あらすじ
「別の生き物になりたい」――筋トレに励む会社員・U野は、Gジムで自己流のトレーニングをしていたところ、O島からボディ・ビル大会への出場を勧められ、本格的な筋トレと食事管理を始める。しかし、大会で結果を残すためには筋肉のみならず「女らしさ」も鍛えなければならなかった…。鍛錬の甲斐あって身体は仕上がっていくが、職場では彼氏ができてダイエットをしていると思われ、母からは「ムキムキにならないでよ」と心無い言葉をかけられる。モヤモヤした思いを解消できないまま迎えた大会当日。彼女が決勝の舞台で取った行動とは? 世の常識に疑問を投げかける圧巻のデビュー作!
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Posted by ブクログ
初めて挑戦した筋トレ小説。素人でもなかなか楽しく読める、そして共感もする内容だった。
作中では、主人公であるU野がボディ・ビル大会に出場するまで、体や自信の変化をU野は感じつつも、「女性らしさ」に関する疑問を変わらず抱えていた。
一方、読者である私も、女性向けのボディ・ビルの世界で、ここまで女性らしさを求められている現実に驚いたものである。単に「筋肉をつけたい、強くなりたい」という動機で筋トレを始め、ボディ・ビル大会に挑んだ結果、自分の筋肉を美しく見せるために「女性らしい」美しいものを身につける、「女性らしい」所作を行う。こういった必要とされる行動を鑑みると、「男とはこうあるべき、女とはこうあるべき」という思想が筋トレ世界でも一部残っていることに気付かされる。
ただ筋トレ小説として興味深いだけでなく、現代社会への風刺としても考えさせられる内容であった。
Posted by ブクログ
芥川賞候補作ということで、読んでみました!
「スミス」って誰だろう。
まさか、器具の名前とは…!
読んで驚きました。
筋トレやボディビルに全く縁がないので、筋肉小説が読み進められるのか心配だったものの、サクサク読めた。
社会人が、仕事だけではなく、何かに熱中することっていいなと改めて思わせてくれる1冊。
私もU野のように、もっと、自分と向き合っていきたいと思いました。
これが、デビュー作とはスゴい…。
石田先生の他の作品も読んでみたい!
そう思わせてくれる作品です!
是非、オススメの1冊です!
Posted by ブクログ
U野が真っ直ぐ自分と向き合う姿がただただカッコいい作品だった。例えのレパートリーの豊富さとなにより筋トレやボディビルの解像度が非常に高い。インストラクター方の意見もしっかり理解してる上で自分の気持ちを曝け出す、あの本番ステージは輝いていたに違いないと思う。本当に足を運んで見たかったと思えるくらい素敵だった。彼女なりの「女性らしさ」「ボディビル大会」へのアンチテーゼがひしひしと伝わってきた。S子の絡みを最後に持ってくるのも、そこに気持ちの変化を表現するのも良い。
Posted by ブクログ
我が友、スミス/石田夏穂
ひたすらに自分を磨きたい、違う自分になりたいと筋トレに励みボディビルに出会い、女子BB大会に苦悩しながらチャレンジする主人公。
筋肉だけでなくアクセや日焼け、笑顔なども必要だと知り苦しむ。
決勝で主人公が魅せる決断にはバカだと思う人もいるだろうが凄くカッコよかった!
私を見ろ!そんな声が聞こえました。
Posted by ブクログ
筋トレ小説。
ストイックに自分の身体と向き合って鍛えて自信を持つって素晴らしい。他の人が決めたルールが絶対ではない。その他の人が決めたルールを受け入れたくなければ受け入れなくても良い。そのためには自信を持つことが大事だと思った。
自信を持つ方法にはいろいろあると思うけど、身体を鍛えることもその方法の一つ。
身体を鍛えて自信を持ってこその自由、と思った。
スミスという筋トレのマシン。大人気でなかなか使うことができないのに、エンディングでは、主人公に使われるのを待っているようにしていて、主人公が使ったのが何か印象的でした。
主人公はたぶん「別の生き物」になれたと思います。
私は筋トレの経験がないので、筋トレをやっている人たちの感情とか世界観とかそういったものを垣間見た気がしました。身体を鍛えている人はやっぱりカッコイイな。
S子とかO島、U野、T井、E藤などアルファベット混じりの登場人物像がつかみづらく読みにくかった。何か意図はあったんだろうと思いますが。
ステージの前に食べた、肉まんと親子丼、美味しそうだったなぁ。