あらすじ
その文章、「自分のため」に書いていませんか?
「伝える」ではない、「伝わる」言葉を、文章を生み出すために、小説家はいつも何を考えているのかーー?
『ゲームの王国』『地図と拳』『君のクイズ』『火星の女王』
祝デビュー10周年! 時代を席巻する直木賞作家・小川哲が、「執筆時の思考の過程(=企業秘密)」をおしみなく開陳!
どうやって自分の脳内にあるものを言語化するかを言語化した、目からウロコの思考術!
☆☆☆小説の改稿をめぐる短編「エデンの東」も収録☆☆☆
小説ーーそれは、作者と読者のコミュニケーション。
誰が読むのかを理解すること。相手があなたのことを知らないという前提に立つこと。
抽象化と個別化、情報の順番、「どこに連れていくか」を明らかにする……etc.
小説家が実践する、「技術」ではない、「考え方」の解体新書。
この本を読んだからといって、「小説の書き方」がわかるわけではない。小説家が小説について考えてきたことを人生にどう活かすか、あなた自身で見つけてくれれば言うことはない。ーー小川 哲
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Posted by ブクログ
あまりにも面白すぎて一気読みした。
小川哲さんは、頭の中で考えていることを文章にする力が頭一つ飛び抜けて上手いが、どうやってそんな文章を生み出しているのか、小川哲さんの思考回路を一冊の本としてまとめあげて、一般読者向けにまざまざと見せてくれた本。
面白すぎたし、ビジネスでも趣味でも色んなことに応用できる思考プロセスを紹介してくれた本なので、定期的に読み返して、脳に刻みたい文章だらけでした。
⚫︎印象的なフレーズなど
・文章で何かを表現するとき、「順番」をどうするか決める必要がある。というか、僕は「順番」を決めること以上に重要な要素はない、お考えていたりもする。p.48
・p104の分析について。
・あらゆる表現活動は、「ある人間の認知」を、なんらかの手段で圧縮したものだ。何を圧縮したか。そしてどう圧縮したか。その二つの質によって、表現の質が決まる。p.143
Posted by ブクログ
小説をどのように書いているのかを、具体的に言語化して解説されている。小説に限らず、他のことにも応用できる考え、ビジネスにも応用できる考え、コミュニケーションの際に活かせる考えと思考が広くなった。小説は作者と読者のコミュニケーションであることも納得がいく
Posted by ブクログ
めっっっちゃ面白かったー!
文章が好きすぎて、サトシ…♡♡♡となった。
いや本当に、小説を書くうえで何を考えているのか、どういう風に文章を構成しているのかを、こんなに丁寧に明かしてくれるなんて!しかも読みやすい!好き!!!
小説の構造や仕掛けについて、これまでそんなに深く考えたことがなかったから、私には難しいかな〜と思って読み始めたけど、なんのその!!すごく読みやすかったし勉強になった。
賢い人が書いた文章だと分かるのに、言ってることが理解できる。こんなに有り難いことはない!
でも個人的には、小説の構成やギミックみたいなことは知らなくていいかも?とも思った。小説を構造として見るのではなくて、物語として純粋に楽しみたい気持ちが強いので!
あと1章の「小説国の法律について」で、人には人の小説法がある、というようなことが書かれていて、自分の小説法はどんなものかな?って考えてみた。
まだ全然言語化しきれてはいないけど、真っ先に思い浮かんだのは、情景や感情の描写がリアルに描かれている小説が好きだな〜ってことかなあ。
映像作品も好きだけど、それでも小説も好きでい続けている理由は、映像から汲み取るだけではなくて、言葉で表現された景色や人の気持ちを知りたいから。
だから私は、情景や感情を丁寧に描いてくれる小説が好きなんだと思う。
とにかくですね、私は本書を読んで小川哲さんのことが好きになったので、過去作品を爆読し、ファンと名乗れるよう精進します!
Posted by ブクログ
作者の小説を書くにあたっての色々な思考が書かれていて、へーそうなんだーと思って読んだ。
最終章に小説は「作者が何を表現したか」ではなく、「読者が何を受け取ったか」によって価値が決まる、とあった。
私は小説をなんのために読むのか。特に発信するわけでもなく、仕事と家事に追われ疲れて読み始めてすぐにうつらうつらしてしまうのに、本が読みたいと思ってしまうのはなぜか?
