ハン・ガンのレビュー一覧

  • 別れを告げない

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    【人間が一番恐ろしい】
    そもそもこの、済州島四・三事件のことを知らなかったから、まずネットで調べてから読んだ。独裁政治が人間に何をさせ、何を奪うのか。
    戦争や権力の暴力というか圧力によって、人間が少しずつ崩れていくこともすごく恐ろしかった。
    人が人を殺すのが戦争。それを正当化するのが独裁者。
    国家の暴力によってどこにでもいる普通の人が少しずつ壊れていくことが怖くて悲しかった。
    それと同時に、人は圧力の中で簡単に沈黙してしまうんだな、という不安というか恐怖のようなものも強く感じた。
    だからこそ、独裁や暴力は絶対に繰り返してはいけないし、過去の悲劇を忘れずに考え続けることが大切だと思った。
    『別れを告げない』というタイトルは、「忘れない」ということなんだろうなと思う。
    ハン・ガンさんは先の『少年が来る』でも国家の暴走を静かに批判していたけれど、この悲劇を韓国だけのことではなく、全世界の人たちのこととして書いているんだと感じた。
    そう考えると、日本も決して無関係ではないし、今の社会の中にも少しずつ不安を感じることがある。
    「戦争反対」という声が上がること自体に怖さを感じるのは、それが当たり前ではない状況に近づいているのかもしれないと思うから。
    二度と同じような悲劇を繰り返さないためにも、もっと歴史を知らないといけないし、まじめに考えないといけないなと痛感した苦しい読後感でした。

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    2026年04月26日
  • 回復する人間

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    翻訳らしい短編集。何となくアーウィンショーを思い出した。一貫して痛みを伴う回復がテーマ。中でも「エウロパ」は印象的だった。主人公はトランスジェンダーの男性とライブハウスで歌うイナ。2人の夜の散歩の場面は秀逸。「火とかげ」は映画を観ているようだった。主人公は事故により両手とも効かなくなった画家。そして疲れきって絶望しているその夫。ある時友人の子供が飼っているトカゲがその両手を千切られてもまた生えてくる事を知る。
    主人公が少しずつ希望を取り戻し生きていこうと決意してまた絵筆を取る過程が美しい。
    全ての言葉が一遍の詩のような何とも言えない透明感に満ち溢れた一冊。

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    2026年04月01日
  • 回復する人間

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    初ハンガンはとてもよかった特に表題作。動物の死が頻繁に出てくるのはキツいけど韓国作家何人か読んだ中で初めていいと思ったかも。他のもちょっとずつ読んでいきたい

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    2026年03月22日
  • 別れを告げない

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    今年読んだ中で一番濃い読書体験になりました
    現実の世界から、異世界に誘われ、彷徨いました
    全ての音も、姿も消される恐怖を越えた無の雪世界。
    そこから、青い海、真っ赤な血に塗られた砂浜、全てを消し去った波。
    銃口とマッチの火など、最後までモチーフを繋げることで、人の思いを灯影している。
    記憶が繋ぐ凄惨な歴史がそこにはあり、消そうとしても消せない形とならない記憶がある。
    一文一文が詩的でした。
    とても曖昧な表現が続き、分かりにくいところもあったけど、それは作者の意図であるようですが、もう一度読んだらより深く心に入ってくるかもしれないです

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    2026年02月28日
  • 光と糸

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    淡々とした語り口のエッセイみたいな詩集みたいな、画集のような。
    とても作者さんの人となりを感じさせてくれる素敵な本でした。
    とくに、「本が出たあと」と「庭の日記」がとても好き。
    読みやすいからとかではなくハン.ガンさんの生き方が垣間見られて。
    世界のなかで叫びたいこと、この方にはまだまだあるでしょう。今後も手に取ってみたい作家さんでした。

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    2026年02月20日
  • 光と糸

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    〜世界はなぜこれほど暴力的で苦痛に満ちている?
    と同時に、世界はなぜこれほど美しいのか?〜

    人間の暴力性に真っ向から向き合って、文章で戦うハンガンさん。
    世界が平和と反対方向に向かっているような気がしてならない今、読めてよかった。
    最初の方は2024年にノーベル文学賞を受賞したときの講演の全文。
    彼女がこれまで世に出した書籍がどういうプロセスで書かれたのかがわかって、またいろんな本を再読したくなった。
    中盤はエッセイ、そして後半は日記。
    庭木にアブラムシやハダニがついて、殺虫剤を噴霧したら全部枯れてしまったり、何匹もいたはずの虫が消えていて悲しんだり、花が咲いて喜んだり、花が咲かずに残念がったり、病気が他の木に移らないように鉢を門の外に出していたら、清掃課の人に持っていかれちゃったり。
    ほぼというかすべて庭木の話だったけど、『小さな生態系の伝染病と防疫と駆除を体験した』というハンガンさんがなんか可愛らしく思えた。

