ハン・ガンのレビュー一覧

  • 別れを告げない

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    ネタバレ

    主人公がたどり着いたインソンの家にインソンは確かに現れて、小鳥もいたのだと思う。
    インソンが語った島や母親たちの歴史にときに眉をしかめ、身震いした。
    激しく表現される怒りより静かな怒りの方が深いことはままあるが、作者の筆を動かしたのはその静かな怒りと忘却を拒む強い意志に違いない。
    ハン・ガンが描き出す美しく繊細で静謐な世界に浸るのはこの上ない喜びだが、詩のような美しい描写を続ける彼女の目は歴史の傷から逸らされることはない。
    じゃあ、自分に何ができるのかというと、事実を知り悼むこと。
    何処の国のできごとなのかとか、自分は何処の国の人間なのかなど関係ない。
    わたしたちは同じ血の通った人間なのだ。

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    2025年07月01日
  • 回復する人間

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    どれもこれもリアルな傷を抱える女性たちが(ひとりだけ、普通の男性が出てくる)でてきて、それぞれの回復の過程が描かれている。
    回復仕切らない人もいるし、回復を拒む人もいる。
    だけど、人は自然状態で回復していく生き物なのだと感じる。
    生きることは痛いことなのだろう。

    短編「回復する人間」の文章が好きでした。
    文字で遊んでるというような、軽いのに重く静かで、圧巻でした。
    「火とかげ」の痛みと鮮やかな色を感じさせる物語も良かった。
    復活に色がないという着地も見事。

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    2025年06月24日
  • 回復する人間

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    静かで落ち着いた美しい文章なのに鋭利な刃物を突きつけられているよう。読みながら心のどこかがヒリヒリした。「左手」はとても怖かった。印象に残る短編が詰まっている。

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    2025年06月01日
  • ギリシャ語の時間

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    美しい痛みに満ちた物語。狂おしい寂寥に満ちた物語。言葉を失った女と視力を失い続ける男。ギリシャ語の授業で出会った二人の喪失を通してこの世界の闇を炙り出す。彼の彼女の数々の記憶から見出される孤独と悲しみ。生きていく上で欠かせない存在の消失。哲学的でありながら詩的な散文。ハン・ガンの見る世界は優しい儚さと繊細な苦痛に満ちている。生きることはあがくことかもしれない。生きることは辛いことかもしれない。それでも生を選択し続ける。神なんて存在しない。ただ、他者を求める狂気に似た感情と愛が存在するだけ。全てを許す愛が。

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    2025年05月23日
  • ギリシャ語の時間

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    ネタバレ

    「この本は、生きていくということに対する、私の最も明るい答え」。ハン・ガンはそう語る。なぜそう言えるのか?
    端的に言えば、人間は完全に理解し合えなくても互いに存在を認め合うことで、間に<剣>が置かれて触れられない世界でも、なんとか生きていけるから…だろうか?
    だからハン・ガンは「『ギリシャ語の時間』はまだ終わっていない。この本の結末は、開かれている」、開かれている…と語っているのではないだろうか?

    この物語は、視覚を失っていく男と自ら口を閉ざす女、の両面から「断片的」に語られる(この断片的、はハン・ガン作品の特徴、特に『すべての、白いものたちの』では)。
    断片的な表現により、読者を積極的に言

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    2025年03月31日
  • 回復する人間

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    ここ3ヶ月ほどの間に『すべての白いものたち』『菜食主義者』『そっと静かに』の3冊を読みハン・ガンさんに強く惹かれる自分と向き合う充足した時間を過ごしてきました。
    『回復する人間』は詩的で静謐な文章が美しい『すべての白いものたちの』と同じ斎藤真理子さんが翻訳された短編集です。
    初出年月日の1番古い「火とかげ」が7つの短編のうち最後に掲載されていて2003年初出。韓国でのタイトルにも使われたこの作品が、韓国の文芸評論家シン・ヒョンチョルに「この本の関心事は(中略)〈傷と回復〉だ」と言わしめた7つの物語のいずれの基底ともなっているテーマが2003年の時点で作者にとって重要でその後ほぼ10年に亘り深く

