地下室の手記

地下室の手記

572円 (税込)

2pt

極端な自意識過剰から一般社会との関係を絶ち、地下の小世界に閉じこもった小官吏の独白を通して、理性による社会改造の可能性を否定し、人間の本性は非合理的なものであることを主張する。人間の行動と無為を規定する黒い実存の流れを見つめた本書は、初期の人道主義的作品から後期の大作群への転換点をなし、ジッドによって「ドストエフスキーの全作品を解く鍵」と評された。

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地下室の手記 のユーザーレビュー

「苦悩こそ、まさしく自意識の第一原因にほかならないのだ。」
主人公の自意識ゆえの苦悩・思想が語られる前半と主人公が過去に経験した3つの出来事が明かされる後半という2部構成になっている本作は、社会と関係を絶ち、自ら地下に閉じこもった、小官吏である主人公の独白を通して、人間の本質に迫る。

「意地悪にも、お人好しにも、卑劣漢にも、正直者にも、英雄にも、虫けらにも。」
何者にもなれなかった主人公は、極端な自意識という地下室から出ることはできないのでしょう。もはや出ようともしないのかもしれません。ここまで緻密に、克明に、自意識に向き合った作品はないのではないでしょうか。
肥大化する自意識に苦しむ現代人にこそ読んでいただきたい、文豪ドストエフスキーの傑作です。

4.0
Rated 4 stars out of 5
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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    <ぼくは病んだ人間だ。…僕は意地の悪い人間だ。およそ人好きのしない男だ。ぼくの考えではこれが肝臓が悪いのだと思う。もっとも、病気のことなどぼくにはこれっぱかりもわかっちゃいないし、どこが悪いかも正確には知らない。(P6)>
    元官史の語り手は、おそろしく自尊心が強く、極端な迷信家で、あまりにも自意識過

    1
    2023年12月05日

    Posted by ブクログ

    圧巻。手放したくない1冊。表面的な美しさや謎のステータスとやらに踊らされているこの社会に、この本を突き刺してやりたい。

    刑事裁判を彷彿させるシーンもあれば、AIを彷彿させるシーンも。150年近く経つけれど、この本が問うていることや描かれていることは、色褪せない普遍的なテーマで、我々人間は、人間の愚

    0
    2025年03月29日

    Posted by ブクログ

    書いてる言葉や言い回しは分かりやすいんだけど、話が重く、感情が生々しいせいで読むのにかなりの体力を消費した。しかしその分主人公の気持ちに感情移入出来て、読み終わったあと大きな満足感を得ることが出来た。

    呼ばれてもないパーティーに無理やり主人公が参加するシーンは読んでて凄くムズムズした。共感性羞恥と

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    2023年03月15日

    Posted by ブクログ

    何とも心にずっしりと重い。その重さの原因は、まるで自分自身の事を誇張して語られているような主人公の語り。自分が何故苦しみながら生きないといけないのか?知能が低い故にその苦しさに気付かない人たちは羨ましい。自分は優れているが故にその苦しみに気が付いてしまう、というのが主旨かと思うが何か共感できる。

    0
    2023年02月04日

    Posted by ブクログ

    「 たまたま何かのきっかけで勇気をふるうことがあったとしても、そんなことでいい気になったり、感激したりしないがいい。どうせほかのことで弱気を出すにきまっているのだから。」

    「 だれかに権力をふるい、暴君然と振る舞うことなしには、ぼくが生きていけない人間だということもある……」

    「 安っぽい幸福と

    0
    2022年02月12日

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