あらすじ
「別の生き物になりたい」――筋トレに励む会社員・U野は、Gジムで自己流のトレーニングをしていたところ、O島からボディ・ビル大会への出場を勧められ、本格的な筋トレと食事管理を始める。しかし、大会で結果を残すためには筋肉のみならず「女らしさ」も鍛えなければならなかった…。鍛錬の甲斐あって身体は仕上がっていくが、職場では彼氏ができてダイエットをしていると思われ、母からは「ムキムキにならないでよ」と心無い言葉をかけられる。モヤモヤした思いを解消できないまま迎えた大会当日。彼女が決勝の舞台で取った行動とは? 世の常識に疑問を投げかける圧巻のデビュー作!
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日々ジムに通い、トレーニングに明け暮れるU野は、ある日スカウトされ、ボディビルの大会に出場する事に。「筋肉だけで終わる話じゃないの」美容に対する意識が足りない事で指導者から注意されるU野は、筋肉をアピールする大会における美容の価値とは何かを思案するーーー
初めから最後まで、ずっと面白かった。
トレーニングし始めた理由を、別の生き物になりたいと語るU野は、ボディビルの大会に出場するにあたり、他者からの評価に目を向けなければならなくなる。髪型、ハイヒール、脱毛、笑顔、それぞれに疑問を抱きながらも、勝利のために全て行ったU野。そんなU野が迎えた大会にて得た結果、出した結論には驚かされたと同時に納得させられた。
大会にベストな状態で臨むために、行った数々の努力や、母との関係、そして何よりボディビルにとって、社会にとって見た目が与える数々の影響がU野を取り巻き、足枷となりながらも進み続ける姿には勇気を貰う。「おもしろい」「わかるなぁ」「かっこいい」「いいなぁ」ひたすらにそう感じ続けた一冊でした。
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めちゃくちゃ面白かった。筋トレ小説。
とても背中を押されるし、モチベーションが上がる。
この小説を知った1年前は、「筋トレかぁ興味ないなぁ」って思ってたけど、自分がジムに通い始めてから読むとめちゃくちゃ面白いし、いい教材…!!
そうなの。ラットプルダウンは、始めたては背中に効かせにくいのよね!!共感!まさに今の私!!笑
ここまでストイックにできると楽しいやろうなぁ。
ジェンダーへのもやもや、ルッキズムへのもやもや、なんとも言葉に言い表しにくい(そういうものだと刷り込まれて生きてきちゃったから)ことたちへの不満感がヒシヒシ伝わってきて大共感。
そしてたまに挟まる力強い言葉たち。
最初、性別を勝手に解釈してた。
私も、ジェンダーステレオタイプが凝り固まってるんだって思い知った。
「この小説どうやって終わるんやろう」と思ってたところに、とってもスッキリかっこいい結末で大好きだ!!
最後の、山崎ナオコーラさんの解説も理解が深まったし、石田さん他の作品も読みたくなった。
今のところ『冷ややかな悪魔』しか読んだことない。こっちの方が好き。
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素人の私目線ですがジムの描写があまりにも「やってる人」っぽくてあるある〜!とか、上の人達だとそんなこと思ってるのか〜とか、リアルに感じられました。パワーラックとかベンチとか使いたかったのに、ようわからん事してる人(失礼)が数十分占領してて使えない時とか…あるよね…
大会に勝つために歩き方とかポージング、脱毛、タンニングなどは予想の範囲だったのですが、髪型まで…てかエクステ!?とびっくりしました。別に男みたいになりたくて筋トレするわけじゃないけど、だからといって「女らしく」したいわけでもなく、ただ鍛えたいなぁって気持ちで筋トレしてるだけじゃ勝てない世界なんですね…
面白かったです!!