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    2026年02月09日
  • 別れを告げない

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    物語の根底に、1948年4月3日に発生した済州島四・三事件がある。
    李承晩政権下の軍・警察、そして駐韓米軍が、1954年までの6年間で約3万人の島民を虐殺した凄惨な事件だ。
    朝鮮半島が南北に分断されることに反対する民衆が、済州島で武装蜂起したことが事件の発端だった。
    その後、韓国が本格的な民主化を迎える1987年6月の民主化宣言までは、済州島四・三事件を語ることはタブーとされている。

    主人公の作家キョンハは虐殺に関する本を出版した後、原因不明の酷い目の痛みと胃痙攣に悩まされていて、精神的にも疲れていた。
    そんな時に友人の映像作家インソンは、キョンハが提案した木製オブジェを製作中に指を切断する事故に遭ってしまう。
    急遽ソウルの病院に搬送され、指の縫合手術を受けたインソンは、飼っているインコが死んでしまうと不安を募らせ、済州島のアトリエへ行って鳥を死から救ってくれとキョンハは切願される。
    キョンハは仕方なく済州島に向かうのだが、その日はソウル、済州島ともに激しい吹雪で大雪の天候だった。
    凍傷、遭難を覚悟する程の猛吹雪の中、何とかアトリエにたどり着くのだが⋯。

    巻末に、訳者の斉藤真理子女史が詳細な済州島四・三事件を紹介している。
    表題の『 別れを告げない 』の意味には、深い意味が込められていることに読書後気が付いた。
    ハン ガン女史はインソン家族の体験を通じて、決して事件を忘れ去ることなく、哀悼の意を抱き続けるとの意だと理解した。
    少々難しい物語だったが訳文も工夫があり、独特の美しさで綴られている。
    ハン ガン女史は、人の心の痛みを物静かに、しかし力強く綴る能力に長けている作家だと思った。

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    2026年02月06日
  • ギリシャ語の時間

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    はじめて読んだ韓国文学。
    韓国語とギリシャ語の、言葉の美しさを感じることができたけれど、掴みきれなかったというのが本音。
    きっとまた読み返すと思う。

    独特の作品世界には魅了された。

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    2026年01月31日
  • 光と糸

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    散文短編であるかのようだが ひと繋がりの作品でもあるように感じた 人が人を虐殺する恐ろしく血生臭い事件を掘り下げ自分も血を流しながら書いていながらも 世界はなんて美しいのだろうと感じてしまう そして日が当たらない北向きの小さな庭に鏡で光を当てその成長を見守る ハンガンという人にどんどん引き込まれてしまう

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    2026年01月31日
  • 光と糸

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    8歳にしてあれほど胸を打つ詩を書けるとは。
    本の出版前に、ネット記事で偶然出会ったこの詩を、紙の本の上で眺められることが純粋に嬉しい。

    近頃はディストピア小説の話かと疑うほど、悲惨なニュースを目にすることの多い世の中だが、せめて平和を求める皆さんと金の糸で繋がっていたい。

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    2026年01月16日
  • 光と糸

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    ハン・ガンの言葉は、純度の高い結晶のような透明感があるように感じる。文学に誠実に向き合い、文学、言葉の力を信じ、人間への信頼を模索し、人間の二面性について考え続けてきた、ハン・ガンの誠実さをこの一冊を通して感じることができる。
    暴力によって、人間の尊厳が破壊されてきた歴史を描きながら、同時に、「愛とは」という問いを絶えず読者にも語りかけてきた。
    私は、ハンガンの文学を通して、愛を与えられてきたんだとこの一冊を通して思った。ハンガンの誠実さ、人と人が繋がることができることを信じる強さ、文学によってそれを実現しようとする力を、ハンガンは文学を通して伝えてくれるように感じる。
    「北向きの庭」「庭日記」では植物へのまなざしにもあたたかさを感じる。
    斎藤真理子さんの「あとがき」もハン・ガンの作家性の解説と、文学と世界と私たちのつながりについて言及されていて、胸にささった。

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    2026年01月07日
  • 回復する人間

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    よしもとばななの「キッチン」は喪失をシェアすることで慰めをくれるけれど、ハンガンは違う。彼女は、ほら見て私もここに傷があるの、でも美しいでしょ、と静かに目を見つめて言ってくる。

    痛々しい。でもなぜか目を離せない。
    先を読むのが怖い。でも読まずにはいられない。

    傷は放っておいてもいい。でも、看過ごせない傷はじわじわと"私"を侵食し、やがて自分の一部になる。

    時間が解決する、とは本当だろうか。この世界には自然治癒力が働く場所と、そうでない場所がある。勝手に治る傷ばかりではない。自ら回復に向かっていくことで、人はしなやかに強くなっていく。

