あらすじ
選考委員瞠目! 第19回小説現代長編新人賞受賞作
今村翔吾さん「執念の如き力を感じた」
塩田武士さん「朝宮さんの『業』に、私は期待している」
中島京子さん「チャレンジングな作品」
凪良ゆうさん「著者にしか書けない光と闇」
宮内悠介さん「シンプルに心を動かされた」
薬丸岳さん「一番に推した」
5人の納棺師たちは全力を尽くす。遺された人々が、最後に顔を見てお別れを言えるように。
「どんなに考えても、探しても、人が死んだ理由なんて絶対に見つからないんだよ」
納棺師、遺品整理士、生花装飾技能士……葬儀関係のプロ集団「株式会社C・F・C」。
とりわけ損傷の激しい遺体を専門に扱う「二課」は、無残な状態から生前の面影を復元するのがミッション。
事故、事件、自殺ーー二課には毎日のように遺体が運ばれてくる。入学式を明日に控え線路に正座していた少年、ゴミ屋敷で餓死した男性、幼い我が子を残して事故に遭った母親、飛び降りる瞬間を動画配信していた少女ーー
二課の納棺師たちはその手で、失われた生前のおもかげを復元していく。
愛する人が突然この世を去った時、どうすれば立ち上がれるのか。あの人はなぜ命を絶ったのか。遺された者はどう生きればいいのか。
それぞれに「喪失」を抱えた納棺師たちもまた、明日を生きる微かな光を見出していく。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
人はどんな最後を迎えるかはその人次第だし、突然奪われてしまうこともある
一瞬暗い内容に思えるけど、それぞれの人が物語に小さな灯りを照らしていた
Posted by ブクログ
人はなぜ死ぬのか。どんなに探しても、結局は死んだ人間にしか分からない。
納棺師と死体のあまりにもリアルな描写、そして人の感情が揺れ動く描写が非常に心にくる一冊。
とめどなく運ばれてくるご遺体は心臓は止まり声を聞くこともないが、死因やご遺体の状態、ご家族の嘆きのみ説明される。
この本の面白いところは、死体の過去の話について一切書かれていないことだ。
なぜ死を選んだのか、どんな環境だったのか、ご家族との関係。全て書かれていない。
ただただ、腐敗した身体と、嗚咽、涙。
これがリアルだ。
過去の話についての描写がないお陰で、納棺師の仕事視点で没頭して読み進めることができた。
Posted by ブクログ
読書備忘録996号。
★★★★★。
めちゃくちゃ面白かった!
納棺師というお仕事小説としてはめちゃくちゃ興味深かった。
そして主人公5人が抱え続けるそれぞれの喪失感を乗り越えて行く物語が心を打った。
続編も出るや出ないやという感じなので、忘れないように物語の舞台を整理。
関東圏の片田舎。田園風景が広がるところに株式会社C・F・Cはある。
いわゆる納棺企業。
主人公たちは二課に所属。正式名称、特殊復元処置衛生課。
簡単に言えば遺体を納棺できるように生前の姿に施す役割。
事故、事件など死に方は様々。施工の困難さをA~Eで格付け!想像を絶する!
二課の他に一課(一般処置衛生課)、生課、特課がある。
特課?特車二課と間違えたわ。のあが乗ったパトレイバーが出てくるかと思ったわ。
主人公の皆様。
課長の有明。
古株の入相。
同期の八宵と朝未。
そして新人の東雲。
ん?皆様のお名前?どれもこれも昼と夜の境界、所謂薄明を表す表現でしょう!
ただね、それぞれが抱えている喪失感からなんとか這い上がろうとしている物語なので、夜明け前、黎明という印象を得た。
そして、二課のメンバーが夜側に落ち込まないようにお互いさり気なく支え合う。
特に八宵。
特殊復元処置という仕事に就くことになった経緯がキツ過ぎて。
彼女を夜から救ったのは入相さんの名刺だったんだよね。
壮絶な過去と謂れなき誹謗中傷から人と関わることが無理になっていた八宵が新人東雲の研修担当となる。
その東雲の生い立ちも辛すぎる・・・。
朝未も心に秘めた苦しみを抱え、入相も終わりのないことを求め続ける・・・。
そしてクライマックス。
一家心中4人の施工。
研修中の東雲は、幼い姉妹の施工を単独で任される。
制限時間は2時間!
