ハン・ガンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレひとひらの雪片が地に降りる前に雨となり、泥濘みを生じる。
雪の美しさは、-イデアは、雨や泥濘みとなって失われたのか?
この問いへの答えとして、僕らは自ずと円環の摂理を見いだすだろう。
絶対的な美や善、光と理想だけで作られた世界と、理想の影にすぎない現実の世界、というプラトンが説くような二元論とは違う、東洋的な感覚。それは韓国でも日本でも同じく、なじみ深い感覚なのだろう。
消滅と薄暮の中にある世界。それは絶望でも欠落でもなく、儚くともあるがままの生だ。
人生は理想に向かって前に進む訳ではない。ひとときの煌めきと、繰り返す苦しみの連続だ。
だがそれは何度でも新しく生まれる世界とも言えるだろう。
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Posted by ブクログ
原著は2021年発行。日本語訳は白水社から2024年4月に刊行。架蔵本は2025年12月刊の第17刷。訳者は斎藤真理子。
偏頭痛と胃痙攣に苦しみ、自らの遺書を書くために生きていると感じていた作家・キョンハのもとに、しばらく連絡を取り合っていなかった友人・インソンからの連絡が届く。故郷の済州島で小さな木工所を営んでいた彼女は、作業中に誤って2本の指を切断、何とか接合手術には成功したが、入院中は3分に一度、神経を殺さないため、接合した指を腐らさないために指を針で刺し続ける必要がある。彼女を見舞ったキョンハは、インソンのたっての頼みで、彼女が家に残してきた小さなインコ「アマ」が生きているかを確 -
Posted by ブクログ
出会ってしまいました!!
小説という枠組みを越え
詩のようであり、祈りのようでもある
息を呑むほどに美しく静謐な文学世界_
この世界に存在する「白」という
色彩のなかに潜む
儚さや生と死の記憶にそっと触れたとき…
胸の奥にひんやりとした
けれど不思議と温かい一筋の光が
差し込んできたような感覚を覚えました
あまりの美しさにしばらく言葉を失い
幾重にも寄せては返す余韻が広がりました
この作品が紡ぎ出すのは
世界に散らばる「白いもの」をめぐる
かつてないほど純度の高い言葉たち…
生まれてまもなく、たった数時間で
この世界から去ってしまったという
著者の「かつていたはずの姉」の -
Posted by ブクログ
【人間が一番恐ろしい】
そもそもこの、済州島四・三事件のことを知らなかったから、まずネットで調べてから読んだ。独裁政治が人間に何をさせ、何を奪うのか。
戦争や権力の暴力というか圧力によって、人間が少しずつ崩れていくこともすごく恐ろしかった。
人が人を殺すのが戦争。それを正当化するのが独裁者。
国家の暴力によってどこにでもいる普通の人が少しずつ壊れていくことが怖くて悲しかった。
それと同時に、人は圧力の中で簡単に沈黙してしまうんだな、という不安というか恐怖のようなものも強く感じた。
だからこそ、独裁や暴力は絶対に繰り返してはいけないし、過去の悲劇を忘れずに考え続けることが大切だと思った。
『別れ -
Posted by ブクログ
翻訳らしい短編集。何となくアーウィンショーを思い出した。一貫して痛みを伴う回復がテーマ。中でも「エウロパ」は印象的だった。主人公はトランスジェンダーの男性とライブハウスで歌うイナ。2人の夜の散歩の場面は秀逸。「火とかげ」は映画を観ているようだった。主人公は事故により両手とも効かなくなった画家。そして疲れきって絶望しているその夫。ある時友人の子供が飼っているトカゲがその両手を千切られてもまた生えてくる事を知る。
主人公が少しずつ希望を取り戻し生きていこうと決意してまた絵筆を取る過程が美しい。
全ての言葉が一遍の詩のような何とも言えない透明感に満ち溢れた一冊。