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初めて挑戦した筋トレ小説。素人でもなかなか楽しく読める、そして共感もする内容だった。
作中では、主人公であるU野がボディ・ビル大会に出場するまで、体や自信の変化をU野は感じつつも、「女性らしさ」に関する疑問を変わらず抱えていた。
一方、読者である私も、女性向けのボディ・ビルの世界で、ここまで女性らしさを求められている現実に驚いたものである。単に「筋肉をつけたい、強くなりたい」という動機で筋トレを始め、ボディ・ビル大会に挑んだ結果、自分の筋肉を美しく見せるために「女性らしい」美しいものを身につける、「女性らしい」所作を行う。こういった必要とされる行動を鑑みると、「男とはこうあるべき、女とはこうあるべき」という思想が筋トレ世界でも一部残っていることに気付かされる。
ただ筋トレ小説として興味深いだけでなく、現代社会への風刺としても考えさせられる内容であった。
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ボディビル大会に出るための努力の日々を描いたストーリーは極めてシンプルなのだけど、大会準備の細かい描写には知らない世界を覗く興味深さがあり、文章からはさりげなく高いギャグセンスを感じ、めちゃくちゃ面白かった!本当に過不足ない、完成された166ページだと思った。石田香穂さん、他の作品も読みたい!
自分もパーソナルジムで筋トレしたことがあるので、そもそも題材からして興味があったが、筋トレなんて全く興味ない方や、全ての女性におすすめできる。
それにしても、文学とは遠い印象の筋トレでさえ、こんな面白い小説になるとは。だから小説家ってすごいし、読書はやめられない。
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趣味の筋トレが高じてボディビル大会に出場する事にした女性のお話
ジムで自己流の筋トレをしているU野
ボディビル業界では有名なO島から、「うちで鍛えたら、別の生き物になるよ」という誘い文句からジムを移籍し、初めてボディビルの大会に臨む事になる
しかし、女性のボディビルの大会は、ただ単に筋肉の大きさだけでなく、フィジークというトータルバランスが必要な種目で
しかも、筋肉とは関係ない「女性らしさ」という評価基準も求められる
その事に疑問を感じつつ、大会でU野の取った行動とは?
タイトルのスミスは、筋トレ用のトレーニング器具「スミスマシン」の事
ガイドレールとストッパーがあるため、一人でも限界の重量まで挑戦できるマシン
補助を必要としない、一人向けという意味で、マシンだけでなく生き方にも意味がかかっているのでしょうね
Gジムで顔を知っているけれども話したことがないS子
最初はチャラい存在として認識されているけど、終盤で再登場すると評価が変わる
彼女も彼女なりに追求する道があったという気付きはよかった
O島は女性のボディビルダーとしての理想形として描かれているし
E藤はO島の盟友で元ミスユニバースなので、女性らしさの象徴として描かれている
T井はU野のパーソナルトレーナーだけど、自身も大会に出場するので、U野にとっては上記二人のロードマップの中間地点だろうか
U野は筋肉に関してはU野は問題ない
減量のしすぎというミスはあるけど、それも初参加故の御愛嬌
問題は、女性のフィジークに付随する女性らしさの項目
ただ単純に筋肉だけに専念すれば良いのかというとそうではなく
大振りなピアス、ロングな髪の毛、12cmのヒール、ムダ毛処理、美肌ケア、ネイル、表情等の「女性らしさの追求」に疑問を感じるU野
「別の生き物」になろうとしていたはずが、以前は求められなかった「女性らしさ」を評価される大会に出ることになっている疑問
職場の人たちには「彼氏できた」と噂され、母親からは「ムキムキにならないでよ?」という言葉をかけられる
自身が本来求めているところとは違うにも関わらず、周囲には理解されないという二重の差異
大会の趣旨にしても、ナチュラルと言いつつ、人工的な行為が部分的には容認されている矛盾
人工的に日焼けするのはOKだけど、肌に色を塗るのは禁止
脂肪を細かくする施術を受け入れる選手と受け入れない選手
筋肉増強剤も許可されている大会もあるし、許可される薬も変わったりする
変化する価値基準
他の大会では許可されている筋肉増強剤を使った選手の方が自分より遥かに仕上がっている
にもかかわらず、この大会では失格になってしまう事への疑問
彼女が最終的に取った行動としては
他者からの評価基準ではなく、本来の自分自身を曝け出したいというものなのだろうか
そんなU野にも、また戻って来る道を提示するE藤
世の中、多様な価値観があり、いつどれを選ぶのも自分次第という事かな
それにしても、ボディビル界隈って体に気を遣っている面と、体にわるそうな面と両方ある
水抜き塩抜きは明らかにヤバい
あと、増大期と減量期を繰り返すのは言ってしまえば何度もリバウンドしているようなものでは?
