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ある日突然言葉を話せなくなった女。
すこしずつ視力を失っていく男。
女は失われた言葉を取り戻すため
古典ギリシャ語を習い始める。
ギリシャ語講師の男は
彼女の ”沈黙” に関心をよせていく。
ふたりの出会いと対話を通じて、
人間が失った本質とは何かを問いかける。
★『菜食主義者』でアジア人作家として初めて英国のブッカー国際賞を受賞したハン・ガンの長編小説
★「この本は、生きていくということに対する、私の最も明るい答え」――ハン・ガン
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Posted by ブクログ
話すことができない女性と、視力を失いつつある男性。二人はギリシャ語教室で、生徒と教師として出会う。
二人は身体的な喪失だけでなく、それぞれの人生で大切な人を失った痛みも抱えている。
ボルヘスやギリシャ哲学に詳しければ、この作品の構造やモチーフをもっと深く読み解けたのだろう。例えば古典ギリシャ語の「中動態」は、二人と彼らを取り巻く世界との関係性を考える上で重要な鍵になっているように思えた。残念ながら私にはそこまでの知識はなく、その奥行きを十分に味わい切れたとは言えない。まるでアトリビュートを知らずに西洋絵画を鑑賞しているような、もどかしさも残った。
最終章の番号は「0」。そこには、喪失を抱えたまま新たな始まりへ向かう地点が示されているように感じた。
詩のような静けさを湛えた文章は、二人が向き合ってきた痛みをいっそう際立たせる。とりわけ、女性が言葉と和解できない苦しみ、そのために子どもと引き離されてしまった悲しみには胸が痛んだ。
しかし、この作品は単に傷を抱えた人々を描くだけの救いのない物語ではない。0章には、失われたものを抱えながらも再び歩み始めようとする、かすかな恢復の兆しが描かれているように思えた。
Posted by ブクログ
本作のテーマは「言葉」。わたしたちは何気なく言葉を発したり文字を打ったりするが、言葉というものの重みがずっしりと感じられた。
物語は視力を失いつつある古典ギリシャ語の先生と、言葉を失ってしまった受講生の女性が軸になる。人生で傷ついた人たちが、冷たい雨が降りしきる中、そっと肩を寄せ合うような様子が浮かぶ。ハッピーエンドではない。ただバッドエンドでもない。わからないもの、わかりあえないもの、わかりたくないものが曖昧かつ混沌に混じり合うこの世界を包み、読者に提示している。
前編を通して静かな詩のような文章で構成されており、訳者の斎藤真理子さんの力も相まって、プロットをを一字一句しっかりと味わいたい気持ちにさせてくれた。
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