遺族の祖父母から東雲への伝言には涙が出た。
そしてそして!果たして八宵と東雲の関係はどうなるのか!笑
続編なのか、別物語なのか知らんが、この夏に納棺師シリーズ第2作が出ると!
楽しみでしゃあない!
Posted by ブクログ
読めて良かった!!
読みながらどんどん引き込まれました
佐々涼子さん「エンジェル・フライト」では海外で亡くなられたご遺体について描かれていましたが、こちらは国内でのこと。映画「おくりびと」ともまた少し違う。
遺体を復元する「納棺師」の仕事を描きつつ、喪失を抱えながら働く納棺師たちの内面も丁寧に綴られていました。
遺された人が、故人の顔を見てお別れを言えるように復元する。大切な人との最期の瞬間をどんな風に迎えるかは、その腕にかかっている。
限られた時間のなかで、損傷の激しい遺体を生前の元気だった頃の面影を感じられるよう復元していく──。
いろいろな意味でかなり大変な仕事だけど、故人の尊厳を守り、遺された人の心を救う。
本当にすごい……!
誰にでも出来る仕事じゃない。たとえ周りに手放しで喜んでもらえなくても、彼らの仕事で救われる人はいっぱいいる。
納棺師たちもそれぞれに心の中に消化出来ない思いを抱えていて、それでも人生は続いていく。
答えがすぐに出なくても、みんな懸命に一歩一歩自分の道を踏みしめていってるんだと感じました。
どれも良かったけど、最終話はとくに染みた。
こちら著者のデビュー作品だそう。
今後が楽しみな作家さんに出会えて嬉しい。
Posted by ブクログ
納棺師のお仕事を初めてちゃんと知った。しかもいろんな事情のある方の納棺。みんないろんな背景があってそれでもその仕事を選んでるってすごくよかったです。しかもデビュー作って!次の作品も楽しみ。
Posted by ブクログ
特殊な遺体の納棺師の話。
死んだ人の事情はさらりと。遺体の復元やら、納棺に関する要望やらが詳しく。そしてそこで働く人々のことが、それぞれの視点で語られる。
読む前の印象では、陰惨な話かなと思ったが、全然違った。
訳ありの人々ばかりの登場人物、みんな幸せになってほしい。
Posted by ブクログ
様々な事情(事故や自死など)で損傷してしまった遺体を復元することを専門にした部署に所属する納棺師たちのお話。
「おくりびと」や「ほどなく、お別れです」などといった、人間の最期を看取ることをテーマにした作品もあることから、わりと世間には認知されている仕事かもしれない。
認知されている仕事ではあるものの、ひとの「死」を扱う仕事であるために忌避されがちな側面もあると思う。
ある意味では他人の不幸を商売にしているとも言えるので、そう思う気持ちもわからないではないけど、世の中の仕事の大半は大なり小なり人間の不幸や不便をきっかけとしたものだと思うので、その理屈で納棺師の仕事を否定するのはナンセンスなんじゃないかなーと個人的には感じる。
私はむしろ葬儀関係の仕事をしている人たちはすごいと思ってるし。日常的に人間の死と向き合うなんて心の負担が大きすぎて自分は耐えられる気がしないし、仮に自分の身内が亡くなったときに、(言い方は悪いけど)その後始末を滞りなくできる気もしないからやっぱり葬儀屋さんには感謝しかない。
特に損傷してしまった遺体の復元という仕事は実際に遺体に自ら手を加えるという性質上、血みどろな作業もあるわけで……。まともな精神状態じゃいられなくなるのも当然だ。だけど、残された遺族との最期の別れを最良の形で迎えてもらうためには、決して人間的な感情を捨てることは許されない仕事でもある。と私は勝手に考えた。
そんな仕事をしている彼らにもそれぞれの人生、それぞれの主義・主張、それぞれが抱えている問題がある。
他人の死に向き合いながら、自分の人生とも向き合う。そんな過酷な仕事を続ける彼らを私は応援せずにはいられない。具体的に何ができるかはわからないけど、もしお世話になることがあれば美味しいお菓子でも差し入れしようかと思います。
Posted by ブクログ
この手の本を苦手とするひともいるかもしれません…!