と思ってしまうのだけど、どうなんですかね?
読み終わって、言われてみれば芥川賞ノミネートっぽい作品と感じる
マイノリティの立場の違和感と世間への声なき叫びというね
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【第166回芥川賞候補作】
【第45回すばる文学賞佳作】
前代未聞の筋トレ小説、誕生!
「別の生き物になりたい」。
筋トレに励む会社員・U野は、Gジムで自己流のトレーニングをしていたところ、
O島からボディ・ビル大会への出場を勧められ、
本格的な筋トレと食事管理を始める。しかし、大会で結果を残すためには
筋肉のみならず「女らしさ」も鍛えなければならなかった――。
鍛錬の甲斐あって身体は仕上がっていくが、
職場では彼氏ができてダイエットをしていると思われ、
母からは「ムキムキにならないでよ」と心無い言葉をかけられる。
モヤモヤした思いを解消できないまま迎えた大会当日。
彼女が決勝の舞台で取った行動とは?
世の常識に疑問を投げかける圧巻のデビュー作。
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Posted by ブクログ
めちゃくちゃ心地好い文体。地味で真面目な会社員が、ジムに通って筋トレをし、ボディビル大会出場を目指す、というシンプルな話が、ずっと面白い。社会の評価軸と自分の価値観に折り合いをつけながら生きることの「ややこしさ」が、柔らかくも核心をつく言葉たちで浮き彫りとなる。そのややこしさの中で確と生きていく自分や周囲へのエール。読後感は頗る爽快。
Posted by ブクログ
登場人物の名前がアルファベットなのが特徴的です。主人公U野が筋トレを始めた理由は、ジェンダーやルッキズムについて考えたことがある人や悩んだことがある人は、特に共感できるかもしれません。200ページ弱で、サクッと読めます。心情描写が少ないと感じたのですが、だからこそ時折出てくる鋭い言葉にハッとさせられたり、U野が最後に出した答えに自分の場合はどうだろうかと考えさせられます。
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ジム通いをしていた会社員が、ある出会いからボディービル大会出場を目指す。筋トレが彼女の体そして心にも変化をもたらす。
大会に出たのかと思うぐらいトレーニング描写が細かくて、自然と脳内でIt's My Lifeが流れた。石田さんのお話は意表を突いてくる面白さがある!
Posted by ブクログ
芥川賞候補作ということで、読んでみました!
「スミス」って誰だろう。
まさか、器具の名前とは…!
読んで驚きました。
筋トレやボディビルに全く縁がないので、筋肉小説が読み進められるのか心配だったものの、サクサク読めた。
社会人が、仕事だけではなく、何かに熱中することっていいなと改めて思わせてくれる1冊。
私もU野のように、もっと、自分と向き合っていきたいと思いました。
これが、デビュー作とはスゴい…。
石田先生の他の作品も読んでみたい!
そう思わせてくれる作品です!
是非、オススメの1冊です!
Posted by ブクログ
筋トレに熱中する女性会社員が、パーソナル・ジムを開業する女性にスカウトされて、ボディ・ビル大会出場を目指すというお話。全篇にわたって筋トレの専門用語が満載で、トレーニング方法も微に入り細を穿った解説がされている。ちなみに、タイトルの“スミス”とはトレーニング機器“スミス・マシン”のことで、主人公がもっとも愛用しているものだ。
大会に向けて肉体改造に励みながら、女性ボディ・ビルダーに課せられた筋肉以外の審査基準に疑問を持つ主人公。さて、大会の結果はいかに?
