ハン・ガンのレビュー一覧

  • ギリシャ語の時間

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    以下、ネタバレ含みます。




    最初の三分の一くらい、視点の切り替わりが分からなくて、書かれているものが分からなくて、読み飛ばすように急いでしまった。

    合わなかったかな、と思いかけて。
    ギリシャ語講師が、登山とスイスに訪れるくだりを読みながら、夏目漱石の『門』を思い出した。

    彼は、そこに救いを求めていたのだろう。
    けれど、もともと、救いなんて、誰かが与えるものではないのかもしれない。
    かと言って、自分で見出せるものでも、ないのかもしれない。

    「中動態」という表現がしっくりくる。
    することと、されることで、分かたれない世界。

    そこで、私自身の立ち位置が決まったのか、エンディングに向けて

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    2025年09月24日
  • 別れを告げない

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    舞い散る雪が、死者たちの頬にうっすらと積もり、白く覆ってゆく。
    等しく生者の頬にも降る雪は、刺すような痛みの感覚を残して、溶け去ってゆく。

    痛みと熱が生の証というならば、死は痛みの喪失と引き換えに、無限の沈黙の中に消えるということなのか。
    いや、例え肉体が凍りつき、もはや唇は閉ざされたままだとしても、死者には消えぬ痛みの記憶が残っている。
    死者には、語るべき言葉がある。
    だから、別れを告げない。

    雪は溶けて海へと流れ、空に昇って雲となり再び一ひらの雪片として地上へ戻ってくる。
    過去と未来は循環し、死と生は共にある。
    そんな地点ををつなぐのは、悲しみと嘆きの言葉だけじゃない。
    「あなたにはわ

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    2025年09月13日
  • 回復する人間

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    読みながら少したじろぐ。なぜハン•ガンさんは、異郷のゆかりもない僕に対して、抱え込んだ孤独を、疼き続ける痛みを告白するのかと。
    僕には、受け止めるだけの度量も、分かち合う優しさもないというのに。

    だが、彼女は決して弱音を吐いて、己の傷や悲しみを嘆き訴えているのではなかった。
    むしろ、誰からも助けの手が差し伸べられなく、独りで耐えるしかない痛みに押し潰されたときでさえも、消え去ることのない強さが人の内には秘められている、そう静かに告げていたのだ。


    人は自らの意志で、身体や生活を律して前へ進んでいるいると思い込んでいるけれど、果たしてそうだろうか。
    心がたとえ悲しみを求めていても、
    理性が抑

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    2025年09月04日
  • 回復する人間

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    ネタバレ

    肉体に受ける血の流れる傷の他に、罪悪感や後悔や喪失感も紛れもない傷。
    この本に収録されている七編の主人公や登場人物たちほどでなくとも、それらの傷は多くの人にあると思う。
    もちろん、私にも。
    読んでいて、登場人物たちの傷と共に自分の古い傷を改めて意識する。
    登場人物たちはたとえば表題となっている「回復する人間」ではタイトルどおり傷から回復するのだろうか?
    どうやって?
    目が離せなくなる。
    だが、彼らは必ずしも回復するわけではない、と私は思う。

    ただ、登場人物たちは自らの傷との向き合い方、折り合い方を通して私たちがそれぞれ持つ傷に寄り添う。
    傷を抱えたわたしに寄り添う。
    それは同じような痛みを感

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    2025年07月26日
  • 回復する人間

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    どれもこれもリアルな傷を抱える女性たちが(ひとりだけ、普通の男性が出てくる)でてきて、それぞれの回復の過程が描かれている。
    回復仕切らない人もいるし、回復を拒む人もいる。
    だけど、人は自然状態で回復していく生き物なのだと感じる。
    生きることは痛いことなのだろう。

    短編「回復する人間」の文章が好きでした。
    文字で遊んでるというような、軽いのに重く静かで、圧巻でした。
    「火とかげ」の痛みと鮮やかな色を感じさせる物語も良かった。
    復活に色がないという着地も見事。

