あらすじ
キャバレーのホステスになった修道女の身も心もボロボロの手紙、上京して主人の毒牙にかかった家出少女が弟に送る手紙――。ラブレター、礼状、公式文書、メモ……、「手紙」だけが物語る笑いと哀しみがいっぱいの12の人生ドラマ。
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Posted by ブクログ
読めば分かるこのすごさ!
こんなにゾクゾクする連続短編小説、読んだことないです。(ただ私、読書量そんなに多くないのですが)
プロローグとエピローグを除き、11の短編それぞれバラエティーに富んでいて、手紙の形式をとっているのが特徴。手紙文に溢れる人間模様が濃厚です。男女間のドロドロとした残酷な部分、「ALWAYS 3丁目の夕日」的な、昭和の郷愁を誘う部分が入り混じり、そこにひねりが加えられ・・・・
次にどんな話がくるのか知りたくて、最後の方はノンストップでした。短編ごとにエッと驚くようなオチがあり、エピローグでまた、驚きの結末が待っています!
Posted by ブクログ
とてもとてもおもしろかった。
どんでん返しのどんでん返し。
様々な手紙を通じて展開されるのがおもしろい。
差出人と宛先、日付に目を凝らしてしまう。
手紙から人生を読み取れる不思議。
格式ばった手紙、くだけた手紙、LINEとかの時代と違って、手書きで書くという行為で、意識はベールをかぶる。
だからおもしろいこちらの小説。
「赤い手」が特におもしろかった。
Posted by ブクログ
手紙を通して12人の登場人物の人生や人柄が分かるところが面白く、すごい。朗読劇とかにしても面白そう。(ひょっとしたら、あるのかしら?)
最後の章で、物語は一気に変わる。私が今まで読んでいたものは全てプロローグだったのか?面白った!
Posted by ブクログ
いやぁ、とんでもなく面白かったです。一気読みでした。
手紙という形式だけで語られる、様々な人間模様を描いた連作短編小説。意外性やおどろき、そして悲哀やユーモアも交えて語られます。
どの作品もよかったのですが、「鍵」がベストですかね。感情の振れ幅が半端なかったです。それをいえば「葬送歌」も感情があちこちに行って面白かったです。
「赤い手」もすごいです。小説としてはあり得ない形式なのに、そこに記されてある年月日から必死に何かを読み取ろうとしてしまいます。
そしてエピローグです。これは正直、必要あるのかどうか微妙なところですが、これがあるからこその想いというものも存在します。なのでそれを考えると、あってよかったのでしょう。
長い間気になっていた本でしたが、手にとって本当によかったです。本当に面白かったです。
Posted by ブクログ
主人公から誰かに宛てた手紙であったり、挨拶文であったり、役所への届け出であったり。書簡形式で綴られる短編集。
手紙ならではの相手によって態度をガラリと変える様子や、書き手の思い込みが後々の手紙で波乱の展開に繋がっていくところが面白かった。
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時代背景は昭和50年代
それぞれ独立しているように見えて、実は最後に綺麗に纏まってくれます
皮肉が効いていたり、一方通行の手紙だったり、バラエティに富んでておもしろかった!
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『ひょっこりひょうたん島』を楽しみにしていた子供時代、学園祭では、『ひょっこりダンス』を皆で踊りました^ ^
なので、劇団『こまつ座』のお芝居も観に行きましたが、本は読んでいなかったので、お勧めにしたがって読んでみました。
皆さんが感想に書いている通り、ザ昭和!
