あらすじ
世界は、なぜこれほど暴力的で、同時に、なぜこれほど美しいのか? 著者自身が構成を編み上げた、ノーベル文学賞受賞後初の作品がついに刊行。光へ向かう生命の力への大いなる祈り。
「最初から最後まで光のある本にしたかった」
――ハン・ガン
「人間性の陽溜まりと血溜まりと。その二つが常に隣り合っていて、どちらかへ行こうとしたらもう一つも絶対に通らなくてはいけない。ハン・ガンの小説にはそんなところがある」
――斎藤真理子
ノーベル文学賞受賞記念講演「光と糸」全文、創作についてのエッセイ、5編の詩、光を求めて枝葉を伸ばす植物をめぐる庭の日記、そして著者自身による写真を、著者自らが編んだ、ハン・ガン自身によるハン・ガン。
過去が現在を助けることはできるか?
死者が生者を救うことはできるのか?
――本文より
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目 次
光と糸
いちばん暗い夜にも
本が出たあと
小さな茶碗
コートと私
北向きの部屋
(苦痛に関する瞑想)
声(たち)
とても小さな雪のひとひら
北向きの庭
庭の日記
もっと生き抜いたあとで
訳者あとがき
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Posted by ブクログ
淡々とした語り口のエッセイみたいな詩集みたいな、画集のような。
とても作者さんの人となりを感じさせてくれる素敵な本でした。
とくに、「本が出たあと」と「庭の日記」がとても好き。
読みやすいからとかではなくハン.ガンさんの生き方が垣間見られて。
世界のなかで叫びたいこと、この方にはまだまだあるでしょう。今後も手に取ってみたい作家さんでした。
Posted by ブクログ
〜世界はなぜこれほど暴力的で苦痛に満ちている?
と同時に、世界はなぜこれほど美しいのか?〜
人間の暴力性に真っ向から向き合って、文章で戦うハンガンさん。
世界が平和と反対方向に向かっているような気がしてならない今、読めてよかった。
最初の方は2024年にノーベル文学賞を受賞したときの講演の全文。
彼女がこれまで世に出した書籍がどういうプロセスで書かれたのかがわかって、またいろんな本を再読したくなった。
中盤はエッセイ、そして後半は日記。
庭木にアブラムシやハダニがついて、殺虫剤を噴霧したら全部枯れてしまったり、何匹もいたはずの虫が消えていて悲しんだり、花が咲いて喜んだり、花が咲かずに残念がったり、病気が他の木に移らないように鉢を門の外に出していたら、清掃課の人に持っていかれちゃったり。
ほぼというかすべて庭木の話だったけど、『小さな生態系の伝染病と防疫と駆除を体験した』というハンガンさんがなんか可愛らしく思えた。
Posted by ブクログ
散文短編であるかのようだが ひと繋がりの作品でもあるように感じた 人が人を虐殺する恐ろしく血生臭い事件を掘り下げ自分も血を流しながら書いていながらも 世界はなんて美しいのだろうと感じてしまう そして日が当たらない北向きの小さな庭に鏡で光を当てその成長を見守る ハンガンという人にどんどん引き込まれてしまう
Posted by ブクログ
8歳にしてあれほど胸を打つ詩を書けるとは。
本の出版前に、ネット記事で偶然出会ったこの詩を、紙の本の上で眺められることが純粋に嬉しい。
近頃はディストピア小説の話かと疑うほど、悲惨なニュースを目にすることの多い世の中だが、せめて平和を求める皆さんと金の糸で繋がっていたい。
Posted by ブクログ
ハン・ガンの言葉は、純度の高い結晶のような透明感があるように感じる。文学に誠実に向き合い、文学、言葉の力を信じ、人間への信頼を模索し、人間の二面性について考え続けてきた、ハン・ガンの誠実さをこの一冊を通して感じることができる。
暴力によって、人間の尊厳が破壊されてきた歴史を描きながら、同時に、「愛とは」という問いを絶えず読者にも語りかけてきた。
私は、ハンガンの文学を通して、愛を与えられてきたんだとこの一冊を通して思った。ハンガンの誠実さ、人と人が繋がることができることを信じる強さ、文学によってそれを実現しようとする力を、ハンガンは文学を通して伝えてくれるように感じる。
「北向きの庭」「庭日記」では植物へのまなざしにもあたたかさを感じる。
斎藤真理子さんの「あとがき」もハン・ガンの作家性の解説と、文学と世界と私たちのつながりについて言及されていて、胸にささった。
Posted by ブクログ
ノーベル文学賞受賞記念講演「光と糸」全文のほか、創作についてのエッセイ、5編の詩、光を求めて枝葉を伸ばす植物をめぐる庭の日記で構成される。
創作のため、常に自問自答するための問いを立てていたというが、それよりもずっと昔の少女が愛についての詩を残していたということと、その問いは少女の詩に帰結するという気付きがいまのハン・ガンを作り上げたという。その気付きと庭仕事はどこか生命の営みとしてつながるように思う。美しい本だった。
Posted by ブクログ
過去が現在を助けることはできるか?