描いてある内容はかなりエグいのですがそう感じさせない筆者のかきぶりはすごいです。
そして感じ入るところが多々あり、静かに涙がぽろぽろこぼれ落ちました…。
このような世界があることを知れてよかった、そう思わせてくれた本でした。
納棺師達を主人公とした小説です。
小説だけでなく、テレビドラマや映画等で、葬祭に関わる人達を主人公とした作品が多く出ていますので、どうしてもその中の一つで時代の流れに乗った作品の様に思えますが、主人公の納棺師達自身が色々と抱えている人達で、その心の襞が現れた作品です。
Posted by ブクログ
『だから、ちゃんと顔を見てお別れできるようにしたい』
『(死んだ)理由なんて、生きている人間が決めるんだよ』
葬儀関係の作者が書いたとしか思えない、生々しい死体処置の描写と、納棺師たちが抱えるどこが現実味を帯びた辛い過去。
ラストに希望は感じられるけど、子どもを突然亡くしても、旦那が急に自殺しても、妻が理由を告げず失踪しても、のこされた者たちはその事実を心の中で整理して踏ん切りをつけるしかないということ。
物語としてはもやもやしますが、そうやって心を整理して生きていくしかない人の方が現実には多いんですよね。
鉛を抱えたような気持ちで読み終えました。
5章構成で、葬儀場の二課で働く納棺師たちが1章ずつ語り手となります。
ご遺体やご遺族の背景にはあまり焦点当てないのが新鮮でしたが、あくまで主体は働いてる納棺師たち。だからこそ彼らが抱える、大切な人との別れや生きづらさに、より感情移入しながら読めたような気がします。
なにか大きなきっかけがあった訳じゃないけど、二課での仕事と人間関係によって少しずつ影響し合い変化していく様子に、「あぁ人生だなぁ」と思いました。
私は「生と死の分かれ目」にずっと興味があります。
直前まであったはずの人権やプライバシーが、亡くなった瞬間に喪失すること(遺体の扱いや遺品整理に見られるように)、それを遺された者たちも受け入れること(感情として受け入れられるかは別として)がすごく不思議だなと思っています。
ご遺体を綺麗に、という納棺師の仕事自体にも、「それは誰のためのものなのか」というジレンマが付き纏うんじゃないでしょうか。
亡くなる前から死化粧のことを考えている人は少ないでしょうし、大抵は遺族が主体で依頼されるので、その意味では遺族のためのものになるとは思います。
ですが本書に出てきた、「身体的女性だけど男性として生きたかった(男性として死にたい)ご遺体」と、「それを認めず女性として死化粧させようとするご遺族」のように、必ずしも死者と遺族の希望が重なるとは限りません。
この場合だと個人的には、亡くなった方の気持ちを優先したいと思っちゃいますが…
一方で、遺族のいないご遺体(いわゆる独居老人とか)を綺麗にする作業となると、これは誰のための作業なんだ?という疑問が湧いてきてしまうところもあります。
つまり先のケースにおいても、遺体自体に尊重したい権利があるのではなく、あくまで生きていたその人に対しての配慮に過ぎないわけです。
我ながら都合のいいケースバイケース解釈すぎるか。
『自分の知らない世界が目の前にあって、でもそれは決して他人事ではない。当たり前に存在してるのに、今まで気にもとどめなかったことにはっとしました/東雲』
人の死を受け入れるための儀式として、「顔を見てお別れすること」は私たちが思っている以上に重要なことなんだと思いました。
大切な人の死を受け入れて別れを告げる行為は、目の前に相手の存在(肉体)が感じられてこそようやく実現するから。
あらゆる亡くなり方でも、それをできる限り可能にする納棺師という仕事は、東雲くんの感じた通り、人間の営みにおいて欠かせない仕事。
そこにやりがいを見い出した東雲くんかっこいいし、本書を読んで知らなかった仕事の存在感に気づけてよかったなあと感じました。
●身内が急にいなくなるということ ──────
登場人物全員に辛い背景がありますが、やっぱり八宵の人生を思うと悲惨すぎて。
入相さんもだけど、配偶者という一番近い存在が急にいなくなってしまうと、相手を失った悲しみや喪失感と合わせて、その要因を自分に求めざるを得ない。自責の念から逃れられないという、、、
『時間というのは残酷で、良くも悪くも変化しながら進んでいく。心にあった熱も次第にすっと逃げてしまい、本来の目的さえも忘れそうになる。一生変わらないと思っていた愛情が、ただの情になっているのかもしれない。/ 入相』
『時間と共に薄れてゆく夫の存在を、色濃くわたしの中に残し続けたかった / 八宵』
大切な人のことを忘れてしまいそうな自分のことを、ひどく冷たい人間なんじゃないかと思ってしまう感覚は、すごく想像がつくというか。辛い感情や経験を禊のように自分に課すことは、なにもできなかった自分を赦すための行為でもありますし、、、
ただ入相さんの「妻の失踪のことを、他人に悲しいことだと決め付けられたくない」「普通に家族の話をするように、妻の話を聞いて欲しい」という感情には、いや難しいだろ…と思いつつ。
でもそっか、どんな相談内容もまずは事実として受け止めて、それを相手がどんな解釈でどんな温度感で話してるかで、こちらの受け止め方を変えるってだけのことなのかもな、とも思いました。
それなら私も日常的にやってることではあるなぁと。
●登場人物のキャラクター性について ─────
キャラクターはドラマ化できそうなぐらい立っていますが、死体処置のシーンがあまりにグロくて難しそう…
八宵と朝未は独身同士っぽい口調だったから、八宵が未亡人なのは意外な設定!
