Posted by ブクログ
2011年05月18日
農奴解放令によっていっさいの旧価値が崩壊し、
動揺と混乱を深める過渡期ロシア。
悪霊に憑かれた豚の群れが、
湖に飛び込んで溺死するという聖書の記述から
無神論的革命思想を悪霊と見立て、
それに憑かれた人々とその破滅を描く。
そんな裏表紙の触れ込みのドストエフスキーの大作、悪霊。
罪と罰で遅かれ、初...続きを読むめてドストエフスキーに触れ感銘を受け、
そして次に選んだのがこの悪霊。
罪と罰で慣れたのか、今回は読みやすく感じる。
やはり人間の心理描写を描くのにすごく長けているというか、
時代性というものを感じずに読み進めることができる。
とても100年以上前の作品とは思えない、ある意味新しさがある。
重苦しい裏表紙の触れ込みからは想像することもできない、
前半のステパン先生の情けなさにどこか安心感すら覚える。
物語はニコライやステパン先生の息子ピョートルの帰還によって
途端に加速感を増し、重みと緊張感を持たせる。
賽は投げられたり。彼らの運命は確かに破滅へと回り始めていた。