ハン・ガンのレビュー一覧

  • 回復する人間

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    一つ一つの文が、とにかく美しい。なのに、ヒリヒリとして、切なくもなる。
    ハン・ガンの作品は、私を全く違う場所へと連れて行ってくれる。
    喪失感が襲ってきた時、きっとこの本で描かれていた人達を思い浮かべ、また歩き出すのだろう。

    青い石と火とかげが特に好き。

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    2025年12月21日
  • すべての、白いものたちの

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    白いもの〜とても儚く優しいものだったり、強烈なものだったり。詩的な美しい文章で綴られていたかと思いきやズドンと悲しみが押しよせたり。ふとした時に何度も目を通したくなる一冊となった。

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    2025年12月17日
  • 別れを告げない

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    1948年済州島の4・3事件をモチーフに、作家と事件のサバイバーの娘との友情を超えた愛の物語

    歴史を乗り越えて今、を生きる2人の結びつきに感嘆してしまいました…

    そして事件の哀悼を終わらせないメッセージをじっくりと受け止めました

    主人公キョンハの片頭痛の発作の痛みと娘インソンの切断された指の医療措置に呼応する、不思議なあらすじの枠組みも印象的でしたし、

    雪の描写が択一で、あくまで静かなのに、哀悼がしんしんと迫るような感じがやはり素晴らしかったです

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    2025年12月05日
  • すべての、白いものたちの

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     色褪せて錆びた傷だらけの白いドア、塗り
    重ねた白いペンキ、しんしんと降る雪。雪の
    ように真っ白なおくるみ、白いきれで縫われ
    た産着、タルトックのように真っ白な赤ん坊。
    「私」は、「白いもの」について書くことだ
    けを決めて、祖国から遠く離れた都市に滞在
    する。理解できない言葉が飛び交う街で、孤
    独が深まるにつれて思いもよらない記憶が生
    々しく蘇り、自らの内面へと逃げ込んでいく。

     私が踏みしめているその街は、七十年前に
    作り直された街だった。ナチスによって完璧
    に破壊され、瓦礫の砂に包まれた白い街に、
    二時間だけ生きた姉の姿を重ねる。夜明けの
    霧の中で、姉である「彼女」に私の生を差し
    出し、

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    2025年12月04日
  • ギリシャ語の時間

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    哲学の先生の推薦があって読んだ。一度目に読んだ時には今ひとつ主題がつかみきれなかったが、それでも、中動態という今は失われた文法様式を持つ古典ギリシャ語が読解の鍵なのかな、と思った。それで、國分功一郎氏の『中動態の世界』を読んで、再度、読んだ。今度は、ストーリーが自分の中で、クッキリと浮き上がってくるようにわかった。

    言葉=聴覚、映像=視覚によるコミニケーション、それぞれに、意思疎通の限界を越えて、いかにして互いに理解しあって行くか、そんなことが小説のテーマとしてあるのかな、と感じた。

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    2025年11月27日
  • すべての、白いものたちの

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    さらっと読んでしまったが 再読したい本 最初に白いもの目録をみたとき さみしいような 凛としているような 静かで壊してはいけないような イメージを持った 生まれてすぐこの世からいなくなってしまった姉と死なないでと言って抱きしめ続けた母 斎藤真理子さんの訳がとても優しくしみる

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    2025年11月24日
  • 別れを告げない

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    「少年が来る」がどうしても読み進められなくて、迷ったけど、帯の文章の描写をじっくりと読みたくなって購入。幻影?のような内容の文章は苦手だけど、差し出されている事実の重さを読み続けていると美しい描写で救われていく。だから最後まで読めた。愛と痛みと忘れないことの話だと思った。解説までが一冊の本だと感じた。

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    2025年11月24日
  • すべての、白いものたちの

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    ハン・ガンさん初読み。

    まず、形式を形容しがたい作品だなと感じた。
    それと同時に、そんなものは、ここに記された言葉を受け取るのに必要ないものだとも思った。

    圧倒されながら、感想をうまく表現できないのは初めての経験だった。
    心の深い奥底を覗いていたら、すぐ隣にある光と影の揺らめきに、はたと気付かされるような気持ち。

    白いものにまつわる記憶。
    自分なら何が思い浮かぶだろうか。

    一度読んだ程度では咀嚼しきれない。
    少し間を開けてまた読み返したいと思う一冊だった。

    巻末の「作家の言葉」、訳者の補足、平野啓一郎さんの解説は、どれも読後の散らかった頭の中をまとめるのに役立った。



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    2025年11月24日
  • 別れを告げない

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    読んでよかった。

    ごく個人的な感想。
    こんなにも柔らかく感覚に染み渡るように「虐殺」のことを書けるのかと、「少年が来る」以上に鋭利で鮮烈で仔細にわたった描写に感嘆してしまう。歴史のことを書いていながら物語であることを諦めていず、出来事ではなく人を描くことに終始する姿勢には尊敬しかない。こんなふうに書けるんだと。そしてこの感覚的な作家が決して内省的な物語としてではなく現代社会と地続きの、今もなお人類というものが抱える悪魔的な部分として描き続けていることに、そしてそういう作家が評価されているということに、ほんの少しの光を見た思いだった。

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    2025年11月20日
  • すべての、白いものたちの

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    とてもパーソナルなことのようで、自分のことのよう。硬くて柔らかくて切なくて優しくて暖かくて冷たい…生と死、相反するものの境界に寄せられて、ぜんぶの感覚をスクラッチされたような本。

