【感想・ネタバレ】言語化するための小説思考のレビュー

あらすじ

その文章、「自分のため」に書いていませんか?

「伝える」ではない、「伝わる」言葉を、文章を生み出すために、小説家はいつも何を考えているのかーー?

『ゲームの王国』『地図と拳』『君のクイズ』『火星の女王』
祝デビュー10周年! 時代を席巻する直木賞作家・小川哲が、「執筆時の思考の過程(=企業秘密)」をおしみなく開陳!
どうやって自分の脳内にあるものを言語化するかを言語化した、目からウロコの思考術!
☆☆☆小説の改稿をめぐる短編「エデンの東」も収録☆☆☆


小説ーーそれは、作者と読者のコミュニケーション。
誰が読むのかを理解すること。相手があなたのことを知らないという前提に立つこと。
抽象化と個別化、情報の順番、「どこに連れていくか」を明らかにする……etc.
小説家が実践する、「技術」ではない、「考え方」の解体新書。


この本を読んだからといって、「小説の書き方」がわかるわけではない。小説家が小説について考えてきたことを人生にどう活かすか、あなた自身で見つけてくれれば言うことはない。ーー小川 哲

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Posted by ブクログ

ネタバレ

遅ればせながら、2026年初読破。題名に惹かれて購入。作者も知らない、完全ど素人だが、小説なんとなく好きだな〜と公言しているので、できればいろんな知識を得ておきたいと思い読んでみた。

前半は、「あ、私この作者の書き方、読みづらいかも」と思ったが、終盤から案外すらすら読めた。知識がとんでもなく少ない私は、小説を読むのに前提説明が本当に必要としている人物なのだ。だから、読者が事前知識ある前提で書かれているものじゃないとほんとに読めない。丁寧に書いてくれる作家さんって、私との相性だと思ってた。けど、これある意味あってるかも。読み手を考えてくれる作者って、きっと読者に対して優しい気持ちがあるんだよね。これからも好きになった作家さんの作品は相性がいいってことで読んでいこうと思った。
ということで、改めてこの作家さんのこと調べてびつくり。直木賞作家だったのか!
これからいろんな作品読ませてもらおうと思いました。

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2026年01月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

▼抽象化と個別化
どれも人間がやっていることなので、かならず重なるところがある。それと同時に、どれも個別の人間がやっていることなので、絶対に重ならないところもある。何が同じで、何が同じではないか。何が普遍的で、何を普遍化してはいけないか。その点に注意しながら、僕たちは知らない世界について書く。

文体とはなにか
文体を考えるうえで重要な要素のひとつとして「情報の順番」がある。「情報の順番」により作中の視点人物と読者の間に「情報の差」が生まれるが、その情報量の差が小さいほど「読みやすさ」につながる。とはいえ、「読みやすい」ことと「価値がある」ことは必ずしも同義ではなく、前述の前提を承知の上で視点人物の主観を優先する場合もある。「情報の順番」はかならず恣意性を伴うものだが、その恣意性をどう扱うかという点に「文体」の根底が生まれるのではないか。
情報量の差が大きい=ミステリ的構造
情報量の差が小さい=サスペンス的構造(エンタメ(と称される)ジャンルではこっちが人気)

▼文脈
・全く同じ文脈でも、誰が、何処で、どのように語っているかで、受け取ることのできる情報の質が変わってくる。
・小説の文脈は書かれたテクストにのみ内在するわけではなく、作者と読者の関係性が、望むと望まざるとにかかわらず、作品の方向性を決めてしまう。

▼想像力
・小説家に必要とされる想像力とは「物語を創作するためのもの」と理解されがちだが、「顔の見えない読者を想像するためのもの」という側面も大きいのではないか。もしかしたら、後者の想像力のほうが小説家にとって必要不可欠な能力な能力かもしれない。
・「どれだけ内輪な表現で、どれだけ多くの人に楽しんでもらうか」という定規の精度を上げるためにも、「自分の作品の感想」ではなく「読者がどういった経緯で作品を手に取ったのか」を気にしている。
・数時間、数万文字を費やして、小説家は読者と「内輪」を形成することができる。

