【感想・ネタバレ】カフネのレビュー

あらすじ

☆2025年本屋大賞受賞作☆

【第8回未来屋小説大賞】
【第1回あの本、読みました?大賞】

一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。
やさしくも、せつない。この物語は、心にそっと寄り添ってくれる。

最愛の弟が急死した。29歳の誕生日を祝ったばかりだった。姉の野宮薫子は遺志に従い弟の元恋人・小野寺せつなと会うことになる。無愛想なせつなに憤る薫子だったが、疲労がたたりその場で倒れてしまう。
実は離婚をきっかけに荒んだ生活を送っていた薫子。家まで送り届けてくれたせつなに振る舞われたのは、それまでの彼女の態度からは想像もしなかったような優しい手料理だった。久しぶりの温かな食事に身体がほぐれていく。そんな薫子にせつなは家事代行サービス会社『カフネ』の仕事を手伝わないかと提案する。

食べることは生きること。二人の「家事代行」が出会う人びとの暮らしを整え、そして心を救っていく。

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Posted by ブクログ

☆5つでは足りないぐらいの良作。魅力を伝えづらい作品ではあるが、中でも、せつなと薫子の関係性とその距離感の詰め方は主題の一つ。生きる意欲を失ったときに助けてくれる誰かが側にいること、その大切さをしみじみ感じられる作品。生きることは食べることでもあり、そういう意味で健康な食事は何物にも代えがたい重要なもの。料理を通じて、相手に気持ちを伝え、前に一歩踏み出す勇気を与えることができることを知った。

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2025年12月29日

Posted by ブクログ

なぜか分からないけど、読んだあと少し元気がもらえた。食べることって大事なんだなと思えた。また時間を置いて読みたい。

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2025年12月28日

Posted by ブクログ

誰かの手助けを必要としてる人がいて、その人のための家事代行サービス。素敵なお仕事だと思いました。
家族でも知らない1面を持ってることも当然あって、それを受け入れること、受け入れられることが簡単なようで難しいんだなと感じました。
じんわり暖かいお話です!

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2025年12月28日

Posted by ブクログ

それぞれの人生と人と繋がりが重なり合い新たな形を育んでいく
葛藤や変化、辿り着く先全てが愛に包まれてて優しく照らしてくれるような作品でした

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2025年12月27日

Posted by ブクログ

孤立、貧困といった日常から目を逸らさずまた諦める事なく、自分をその現場に放り込み 自分の特技を体当たりで活かしていく主人公たち。
そこに関わる人々の単純ではない関係を、人間の本能に備わる力=食べる力使って紡ぎなおしていく。
時代に合った新しい遺言の制度やパートナーシップ制度まで活用しながら、逞しく生き抜こうとする 本能と知恵を駆使して人生を切り拓こうとする現代日本の風景が垣間見える作品 小説という方法の持つ洞察力を感じた一冊

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2025年12月27日

Posted by ブクログ

他人は他人、分かり合うことなんてできないことは大前提で、それでも、その人の為に何かしたい、って純粋な思いがあれば、遠慮の壁を越えてぶつかっていける。
人付き合いは、まさに“戦闘”。

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2025年12月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

何度も泣いてしまった

薫子の家庭環境や、両親への思い、そしてその乗り越え方が自分のものと重なって、胸が締め付けられるようだった。
実際、春彦のような弟がいたら…と想像すると、自分の不甲斐なさに、弟の死後、改めて直面してうちひしがれる。春彦は、周りの幸せを願って生きたけど、それは、自分の気持ちや願いすら押し殺してすることなのか?そうすることでかえって周りは苦しむこともあるのでは?と思った。私は、春彦にはもっと自分の人生を生きる選択をしてほしかった。それが周りの人間、特に家族や大切な人を幸せにするんだって気づいてほしかった。
せつなの、どうしようもなく愛しい人間の、その心の中がいじらしくて、、たくさん傷ついてきたからこそ、その痛さを知ってるから拒絶してしまう。。すごくよく分かる、それをまだ若い女の子が抱えて、それでも人の生活を支える仕事をして生きてる。。でも多分世の中にはそういう人って割といるんだろうな。ただ普通に生きてるだけではすれ違う人たちの人生なんてわからないけど、きっとみんな何か抱えてるんだろうな。そんな人の人生を労わりたいなあと少し思ったり、、
公隆との話も、最後きちんと収束して良かった。公隆の気持ちも言いたいこともよく分かる。やっぱりみんな、人生のどこかで自分にとって大きな何かがあって、それに触れそうになると逃げたくなるんだ、、。
救われるかもしれないっていう期待すら怖いし、その希望が打ち砕かれた時の方が辛いから、いっそ、ずっと辛くて孤独な方が楽だと思って、拒絶するんだよね。。
それと、最後のカフネという言葉の回収も綺麗で、タイトルに惹かれて購入したのだけど、改めてこの言葉の持つ魅力も感じた。
最初から最後まで、かなり時間をかけて(間を空けて)読んだけど、本当に心にくるフレーズがたくさんあって、自分の人生とも重ねて、本当に読んで良かったと思える作品だった。愛とは何かっていうことを考えられたと思う。また、しばらくしたら読み返したい^^