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    2026年01月05日
  • 回復する人間

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    一つ一つの文が、とにかく美しい。なのに、ヒリヒリとして、切なくもなる。
    ハン・ガンの作品は、私を全く違う場所へと連れて行ってくれる。
    喪失感が襲ってきた時、きっとこの本で描かれていた人達を思い浮かべ、また歩き出すのだろう。

    青い石と火とかげが特に好き。

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    2025年12月21日
  • 別れを告げない

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    1948年済州島の4・3事件をモチーフに、作家と事件のサバイバーの娘との友情を超えた愛の物語

    歴史を乗り越えて今、を生きる2人の結びつきに感嘆してしまいました…

    そして事件の哀悼を終わらせないメッセージをじっくりと受け止めました

    主人公キョンハの片頭痛の発作の痛みと娘インソンの切断された指の医療措置に呼応する、不思議なあらすじの枠組みも印象的でしたし、

    雪の描写が択一で、あくまで静かなのに、哀悼がしんしんと迫るような感じがやはり素晴らしかったです

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    2025年12月05日
  • ギリシャ語の時間

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    哲学の先生の推薦があって読んだ。一度目に読んだ時には今ひとつ主題がつかみきれなかったが、それでも、中動態という今は失われた文法様式を持つ古典ギリシャ語が読解の鍵なのかな、と思った。それで、國分功一郎氏の『中動態の世界』を読んで、再度、読んだ。今度は、ストーリーが自分の中で、クッキリと浮き上がってくるようにわかった。

    言葉=聴覚、映像=視覚によるコミニケーション、それぞれに、意思疎通の限界を越えて、いかにして互いに理解しあって行くか、そんなことが小説のテーマとしてあるのかな、と感じた。

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    2025年11月27日
  • 別れを告げない

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    「少年が来る」がどうしても読み進められなくて、迷ったけど、帯の文章の描写をじっくりと読みたくなって購入。幻影?のような内容の文章は苦手だけど、差し出されている事実の重さを読み続けていると美しい描写で救われていく。だから最後まで読めた。愛と痛みと忘れないことの話だと思った。解説までが一冊の本だと感じた。

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    2025年11月24日
  • 別れを告げない

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    読んでよかった。

    ごく個人的な感想。
    こんなにも柔らかく感覚に染み渡るように「虐殺」のことを書けるのかと、「少年が来る」以上に鋭利で鮮烈で仔細にわたった描写に感嘆してしまう。歴史のことを書いていながら物語であることを諦めていず、出来事ではなく人を描くことに終始する姿勢には尊敬しかない。こんなふうに書けるんだと。そしてこの感覚的な作家が決して内省的な物語としてではなく現代社会と地続きの、今もなお人類というものが抱える悪魔的な部分として描き続けていることに、そしてそういう作家が評価されているということに、ほんの少しの光を見た思いだった。

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    2025年11月20日
  • すべての、白いものたちの

    匿名

    購入済み

    美しい世界

    白をテーマにして次々に繰り出される白い世界。
    失ったものを抱えながら白い世界に吸い込まれていくような感覚。
    何よりもこれが翻訳された作品とはまったく感じずに本の世界に入り込むことができました。

    #エモい #切ない

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    2025年11月12日
  • 別れを告げない

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    主軸になってる済州島3.4事件をよく知らないので、読みながら調べたら、書かれていることの重みが増した。
    太平洋戦争の後に朝鮮戦争が起こったことは知っていたけど、朝鮮半島が今のように落ち着く(?)までにはかなり長い時間がかかったということが分かった。
    最後はきれいな形で終わるけど、読後感はなにやら引きずります

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    2025年11月07日
  • 別れを告げない

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    舞い散る雪が、死者たちの頬にうっすらと積もり、白く覆ってゆく。
    等しく生者の頬にも降る雪は、刺すような痛みの感覚を残して、溶け去ってゆく。

    痛みと熱が生の証というならば、死は痛みの喪失と引き換えに、無限の沈黙の中に消えるということなのか。
    いや、例え肉体が凍りつき、もはや唇は閉ざされたままだとしても、死者には消えぬ痛みの記憶が残っている。
    死者には、語るべき言葉がある。
    だから、別れを告げない。

    雪は溶けて海へと流れ、空に昇って雲となり再び一ひらの雪片として地上へ戻ってくる。
    過去と未来は循環し、死と生は共にある。
    そんな地点ををつなぐのは、悲しみと嘆きの言葉だけじゃない。
    「あなたにはわたしがいる」と、そう伝えてくれる確かな絆が、ここには含まれているのだから。


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    2025年09月13日