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    2025年06月24日
  • 回復する人間

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    静かで落ち着いた美しい文章なのに鋭利な刃物を突きつけられているよう。読みながら心のどこかがヒリヒリした。「左手」はとても怖かった。印象に残る短編が詰まっている。

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    2025年06月01日
  • 回復する人間

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    ここ3ヶ月ほどの間に『すべての白いものたち』『菜食主義者』『そっと静かに』の3冊を読みハン・ガンさんに強く惹かれる自分と向き合う充足した時間を過ごしてきました。
    『回復する人間』は詩的で静謐な文章が美しい『すべての白いものたちの』と同じ斎藤真理子さんが翻訳された短編集です。
    初出年月日の1番古い「火とかげ」が7つの短編のうち最後に掲載されていて2003年初出。韓国でのタイトルにも使われたこの作品が、韓国の文芸評論家シン・ヒョンチョルに「この本の関心事は(中略)〈傷と回復〉だ」と言わしめた7つの物語のいずれの基底ともなっているテーマが2003年の時点で作者にとって重要でその後ほぼ10年に亘り深く

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    2025年03月29日
  • 回復する人間

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    読んだときに自分が、どんな状況か、どんな気持ちでいるのか、にもよるかもしれないけど、素晴らしかった。ハン・ガンは初めて読む。衝撃的。すぐに再読。今度はなるべく音読している。

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    2025年02月07日
  • 回復する人間

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    短編集。初出は2003~2012年だが、作品の印象はほぼ変わらない。紹介文の「強靭さと繊細さを併せ持つ清冽な文体で描かれた7つの物語」というのがぴったりくる。内面に深く沈み込んで思考が流れていくような作品。男女の日常を描写しながらちっとも俗っぽさを感じさせない洒落た作品。いずれも人間に向き合って見据えている。

    軽い内容の作品はひとつもないわけだけれど、なぜか読みやすいと思った。退屈さもなく、次はどうなっていくのだろうと読み進むことができた。短編だからだろうか。難解でもなく、読み応えのある読書の愉しみがあった。

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    2025年01月08日
  • 回復する人間

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    訳者解説によると、傷と回復をテーマにした短編集。ハン・ガンの邦訳のなかでも、著者の考えていることが理解しやすいほうだと思う。希望の見える明るいものもあり、希望の見えない暗いものもある。しかし、これだけは言えるのは、ハン・ガンのかんがえる回復は、元どおりの健康な状態に戻ることではなく、元には戻れないけれど、以前とは異なる感受性を受け入れながら、自殺せずになんとか生きていくことだ。うわべだけの幸福を生きるよりも痛い真実を受け入れることのほうが貴いのだ。いちばん長い最後の「火とがけ」がすばらしかった。

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    2024年12月13日
  • 回復する人間

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    4冊目のハン・ガン。繊細な心の持ち主だなあ。「生きる」ことを、その内面をとても大事にしているのに感化される。写真で見る通りのやさしい人なのだと思う。

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    2024年12月04日
  • 回復する人間

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    特に「火とかげ」が印象に残った。私も去年は茶碗を持つのもきついくらい両手が痛くて使えなかったから投影して読んでしまった(ハンガンさんもこれを執筆していたころ手が痛くてタイピングが出来なかったらしい)。画家の主人公は、事故で手に痛みが残り絵も描けなくなるし夫との関係もうまくいかなくなる。そんな彼女を支えてくれるものは、昔登山をした時偶然あった男性との記憶とQという画家の絵。記憶だけで残る男性と友人ソジンが繋がって、ソジンの子供が飼ってる前足を切断したトカゲからまた足が再生されていく描写で主人公に細い光が差し込みだすのがわかる。

    トカゲの手が再生するように、最後、主人公は以前と違う手法で絵を描い

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    2024年11月30日
  • すべての、白いものたちの

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    冒頭の羅列や章構造の巧みさもさることながら、とても詩的で美しく、読後に心地よい余韻が残る作品だった。産まれて持った色が白であるならば、人生を進めるうちに様々な色彩に彩られていくのが人生であるならば、白は根幹でありこれまで描いてきた人生を思い起こさせるような色なのかもしれない。