葬儀屋はだいたいミステリアスなクールメガネインテリなのなんでだろ、「アンナチュラル」の葬儀屋思い出しました笑
『誰がやっても綺麗に開けられるよう企業努力が注ぎ込まれているはずなのに、それを裏切ってしまった気分になる』
入相さんの性格がここに詰まっている…!いつも自分に責任があるって思っちゃう人だ…!となるぐらい、文章の細部で登場人物の性格をわかりやすく書かれてます○
東雲くんはサイコパスキャラぐらい闇深系かと思ってましたが、思った以上に素直でええやつ笑
ただ「いいこ」症候群な性質が自分を苦しめていて。「いいこ」と褒められることに喜びとプレッシャーを感じてきた子で、その矛盾にめちゃくちゃ共感しました。
両親の躾によって、好きな物や夢を持つきっかけを十分に貰えなかったのに、それでも両親に正解を求めてしまう「自分」が不完全なんだと追い込んでしまう。
だけどその重荷を下ろすきっかけは、いつだって熱中できる譲れない何か(東雲くんの場合は納棺師の仕事)なんですよね。
そこそこの企業なら後輩指導なんて有無を言わさずさせられるもんですが、八宵と朝未含めそれなりに事情抱えた、ちょっと危うい登場人物たちが、東雲の指導を通して自身のしがらみと向き合うというストーリー性は面白かったし、キャラとしてより魅力的に感じられました!
●タイトル・続編について ─────────
新人賞受賞時のタイトルは「薄明のさきに」で、発行時に「アフターブルー」に改題されているようです。
後者の方がキャッチーで手に取りやすい!改題の重要さがわかる!
ラストは明らかに含み持たせてるなあってSNS徘徊してたら、続編決定の投稿!!
次の主人公は「遺品整理士」。ちらっと出ていた八宵、朝未の同期かな。
本作の納棺師たちのその後も少し見られるなら読んでみようかな、東雲くんが立派な納棺師になってたら感動しちゃうかも。
●その他 ─────────────────
『たとえここに来るご遺体が感染症を持っていたとしても、それが俺たちに告知されることはほとんどない』
医療介護分野の人が、なくてはならない存在なのに、ないがしろにされていると感じる瞬間としてありそう。
東雲父が、八宵(若い女性)の前では強気な態度だったのに、有明さん(中年男性)が来ると外用の顔に切り替えたってとこ。世間体の現れすぎて印象的でした。
冬が葬儀業界の繁忙期(=人が多く亡くなる)なのは、やっぱり寒くて自宅内で亡くなる方が多いからなんでしょうか?それと孤独を感じやすくなって、自殺する方も増えそう。
『まさに生きることから外れた瞬間だった』
『恋人、と言われればそう見えるかもしれないですけど…。そうじゃないと言われた方がしっくりきます』
Posted by ブクログ
うまく言えないけど、文章だけじゃなくて出てくる言葉や文字が綺麗だな、とゆうのが最初の印象でした。
本当に存在するのか分かりませんが、納棺師の中でも特殊なご遺体を扱う部署で、損壊の激しい方の修復をして、出来るだけ元の姿に戻す、もしくは残された方の望む姿にすることを仕事にしている人達のお話しでした。
上記の通り、惨い、酷い、悲惨な見た目の方が出てくるので、その描写が苦手な方もいるとは思いますが、私の印象としてはそこまで事細かく書いているわけではないと思いました。あとは想像力の問題かと。そういった表現よりも私は働いているメンバーの気持ちに寄っていったので、あまり気にならなかったのかもしれません。
印象に残っているのが「どんなに考えても探しても、死んだ理由なんて分かんないんだよ」とゆう、残された側の言った言葉でした。何の前触れもなく、や、本当はあったのかもしれないけど、気づかなかっただけかもしれない、突然自殺した大切な人の死を受け入れる為に、残された人は理由が欲しいんですよね。生きていくために、でも、だからこそのこの言葉が凄いな、と。本来なら綺麗事でも何かしら理由を考えて前を向いて生きていこう!みたいに持っていくかもしれないのに、あえてそう書いてる所がリアルな気がして、良かったです。
あとは棺桶に入っている旦那さんの髪型に納得いかなくて何度も納棺師の方に注文する奥さんの場面も泣きたくなりました。そうだよね、そうゆうことじゃないんだよね、となりましたね。
優しさしかない職場の人間関係に、仕事とのギャップがあって、余計にグッとくるものがありました。私ならこんな優しさ溢れる職場なら就職したい。特に朝未さんの優しさに何度も救われた。いい男過ぎないか!?
