ハン・ガンのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
彼女の著作は何冊か読んできたけれど、今回がもっとも理解しやすかった。このぐらい余白があって文字組みがゆったりしているとちょうどよい。
とはいえやっぱり抽象的な表現が多いので、気を緩めるとすぐに置いていかれてしまうのだけど。
「いちばん暗い夜にも」と題されたノーベル文学賞受賞所感がやけに胸に残った。
〈降りしきる雨脚を眺め、腕やふくらはぎを包む湿気を感じながら待っていたその一瞬、突然気づいたのです。私と肩をくっつけ合って立っている仲間たちも、向かいのビルの前にいるあの人たちも、その全員が全く同じように、「私」として生きているのだという事実を。私が雨を見ているのと同じように、あの人たち一人一人も雨を見ている。私が顔に感じている湿気をあの人たちも感じている。それは、大勢の一人称を同時に経験するという驚異の一瞬でした。〉