▼伏線
・小説の骨格は「展開を暗示すること」と「暗示されていない意外な展開に対する違和感を減らすこと」の二つによって成立している。これは伏線の定義とほぼ同義である。ゆえに伏線そのものを論ずることはくだらない。小説とは伏線そのものであり、回収されない伏線があってはいけない。
・小説は「象徴的で影響力の大きな出来事」と「象徴的で影響力の大きな出来事の伏線」で成立している(場合が多い)

▼アイデアが専門化せずかつ陳腐化しないためには
「ではどうすればいいのか」というと、そもそも順番が違うのではないか、と僕は考えている。「主張」や「設定」から発想しようとすると行き詰まる。なぜなら、一人の人間が発想できるアイデアなど、どこかの誰かにも思いつくことができるし、逆に「自分にしか思いつけないアイデア」を追求しすぎると、どんどん専門性が高くなってしまう。
「主張」や「設定」は後から考えるべきで、最初に考えるべきなのは「書いてみたいこと」や「考えてみたいこと」だと思う。自分が小説という手段を通じて「書いてみたいこと」や「考えてみたいこと」は何なのかを考える。言い換えれば、大事なのは「答え」ではなく「問い」だ。それ自体は陳腐で構わない。その時点で自信がなくてもいいと思う。
小説の面白さは、執筆の過程でかならず生まれてくる。創作をする上で気をつけなければならないのは、過程で生まれてきたディテールに宿る「面白さ」の種を逃さないことだ。
という話をしたところで、あまりにも抽象的なので、僕自身の経験を具体的に話してみたい。 「七十人の翻訳者たち」という短編が書かれた詳細な経緯だ。
~主張があって小説を書くよりも、とにかく書いてみたい人物やトリックや語り口や舞台設定の中から小説を探していったり、答えのわからない問いについて作品を辻て考えてみたりする方がずっと易しいと思う。
~「プロットを作ること」とも共存できると思う。プロットの段階で面白い小説は、それほど存在しないと思うからだ。プロットを実際に作品にしていく中で、どれだけ偶然を回収し、元のアイデアを洗練させていくか、ディティールを膨らませ、本筋と繋げるか、という点にも、小説の秘密が隠されているのではないかと思っている。

▼アイデアの見つけ方
アイデアとは発想力やオリジナリティなど生みだすものではなく、見つけるもの、すなわち「視力」である。「書いてしまったこと」が重要で「書いてしまったこと」から「新しい視点」を見つけていく。視野狭窄はもっとも小説をつまらなく、凡庸にする要因になる。

▼小説の見つけ方
「美容室へ行く」という日常的な行為が、「偏見」や「コミュニケーション」などといった普遍的な問いに結びついていく。このダイナミクスこそが、小説の魅力の一つでもある。

▼AI表現の脅威性
小説の面白さは、もともと表現しようと思っていた「ある人間の認知」の質と、それを圧縮する技術の掛け算によって決まる。
人間が芸術に感動するのは、圧縮された作品を解凍して、根本に存在したはずの「ある人の認知」を受容するからだと思っている(もちろん例外もあるだろう)。僕がAIによる表現活動に対してそこまで悲観していないのは、AIには解凍した先の「ある人の認知」、加えてさらにその先に広がっている「世界」が存在していないからだ。出力された作品の質でAIが人間と肩を並べ、あるいは先行していく未来は遠くない将来に生じると感じているが、作品から世界に接続していく過程には、現実世界を生きてきた人間の持つ強さが残っている。ゴッホの絵を飾りたい人はいても、AIが書いたゴッホ風の絵を飾りたい人はあまりいないだろう。

▼小説をさがしているか?
この問いは、問うだけの価値があるか
この表現はこれがベストか?もっと端的な言い回しはないか?
読者より自分を大事にしていないか?
利用していない「伏線」はないか?
どうして「小説」という形式を選んだのか?
小説でなければならなかったのか?
本気で小説を探そうとしているか?

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2026年01月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

文章を書きたい、けどどのようにしてまとめればよいかわからない
同人誌制作をしていて文章を書くうえで参考にあるかもと思い手に取り拝読した
各章読みやすい分量と、わかりやすい例示をしめしていて理解がしやすく助かる
これを読んだうえで参考となったのは、読む相手と書き手には契約が生じるという部分と、とりあえず書いてみなされ、さすれば道は開けていく、の二点であった
自分のために書かれた部分を排して、読む人のことを考える、基本中の基本だろうけどこれを守って制作にあたろうと指針ができた

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2026年01月27日

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