たぶん人の思考を知ることが面白いんだろう。
小川哲さんは面倒くさそうな人だなーと読むたび、YouTubeで見るたび思うのだけれど、そこも含めてなんか魅力的で好き。好みのタイプなんだと思う。好みのタイプの人の思考を知りたい。私の好奇心はしっかり満たされて満足の一冊。
Posted by ブクログ
とても面白かった。
自分が面白いと思った小説や、ものすごく売れているのに「全く自分には合わない」と感じる小説をあれこれ思い浮かべ、それがなぜなのかということを、本書を読む手を止めて考えたくなる場面がたくさんあった。
随所に出てくる、クスッと笑ってしまうような例文や、著者の生活の中のエピソードが、本書のタイトルと合致しており、とても分かりやすい。これだけ分かりやすく言語化できる小川氏の頭脳明晰さに敬服する。そして、これほどの頭脳の持ち主でありながら、ちっとも偉ぶらない庶民的な空気を感じさせる小川氏にますます魅力を感じた。
前提とする知識があまりにも自分に欠けていているような気がして、とても手が出せないでいる「地図と拳」も開いてみようか…
Posted by ブクログ
本書は小説を書くうえでの思考法について、様々な視点から解説を与えてくれる。小説を書くことのないほとんど全ての読者にとって、それは無用の長物と言えるものなのであるが。
日常生活や仕事に取り入れられるような、ある種暮らしを「ハック」するような文物が幅を効かせる現代において、本書はひとつのオアシスであると思う。すごく興味深いことが書かれているにも関わらず、その知識は暮らしに全く役に立たない。読後は、ただ「楽しかったなあ」という感じだけが残る。この感じこそが読書をする意義のひとつであると思う。
また、巻末の短編小説は、本文の内容を踏まえたものとなっており、大変面白い。とても笑える。見事に作者に手玉に取られたという気がして、悔しいがなにか清々しい感覚さえ覚えた。
Posted by ブクログ
YouTube企画「本ツイ」で小川哲さんを拝見してから、小川さんの思想を知れる本っぽい!そして売れてる本っぽい!と気になっていた一冊。たまたま平積みになっているところを通りかかったので購入した。
(購入に至った経緯、丁寧に書いてみた)
作家さんも悩みながら書いているんだな…、とか、ほんと何なんだ小説って…?と読みながら思い、でも小説を書くために重要な切り口はしっかりこの本の中で語られていて、非常に満足感の高い内容だった。
途中途中にはさまる小説の1シーンのような例も、的確かつ笑えて秀逸。
大衆への迎合を嫌いながら必要な大衆ウケは取りに行く。
今度小川哲さんの小説読んでみよう。エデンの東も気になる。
余談だけど、小説家に小川さん多いよね?
Posted by ブクログ
小説に書いてあることは全部伏線であること、書いてしまった文章から構想を広がることもあることなど、これまで小説を読んでいて思いもしなかったことが書いてありとても面白い。小説の面白さって何か考えさせられる。
Posted by ブクログ
小川さん本当に言語化がお上手で……うわそうかも、そのパターンわたしですね、の連続。自分の癖とか譲れないルールは何なんだろうと改めて考えるきっかけになった。あと典型的なプロット書かない人間なので"「書いちゃったところ」から広げる"を強く推して下さったことがとても勇気になる。
小説の書き方ではないって冒頭で念押ししてるけど、いや言うてこれ書き方にモロ直結する話だよな?と個人的には思った。
Posted by ブクログ
小川哲氏の小説を3冊読んだ。どんな感じで小説を組み立てているのだろうと言う関心があってこの本を読み始めた。
この本を読んだからといって、小説の書き方がわかるわけではないという。それはそうだろうがそうしたこともちょっとは期待したりして読み進める。
群像という純文学の雑誌を読むことはほとんどないが、そこに連載されていた文章を集めた本書は大変面白く、もし自分がその雑誌を買っていたら毎号次が楽しみとなっていただろう。
例えば文体とは何か、という項はとても納得感があった。その他の章も非常に納得感のある話が多い。小説を書くというのはコミュニケーションであるという考え方もとてもよくわかる。でもそれが簡単にできないから、プロの小説家という人達がいることもわかった。自分は小川哲氏が想定する読者というモデルに自分が割と近いのだろうか、といったこともこの本を読みながら考えてしまう。
多くの読者を獲得する作品の文章は、視点人物と読者の情報量の差を最小化する戦略によって書かれていることが多いように感じるとあるが、小川氏の例で言うと自分は情報量の差が大きいところから入っていく方が好きかもしれない。でも伏線回収は期待してしまう。そんなものは意味がないと否定されるかもしれないけど。
小説家に必要な想像力は物語を想像するためのものではなく、顔の見えない読者を想定するもの、という話もなるほどと思う。やはり自分は小説を書けそうにない。という感想をいつもとは少し違う気分で書いていることに気付かされる。