引きずる寂しさ?悲哀?、、しかしながら、流石ストーリーテラー、一話毎に「なるほどね」感心。
戦争、貧困を経験した人達は強いですね。
星4つに留めたのは、『暗い』からだけです。
Posted by ブクログ
2020年、文庫本発行より40年たった井上ひさしの短編集が突如売れ始めた。中公文庫20年〜23年の売り上げでは、ベスト6に入る健闘ぶりだったという。調べると、ある書店員の作ったポップがキッカケであり、決してドラマ化や映画化がキッカケではないところに、この短編集が「本物」である証があるのではないか。
連載されていたのは、戦後から32年経った1977年の頃。登場人物全員に、若者には高度成長期の光と影を投影し、年長者には戦後30年の復興の影を背負わせているのも上手い。
ともかくも、手紙、手紙、手紙、手紙の数々「だけで」物語を創って仕舞う作者の手品のような手際を堪能するべし。勿論、時には公文書だけで物語を進めたり、手紙の中に戯曲や小説を入れ込むという「趣向」も愉しむべし。
何故、21世紀も20年も経った頃に、この作品がスマッシュヒットしたか。色々理由はあるだろうけど、多分2つはあると思える。
①インターネット世代から見て、手紙は多くの違いがあって、昭和の時代性もあり「それだけで」とっても新鮮に思えた。
②手紙の持つ、熟考した長文の持つ「嘘」の魅力、時間のかけた「やり取り」からくるドラマ性が、読者を魅了した。インターネットならば、すぐに解決する問題が数日かかるからこそ、浮き彫りになるテーマがあるのだ。
人情話もあれば、謎解きサスペンスもある。多くはあっと驚く「どんでん返し」も多い。最終章は全登場者再登場!という力技さえ見せている。もし、創作教室みたいな講義があれば、この薄い短編集を「教科書」に強く推薦したいと思う。
Posted by ブクログ
キャバレーのホステスになった修道女の身も心もボロボロの手紙、上京して主人の毒牙にかかった家出少女が弟に送る手紙など、手紙だけが物語る笑いと哀しみがいっぱいの人生ドラマ。
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プロローグ 悪魔
葬送歌
赤い手
ペンフレンド
第三十番善楽寺
隣からの声
鍵
桃
シンデレラの死
玉の輿
里親
泥と雪
エピローグ 人質
帯にあったどんでん返しの見本市に心底納得。役所の書類で物語が進む手法(赤い手)に驚き、(里親)のオチも、はっとしました。エピローグでは、前に戻って人物確認したり読書の楽しさを再確認しました!いつか再読するのでそっと本棚へ。
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Posted by ブクログ
ミステリー好きにも有名な作品らしいので手に取った
手紙・書類だけで構成された連作短編集
プロローグから引き込まれ、刮目した章も2つ3つあった
叙述系とは異なるが、〇〇で構成されていた作品がベストかな
まさに「やられた」読書体験
全体的にやや時代がかった表現が散見されるので、いま読んだ評価だと星4かな
Posted by ブクログ
初版を見たら1980年ということに驚いた。所々表現が古い感じはするけど、構成が面白くてどんどん読み進めた。特に、『赤い手』には驚いた。役所に提出する書類だけで、1人の女性の人生が物語のように感じられて面白かった。
Posted by ブクログ
手紙で
こんなに沢山の種類の短編
面白かった。
最後また 面白かった。
今はLINE メールとかだけど
手紙というツールで
こんなに物語が出きるなんて凄いと思った
Posted by ブクログ
手紙形式で綴られた12の短編からなる連作小説です。各話は独立していますが、最終章で登場人物たちが交錯し、全体として巧妙な構成が明らかになります。以下、各短編の詳細なあらすじを紹介します。
1.プロローグ:悪魔:上京した柏木幸子は、就職先の社長・船山太一と不倫関係に陥ります。彼の「妻と別れる」という言葉を信じていましたが、それが嘘であると知り、絶望の末、社長の娘を殺害してしまいます。拘置所からの最後の手紙で、彼女の悲劇的な運命が描かれます。
2.葬送歌:劇作家志望の女子大生・小林文子は、自作の脚本を恩師の中野慶一郎に送り、批評を求めます。しかし、彼からの返信には意外な事実が綴られており、彼女の期待は裏切られる形となります。
3.赤い手:出生届や死亡届など、公式書類のみで構成された異色の作品です。これらの書類を通じて、一人の女性・前沢良子の波乱に満ちた人生が浮かび上がります。最後に本人からの手紙が添えられ、物語の深みを増しています。
4.ペンフレンド:文具会社に勤める本宮弘子は、北海道旅行の案内役を雑誌で募集し、数名の男性と文通を始めます。最終的に一人の男性に決めますが、同僚の西村からの指摘で、思わぬ真相に気づかされます。
5.第三十番 善楽寺:「赤い手」に登場した吉川俊夫のその後が描かれます。飲酒運転事故を起こした彼は、自らに課した贖罪のため、ある寺院で新たな人生を歩み始めます。
6.隣からの声:新婚早々、夫の長期出張で一人暮らしを始めた妻・水戸博子。彼女は隣人との交流を手紙で夫に報告しますが、次第に隣人の話ばかりになり、彼女の精神状態に異変が生じていることが示唆されます。