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    2025年11月12日
  • すべての、白いものたちの

    匿名

    購入済み

    美しい世界

    白をテーマにして次々に繰り出される白い世界。
    失ったものを抱えながら白い世界に吸い込まれていくような感覚。
    何よりもこれが翻訳された作品とはまったく感じずに本の世界に入り込むことができました。

    #エモい #切ない

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    2025年11月12日
  • すべての、白いものたちの

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    すごくすごく静かで、寒い…は褒め言葉ではないのかな。北海道の冬の雪景色の中にいるような読後感。
    とっても丁寧に選ばれた言葉が整然と羅列されていて、美しいなぁと感じました。
    物語のような、詩集のような。
    強い意志や痛み、怒りのような思い。反面、優しさや慈悲、希望も感じられました。

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    2025年11月12日
  • 別れを告げない

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    主軸になってる済州島3.4事件をよく知らないので、読みながら調べたら、書かれていることの重みが増した。
    太平洋戦争の後に朝鮮戦争が起こったことは知っていたけど、朝鮮半島が今のように落ち着く(?)までにはかなり長い時間がかかったということが分かった。
    最後はきれいな形で終わるけど、読後感はなにやら引きずります

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    2025年11月07日
  • すべての、白いものたちの

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    複数の視点から語られるので同じ景色でも違って見える。
    とても静かで白くて美しい物語でした。
    誰かと語れば色がついてしまいそうで、自分の中にそっと隠しておきたい気持ちになる。

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    2025年11月07日
  • すべての、白いものたちの

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    多くを語らず、読者に深い思考を促す小説。
    詩のようであり、エッセイのようでもある。
    生後2時間で亡くなった姉への追悼、そして、自らの生を亡き姉に貸し与える。

    平野啓一郎さんの解説を読んで、こういう意図だったのかと思い知る。
    再読することで、作品の深みがよりいっそう伝わってくる。

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    2025年10月31日
  • すべての、白いものたちの

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    【これは散文なのか、小説なのか】感情の底の底にある、目に見えないなにかまでを自分の外に吐き出して、そのまま読み手の心を掴んでしまうのがハンガン。彼女には狂気的に美しい彼女だけの文体があり、わたしは構成だけを真似して同じように世界を描こうと試みるのだけれど、光と陰のコントランスはあんな風に絶妙にならないし、不均衡なのにエモーショナルな世界なんてまったく真似できない。死ぬまでにいつかこんな文章書けるといいな、と思いつつ、今日も本を開いてはため息と共に閉じる。

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    2025年10月10日
  • ギリシャ語の時間

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    詩の素晴らしさに出逢わせてもらい星5。
    この本を通して教えてもらったこと。↓


    詩においては“美しい”とは、そのものの(あるものや事柄)について良さを表さない。台無しにする言葉でもある。
    “美しい”と言う一言はかけがえのなさを表せる。唯一無二のそのものの様子やあらゆるどんな比喩を失うほどの完璧さを表すのだけれど。それ故にディテールや本来持つ個性を表現しないが故に大切な物を同時に失わせてる。

    そこにこの言葉の素晴らしさと残酷さと完璧さが表現できる。とても深い想いを巡らせられている言葉だと感じました。

    光に彩色色彩が。その様な表現の様。
    ですが、私は“美しい”を知っています。

    とても大切な

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    2025年10月09日
  • すべての、白いものたちの

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    死んだ姉と兄、今生きている自分。作者自身の過去をもとにした死と再生の散文小説。
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    ノーベル文学賞をとったハン・ガンさんの本、初めて読みましたが、これには胸を打たれました。
    もう初っ端からどくどく血が流れるような傷を見せてくる。
    死と破壊、生と再生を、ものすごく澄み切った筆致で、針のように鋭い言葉で、詩のような文章で、読者の心を刺して刺して刺しまくる。
    読んでいて胸に迫る内容と美しい文章が暴れ回って大変でした。ハン・ガンさんの本はほかにも読んでみようと思っているのですが、ちょっと次に手を伸ばすのを躊躇するような切れ味と重さでした。

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    2025年10月06日
  • 別れを告げない

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    ネタバレ

    背中がゾゾゾとなるほどの、すごい読書体験だった。

    雪国出身なのと、著者の描写の巧みさで、雪景色が手に取るように想像できた。

    思いが強ければ、同時に遠くにも存在できる……認知できていないだけで、確かにそうなのかもしれない。

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    2025年09月30日
  • すべての、白いものたちの

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    ノーベル文学賞を受賞したハン・ガン女史の作品。
    構成は3章から成り、ファインフォトを掲載しながら抒情的な散文詩が次から次へ綴られる。

    1章:私
    「私」が生まれる前に、母は初産で女の子を産んでいた。
    母は人里離れた官舎で、誰の助けも呼べずに8ヶ月の未熟児の娘を産んだ。
    激しいつわりに耐えながら、母は白い絹布で産着を縫い合わせて準備していた。
    その産着を生まれたばかりの娘に着せ、産声もなく産まれ出てきた娘に「お願い、死なないで、死なないで」と呼びかけ続ける。
    「死なないで」の呼び掛けに、娘は数度だけ束の間瞼を開くのだが、力無く閉じてしまう。
    そして母親の必死な願いも虚しく、誕生から2時間後に娘は

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    2025年09月24日