死者が生者を救うことはできるのか?(P19)
『光と糸』ハン・ガン
ハン・ガンさんの紡ぐ言葉は、
心を捻じ切られるような痛みに満ちていながら、
なぜか最後には、すべてが包み込まれるような静けさを残す。
暴力と涙が当たり前のように繰り返されるこの世界で、
彼女の描く世界だけは、どこまでも白く、静謐だ。
✧
国があり、人種があり、過去と未来がある。
そこには必ず境界が生まれ、諍いが生まれ、
そして虐殺が繰り返されてきた。
けれど本書を読んでいると、
「言葉」と「知ること」が、
その境界線を静かに滲ませていくように感じられる。
断絶の向こう側に、
かすかな光と希望が、確かにそこにあるのだと。
✧
ハン・ガンさんがノーベル文学賞を受賞したとき
こんな言葉を残したといいます。
ー私は静かにしていたい。
世界には多くの苦痛があり、
私たちはもう少し静かにしていなくてはなりません。
この言葉を読んだとき、
彼女の作品に流れる空気の正体が、腑に落ちた。
行間から漂う、密やかな死の気配。
それと同時に、光を求めて手を伸ばすような生命力。
ハン・ガンさんの言葉には、確かに「命」が宿っている。
本書『光と糸』には、創作についてのエッセイと、
五編の詩が収められています。(あとお庭の記録も)
読み終えたあと、
未読の『少年が来る』と『別れを告げない』を
必ず読もう、と自然に思っていた。
2026年の最初の一冊に、
これ以上ないほどふさわしい作品でした。
Posted by ブクログ
人の重厚さを語っている。そして世界の不均衡さを嘆いている。たくさんを感じ、たくさんの理解を本の中に認めている。
"世界はなぜこれほど暴力的で苦痛に満ちている?
と同時に、世界はなぜこれほど美しいのか?"