Posted by ブクログ
これは確かに小説の書き方についての本なんだけど、もっと幅広く「面白い文章を書くには」「そもそも面白いとは何か」みたいなところまで突き詰められていた。私もせっかく文章を書くなら面白いと思ってもらえるものを書きたいな〜!途中に出てくる小説の具体例やあとがきの後も面白かった。
【読んだ目的・理由】小説家の書く「言語化」の本が気になったから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆4.4
【一番好きな表現】一人の人間が机の上で考えることには限界があるけれど、執筆の過程にはさまざまな偶然が待ち受けていて、その偶然をきちんと拾いあげれば、「一人の人間の脳内」という限界を超えることができる。(本文から引用)
Posted by ブクログ
面白い小説とはどういうことなのか、自分自身がどういう小説を面白いと感じているのか、この作品を観ると相対的に理解することができると思う
書き手と読み手の前提条件や、視点の移りなどが合うと読みやすくなり、ストーリーに埋没していけるのだと思った
書き手が不特定多数である読み手をどれだけ想像して書いているのか、ということを知ることが出来た
最終章の短編小説では、小説家と編集者が読みやすさみたいなものを獲得するために、右往左往するストーリーが楽しかった
実際に編集の現場ではこのような試行錯誤がされているのだろう
実際に同じストーリーであっても、書き方によっては全く違う印象を受けることを体感した
Posted by ブクログ
著者のブレインダンプ本とでも言うのか、新しい感覚の本。分かってはいたけど、ということと新しい気づきがあることがあった。
更なる深掘りに繋がったインプット。
具体と抽象
固有と普遍
イメージをより具体的に捉えて抽象利用出来そうと感じたインプット。
内輪と信頼
立ち上げとカタルシス(共感)
手招きと向かう先
言語化するための小説思考、というより小説家の言語化思考な気がする。
が、その言語化思考は小説のためのものであり、筆を進めるための思考であり、言語化するための小説思考でも合っているかも。
こういう思考を諦めずにつきつめて1冊の本にするとは相当な頭脳と根気と…癖がある人間だ。
と本を読んでその内容に十分な影響を受けていると気が付く。小川哲はそういう人なんだな、と改めて思った。素敵である。
あとがきの最後が特に素晴らしい。仕事人とはこうでありたい。感心した。
小説家はやっぱり大変だと認知。小川哲がお気に入り小説家になった。
Posted by ブクログ
作品が映像化されるような専門職の方が作品を書く際に、どんなことを考えているのか興味があって読みました(小説家になりたいとかではありません笑)。最近は不特定多数の方と文字でのコミュニケーションを取ることができるようになっているので、そういったところで齟齬が生まれないように意識したいことも学べるなと思いました。
この本を読んで先生の作品に興味が出たので、今度読んでみたいと思います!笑
Posted by ブクログ
小説ゾンビ小川さんが小説を書くことについての思索を開示してくれている。小説はコミュニケーション、そうなんだなあ。書かれていることを読み、書かれていないことも読む。作者は何を伝えようとしているのか、もっと意識して本を読もうと思った。
Posted by ブクログ
小説、を書くには読者とのコミュニケーションが要。
自分のための文章を減らすべし。
ー抜粋ー
会話文を実際の会話の劣化版にしないためのやり方は無数にあるはずで、そのほとんどは僕も知らないし、たぶんまだ発見されていないものもあるだろう。大事なのはどうやって自分の脳内に存在するものを他者に伝えるか、どうして小説という形式を選んだのか、という点を常に意識することだ。会話文だけではなくて、景色を描写するときに実際の景色の劣化版になってはいけないし、内面を描写するときに実際の心の動きの劣化版になってはいけない。
小説は非常に制限の多い表現技法ではあるけれど、その特有の制限を強みに変えられるように工夫をする。一つ一つの文章と表現が、何のために存在しているのか、誰のために存在しているのかを自問自答する(僕が生まれて初めて小説を書き上げたあと、最初にやった推敲は「自分のために存在している文章」をすべて削除することだった)。
Posted by ブクログ
・「伝える」ではない、「伝わる」言葉を、文章を生み出すために、小説家はいつも何を考えているのかがわかる本。
・小説に限らず文章でなにかを伝えたい時、本書の観点は多くの場合で有用である。相手が誰、何を伝えたいか、どのように連れて行くのか、最後には認知させるのかを意識することが重要であると再認識させられた。
Posted by ブクログ
読み物としておもしれ〜!
