ハン・ガンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ静かに、繊細に紡がれていく言葉が印象的だった。
主人公が捉えている景色や感覚、思考が、詩のようだった。
この小説は、章ごとに視点が入れ替わる。
女主人公のときは三人称、男主人公のときは一人称で書かれている。
手紙文で構成されている章があったり、詩が挟まったりもしている。
小説ってこんなに自由でいいんだ、と思い、視界が開けたような感覚になった。
話せなくなった女性は、これから先、話せるようになるかは分からない。
ギリシャ語講師の男性は、今後も少しずつ視力を失っていくだろう。
問題は解決されないまま残っている。
しかし、二人の人生は光に満ちていくのではないかと思える。
彼らが身体を触れ合わせて -
Posted by ブクログ
特に「火とかげ」が印象に残った。私も去年は茶碗を持つのもきついくらい両手が痛くて使えなかったから投影して読んでしまった(ハンガンさんもこれを執筆していたころ手が痛くてタイピングが出来なかったらしい)。画家の主人公は、事故で手に痛みが残り絵も描けなくなるし夫との関係もうまくいかなくなる。そんな彼女を支えてくれるものは、昔登山をした時偶然あった男性との記憶とQという画家の絵。記憶だけで残る男性と友人ソジンが繋がって、ソジンの子供が飼ってる前足を切断したトカゲからまた足が再生されていく描写で主人公に細い光が差し込みだすのがわかる。
トカゲの手が再生するように、最後、主人公は以前と違う手法で絵を描い -
Posted by ブクログ
ネタバレハン・ガン4冊目、菜食主義者に続いて読んだ中では好きかもしれない。ギリシャ語の時間も面白かったのだけど。
7つの短編集ということもあり、すらすら読んでしまった。エウロパ、左手も好きだったけれど、青い石、火とかげ、の二篇はさらに好きだった…。
「エウロパ」
僕とイナの"友情"について。僕はイナのことを愛しているし、女性の格好をして出歩くことをイナといる時にはできるといういくつもの設定で、エウロパというタイトルは僕でありイナなのだろうか?とまだ理解しきれていないところはあるのだけれど。
…僕は黙ってベッドに近づき、イナに短くキスをする。イナの唇から苦いタバコの匂いがする。彼女 -
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ネタバレハン・ガンの短編集。気になっていた白水社のエクス・リブリスシリーズを初購入。
訳者のあとがきにあるように、傷口が回復する前には痛むもの。人の心も同じで、様々な挫折、諦め、苦悩の果てに、回復の兆しが見えてくる。そんな作品が多い短編集だった。
相変わらず文体や情景が綺麗で、読んでいるだけで心が洗われた。以下、作品毎の感想。
◎明るくなる前に ★おすすめ
弟を亡くした姉。自分がもっと気にかければと後悔し、以後、自身を罰するように生きる。“そんなふうに生きないで”。この祈りが刺さる。
◎回復する人間
誰かの視点で語られる、決して分かりあうことのできなかった姉に先立たれた“あなた”の話。回復するた -
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ものすごく静謐で、読んでいると自分の体も本と一緒に音のない場所に沈んでいくかのような感覚があった。なるべく静かな場所で、できれば冬読むのがおすすめ。
小説というよりは詩集に近く、映像が頭に浮かんでくるので、美術館で白にまつわるインスタレーションを見ているようでもある。
特に雪の描写が多かった印象。今年から雪国に引っ越したので、ハン・ガンさんの紡ぐ美しく真摯な言葉を通してこれから雪や冬を感じられるというのは嬉しいことだ。外を歩く時、たまにはイヤホンを外して、自分でも五感を働かせて繊細に世界を感じてみたいとも思った。
物語の構造?仕掛け?はあとがきを読んでからわかったのだけど、文学でしか表現できな