第45回すばる文学賞佳作&第166回芥川賞候補作。
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スミスって筋トレのマシーンの名前だった
ボディビルダーの主人公が大会を目指して筋肉を鍛える。それだけの話なんだけど、自分との向き合い、女性らしさへの反発を抱えてもがく。苦しむと書くと作者に失礼な気がする。何気ないひと言が女性という性を傷つけんだなと、これは感想。
面白い
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自分の決めたルールと制限にのめり込んでいく話だいっすき!わたしがかなりそうなので、安心と興奮で脳みそ熱くなる。
上に、ジェンダーの葛藤まで描かれていて、もう本当にド真ん中ぶっさされた。
勝手に押し付けられる「女性らしさ」がなんか嫌で、それから逃げたくて飛び込んだ先にも、結局また似たような枠があってしんどくなって
でも一方で「女だから得すること」や「女だから通じるだろう」って思ってたりもして、女性像への反発と依存でぐるぐるしてる自分を改めて思い知らされたというか
“女”を使って立ち回る方が楽だから自分からやる時もあるくせに、それを他人から求められるとムカつくっていう、あのねじれについて考えさせられた
Posted by ブクログ
自分自身も筋トレを趣味として、割と長く続けている身ではあるので、トレーニングをする際の表現やそこに溢れる感情の描き方が秀逸だと感じた。
新しい世界に入ったと思っていても、表面的には違うが、結局どの世界でも本質的な理は変わらないのだと気づくところに、リアルさを感じ、共感し、物語の終わり方にも、個人的に非常に心地よさを感じる作品だった。
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「何となく筋トレを始めてみた」から、声をかけられて本格的に大会を目指して鍛えてステージに立つ話。
その過程で、評価される側に立つことで見えてくる周りの価値観に、主人公の葛藤を通して考えさせられた。
ステージに出るからには賞を取りたい一心でトレーニングをして、スキンケアをして、髪のお手入れをして、脱毛もしてひたすら努力をしている姿についつい引き込まれてる。
最後の最後に、周りの評価に疑問を持ち、そのままの自分でステージに立とうと決意をしたところがすごかったし、かっこよかった。
筋トレを通して、自分の思うカッコよさとは何かを考えさせらる本。
Posted by ブクログ
筋トレ小説。
目標に向かってストイックに自分を追い込む主人公を見て、ダイエットすると言いつつ「きついから」「無理そうだから」とルールを緩める自分の甘さに気づかされた。
やっぱ本気でやるなら、ここまでストイックにはできないかもしれないけど、翌日筋肉痛でひーひー言うくらいがんばらないといけないと思えた。(やりすぎはよくないけど)
元気とやる気が出る小説だった!
くじけそうになったらまた読もうと思った。
がんばるぞ!!