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    2025年03月29日
  • 回復する人間

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    読んだときに自分が、どんな状況か、どんな気持ちでいるのか、にもよるかもしれないけど、素晴らしかった。ハン・ガンは初めて読む。衝撃的。すぐに再読。今度はなるべく音読している。

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    2025年02月07日
  • ギリシャ語の時間

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    初めて読んだ韓国文学です。
    言葉で声に出されない感情への美しく、深く、鋭い洞察。雪のような冷たさと微かな明るさが読後にしんしんと降り積もるようでした。

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    2025年02月01日
  • ギリシャ語の時間

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    ネタバレ

    静かに、繊細に紡がれていく言葉が印象的だった。
    主人公が捉えている景色や感覚、思考が、詩のようだった。

    この小説は、章ごとに視点が入れ替わる。
    女主人公のときは三人称、男主人公のときは一人称で書かれている。
    手紙文で構成されている章があったり、詩が挟まったりもしている。
    小説ってこんなに自由でいいんだ、と思い、視界が開けたような感覚になった。

    話せなくなった女性は、これから先、話せるようになるかは分からない。
    ギリシャ語講師の男性は、今後も少しずつ視力を失っていくだろう。
    問題は解決されないまま残っている。
    しかし、二人の人生は光に満ちていくのではないかと思える。
    彼らが身体を触れ合わせて

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    2025年01月27日
  • 回復する人間

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    短編集。初出は2003~2012年だが、作品の印象はほぼ変わらない。紹介文の「強靭さと繊細さを併せ持つ清冽な文体で描かれた7つの物語」というのがぴったりくる。内面に深く沈み込んで思考が流れていくような作品。男女の日常を描写しながらちっとも俗っぽさを感じさせない洒落た作品。いずれも人間に向き合って見据えている。

    軽い内容の作品はひとつもないわけだけれど、なぜか読みやすいと思った。退屈さもなく、次はどうなっていくのだろうと読み進むことができた。短編だからだろうか。難解でもなく、読み応えのある読書の愉しみがあった。

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    2025年01月08日
  • 回復する人間

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    訳者解説によると、傷と回復をテーマにした短編集。ハン・ガンの邦訳のなかでも、著者の考えていることが理解しやすいほうだと思う。希望の見える明るいものもあり、希望の見えない暗いものもある。しかし、これだけは言えるのは、ハン・ガンのかんがえる回復は、元どおりの健康な状態に戻ることではなく、元には戻れないけれど、以前とは異なる感受性を受け入れながら、自殺せずになんとか生きていくことだ。うわべだけの幸福を生きるよりも痛い真実を受け入れることのほうが貴いのだ。いちばん長い最後の「火とがけ」がすばらしかった。

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    2024年12月13日
  • ギリシャ語の時間

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    ハン・ガン6冊目。これはわかりやすかった。回復の物語として。人が人に心をよせることその温かさについて。
    朝刊で、ノーベル賞もらってる記事を見た日に。

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    2024年12月12日
  • ギリシャ語の時間

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    ネタバレ

    視力を失っていく男と発話できなくなった女性とがギリシャ語の授業を通じて出会い、異国での外国人差別や親権の喪失で受けた心の傷を癒やし合いながら、回復していく物語。純文学なので、女、男それぞれの記憶と感性とが研ぎ澄まされていくなか、読者それぞれにとって何割かは理解不能な文章が続くが、しかし、意識の流れを追う文章がとにかく詩的である。

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    2024年12月11日
  • 回復する人間

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    4冊目のハン・ガン。繊細な心の持ち主だなあ。「生きる」ことを、その内面をとても大事にしているのに感化される。写真で見る通りのやさしい人なのだと思う。