Posted by ブクログ
事故や事件、自殺などによって損傷の激しい遺体を、生前の姿へと少しでも近づけるために尽力する納棺師たち。彼らが遺体の状態と真摯に向き合い、遺族が故人との最後の対面を穏やかに迎えられるよう細心の注意を払う姿は、本作において非常に印象深く描かれている。その仕事は高度な技術だけでなく、故人への敬意と遺族への深い思いやりを必要とするものであり、決して容易なものではない。
損傷の大きな遺体を前にした納棺師が、動揺や無力感を抱えながらも自らの感情を整理し、黙々と作業を続ける場面に胸を打たれた。一人の人間としての尊厳を取り戻そうとする彼らの所作には、深い敬意と覚悟が込められており、死を単に恐れるべきものではなく、人生の一部として受け止める姿勢が感じられる。遺族の悲しみに寄り添いながらも、静かな強さで故人を送り出す彼らは、本作のテーマを象徴する存在として強く心に残った。
日々死と向き合うことで心に蓄積される疲労や葛藤、仕事の重さに押しつぶされそうになる苦しみなど、彼らの内面が率直に描写されている点も本作の大きな魅力である。それでもなお、故人と遺族のために最善を尽くそうとする姿からは、悲しみを受け止めながらも前へ進もうとする人間の強さが伝わってくる。
本作は、派手な展開に頼るのではなく、人と人とのつながりや感情の機微を繊細な筆致で表現している点にあると思う。納棺師という職業を通して、生きることと死ぬことの意味を真摯に問いかける文章に、読み進めるうちに登場人物たちの痛みや希望が我がことのように感じられ、物語の世界へ引き込まれていった。
タイトルである「青」に込められた意味も味わい深い。それは悲しみや寂しさを象徴するだけでなく、新しい一歩を踏み出すための希望の色としても描かれており、読後には静かで温かな余韻が胸を打った。
Posted by ブクログ
どうしてもグロい描写が苦手なので、読むのがキツかった部分もありました。しかし、裏を返せばそれだけリアルに納棺師の仕事が描かれていました。「死」とどう向き合うか、残された遺族はどのようにして大切な人の「死」を受け入れるのか。少なくとも、自分は残された人たちの迷惑にならないような死に方をしたいと思いました。
Posted by ブクログ
損傷の激しいご遺体を整え、遺族がきちんとお別れできるようにする仕事の描写が印象的。
普段知ることのない世界に圧倒されると同時に、故人を送り出すことの意味を改めて考えた。
物語全体を通して、人生の儚さと、人それぞれが抱えている見えない傷の重さを感じる。
誰にでも簡単には手放せない感情や過去があり、それを抱えながら生きているのかもしれないと思った。
Posted by ブクログ
納棺師という仕事を舞台にした小説。でも普通に亡くなった方の納棺ではなく、さまざまな理由で遺体の修復が必要な方々の話。なので、遺体の状態の説明にはビックリすることばかりだが、たしかに轢死、飛び降りなどの自殺や激しい交通事故など、生前の姿からはほど遠い方もいるという現実もあるわけで…。
小説初執筆でこの内容。新人賞も受賞し、次はどんな小説を書くんだろう。
章ごとに二課のさまざまな喪失を抱えた方々を中心とした短編小説的なつくりになっているので、しぼったほうがよかった、との感想もあったが、私的にはそれぞれ抱えたものがありながらも希望がある終わり方だったので、よかったと思う。
Posted by ブクログ
納棺師である登場人物が抱えている心情、仕事の向き合い方をさまざまな描写で描かれています
看護師として働く私も、ご遺体ご遺族に対して感情移入をしすぎないことは大前提として、その方々の気持ちに寄り添うとはどういうことなのか、この本を通して再度考えさせられる時間になりました
Posted by ブクログ
特殊復元処置を施さないといけないほど損傷の
激しいご遺体と向き合う納棺師達のシビアな現実と心の内面を描いた物語
5人の視点で描かれ、それぞれの個人的事情と苦悩が絡む事で、納棺師という職業の
特殊性 過酷さ 尊さ が際立っていました