Posted by ブクログ
筋トレを題材とした小説です。
トレーニーの方はあるあるな描写が数多くあるのではないでしょうか。
コンテストに向かって主人公の見た目が変わっていきます。コンテストで勝つためにピアスを開け、ヒールをはき、ポージングの練習をし、日焼けをする。ですが、なぜ笑顔でなくてはならないのか?と自問します。
コンテストであるが故、順位がつき、勝ち負けが決まります。しかし、結局は全て他人がそれぞれの物差しで決めた順位であり、自分がなりたい身体になるのが最も本質的であり、尊いものではないだろうかと考えさせられた。
Posted by ブクログ
「火曜は脚の日だ」。
筋トレをしているか、もしくは知っている者であれば、きっとこの書き出しにグッと掴まれるだろう。
自分に身近であればあるほど、小説は面白いのかもしれないと思う。無論、小説だからこそ味わえる体験というのもあるのだろうが、主人公に感情移入しやすいというのは、やはり面白さが格別なものになる。
私の入会しているジムもスミスマシンは一台のみ。なので、主人公の気持ちが痛いほどよくわかる。「あーもう!早く使いたいのに!」、私はそう思っても決して声や表情には出さないが、普段思っていることがこうして小説として描かれると、どうにもこそばゆい感情が身体を駆け抜ける。
異色の筋トレ小説という部分に注目してしまいがちだが、本作は芥川賞候補作とすばる文学賞佳作にもなった歴とした文学作品。
別の生き物になりたいと考え、筋トレを始めた主人公の女性・U野が、新進気鋭のNジムのオーナー・O島にスカウトされ、ボディ・ビル大会に出場するまでを描く。
女性のボディ・ビル大会は、ただ筋肥大していればいいわけではない。筋肉の美しさのほかに女性らしい美しさも求められるのだという。U野は筋トレや食事制限は苦でない一方、そういった女性の「たしなみ」にはかなり無頓着な女性だった。
大会前の発起会でNジムのスペシャルコーチであるE藤にそれを咎められたU野は、ピアス穴を開け、日サロに通い、脱毛を始めることになる。他にも高周波の美容機器を使ったり、ステージングのために慣れないハイヒールを履いたりと、「女らしくない」と評されがちなボディ・ビルが、世間一般と同等かそれ以上にジェンダーを意識させる場であることを悟り、それでも大会で結果を残すために奮闘する。
筋肉を見せるための大会で女性らしさを磨くことに葛藤を覚えながらも、U野は成長していく。印象的な場面は多々あるが、とりわけ大会当日のアップ中、U野が幸せと自由を噛み締めるところは実にいい。
腕立て伏せをして、自身の身体を痛めつけている者が考えているとは思えないかもしれないが、実は筋トレをしている者は皆、日常的にこういった感情を噛み締めている。肝心の矢印が外ではなく、自分の内側を向いているからだ。
クスッとする小ボケを交えた心情から、変わっていく周囲の視線による迷い。そして、この身体で勝ちたいという熱量。わずか150ページ前後の文章には、筋トレと小説の魅力がみっちりと詰め込まれていた。
トレーニーの皆さんも、そうでない方にも、ぜひ読んでほしい一冊だと思った。
Posted by ブクログ
大学生のころ、全国チェーンの大手スポーツクラブでアルバイトをしたことがあります。受付希望で面接に行ったら、シフトの関係か、急な欠員で困っていたのか、真偽のほどは未だにわかりませんが、ジムスタッフとして採用されました。初めは、マシンの使い方から学び、入会したての初心者の方へ案内する日々。長く務めるにつれ、フリーゾーンで毎日のように黙々とトレーニングをするマッチョなおじさまたちと話す機会も多くなったことを懐かしく思い出します。
本書は、そっち、フリーゾーンで黙々とトレーニングをする人が主人公です。
主人公はU野。U野をBB大会(ボディビルの大会)の道へ進むようスカウトするのはO島。パーソナルトレーナのT井。こういった命名の小説を読んだ記憶がなかったので、私にとっては斬新でした。でも読みにくかったので、途中から「ウエノ」「オオシマ」「タケイ」と勝手に脳内変換してしまっていました。
先述したようにジムでアルバイトしていたわりには、あまりにも知らないことが多くて、新しい世界を垣間見たな~という気持ちでした。