7.鍵:画家の夫・鹿見木堂が山に籠る中、妻・貴子は自宅で強盗被害に遭ったと手紙で報告します。しかし、夫は手紙の矛盾を指摘し、事件の真相を明らかにします。この作品は、手紙の文面に隠されたトリックが秀逸です。
8.桃:セレブの婦人団体が養護施設にボランティアを申し出ますが、施設長・小原純子からの返信には、ある小説に沿った形で丁重に断られる内容が綴られています。有難迷惑の典型を描いた作品です。
9.シンデレラの死:家庭環境から逃れるため家出し、女優を目指すも挫折した女性・塩沢加代子。彼女は高校時代の恩師に宛てた手紙で、自身の過去と向き合いますが、手紙の真相と宛先の意外な事実が明らかになります。
10.玉の輿:病身の父のために裕福な男性と結婚した長田美保子。しかし、結婚生活は上手くいかず、元恋人への手紙で心情を吐露します。引用された手紙の内容が、物語に深みを与えています。
11.里親:バーで働く甲田和子は、作家志望の青年・藤木英夫に好意を抱きます。彼は師匠を殺したと告白しますが、和子は手紙のやり取りを通じて、事件の真相と彼の誤解に気づきます。
12.泥と雪:夫の浮気に悩む津野真佐子の元に、学生時代の友人・佐伯孝之から手紙が届きます。彼との文通を通じて、彼女は離婚への考えを深めますが、これらの手紙にはある人物の策略が隠されています。
13.エピローグ:人質
これまでの物語の登場人物たちが、ホテルでの人質事件で再登場します。犯人は柏木幸子の弟・弘で、彼の要求や事件の展開を通じて、各キャラクターのその後が描かれ、物語は大団円を迎えます。
『十二人の手紙』は、手紙という形式を巧みに活用し、各人物の内面や人間関係を深く描写しています。各短編の結末には意外性があり、読者を引き込む構成となっています。最終章での登場人物たちの交錯は、全体の物語に統一感を与え、読後感をより豊かなものにしています。
Posted by ブクログ
手紙だけで構成されているという面白い内容。一体どんな話かと思って読んでみると、不気味なものだったり、少し笑えるものだったり、考えさせられるものだったり。
手紙を通じて考えさせられる、それぞれの人生。
特に役所への届出だけで構成されている修道女のエピソードが印象的だった。
また、昭和の時代感も節々に感じる事ができた。
メッセージが相手に瞬時に届く事が当たり前の現代だからこそ、手紙の良さを再確認すべきだと思う。
Posted by ブクログ
手紙というと近年は人情物の定番アイテムだが、本書は70年代の作品ということもあるのか、意外とサスペンス的なドンデン返しを主体とした構成となっている。
電話やメール、SNSと、通信手段が格段に発達した現代から見ると随分まどろっこしい感じもするが、そこも含めて味わってほしい作品。
Posted by ブクログ
手紙など書物媒体が使われた短編小説の傑作。
そして小説特有のあざとさを極力排除した作品でもある。結末を違う形に脚色すればもっとドラマティックなストーリーが期待できるのをあえて素っ気なく終わらせる(もちろん意外な結末の作品もある)ことで、その演出により物足りなさよりも現実世界の有り様を淡々と提示する、人生ってこんなモノというリアリティ効果をもたらすことにも成功している。さらに、プロローグと呼応したラストの短編は各短編の主な登場人物たちが一堂に会するという趣向も素晴らしい。
そして最後まで読んで、各短編でのあざとさの排除は、実はエピローグで出てくる登場人物たちのその後を示唆するためだったのがわかる。
手紙(書簡やメモなど)という手間も時間もかかる遺物的伝達手段の特徴を存分に活かした井上ひさしの本作における職人技は、昨今ではあまりもう使えない素材だけに余計味わい深い。
例えば、ある女性の一生を書類だけで表現する「赤い手」や手紙文例集の例文で構成された「玉の輿」など小説の無限大の可能性にも挑戦している。
PS.
DV亭主でも有名だったことは記しておきます。
《ひさしと当時の夫人・好子(麻矢の母)は共に強い個性の持ち主で、互いに妥協することをしなかった。夫婦喧嘩は大変派手で、場所をかまわず「やったらとことん」で、子どもが二人の間に介入することも嫌っており、子どもに対して暴力をふるったことはなかった。当時は家庭内が険悪だったわけではなく、好子はひさしにとって「優秀なプロデューサーであり、マネージャーであった」と石川は記している。執筆でひさしの足がむくむと好子はそれを取るためのマッサージをした。やがて、筆が進まなくなるなどで、ひさしは好子に暴力を振るうようになり、編集者も「好子さん、あと二、三発殴られてください」などと、ひさしの暴力を煽った。殴られて顔が変形しても「忍耐とかそんな感情ではなく、作品を作る一つの過程とでも思っているような迫力で父を支えていた」と石川は記している。》Wikipedia
いや、編集者さん、煽るんじゃぁなく奥さんの代わりにアンタが殴られろよ。
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全部の短編が手紙、もしくは書簡形式で書かれており、最初と最後で印象がガラリと変わるのが印象的だった。そして、プロローグとエピローグの仕掛けも見事だった。
Posted by ブクログ
全て手紙という形式の短編小説。
前に書かれたもので時代を感じさせる描写が多いがそれがまた良い。
淡々と物語が進むがそこから見えてくる人間模様が面白かった。
Posted by ブクログ
これは昭和だ!