私が感じ、見ているすべてを生き抜くのだから あなたが考え、愛するすべてを生き抜くのだから 私たちは自分の身長と体重だけに閉じ込められてはいないから
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今までの作品の総ざらいのような一冊。最後まで静かで美しい佇まい。紙質も和紙のようであたたかい手ざわり。
エンタメも大事だけど、たまにこうした文章も補給しないと魂がカラカラになる。
” 割れてしまったガラスを溶かして、再び、無傷のひとかたまりのガラスにする”
Posted by ブクログ
この本は、訳者あとがきに書かれているとおり、ノーベル文学賞受賞記念講演「光と糸」を含む受賞関連の文章三つと、単行本未収録の詩と散文、そして庭仕事を通しての暮らしと心境を綴った「北向きの庭」と「庭の日記」から成っています。
韓国のつらい歴史に対しての疑問と葛藤、そして愛についても考え、悩み、自分と向き合いながら小説が完成するまでの葛藤の日々がこの本に綴られていました。
彼女が八歳のときに書いた一編の詩の始まりで、感性豊かな子どもだったこともわかりました。かわいいハングルの直筆の写真もありました。
「庭の日記」では彼女が庭の木々を慈しむ日々が書かれていました。表紙の写真も、ハン・ガンさん自身が撮られたものだそうです。光が当たっている部分に、木々を慈しむ気持ちが表れています。
訳者によると、この本のキーワードは「つながり」だそうです。過去に目を向け、また同じ過ちを繰り返さないようにというハン・ガンさんの思いが、彼女の文章で多くの人をつなげるひとつになるような気がしました。
小説とは違ってすぐに読めてしまいますが、大切に読んでいきたくなる本でした。ハン・ガンさんがこれまでに書いた長編小説を読んでみたくなる本でもありました。
Posted by ブクログ
ハン・ガンはずっと何かに苦しんでいる。世界をより良くするため、世界から苦しみを取り除くため、自分も血を垂れ流しながら戦っている。だからなのか、彼女が書く文章はどこか寂しい感じがする。世界を諦めたいけれど、諦めきれていない。どうして世界はこんなにも美しい。そう問い続けている。8歳の時に書いたという詩に心打たれた。その年齢だからこそ書ける詩。その年齢の子が書いたからこそ大人の心を揺さぶる。
Posted by ブクログ
ハン・ガンさんの著書を読むと強く感じることがある。
言葉が生きていて、自分の身体の内部に浸透すると。
言葉を読まされているのではなく、読み進めたいと欲する感覚はなかなか味わえない。
エッセイや詩、ノーベル文学賞受賞記念講演事の言葉達。
冒頭からの過去作への制作過程や心情を知ると、間違いなく全部読みたくなります。
ハン・ガンさんが人に対する愚かさや残酷さを考え絶望すると同時に、それでも美しさや愛を考え希望を探して生きていることに心うたれました。
過去を想い知ることで、今を生きる喜びや意味を見つけたくなりました。
ハン・ガンさんの綴る言葉には温かさと冷たさが混じっていて、闇がないと光もないのだろうと感じた。
Posted by ブクログ
ハン・ガンのノーベル賞講演スピーチ、詩と日記をまとめたもの。
ノーベル賞受賞時の講演のスピーチは、これまでの作品に触れ、その時々で何と向き合ってきたかが明らかになるもの。若干、ストーリーのラストに触れている作品もあるのでネタバレ注意。
あとはガーデニング日記。それすらも美しい文章笑。
ボリュームの割には…と思わなくもないが、未訳の初期作品の邦訳なども予定されているとのことで、非常に楽しみ。
Posted by ブクログ
ハンガンのノーベル文学賞受賞スピーチ他、詩や庭にまつわるエッセイ等まとめた一冊。
「過去が現在を助けることはできるか?
死者が生者を救うことはできるのか?」
いつか答えは出るのかな。
この美しい本を書店で手に取った時、通りかかった親子が「ギリシャ語の時間」を買って行くのを目にした。
糸は繋がってる。
Posted by ブクログ
彼女の著作は何冊か読んできたけれど、今回がもっとも理解しやすかった。このぐらい余白があって文字組みがゆったりしているとちょうどよい。
とはいえやっぱり抽象的な表現が多いので、気を緩めるとすぐに置いていかれてしまうのだけど。
「いちばん暗い夜にも」と題されたノーベル文学賞受賞所感がやけに胸に残った。
〈降りしきる雨脚を眺め、腕やふくらはぎを包む湿気を感じながら待っていたその一瞬、突然気づいたのです。私と肩をくっつけ合って立っている仲間たちも、向かいのビルの前にいるあの人たちも、その全員が全く同じように、「私」として生きているのだという事実を。私が雨を見ているのと同じように、あの人たち一人一人も雨を見ている。私が顔に感じている湿気をあの人たちも感じている。それは、大勢の一人称を同時に経験するという驚異の一瞬でした。〉