実用書ってどうしても読み進めるのに体力がいるイメージだけど、めちゃくちゃするする読めた。分かりやすさと思考の面白さが好き。小川哲という作家との契約、私にとってはこれらになるのかも。
世界の捉え方が変わる読み物って素晴らしいんだなということを再認識した。同時にどんな物でもそうすることは出来るんだなということも認識。本当に面白い。
Posted by ブクログ
三宅かほさんがオススメしていて、面白そうだったので購入。
【ざっと内容】
直木賞作家の著者がどのような思考で小説を捉え、考え、書き、修正しているのか。彼の頭の中をギュッと書き下ろした一冊。
【こんな人にオススメ】
・小説を書くことに興味がある人
・脚本を書くことに興味がある人
・小説家の頭の中を除いてみたい人
【感想】
とっても面白かった。てっきり小説家の人は書く前から多層構造のプロットやアイデア設計があり、書きながらその点と点を繋いでいるものだと思っていたが、著者の頭の中は全く違うものであった。
あとがきでは、それまでに解剖された思考を前提に編集者との作品ブラッシュアップやりとりが生々しく描かれていて、これまた面白い。
自分も日常生活に小説を見出し、ちょっと筆を進めてみたくなるような一冊。
Posted by ブクログ
小説家が小説を書くときに、どうやって書いていくのか、そして内容をどのように言語化していくのか、とても興味があり、この本を手に取った。
私は小説家ではない。ただ本が好きで、そのとき気になった本をひたすら読んでいる。
この本では、私がなんとなく言葉にできないことを言語化してあった。
例えば、本は作家と読者のコミュニケーションである。と言う箇所だ。私は本を読むと作家と話をしたような気分になる。作家の物語りまたは考えを自分にインストールし、その世界観をずっと感じるのが好きだ。私は作家とコミュニケーションを取ることが楽しいんだなと、また自分の好きを見つけられた。
「分析」の質を上げるためには作品を発表することが1番の近道。というのも、あぁ、そうだなと感じた。昨日を発表するために、自分の納得のいくまで自問自答を繰り返して、あーでもない、こーでもないと試行錯誤することで、その時その時の良いものを書き記していく。私は絵を描くのですが、そうすることでどんどんと感性が研ぎ澄まされていく。
言語化されてしまうと、色んなことが削ぎ落とされてしまうという感覚。言語化されたものに固定化されてしまい、一言で済んでしまうのがなんだか勿体無いなと感じていた。全部伝えるには言葉が足りないし、要するに〜で済ましてしまうと伝えたいことは全部伝わらないし、どうすればいいんだろうと悩んでいた。
私が本を読むのは、その削ぎ落とされた部分を補いたくて読むんだろうなと感じた。それが、本とコミュニケーションをとるということなのかもと思った。
非常に面白かった。
また小川哲さんの本を読んでみたい。
楽しみにしています!
Posted by ブクログ
小説とは著者と読者のコミュニケーション。
読者との認識ギャップを埋めていくもの。
だから、小説を伏線と言い換えられる。
アイデアを生み出すのに必要なものは、発想力ではなく、見つける力、いわゆる視力という考え方も斬新だった。
誰に向けて、何をどのように書くか、は普段のコミュニケーショでも意識していきたい。
Posted by ブクログ
小川先生は自分の著作を読む人のルーツや手に取ったきっかけを知りたい、そのために感想もエゴサしている、といったことを書かれていたのでここに残しますが(本当に見ているかは別として)、私は下手の横好きで小説を書き自費出版することに人生の半分ほどを費やしており、そのために吸収できるものはなんでも頭と心に染み込ませたい、という思いで拝読いたしました。
と、こんなことを書いた癖に世の中の本の形態や売り方には全く固執していないので、読み始めて半分ほどでようやく「あ、これビジネス書とか新書じゃないんだ」と気づくという有様なので、やはり私にはまだ小説の道は険しいのかもしれません。ぐぬぬ・・・
ただ、自分の目に映らない世界、そこにある間隙にこそ物語や「小説」がある、という視点は面白いし、思えば私もそうやって自分の中の創作への熱を形にしてきたな、と自分を振り返れた。
伏線の捉え方やストーリーの構造論をみても、エンターテインメントや学問としての小説以前に「構造」としての小説を愛し、信じているのだな、というのが文章の節々から伝わってきた。そして当たり前のことですが文章がうますぎる。小説にとどまらず、仕事のメールとか、SNSの投稿とか、伝える文章を書く行為、あるいはそういう心掛けというのは一朝一夕で身につくものではないよな、、、と実感した。
まあ別に私は自分のためにしか書いてないからいいんだけどね!