本格的な筋トレの仕方はもちろんのこと、大会までへの減量の仕方、大会が近づいたら筋肉を張らせるためにするカーボアップなど、「へ~へ~へ~」の連続でした。
しかしまぁ、ここまでは想定の範囲内。その後、元ミス・ユニバース日本代表というE藤の指導により、ピアスを開けたり、脱毛に行ったり、髪を伸ばしたり、ビキニとハイヒールを調達したり、これまで「女らしい」というところが全くなかったU野ですが、BB大会のために、すべての助言を聞き入れ、行動していきます。そうなんです、BB大会は筋肉さえあればいいのではなかったのです。「女らしさ」をも鍛えていく必要があったのです。なぜ髪まで伸ばさなければならないのか、そうじゃない選手もいるじゃないかと反論するU野に対してE藤が言う「まずはスタンダードを追求すべき。まずは基本を身につけ、基本を自分のものにすること。まずは模倣を極めることが、一流になるための最短コースである。」という言葉は妙に腑に落ちました。この競技はU野が考えるより「ずっとクラシックなのよ」ということらしいです。
BB大会へ向けたU野の生活が、のめりこみ方が続いていく本書ですが、しれっと面白い記述をしてくるところが憎らしいほど上手でした。「ここ!ここ、おかしくない?」というほど声高には言えないのですが、「ぐふっ」と思ってしまうくらいにはおかしいのです。
たとえば、弟の結婚相手との顔合わせのために実家に帰った時のくだりは始終含み笑いをしてしまいます。高級な紅茶をそっとくすねたり、突然髪を伸ばしだした娘には「彼氏ができた」んだろう、突然日焼けしだした娘にはこれまた「その彼氏がサーファー」なんだろうと思っている親とか。しかし、この帰省で筋トレに対する熱量が半端ない娘とそこに(というかそもそも娘への)理解のない母親との溝があいてしまうのですが。
そうなんです、U野の筋トレというかBB大会へのハマり方が半端ではなく、これだけハマられると爽快でした。シンプルに何かに向かって頑張ってる人は(小説は)爽やかだなと思いました。
大会が近づくにつれ、U野の集中力がキーンと尖ってきて、こちらまでなんだか緊張してきました。大会へ向けて一心不乱になりながらも、いろいろと考えこんでしまうU野ですが、それが「らしい」と思いました。E藤にいわれたとおり、「まずは模倣」と素直に従ってきたU野ですが、「笑顔」というところでひっかかってしまいます。そりゃ、真顔やましてや怒った顔よりも笑顔の方がいいのは確かですが、笑いたくもないところで「笑顔をつくる」とは・・・。「女性らしさ」を求められるということ自体に違和感を覚えます。
ラストは意外だったような、そうでもないような、そんな感じでした。
他人からどう見られるか、女性らしくあるためには、などなどを脇に押しやって、ただただ自分の身体を鍛えることに幸せを感じるU野がすごく良かったです。
同僚が貸してくれた時には、他にもいっぱい読むべき本はあるし、(ジムでアルバイトしてたわりには)トレーニングの話なんか全然興味ないし、ホントどうしよう、と思ったけどおもしろかったです。毛嫌いはいかんですね。
Posted by ブクログ
U野が真っ直ぐ自分と向き合う姿がただただカッコいい作品だった。例えのレパートリーの豊富さとなにより筋トレやボディビルの解像度が非常に高い。インストラクター方の意見もしっかり理解してる上で自分の気持ちを曝け出す、あの本番ステージは輝いていたに違いないと思う。本当に足を運んで見たかったと思えるくらい素敵だった。彼女なりの「女性らしさ」「ボディビル大会」へのアンチテーゼがひしひしと伝わってきた。S子の絡みを最後に持ってくるのも、そこに気持ちの変化を表現するのも良い。
Posted by ブクログ
最近筋トレを始めた私にとっては親近感のあるテーマ。しかし、筋トレ、ボディビルに関心がなくても、何かしら響くものがあると思う。
世の中には様々なステージがあるが、どのステージに立っても女性は容姿でジャッジされて「大変」なのだ。例えそれが容姿とは関係ない仕事や筋肉のステージであっても。女性が周りの視線を気にせず主体的に生きることが、どれほど難しいことか。
ヒリつくようなストイックなトレーニングと「別の生き物」を目指す様が手に取るように伝わってきて、一気読みしてしまった。最後は意外な展開だったが、悲壮感は全くなく、ある種の清々しさで締めくくられている。そう、自分の人生のステージは「自分で演出」するんだ。