また、ご遺体と真摯に向き合うことで、
5人はそれぞれ抱える苦悩や生きづらさから少しずつ解放されていきます
人の亡くなり方は千差万別
どんな亡くなり方であってもその死が安らかなものであって欲しいと残された者達は願う
この物語から
その願いに近づき寄り添う事を生業とする人たちがいる事を知り
彼らに深い敬意を感じるとともに
なぜかとても心強い存在のように思えたのです
図らずも当事者になった
自分に想いを馳せてしまいました
Posted by ブクログ
いろいろな本を読んできたけれど、納棺師、はじめて知った職業だった。
こんな風に働いているんだ。驚きの連続だった。
人間の一生を考える上で、知った方がいい内容だと思う。
しかし
ご遺体の描写が多く、その状態もそれぞれで、かなり衝撃的。
子供にはどうなんだろ。悩むところ。
綺麗な表紙なので、恋愛ものかな~とか
知らずに読み始めてしまい「ガーン!」は避けたい。
Posted by ブクログ
最後のお別れが出来ないくらい損壊してしまっている遺体を復活させる専門部署、㈱C·F·Cの2課。その部署を立ち上げた有明が欲しいと見込んだ東雲が研修に来るあたりから話は始まる。とんでもなく凄惨な仕事内容が詳らかに描写されながら、そこで働いている4名の抱えている人生や、今後の心の持ちようが一章ごとに紡がれる。最後に新人の東雲の話。普段なかなか直面しないことが読めるので、知識欲も満たされつつ、死と直面する話なので、職業差別含め考えさせられる本だった。私には登場人物の抱えているものと、遺体の持つ情報が一冊ては過多すぎたので★4評価にしたけれど、読んで良かった本だった。
遺体が損壊激しく、文章でもなかなかに厳しいので、中学校以上。
Posted by ブクログ
損傷の激しい遺体を復元するという、想像を絶する過酷な納棺師のリアル。凄惨な描写に最初は息を呑むけれど、ボロボロになった遺体を生前の姿に近づけようと奮闘する彼らの姿には圧倒された。どんなに残酷な最期であっても、こういう人たちがいてくれるおかげで、遺族は故人と向き合い、きちんと最後のお別れができるのだと、その存在のありがたさが身にしみた。メインキャストたちの名前がそれぞれの背景に近いという細やかな設定も秀逸で、ただ重いだけでなく、読み終えたあとに静かで温かい余韻が残る素晴らしい一冊だった。
Posted by ブクログ
損傷の激しいご遺体の復元処置を行う納棺部二課。
その二課メンバーそれぞれが抱える過去や苦悩が章ごとに徐々に明らかになり、納棺師の仕事を通し、自身が抱える問題とどう向き合っていくかが描かれる。
少し前後の繋がりが分かりづらく感じる部分があり、自分の集中力不足のせいか話に入り込みきれなかった。
飛び降り自殺中の動画を、施行した八宵や他の二課メンバーが、検索して見ている場面に驚いてしまった。単なる興味ではなく、八宵が抱える問題と向き合うためというのは分かるが、それぞれが大切な人を突然失ったことで、その理由を探したり後悔したりしているのに、その行動はありなのか?と疑問に思ってしまった。
Posted by ブクログ
納棺師にスポットを当てた話。
様々な遺体がやってくる納棺師の現場について書かれているだけでなく、そこで働く人たちの心情についても書かれていた。それぞれがどういう気持ちでこの仕事をしているのかみたいなのが分かって、好きという気持ちだけでは出来ない仕事だなと深く感じることができた。
実際に想像を絶するほどハードな仕事だとは思うが、家族が顔を見てご遺体との最期のお別れや覚悟ができるようにしていく大切な仕事だなと感じた。
本作品が初執筆らしくこのテーマで!?と驚いた。
Posted by ブクログ
納棺師の物語。
母が亡くなった時に、メイクしてくれた納棺師さんのこと思い出した。
メイク終わった時、思わず泣いたんだよな〜
メイクしただけなのに、いつもの元気な頃の母を思い出し、ただ眠っているだけかのように綺麗にしてくれて。。。
すごく誇れる職業だと思う。
故人にも家族にも満足させて、素晴らしい職業だと思う!