帯は笑いと哀しみが、って書いてあるけど、この哀愁はやはり昭和である。孤児院みたいなのやら、田舎から出てきた娘のつらい境遇やら、今はない、とまでは言わないけど、描かれ方がレトロで、とはいえ明治とまでは言わないので昭和なんである。なんでろくでもない男に簡単に引っかかるのか。。こういうの読んで勘違いする男が現れるわけですよ。知らんけど。
とりあえず桃のエピソード、この修道院長の例え話が全く分からんのだけど。一体この話から何を受け取れと。でも金持ちのおばちゃんも理解できなかったんだろうなぁ、という意味で妙に味わい深い。
Posted by ブクログ
短編であり長編
全章が独立してるけど手紙でのやり取りで書かれてる
そしてエピローグで全回収
ミステリーだったんだ…
SNS同様に手紙の持つ素晴らしさや胡散臭さ
遊び心をくすぐるツールだなって感じましたね
筆者に送る手紙にはこう記したいな
「参りました」
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手紙って感情こもっちゃう
気持ちが存分に現れる
伏線回収というか復習しちゃった
1話目の衝撃
今も昔も男と女ってどうしてこう、、
そうなっちゃうのかな
Posted by ブクログ
書簡形式の12のミステリ。
不穏な雰囲気漂う手紙やメモや届書きの数々で浮かび上がるストーリー。
一瞬で耳や目を使ってコミュニケーションが取れる世の中と違い、文章で進む世界はじれったかったり不完全だったり、そこが楽しめるのがこの本の醍醐味。
物語それぞれのラスト数行で
えー!そんな…
なーんだ、良かった
うわ、そうなるか。
など気持ちが動かされる。
Posted by ブクログ
文通形式で、それぞれの人生やそれぞれの現在置かれている状況がわかる短編集。
どの短編も面白かった。
でも話がいまいち理解できないものもあったけど…
けれど最後にはこの登場人物たちがつながって、ミステリー風でもあった。
かなり昔の作品のようだが、今読んでも違和感なく一気読みしてしまった。
Posted by ブクログ
これは新しい。
手紙だけで構成されている短編集ミステリー。
特に、役所の書類だけで1人の女の半生が分かる「赤い手」が印象的だった。
全部別々の話のように見えて、同じ登場人物がひょっこり他の話にも出てきたり(古川俊夫)、エピローグはオールスター感謝祭みたいになってたりなかなか面白味があった。
ただ短編集ということもあり、どんでん返しの衝撃度は軽め。
Posted by ブクログ
手紙形式という珍しい形式をとった短編ミステリ集。
最後に全体通しての伏線回収も。
後書きにもあったが、
手紙形式という形が、より親密な印象、切迫感、などが伝わりやすく、受け手としての臨場感を持ちながら読むことができる。
面白かった。
書店の触れ込みから本書を読んだが、
その際記載されていたほどの驚き/感動はなかったため、星は三つ。
ただ、短編ごとに予想を裏切られるので、ジェットコースターの少し落ちる感覚を何度も味わえるような作品。
Posted by ブクログ
おもに往復書簡の形式で展開される12話の短編集。
ひとつひとつの話に、意外な結末。手紙から伝わる登場人物の変化、状況の変化にドラマがあり、切なくなったり、ニヤニヤしたりしながら、さくさくと読み進められた。
けど、手紙にしては説明っぽいのが気になってしまった。
Posted by ブクログ
手紙だけでストーリーを展開させる試み。
前半は面白かった。
複数の相手に出す文章から、書き手の嘘が浮かび上がってくる様子が面白かった。
後半にかけてだんだんとパターン化されてきて、十二人は多かったかも。
井上ひさしの描く市井の人々の小さな嘘は面白い。
Posted by ブクログ
軽妙なテンポ感でさくさく読める。
特に「赤い手」は、公的文書の列挙で物語が成立することに驚いた。それだけに、最後の、女性からの手紙が切ない。
普段あまり短編小説は読まない。本にはどうしても、物語としての壮大さや、一定期間その世界に没頭させてくれることを求めてしまい、短編小説ではそれが成し得ないと思っていた。だが、短編に見えて、実は裏で繋がっているのでは?といううっすらした勘が、最後のエピローグで予想外の回収をされ、短編小説にもこういう楽しませ方があるんだ、という発見にもなった。