小説・文芸の高評価レビュー
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本物の生きる屍に会う
主人公の私立探偵マーロウは周囲の人間をスケルトンのように見ていて、彼らの醜い骸骨姿に唾を吐きかけながら接している。しかし、あるときテリーとアイリーンという本物の生きる屍に出会い、強く惹かれていった。魂が抜けた空っぽな人間であるテリーとアイリーン。そこに見たものは何だったのか。あとがきで訳者の村上春樹は、マロウがテリーに見出したのはマロウ自身だと指摘しているが、それはマロウ自身が空であることを述べているに等しい。マロウはたまらなく孤独な人間だった。ラストの場面は、再開した友人との触れ合いをも拒んだ。その徹底した孤独ぶりは、胸に深い読後感を残した。 -
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饒舌全部で7冊あるマウロウものの長編の5冊目の作品。マウロウは4冊目の「湖中の女」や6冊目の「ロング・グッドバイ」に比べても饒舌で、もしかしたらシリーズで最高に漫談が面白い作品かもしれない。いくつかは声に出して笑ってしまうし、いくつかは気が利いた表現で感心させられる。アメリカン・ジョークは日本人の私には笑うどころか意味が通じないものも多いが、マウロウの呟きはわりに理解できる。日本のお笑いにない表現で、新鮮にも感じる。村上春樹氏の翻訳がうまいせいかもしれない。読みながら、筋はどう展開してもよいから、時間のある限り読み続けたいと思う不思議な作品であった。
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チャンドラーの知識ゼロで読み進めた私は
レイモンド・チャンドラーの知識ゼロで本書を読み進めた私は、主人公マーロウを追ううちに、その人物像がかつて見た映画の探偵と重なった。当時大学生の娘がレポートを課されていた授業の題材で、私も横からちらちら観ていた映画だった。その探偵は、たばこを常にスパスパと吸っていて呼吸の8割は喫煙している感じで、紫煙を文字通り纏っていた。本書読後、その映画を早速探そうと、「映画」「探偵」「たばこ」の言葉でネットで検索した。記憶と重なるのがすぐに出てきた。映画のタイトルは『ロンググッバイ』。この映画の探偵もマーロウと呼ばれていたから、私が本を読んで想像した人物と同じだった -
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ネタバレ気がついたらポロっと涙が出てしまうところがあった。
第一章
「大したことない仕事」ではなく、「自分の仕事が大したことない」って気がついた主人公、大きな一歩前進。
私も今の仕事つまらないって思い始めてるけど、自分がつまらない仕事を生み出してるのかも、と、考えさせられた。
第三章
「異動させられた」「家事育児をさせられている」という感覚に陥ってしまっている主人公が考え方を変えて、今の自分にぴったりな職場に転職できてよかった。
第五章
自分が思っている「社会」が必ずしも定年まで勤めていた会社だけではないということを小野さんとのやりとりを通して気がついて、その後自分の行動に幅を広げた65歳の正雄 -
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豚は誰か
本書に登場する豚がこのコロナ禍で誕生しつつあるように読んだ。知識は専門家に任せろと主張して囲い、解釈を恣意的に変え、他の価値を踏み躙り、人々の行動を制限し、人々を支配しようとする。今、この現実の世界で、専門家にしてやられてしまったのが政治家であることが、情けない。本当に情けない。ウイルスが人間ジョーンズ、豚ナポレオンが政府系専門家、豚スノーボールが政治家といった当てはめか。本書が結末で豚の王国の崩壊を描いていることを期待したが、叶わなかった。『1984』で描かれる全体主義国家も揺るぎなかった。揺らいだのは個人だった。相当まずい時代が来ている。本書を読んで改めて感じた。 -
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リーダー教育は危険?
自分で仕事をこなす技量よりもスタッフに仕事をさせる能力が重視されるリーダー職は、他人を利用することにかけては大得意なサイコパスにはもってこい。スピードか速い業界や土地においては、メッキが剥がれる前に状況やポストが次々変わっていくことが幸いする。(本書より)大組織で出世する人って、まさしくこうだなと思う。でも、良くはないね。社会に多くいてはいけない。教育方針に「リーダーの育成」を掲げている学校をよく見かけるが、リーダーとサイコパスが近しい素質であるならば、どうなのかと思ってしまう。著者も、面接ばかり重視した採用試験や大学のAO入試には問題があると指摘している。全く同感だ。 -
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読んでいると、心の中でゆったりと穏やかな時間が流れるようで、とても好きな本になりました。
休んで、ゆっくり時間をかけて人生を歩んでいいんだよって思わせてくれる。
今の自分にぴったりの優しい本だった。
また読みたい。ちょっと疲れてしまった時、また絶対に読みたい。
・たとえ愚直に見えても慎重に一歩一歩歩んでいけば良いのだ
・本を読むと、誰かのそばに立てるようにしてくれる
・自分は未熟な人間だという思いにばかりとらわれないようにしよう。
未熟な自分もまだ、善い行動をとったり、善い言葉を口にしたりできるんじゃないか。
情けない自分も、ごく、ごくたまには良い人になれるんじゃないかって。
・各自の -
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言わずと知れた大ヒット作品を、今さらながら初読み。これは賞を獲るべくして獲った、と納得。
海外生活のエッセイは数多くあれど、考察の深さと幅広さは、やはり単なるエッセイの枠にはとどまらない。
子どもの進学先選びなど、国は違っても親として悩むポイントは同じだったりするのも興味深いけど、自らが「外国人」の立場で感じる差別、子どもが「ハーフ」(この呼び方は異論もあるだろうが)の立場で感じる差別の違いなど、イギリスに住んだこともなければ行ったことさえない私にも、ある程度リアルに想像できて、ものすごく考えさせられた。
しかし何より、この息子さんが素晴らしい。リアルにこんないい子がいるなんて……! どんな大 -
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最初この本と出会った時は、亡くなった人の気配と共に温かく、優しく、寂しく、強く生きていく父娘の物語として、感動しながら読みました。
年月が経ち、自分も娘をもって、一児の母としてもう一度この作品を読むと、亡くなったともこさんと、自分たちより先に娘を亡くしたともこさんのご両親の気持ちを想像してしまい、涙が止まりませんでした。
自分に置き換えると本当に苦しくて、今自分が生きて家族と向き合えていることの幸せを噛みしめながら読みました。
子育てに迷ったとき、今この瞬間の幸せを見失いそうになったとき、きっと私はこの本を開くと思います。
受け取るメッセージは異なれど、きっとどんな人にも響く本だと思うの
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