ハン・ガンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ノーベル文学賞を受賞した筆者の本の中で読みやすそうだったため、購入しました。この本の中では、当時22歳だったお母さんが家でいきなり破水し、連絡しようにも村に1台しかない電話があるお店まで歩いて20分もあるため、筆者のお姉さんになる方を一人で産んだが、2時間後に亡くなったというくだりが印象に残っています。お母さんは「しなないでおねがい。かぼそい声で泣く手のひらほどの赤ん坊を抱いて、何度となくそうささやきかけた。」とあります。私も生きていて欲しかったと思っています。(22P)
この本はどのページも文章が透明感に溢れています。スッキリとした気持ちになりたい方にお薦めします。 -
Posted by ブクログ
過去が現在を助けることはできるか?
死者が生者を救うことはできるのか?(P19)
『光と糸』ハン・ガン
ハン・ガンさんの紡ぐ言葉は、
心を捻じ切られるような痛みに満ちていながら、
なぜか最後には、すべてが包み込まれるような静けさを残す。
暴力と涙が当たり前のように繰り返されるこの世界で、
彼女の描く世界だけは、どこまでも白く、静謐だ。
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国があり、人種があり、過去と未来がある。
そこには必ず境界が生まれ、諍いが生まれ、
そして虐殺が繰り返されてきた。
けれど本書を読んでいると、
「言葉」と「知ること」が、
その境界線を静かに滲ませていくように感じられる。
断絶の向こう側に、 -
Posted by ブクログ
色褪せて錆びた傷だらけの白いドア、塗り
重ねた白いペンキ、しんしんと降る雪。雪の
ように真っ白なおくるみ、白いきれで縫われ
た産着、タルトックのように真っ白な赤ん坊。
「私」は、「白いもの」について書くことだ
けを決めて、祖国から遠く離れた都市に滞在
する。理解できない言葉が飛び交う街で、孤
独が深まるにつれて思いもよらない記憶が生
々しく蘇り、自らの内面へと逃げ込んでいく。
私が踏みしめているその街は、七十年前に
作り直された街だった。ナチスによって完璧
に破壊され、瓦礫の砂に包まれた白い街に、
二時間だけ生きた姉の姿を重ねる。夜明けの
霧の中で、姉である「彼女」に私の生を差し
出し、 -
Posted by ブクログ
ハン・ガンさん初読み。
まず、形式を形容しがたい作品だなと感じた。
それと同時に、そんなものは、ここに記された言葉を受け取るのに必要ないものだとも思った。
圧倒されながら、感想をうまく表現できないのは初めての経験だった。
心の深い奥底を覗いていたら、すぐ隣にある光と影の揺らめきに、はたと気付かされるような気持ち。
白いものにまつわる記憶。
自分なら何が思い浮かぶだろうか。
一度読んだ程度では咀嚼しきれない。
少し間を開けてまた読み返したいと思う一冊だった。
巻末の「作家の言葉」、訳者の補足、平野啓一郎さんの解説は、どれも読後の散らかった頭の中をまとめるのに役立った。