Posted by ブクログ
筋トレ小説というのを初めて読んだ。筋肉の部位の話しからトレーニングマシンの使い方に至るまで詳細に書かれていて筋トレの奥深さに触れたような気がしました。
美容やダイエットの為ではなく、単純に筋力をつけたい主人公の苦労や葛藤がひしひしと伝わってきたし、成長の過程も読んでいて面白かった。
Posted by ブクログ
ボディビルの大会に出場することになって、
筋トレの沼にはまっていく女性の物語。
私も筋トレ歴は長いのですが、
女性の大会については全く知識がありませんでした。
「筋肉とは関係のない部分も評価の対象となる」
ことが暗黙の前提になっていること。
ここに
男女でのボディビル観というか、
女性へのバイアスというか、
男女問わず客観的な『美』に対する価値観というか…。
「昔の(クラシカルな)美意識」を感じてしまう描写が、
作品のあらゆるところにちりばめられています。
そして、そんな世界に
終盤に行くにつれて、主人公が向き合っていく。
筋トレを始めたきっかけを
「美しくなる」とか「ダイエットをする」などではなく
「新しい生き物に生まれ変わる」
と表現する主人公の言葉。
この域には、わたしは到達してない。
どうしても旧態依然の「マッチョ感」から
抜け出せていない。
心の底から性を意識しない日がくるのだろうか…
どうすれば、
心の底から「男らしい、女らしい」という
感覚から抜けだせるのか…
ここ数年、男女に限らず、
筋トレをしている人は増えていると感じます。
人それぞれ目的は違うのでしょうが、
大くくりに見ると
「男性らしいカッコよさ」「女性らしいカッコよさ」
を目指していることにはなるのかも…。
そもそも、
この「○○らしい」ということ自体が、
すでに古い感覚なのだと感じつつも、
話をしているトレーニー知り合いの範囲内でなら、
やっぱりそこに収束してしまう。
そしてそんな人たちには、
性別関係なく魅力を感じてしまう…。
なんなんだろう、この感覚。
「体の性」がある以上、
考え方が体に引っ張られてしまうのだろうか。
脳も体だし。
そんな私は、
今週は背中への意識を中心に
トレーニングを重ねます。
Posted by ブクログ
自分が筋トレをやりだした時に読み始めたから、主人公がストイックに鍛えているのを感じてウキウキ湧き立つような気持ちで読みはじめた。
最初は同じジムのS子の事が気になりストーカーのようにインスタとかを見ていた主人公が、物語が進むに連れ自分を鍛えるということに集中しだすと周りの雑音はどうでもよくなり自分にフォーカスしていくようになり、私もそうなりたいなぁと思った。
あとボディビルの審査基準が女性の場合は女らしさも必要とされるとあるが、その審査基準でさえ医療的な物を利用してクリアしていってもOKだけどやりすぎだったりすると基準違反だとか、曖昧でかつ人それぞれの価値基準である事のモヤっとする気持ちは特に理解できた。女性らしさって何、とも。
ボディビル大会で自分らしくファイナルステージて華を飾った主人公、等身大の自分を戦いの場に連れていくその姿に私はとても素敵だと思った。
あとファイナルステージの後、その足で髪を切りに美容院に行き、たくさん泣く様子は言葉にするには難しいけど、気持ちが理解できるような気がする。
Posted by ブクログ
別の生き物になりたい。
誰かに傷つけられるでもなく、誰に同情されるでもない、超然とした生き物になりたい。
ってところがいいのよー!
体を鍛えて出した女性がたどり着いた境地とは?
現代を生きる女性によるボディビル小説!!
Posted by ブクログ
タイトル見て、中身読んで、そうなんだ!ってなる人多いと思う。
芥川賞の候補なんだけど、かなり読みやすい。
もともとトレーニングとか(これを読んだ後でも)全く興味はないが、この世界とトレーニーの気持ちはなるほどなぁと頷けるものがありました。youtobeで見た事あるフィジーク超戦中youtuberがなんでそこまでってとか見てるだけだと理解不能だったが、今ならわかる。
その実、本で訴えたいことはとっても明確でそこが素晴らしく感じた。自分が何のためにそれをするのか、どうしてそこまでする必要があるのか、そして最後は自分がどうありたいのかのポイントまでシッカリ着地して読後の清々しさったらない。