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ひとりひとりの人生は奇妙にゆがみ、奇妙に偏っている――。助産婦の祖母、独身の三人のおばたち、会話の少ない父母、のびやかな姉・歩と気難しい弟・始。それぞれの願いと葛藤が溶けあいながら、三世代の時間は進んでゆく。北海道の小さな町を舞台に、失われてゆく一族の姿と、色褪せない人生の瞬間を、記憶をたどるようにして描き出す。読後、静かな余韻に包まれる百年にわたる家族の物語。(解説・江國香織)
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Posted by ブクログ
添島家と言う3代にわたる家族の生老病死とともに北海道犬の4代のはなしをはさみ牧師家族の話も織り交ぜて叔母たち3人の話などもいれて人間の人生のアンソロジーを書いている。祖母が産婆になり、人間の生の誕生を描いている。道東の架空の街を背景に厳しい極寒の冬の描写や天文台に就職して山中の天文の描写もていねい...続きを読むでひきつけられる。ライチョウの話なども興味深い。
私達の生き様は、小説家のような筆力がなくても、物語になる、ということを思わせてくれる作品です。それは何を意味するのか。第三者の共感を呼ぶ、ということでしょうか、どんな人生であっても。 「光る犬」というタイトルは、小説の終盤で、幼い歩が親犬の近くで戯れる子犬達を見ていたところから来ています。でも、な...続きを読むぜこのタイトルにされたのでしょう? また、始にまとわりつく消失点は必要だったのでしょうか? 滅びゆく家族ということもまた、人口減少のこの国で、共感を呼びうる一要素なのでしょうか。「光る犬」は始まりであり、消失点とは対照的でさえあります。 私には少し疑問が浮かんだままです。
文庫の新刊。昭和の北海道本で、家と家族の物語。北海道を舞台にした小説の中でも、原点のような匂いがして、共感を得られる方も多いと思う。家族それぞれが、相手を思いながら懸命に生きた痕跡を描く。
北海道の地方の街を主な舞台として、3世代にわたる家族の日常を淡々と描いた物語。びっくりするような事件があるわけでもなく、人が生まれ、生き、出会い、別れ、老いて死んでいく様子が妙な飾りもなく進行する。この作者の本は建築や周囲の自然等も巧みに描かれていて、目に浮かぶというより匂ってくるかのような印象。ボ...続きを読むリュームはあるけれど、読む方も力を入れずに読める不思議な一冊。
架空の街に暮らす三世代を取り巻くストーリー。時系列に沿わずエピソードが展開されるので少しとっつきづらかったけど、リアリティある描写が多く小説を読むというより身近な方の話を聞いてるような感覚もあった。特に死に感するくだりは身につまされた。
松家仁之『光の犬』新潮文庫。 デビュー作の『火山のふもとで』を皮切りに『沈むフランシス』、本作『光の犬』と、3ヶ月連続で新潮文庫から刊行。 明確な主人公が不在で次々と語り手の視点が変わることに戸惑うばかりの普通の家族の終焉が描かれる小説で面白味は感じられない。確かに家族と暮らした北海道犬は登場す...続きを読むるものの、タイトルの『光の犬』から想像されるような物語ではない。 3ヶ月連続刊行された中では、最初の『火山のふもとで』がしっかしりしたストーリーとメッセージを含んだ小説だったように思う。『沈むフランシス』や本作『光の犬』に至ると凡人の自分にはちんぷんかんぷんといったところだ。 時代が進むにつれ、大家族から核家族へと家族の形は変化し、墓守りや後継者、介護など昔では考えられなかったことが問題になっている。 本作ではそんな家族の形の変化に翻弄されながら、家族の向かうべき道を模索しながらも、結局は終焉を迎える、まるで誕生したばかりの恒星が宇宙という尺度の中で一瞬の如く消滅する姿が描かれるのだ。 北海道東部の小さな町で過ごす添島家。最初に登場するのは故郷に戻る決意をする大学教授の添島始。始が主人公と思われた物語はその父親の眞二郎、姉の歩と次々とその視点を移していく。 そして、いつの間にか祖母の幼少時である明治期から、父母と隣家に暮らす独身の三姉妹、子どもたちの青春、揃って老いてゆく父母と叔母たちの現在までを描いた物語へと変貌する。 本体価格950円 ★★★
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