と、改めて読んで思えた。
Posted by ブクログ
葬儀関係の職場で働く5人の納棺師たち。彼らは無残な死者の姿を生前の面影へと戻していきます。
高校の入学式を数日後に控え線路に正座して自ら命を絶った少年。幼い娘を二人残し、事故で亡くなった母親。飛び降りる瞬間をSNSで配信していた少女――。
この作品に描かれる死は、想像以上に悲惨で私の想像を遙かにこえるものでした。こんなに無残になるのかと。
けれど、この物語が見つめているのは死そのものではない。死者を生前の面影に残るように復元していくなかで、納棺師たちが自分自身が抱える傷とも向き合っていく姿。
女の子が好みそうなものを愛してきた男性。突然、妻に去られた男性。夫を自死で亡くした女性。親の期待を優先し、自分の感情を後回しにして生きてきた青年。そして、22年前に幼い息子を事故で失った上司。
彼らは死者を復元しながら、同時に、自分の中の何かを何とかしようとしているようにも見えました。
心に留まった言葉の一つが以下です。
「人生なんて長く感じるけれど、ほんの僅かな時間なんだよ。でも人は、当たり前に広がる景色を見ようとしない。目の前はこんなにも開けているのに、映したいものしか映さない。」
この言葉のように、人は自分の理解できる形に物事を収めたがると思います。
理解できない痛みや死に理由を与え、「そういうものだった」と名づけることで安心しようとする。けれど本当は、他人の苦しみなど、簡単に測れるものではありません。
だからなのか、登場人物たちの「わかろうとする姿勢」が胸に残りました。
完全に理解することはできなくても、理解しようとすることをやめない。不器用なんだけど、もどかしさを時に感じるのだけど、でも、そういうものなんだよね、って思える。
誰かを完全に理解することはできなくても、理解しようとすること自体が、人を支えているのかもしれないなぁって。
死を扱った物語ですが、「生きること」が浮かび上がってきたように思います。
Posted by ブクログ
オーディブルで聴いた。
納棺師の中でも、体や顔が破損しているご遺体を綺麗に修復するお仕事があることを初めて知った。
職人だなと思った。
私はグロいものが苦手なので絶対にできないけど、できる人はすごいと思う。葬儀のお仕事は見下される(?)みたいな描写があり、そんなこと思ったことないけど、世間ではそうなのかな?と思った。大変なお仕事だろうなとは思う。
Posted by ブクログ
新しい仕事の世界を見れたのは新鮮でした。それよりも空の情景描写が素敵でそれと人の一生を比較しながら読めたのも素敵な経験をこの本からもらいました。
Posted by ブクログ
感想
特殊な死に方を扱う納棺師だから文章だけだけど、中々グロい。でも、遺族にとったら綺麗な形で別れたいだろうな。
あらすじ
納棺師の物語。通常の遺体の納棺を行う1課に対して、この会社の2課は特殊な遺体を復元するのを扱う。この課を立ち上げた有明は、入相、八宵と朝未と4人で業務を行っていた。
新人研修の日に運び込まれたのは、列車に轢かれた轢死の死体。復元作業を行う中、新人は固まる。しかし、新人の東雲は2課を希望する。東雲の教育係はぶっきらぼうな八宵が担当する。会社には、事故死、凍死など様々な遺体の復元について依頼される。東雲は淡々と仕事をこなしていく。
朝未は男だが、化粧やかわいいものが好き。だが、他人は好きになれない。納棺も化粧が上手と仲間に認識されている。
八宵は夫が飛び降り自殺して入相に復元してもらい入社した。夫への贖罪の意識が消えないでいた。
東雲は過干渉の父親に何も言い返せないでいた。そんな自分が葬儀屋で必要とされることに喜びを感じる。