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    2026年09月11日
  • すべての、白いものたちの

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    本を閉じて深く息を吐いた。夏の終わり、当然息は白くならないけど、自分が生きていることを実感した。喪失感とともに、今ある生を大切に。

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    2026年09月04日
  • 私の女の実

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    ハン・ガンさんの作品は、
    息をするように静かで物悲しい。
    問題を抱えていても何も解決しないまま生き続ける、そんな人たちの人生が描かれている。
    斎藤真理子さんの解説も良い。
    短編ごとに解説が書かれていて、解説を踏まえてもう一度読み返すことで、物語が違った見え方になる。

    【赤い花の中で】という作品では主人公の少女が「彼」という一人称で語られる。読んでいて違和感があったけど、解説で「朝鮮語は日本語に比べて男女の役割語が薄く、また評論や報道記事などでは女性に「彼」を用いることが珍しくない」と書かれていて、驚いた。小説ではあまり用いられないらしいが、あえて「彼」を使うことで出家をする主人公の強さが表現

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    2026年08月30日
  • 別れを告げない

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    済州島事件の名前は知っていたものの、内実は知っていなかった。その上でどれだけの単位の人が殺されていったのか、そのことを今どう捉え直すのかという重い課題を、まずは「別れを告げない」として表現するハン・ガンの試みに胸を打たれた。おそらく主人公キョンハが済州島に着いてからほとんどが夢幻の中でのインソンとの会話であり、だからこそ二人の結ぼれが色濃く描かれていくのだと思った。歴史に対峙しながら言葉を紡ぐ姿勢が力強かった。

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    2026年08月30日
  • ギリシャ語の時間

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    久しぶりのハン・ガン。日本語で書いたんじゃないかと思えるくらい、訳もすばらしい。静かな色使いの美しい絵画のような言葉、文章、詩。
    韓国と日本は同じ東洋だから余計にそうなのか、私たち日本人に染み付いている感覚と韓国の人の感覚の根底は似ているんだなと感じたりもした。
    物語も静かに進行するんだけど、何よりも、心に情景が浮かび上がる、散文のような、短い言葉を組み合わせた文章、詩がずっと見ていたい絵画のようだった。

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    2026年08月27日
  • ギリシャ語の時間

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    ハンガンの長編を読んでみたいと思ってたんですが、
    なるほど、長編もこの感じなんですね。
    非常に詩的で、か細くも頑なな言葉の連なり。

    傷ついた人に、寄り添うというよりも経験的に知っているからこそ書ける言葉なのかなと感じた。

    主人公2人がようやく邂逅すると思える場面すら、
    会話が成立しているようには描かれず、
    それはそれぞれの障害があるからとは言え、
    その場に浮上する言葉ではなくて、
    各々の内側で想起される話で描いていく。
    本当に真摯に向き合うとこう見えるのかもしれないと感じた。

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    2026年08月25日
  • すべての、白いものたちの

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    この読後の余韻をどう表現したらいいのか…

    積くんが最近面白かった本として教えてくれたので手に取った1冊でした

    詩的で抽象的で寂寞感にあふれた、まさに“白”という色のイメージぴったりなひんやりとした本

    3つの章で構成される本著は、すべての章を読み終えた後、筆者本人によるあとがきと解説を読み終えることで完結する1冊のように感じました。

    1章でえがかれる詩的で美しい文章から2章へ入っていったときの違和感というか、どこか引っかかる感じ。この本自体が散文的で半分(?)エッセイっぽいという1章での印象がミスリードになってたなんて…。

    あまり言うとこの本の奥行きが狭まってしまうので、あとはみなさん

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    2026年08月24日
  • 私の女の実

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    私は今ハン・ガンを読んでいる。そう実感できる作家性は30年前から健在。
    現在の作品にも通底する過酷な運命を静めるまなざし。菜食主義者につながる表題作は特に印象的。

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    2026年08月22日