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    2024年12月04日
  • 回復する人間

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    特に「火とかげ」が印象に残った。私も去年は茶碗を持つのもきついくらい両手が痛くて使えなかったから投影して読んでしまった(ハンガンさんもこれを執筆していたころ手が痛くてタイピングが出来なかったらしい)。画家の主人公は、事故で手に痛みが残り絵も描けなくなるし夫との関係もうまくいかなくなる。そんな彼女を支えてくれるものは、昔登山をした時偶然あった男性との記憶とQという画家の絵。記憶だけで残る男性と友人ソジンが繋がって、ソジンの子供が飼ってる前足を切断したトカゲからまた足が再生されていく描写で主人公に細い光が差し込みだすのがわかる。

    トカゲの手が再生するように、最後、主人公は以前と違う手法で絵を描い

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    2024年11月30日
  • 回復する人間

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    回復する人間とフンザがよかった。次点で明るくなる前に。
    想像をしすぎてどこにもないどこかになってしまった理想郷。理解し合えないことがだからといって愛していないことにはならない。
    いまのところ彼女の作品の中でどれかひとつだけ読み返すならこの短編集。

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    2024年11月17日
  • 回復する人間

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    ネタバレ

    ハン・ガン4冊目、菜食主義者に続いて読んだ中では好きかもしれない。ギリシャ語の時間も面白かったのだけど。
    7つの短編集ということもあり、すらすら読んでしまった。エウロパ、左手も好きだったけれど、青い石、火とかげ、の二篇はさらに好きだった…。

    「エウロパ」
    僕とイナの"友情"について。僕はイナのことを愛しているし、女性の格好をして出歩くことをイナといる時にはできるといういくつもの設定で、エウロパというタイトルは僕でありイナなのだろうか?とまだ理解しきれていないところはあるのだけれど。
    …僕は黙ってベッドに近づき、イナに短くキスをする。イナの唇から苦いタバコの匂いがする。彼女

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    2024年10月18日
  • 回復する人間

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    ネタバレ

    ハン・ガンの短編集。気になっていた白水社のエクス・リブリスシリーズを初購入。

    訳者のあとがきにあるように、傷口が回復する前には痛むもの。人の心も同じで、様々な挫折、諦め、苦悩の果てに、回復の兆しが見えてくる。そんな作品が多い短編集だった。
    相変わらず文体や情景が綺麗で、読んでいるだけで心が洗われた。以下、作品毎の感想。

    ◎明るくなる前に ★おすすめ
    弟を亡くした姉。自分がもっと気にかければと後悔し、以後、自身を罰するように生きる。“そんなふうに生きないで”。この祈りが刺さる。

    ◎回復する人間
    誰かの視点で語られる、決して分かりあうことのできなかった姉に先立たれた“あなた”の話。回復するた

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    2024年01月03日
  • 別れを告げない

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    済州島での虐殺を小説にしたものであるが、虐殺そのものではなく、主人公とその友人の現在の大雪の風景を背景として考えるものである。あとがきでは33ページで朝鮮戦争から済州島での虐殺が説明されている。なかなか日本では詳細を理解することが難しいので、この小説は済州島虐殺を知っている人が前提であるが、日本人にとっては地図があるほうが助かる。

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    2026年02月06日
  • 別れを告げない

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    今ではすっかりリゾート観光地として有名な済州島。80年弱前のその島で、怖ろしい虐殺事件が起こっていたことをうかがわせる影はまるで無いように見えてしまう。

    けれどそうではなく、実際に今もなお数知れないほどの遺体が土の下や海の底に埋もれたままで、縁者を探す人、真実を求める人たちがいる。そのことを、この本を通じて、そしていくらか調べることで、きっとほんのわずかにすぎないだろうけれど知った。知れて、良かったと思った。

    私小説に近い体裁で綴られる二人の女性の物語の現在では、しんしんと重苦しく雪が降り続ける。あらゆる生命の活動を抑えつけるような圧迫感のある静かな雪は、一方であたたかな命を持つ頬では他愛

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    2026年02月03日