でも、こういう風に書けたらいいな、という理想に近づくための道案内をしてもらえたので嬉しかったです。
Posted by ブクログ
ちょっとめんどくさそうな作者の考え方が垣間見られて興味深かった。目からウロコというほどでもないが流石に言語化はプロだなと。天性や感性で書いているのではなく、努力を重ねている事が伝わってくるのもいい。幅広い分野の作品がある作者で今後も注目していきたい。
Posted by ブクログ
もちろん選ばれし才能ある人が小説家にはなるのだが、小説家であり続けるには我々が仕事で同じ悩んだりコツコツやるのと変わらない。
ラストの短編小説を読むと、この本の役割が腑に落ちる「伏線回収」になっているのも流石。
Posted by ブクログ
「作家が小説を書くときに意識していることの多さ」が驚きだった。
普段、自分が文章を書く場面といえば業務上の文書が中心であり、そこで意識するのは“誤解なく伝わるか”という一点に尽きる。
しかし作家は、そのはるか先を見据えて文章を組み立てていることが、本書を通してよく分かった。
特に興味深かったのは、読者がどの程度の専門知識を持っているかを常に想定しながら書くという姿勢だ。
専門的すぎれば置いていかれるし、説明しすぎれば冗長になる。
その絶妙なバランスを探りながら言葉を選ぶという作業は、業務文書とはまったく異なる“読者との駆け引き”のように感じられた。
また、書く順番の重要性についての指摘も印象に残った。
情報をどの順で提示するかによって、読者の理解や感情の動きが大きく変わる。
これは小説に限らず文章全般に通じる普遍的な技術だが、作家はそれをより精密に、意図的に操っている。
本書では他にも多くの視点が紹介されていたが、数が多すぎてすべてを覚えきれないほどだった。
それだけ、作家の思考は多層的で複雑なのだと実感した。
全体を通して、作家の頭の中を覗き込んだような感覚があり、刺激的だった。
Posted by ブクログ
数年前に『君のクイズ』を読んだ時、へえ、視点の面白い人だなぁと思ったものの、単なるエンタテインメント小説を書く作家だと勝手に思いこみ、それ以降他の作品を読むこともなかった。
その後、著書が発表する作品を見るたびに、いい意味で期待を裏切ってきていたので、ちょっと著者に興味が湧いたりしていたのだ(読んでなかったけど)。
本書は、小説を書くことについて、著者が徹底的に考察を重ね、自分自身を振り返りつつ、その行為のなんたるかを詳らかにした論考だ。
まえがきからして、あああわかる〜と腑に落ちるところが多い。
そして著者がいうところの「この世の多くの原理は抽象化していくと似た構造に突き当たる」ことは、私も常々ずっと思っていたこと。言語化できてなかったけど。
そんなこんなで納得しつつ、かつ創作ということの深遠さにも思いを馳せつつ、また著者の視野の広さを目の当たりにした作品。思考実験的なところもあるのかな?
小説に限らず、芸術や創作というものについて、私はもっぱら受け手側としてだけだけれども、そのあり方に考えさせられた。
つまるところ、人は何かを理解するのに、自分の体験をなぞる形でしか、本当には分かり得ないってことなのだろうなあ。
次元の違う世界(例えば2次元とか3次元とか)では、別次元の事象は決して想像したり理解したりできないということと同じように。
本書の巻末には、著者が本書を通して論考を繰り広げた小説思考を検証するかのように「エデンの東」という短編小説も掲載されている。まさか最後に小説が載っているとは、そこに辿り着くまで全く気づかなかったので、少々びっくりした。本書のために書き下ろしたのかと思ったが『あえのがたり』に収録されていた作品らしい。新書で刊行された本書をこんな構成にすること自体が、著者の作家としての自分のあり方を如実に表しているようで、これまた面白いなあと思った次第。
著者はなかなかに興味深い人物なので、ぜひほかの作品も読んでみようと思えた。