ハン・ガンのレビュー一覧

  • ギリシャ語の時間

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    ネタバレ

    静かに、繊細に紡がれていく言葉が印象的だった。
    主人公が捉えている景色や感覚、思考が、詩のようだった。

    この小説は、章ごとに視点が入れ替わる。
    女主人公のときは三人称、男主人公のときは一人称で書かれている。
    手紙文で構成されている章があったり、詩が挟まったりもしている。
    小説ってこんなに自由でいいんだ、と思い、視界が開けたような感覚になった。

    話せなくなった女性は、これから先、話せるようになるかは分からない。
    ギリシャ語講師の男性は、今後も少しずつ視力を失っていくだろう。
    問題は解決されないまま残っている。
    しかし、二人の人生は光に満ちていくのではないかと思える。
    彼らが身体を触れ合わせて

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    2025年01月27日
  • 回復する人間

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    短編集。初出は2003~2012年だが、作品の印象はほぼ変わらない。紹介文の「強靭さと繊細さを併せ持つ清冽な文体で描かれた7つの物語」というのがぴったりくる。内面に深く沈み込んで思考が流れていくような作品。男女の日常を描写しながらちっとも俗っぽさを感じさせない洒落た作品。いずれも人間に向き合って見据えている。

    軽い内容の作品はひとつもないわけだけれど、なぜか読みやすいと思った。退屈さもなく、次はどうなっていくのだろうと読み進むことができた。短編だからだろうか。難解でもなく、読み応えのある読書の愉しみがあった。

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    2025年01月08日
  • 回復する人間

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    訳者解説によると、傷と回復をテーマにした短編集。ハン・ガンの邦訳のなかでも、著者の考えていることが理解しやすいほうだと思う。希望の見える明るいものもあり、希望の見えない暗いものもある。しかし、これだけは言えるのは、ハン・ガンのかんがえる回復は、元どおりの健康な状態に戻ることではなく、元には戻れないけれど、以前とは異なる感受性を受け入れながら、自殺せずになんとか生きていくことだ。うわべだけの幸福を生きるよりも痛い真実を受け入れることのほうが貴いのだ。いちばん長い最後の「火とがけ」がすばらしかった。

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    2024年12月13日
  • ギリシャ語の時間

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    ハン・ガン6冊目。これはわかりやすかった。回復の物語として。人が人に心をよせることその温かさについて。
    朝刊で、ノーベル賞もらってる記事を見た日に。

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    2024年12月12日
  • ギリシャ語の時間

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    ネタバレ

    視力を失っていく男と発話できなくなった女性とがギリシャ語の授業を通じて出会い、異国での外国人差別や親権の喪失で受けた心の傷を癒やし合いながら、回復していく物語。純文学なので、女、男それぞれの記憶と感性とが研ぎ澄まされていくなか、読者それぞれにとって何割かは理解不能な文章が続くが、しかし、意識の流れを追う文章がとにかく詩的である。

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    2024年12月11日
  • 回復する人間

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    4冊目のハン・ガン。繊細な心の持ち主だなあ。「生きる」ことを、その内面をとても大事にしているのに感化される。写真で見る通りのやさしい人なのだと思う。

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    2024年12月04日
  • 回復する人間

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    特に「火とかげ」が印象に残った。私も去年は茶碗を持つのもきついくらい両手が痛くて使えなかったから投影して読んでしまった(ハンガンさんもこれを執筆していたころ手が痛くてタイピングが出来なかったらしい)。画家の主人公は、事故で手に痛みが残り絵も描けなくなるし夫との関係もうまくいかなくなる。そんな彼女を支えてくれるものは、昔登山をした時偶然あった男性との記憶とQという画家の絵。記憶だけで残る男性と友人ソジンが繋がって、ソジンの子供が飼ってる前足を切断したトカゲからまた足が再生されていく描写で主人公に細い光が差し込みだすのがわかる。

    トカゲの手が再生するように、最後、主人公は以前と違う手法で絵を描い

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    2024年11月30日
  • 回復する人間

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    回復する人間とフンザがよかった。次点で明るくなる前に。
    想像をしすぎてどこにもないどこかになってしまった理想郷。理解し合えないことがだからといって愛していないことにはならない。
    いまのところ彼女の作品の中でどれかひとつだけ読み返すならこの短編集。

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    2024年11月17日
  • 回復する人間

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    ネタバレ

    ハン・ガン4冊目、菜食主義者に続いて読んだ中では好きかもしれない。ギリシャ語の時間も面白かったのだけど。
    7つの短編集ということもあり、すらすら読んでしまった。エウロパ、左手も好きだったけれど、青い石、火とかげ、の二篇はさらに好きだった…。

    「エウロパ」
    僕とイナの"友情"について。僕はイナのことを愛しているし、女性の格好をして出歩くことをイナといる時にはできるといういくつもの設定で、エウロパというタイトルは僕でありイナなのだろうか?とまだ理解しきれていないところはあるのだけれど。
    …僕は黙ってベッドに近づき、イナに短くキスをする。イナの唇から苦いタバコの匂いがする。彼女

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    2024年10月18日
  • 回復する人間

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    ネタバレ

    ハン・ガンの短編集。気になっていた白水社のエクス・リブリスシリーズを初購入。

    訳者のあとがきにあるように、傷口が回復する前には痛むもの。人の心も同じで、様々な挫折、諦め、苦悩の果てに、回復の兆しが見えてくる。そんな作品が多い短編集だった。
    相変わらず文体や情景が綺麗で、読んでいるだけで心が洗われた。以下、作品毎の感想。

