あらすじ
その文章、「自分のため」に書いていませんか?
「伝える」ではない、「伝わる」言葉を、文章を生み出すために、小説家はいつも何を考えているのかーー?
『ゲームの王国』『地図と拳』『君のクイズ』『火星の女王』
祝デビュー10周年! 時代を席巻する直木賞作家・小川哲が、「執筆時の思考の過程(=企業秘密)」をおしみなく開陳!
どうやって自分の脳内にあるものを言語化するかを言語化した、目からウロコの思考術!
☆☆☆小説の改稿をめぐる短編「エデンの東」も収録☆☆☆
小説ーーそれは、作者と読者のコミュニケーション。
誰が読むのかを理解すること。相手があなたのことを知らないという前提に立つこと。
抽象化と個別化、情報の順番、「どこに連れていくか」を明らかにする……etc.
小説家が実践する、「技術」ではない、「考え方」の解体新書。
この本を読んだからといって、「小説の書き方」がわかるわけではない。小説家が小説について考えてきたことを人生にどう活かすか、あなた自身で見つけてくれれば言うことはない。ーー小川 哲
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Posted by ブクログ
自分が作品を通じて何を表現したいのか、それは問いから始まる、答えられる問いは問いではない、作品を通じてその問いの答えを探す
相手の求めているものは何かは作品を評価されフィードバックされることで得られる、作品を作ることが大事
象徴的で影響力のある出来事とその暗示を書く、文章が一意的では書く意味がない
仕事に通じる部分が多い、プレゼンを小説を書くように
Posted by ブクログ
読み終わりました。
冒頭に「小説とはやり直しのできる飲み会である」という一節がありますが、わたしには「終わってしまったランチ会の大反省会」みたいな本でした。
「文学とは、ある人間の認知を言語に圧縮したものである」という一節も途中にありましたけど、これは、小説だけの話じゃない、まるで日常生活を大人として生きるための倫理の話みたいに聞こえてしまいました。
読後、自分警察に逮捕・告訴されて、終身刑になりましたが、拘置所に逃れさせてはもらえずに、現実社会で更生しなさいってことで放免されて反省しながら生きている感じがしてます。
時々、読み返しますー
Posted by ブクログ
面白かった点
•抽象化と個別化の往復
抽象化と個別化を行き来することで、知らない世界についても書くことができる。見えた世界を抽象化し、別の世界に置き換えて個別化する。
•情報の順番
文章で何かを表現するときは、順番をどうするか決める必要がある。そして、順番を決めること以上に重要な要素はない。情報の順番が、小説という空間の立ち上がり方を規定する。
読者の客観的な視点に寄り添った順番で描かれていると、わかりやすく読みやすい。しかし、読みやすいことと価値があることは同義ではない。むしろ、視点人物である「私」がどのように世界を認知したかという点がないがしろにされる。
エンタメ作品には、視点人物と読者の情報量の差を最小化する戦略が多い。つまりエンタメでは読みやすさが必要条件であり、こういったタイプの文章が求められている。
•読者との契約と「内輪」
小説は、作者と読者の間に関係値がない状態から始まる。あらかじめ契約が結ばれていないため、作品の中で契約を結ぶ必要がある。
文脈は文章から読み取られ、書かれた内容以上の情報を読者に与える。小説とは、いわば文脈をコントロールする技術でもある。顔の見えない読者を想定する想像力が必要で、小説家には特殊なコミュニケーション能力が求められている。
小説は内輪であればあるほど面白いとも言える。「この話の面白さは私にしか理解できない」という思いを強く与えることに成功すれば、読者は深く感動してくれる。どれだけ読者に「私に向けられた話だ」と思ってもらえるか。そこに文章技術の秘密が宿っているとも言えるだろう。小説の中で読者と内輪を形成し、伝えたい情報をより簡潔に、より深く知ってもらうために言葉を費やすのだ。
•伏線の定義
伏線は一般に、①その後の展開を暗示する描写、②意外な展開に対する違和感を減らすための描写、と定義できる。
しかし、小説の骨格そのものが「展開を暗示すること」と「暗示されていない意外な展開への違和感を減らすこと」の2つによって成立している。つまり、伏線という概念をわざわざ立てることにはあまり意味がない。
•答えではなく問いから書く
主張や設定から小説を書こうという発想は行き詰まる。主張や設定は後から考えるべきで、最初に考えるべきなのは、書いてみたいことや考えてみたいことだ。自分が小説という手段を通じて何を書き、何を考えてみたいのかを考える。言い換えれば、大事なのは答えではなく問いだ。
問い自体は陳腐で構わないし、その時点で自信がなくてもいい。小説の面白さは執筆の過程で必ず生まれてくる。創作をする上で気をつけなければならないのは、過程で生まれたディテールに宿る面白さの種を逃さないことだ。
