛に満ちている?それと同時に、何故世界はこれほど美しいのか?」や、人間が内包する暴力性と愛のような真逆の二面性について考え続けているところが忍耐強くてすごい人だと思う。私は人間の醜い部分に絶望して己が同じ人間という生き物である事実に疲れてしまい、考えることを放棄しているから。
    考え続けた人の何かしらの結晶として生み出された作品はこんな形をしているのかと、過去に読んだ物語たちを想った。

    ハン・ガンが二十代の頃に思い浮かべていた2つの問いに胸を突かれた。
    「現在が過去を助けることはできるか?生者が死者を救うことはできるのか?」
    助けるや救うの定義が曖昧だが、直感で「できない」と瞬時に思った。過去は変えられないし死者はもういない。事実に報いる努力はできても、それは助けること救うことにはならないという諦めが私の中にはある。これはもはや私の価値観のようになりつつあって、だからハン・ガンの問いかけそのものがその価値観をひっくり返すような、こんなふうに真剣に切実に考える人がいるんだと衝撃だった。
    以前『少年が来る』を読んだ時、めちゃくちゃ泣いた。トンホを助けてあげたかった。彼に生きていて欲しかった。トンホを含めた過去の悲惨な出来事の犠牲者について思いを馳せてさらに胸が痛かった。死んでしまった人たち、過ぎ去ってしまった時間はあんまりにも遠くて膨大で、無力感に押しつぶされる。しかしハン・ガンのこの問いかけは、助けたかったどうにかしたかったと叫んで過去に伸ばしかけたものの諦めから引っ込めてしまった私の手を握ってくれているような気がする。もしくは私が諦めて手を伸ばせなかったところに、ずっと手を伸ばし続けている人の幻想が見える。

    『別れを告げない』がまだ読めていない。途中で止まってしまっている。近いうちに最後まで読み切りたいと思う。

    0
    2026年09月03日

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