    ◎明るくなる前に ★おすすめ
    弟を亡くした姉。自分がもっと気にかければと後悔し、以後、自身を罰するように生きる。“そんなふうに生きないで”。この祈りが刺さる。

    ◎回復する人間
    誰かの視点で語られる、決して分かりあうことのできなかった姉に先立たれた“あなた”の話。回復するた

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    2024年01月03日
  • 別れを告げない

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    ノーベル文学賞受賞作家のハン・ガン氏による済州島四・三事件をテーマにした作品。
    ハン・ガン氏の文章は静謐で無機質な広い空間に置かれた美術館のオブジェのような印象を受ける。現実と幻想の境界線を曖昧にし、共感による痛みにより自己をバラバラにし昇華し再生し物語を紡ぐ。
    愚かさと哀しみに満ちた済州島四・三事件を決して忘れず哀悼を終わらせず語り継ぐという強い意志とともに、本作品の物語の本質は女性ふたりの繊細な感性の重ね合わせにあると思う。

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    2025年12月22日
  • 光と糸

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    ネタバレ

    ハン・ガンのノーベル賞講演スピーチ、詩と日記をまとめたもの。

    ノーベル賞受賞時の講演のスピーチは、これまでの作品に触れ、その時々で何と向き合ってきたかが明らかになるもの。若干、ストーリーのラストに触れている作品もあるのでネタバレ注意。

    あとはガーデニング日記。それすらも美しい文章笑。

    ボリュームの割には…と思わなくもないが、未訳の初期作品の邦訳なども予定されているとのことで、非常に楽しみ。

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    2025年12月21日
  • 別れを告げない

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    やっと読めたノーベル賞作家。とはいえ、最初に気になったのは受賞前のフリスタで、そこから読みたいとは思っていた作品。煽り調子の訳でなし、目まぐるしい展開があるのでもないんだけど、なんだかページを繰る手が止まらず、どんどん先を読まされる。題材選定やら、それに合う文体やら、諸要素が重なってのことだと思うんだけど、なかなかその正体が見えない。そんなちょっとしたモヤモヤも含めての文学なのかもしれないけど、言語化しにくいものだけに、得意とか好きになりにくいのかもしれない。文学を味わうにおいての自身の課題。

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    2025年12月19日
  • 光と糸

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    ハンガンのノーベル文学賞受賞スピーチ他、詩や庭にまつわるエッセイ等まとめた一冊。

    「過去が現在を助けることはできるか? 
    死者が生者を救うことはできるのか?」

    いつか答えは出るのかな。

    この美しい本を書店で手に取った時、通りかかった親子が「ギリシャ語の時間」を買っていかれるのを目にした。

    ああ、糸は繋がってる。

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    2025年12月19日
  • すべての、白いものたちの

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    ものすごく静謐で、読んでいると自分の体も本と一緒に音のない場所に沈んでいくかのような感覚があった。なるべく静かな場所で、できれば冬読むのがおすすめ。
    小説というよりは詩集に近く、映像が頭に浮かんでくるので、美術館で白にまつわるインスタレーションを見ているようでもある。
    特に雪の描写が多かった印象。今年から雪国に引っ越したので、ハン・ガンさんの紡ぐ美しく真摯な言葉を通してこれから雪や冬を感じられるというのは嬉しいことだ。外を歩く時、たまにはイヤホンを外して、自分でも五感を働かせて繊細に世界を感じてみたいとも思った。
    物語の構造?仕掛け?はあとがきを読んでからわかったのだけど、文学でしか表現できな

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    2025年12月09日
  • すべての、白いものたちの

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    作家として親として妹として書かれたエッセイのようであり、亡き姉をその身に宿すためのフィクションでもある、とても不思議な小説だった。
    切実ながら白く爽やかでもあるその読後感は唯一。

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    2025年11月24日
  • 別れを告げない

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    韓国済州島というと観光地としてのイメージしかありませんでした。韓国の歴史、済州の歴史を知ってこそこの作品を理解出来るのだろうと思います。この作品の底流に流れるもの、シンシンと降り積もりつづく雪は単に空から降り積もっているのみならず、心の中にも積もり続けているんだろう。

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    2025年11月21日
  • すべての、白いものたちの

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    自分の記憶にある白いものはなんだろうか。最初に見た白はなんだったか。そして印象に残った白はなんだったか。白い机、白い帽子、白い雲、白い歯。机も帽子も雲も歯も白いをつけると、白く染まっていく。白い黒はどんなイメージなのか。

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    2025年11月16日
  • ギリシャ語の時間

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    言葉を話せなくなった彼女とギリシャ語講師以外の登場人物や、物語の中での「私」や「彼女」が誰のことなのか、誰が語っているのか、その場面ごとになかなか把握できなかったこともあり、感想を書けるほど読み深めることはできなかったけれど、ハン・ガン氏の抒情的な世界の一端に触れる良い経験になった。

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    2025年11月15日
  • すべての、白いものたちの

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    解説がないとどんな本なのか理解できなかった。
    ただ文章が素敵で、詩を読んでるみたいだけど小難しくなくて、とても良かった。本棚に置いておきたい本。

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    2025年11月10日