•アイデアに必要な力
小説のアイデアに必要なのは、いわゆる発想力などではなく、偶然目の前に転がってきたアイデアをしっかりと積み上げる能力ではないか。
•他者の物差しと分析
小説に限らず、あらゆる創作物に共通する性質について。商業的に成功するのはおそらく2パターンしかない。①もともと読者(他者)の物差しを内面化している人、②なるべく読者(他者)の物差しに合うように自分の物差しを調整した人、のどちらかだ。
自分の物差しを調整するために必要なのは分析である。分析に意味がないわけではないが、分析は非常に難しく、マーケティングのように分析すればいいというものでもない。さまざまな仮説を立てつつ、最終的にまだ誰も立てたことのない問いを検証する地点まで到達しなければ、意味のある分析にはならない。
では分析の質を上げるにはどうすればいいか。実は、作品を発表することが一番の近道なのではないかとも思う。
•価値観を加えない
どの観点にも、自分の価値観を加えないことが大切である。
•第11章「小説の見つけ方」
実際に小説を書いているときの思考過程が書かれていて面白かった。小説は、作者が何を表現したかではなく、読者が何を受け取ったかによって価値が決まる。
•あとがきの後の短編
あとがきの後に収録されている小説は、まさに小説家の悩みについて、まるでノンフィクションのように書かれた短編だった。最後に読むと、より面白かった。
全体を通して
小説について書いてはいるものの、基本的にはコミュニケーションや情報の提示の仕方というところに帰結しており、その点でも勉強になる内容だった。
特に、言ってしまえば「結論ファーストで伝える」といった内容や、「相手にどう受け止められるかが全て」というような受け手目線の考え方は、あらゆる現場で共通するものだし、分野を横断して大事な考え方だと思う。
つまり「自分本位であってはいけない」ということ。小説家が語る創作論でよく出てくる、一番コテコテの内容が結局書いてあったようにも思う。ただ、その「自分本位になってはいけない」という短い言葉を細かく分析し、どのように考えていくべきか、実際はどうなのかという方法論まで書いているのが面白かった。
自分で買った本ではなかったので、未知との遭遇のような形で楽しめた。自分ではこういった本は買わないだろうから。
Posted by ブクログ
ラランドのニシダがお勧めしていたから読んだ。
小川哲さんって読んだことなかったなあ、でもこの本を通じてこの人の小説との向き合い方が非常に面白い視点だなと感じたから読んでみたい。
どの視点も、解説も、非常に興味深いものだったけど中でも恋リア等がなぜ流行っているかの考察が面白かった。
あれは作品があって、それを見るMCがいて、コメントして、そのコメントまでを含めて全体の「作品」になっている。なぜその型が流行っているのか。
これは現代人が「人の意見」を求めているからだと。
自分の意見に自信がなく、他の人がどう思うか確認して安心する。自分の考えは正しいのか確認する、擦り合わせる。同意見でホッとする。
だからエゴサーチする。他人の言葉が気になる。
もしくは自分の考えを誰かに導いてほしい、意見にのせたい。
すごくしっくりきた。
確かに私も映画見たあとに考察サイトとかみるもんね。
自分の意見や考えが正しいのか、そこまでを提供してくれる作品は確かに安心して観れるし共有しやすい。
また、一方でみんな「共感」を求めてるんだなとも思った。日本人らしいというか、なんというか。現代と日本とどっちが色濃く出てるんだろうか。
何事も構造に落とし込んで考える小川さん、とても面白かった。
16
クリシェ
26カタルシス
50
とはいえ、「読みやすい」ことは「価値がある」ことと同義でない。
59
新人賞の応募原稿を読むときに何より苦労するのは、「作者が描こうとしているもの」を把握することだ。
72
小説家は常に、「読者は何を知っているか」「どこまで書けば理解してくれるか」「これ以上書くと、もともと知っている人にとっては野暮な説明になってしまうのではないか」という点に頭を悩ませながら文章を書いている。
105
小説を書くために必要なのは、価値のある「問い」なのだが、その「問い」を見つけるためにはまず作品を発表する必要がある。
108
新しさとは「書いてしまったこと」から逆算的に見つける方が簡単だし、理にかなっている。
110
僕の経験上、「ヤバい」ときほどアイデアが誕生するチャンスだ。
142
文学とは、ある人間の認知を言語に圧縮したものである。
143
これは文学に限った話ではないと思う。あらゆる表現活動は、「ある人間の認知」を、なんらかの手段で圧縮したものだ。何を圧縮したか。そしてどう圧縮したか。その二つの質によって、表現の質が決まる。
170
私は小説家だ。行間に滲んだ感情くらいよくわかるよ。