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2025年12月27日

Posted by ブクログ

「本屋大賞だから面白いだろうな」と思いながら読み始め、読んでる途中は「さすが本屋大賞だな、面白い」と思いながら読んで、「先入観なしで読みたかったな」と少し残念に思ったけれど、読み終わった今はそんなふうに思っていたことを忘れてしまうぐらい深い深い感動の中にいます
読み終わった1日経った今もずっと考えて
すっっっごく良かった!
素晴らしい読書体験だった!

ーーー

綺麗にまとめるのが逆に勿体無い気がするので、読みながら思ったことを新鮮なうちに箇条書き↓

・最初の方、薫子の語り口がキツさを「こういう作風の作家さんなのね」と捉えていたけど、そんなことなかった。そういうことだったのね

・不妊、毒親、身内の死、貧困、同性愛、病気、などなど属性盛り込みすぎやろすごいな!!!

・そのうえ料理の描写が美味しそうで、ごはん小説的な要素も持ち合わせてるからほんとやりたい放題だな!!

・「おにぎりを握れるようになると人生の戦闘力が上がる」、刺さった…

・ラストの薫子の提案はちょっと強引というか、そこまでする?という提案をするけどその0:100なかんじとか徹底するところが薫子らしいなって思う

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2025年12月27日

Posted by ブクログ

さすがの本屋大賞受賞作品、読んで良かったと思える素敵な作品でした。

自分の内も理解しきれないのだから、なおさらどんなに親しい間柄でも、他者の全てを真に理解することはできないのだろうな。
だからといってただ諦めるのではなく、自分の心と向き合い言語化して伝えること、他者を先入観や思い込みで理解した気にならないこと、寄り添う気持ちをもつことが大切なのかなと思った。
でも全てを伝えれば確実に状況好転するわけではなくタイミングや条件が影響するし、どんなに想像力を働かせようと思っても、当事者の立場を経験しないと気持ちを理解しきることはできないから難しいよね。

そして誰とでも関わり続けるのが正ではなく、時には自分の心に従い距離をとるという選択をとるところもよかったなあ。

これから先の人生で壁にぶつかっても、食事や掃除といった生活を整えることで心救われる場合もあることを忘れずに生きていけたらいいな。


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2025年12月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

途中、「美味しいごはんは正義!」という言葉が頭に浮かんできました。食べることは生きること、生きることは食べること。そんなことばも。

これから何か辛くて落ち込むことがあった時に、
「よし、まずは美味しいものを食べよう!(でもお酒は控えめに…)」と、この本のことを思い出すような気がします。
さすが「本屋大賞」と思うようなヒューマンドラマでした。

(ここからネタバレあり)

主人公の薫子が、亡くなった弟の恋人のせつなに会うところから物語は始まります。
前半はいろいろ謎があります。

・春彦は自殺なのか?
・せつなと春彦の関係(別れの理由)
・春彦が遺言書を作った理由
・春彦から送られてきたプレゼント
・公隆の離婚したかった理由

物語が進むにつれて明らかになります。そして、春彦、せつな、公隆が本当はどんな気持ちだったのかもわかっていきます。

また、薫子はカフネの「チケット」と呼ばれるボランティアに参加。斗季子をはじめ、多くの出会いがあります。そんな出来事から、薫子は荒れていた生活を見つめ直していくのでした。

希望が感じられるラストで、優しい気持ちになりました。

ネグレクトの子どもたちも登場し、親子関係の問題も描かれています。薫子も両親との関係に辛い気持ちを抱えていました。読者もモヤっとする場面です。でも、最後に薫子が出した結論には納得でした。

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2025年12月27日

Posted by ブクログ

5回泣いた。

始まりが不本意な理由であっても、辛い理由であっても、手と手を取り合うそれぞれの関係が心を温かくした。

人の為に好みや状況、楽しませようとして作る料理はこんなにも胸を熱くするのか。
私も誰かに、相手が喜ぶものを。
それだけでなく、相手と一緒にいい思い出になるようなご飯を作ってみたい。

主人公に共感するところがいくつかあった。
性格や考え方が似ていると思った。
私と境遇(家族関係)は違うのに、不思議だ。

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2025年12月26日

Posted by ブクログ

身近な人間の死。唐突に横から殴り飛ばされるような喪失感を救うのは、冷ややかではねっかえりな人間の手によって作られた、温かくてほっとするごはんだった。

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2025年12月28日

Posted by ブクログ

日々の仕事、子育て、介護、家事、人間関係に追われて心も身体も疲弊してしまい、自分の気づかぬうちにセルフネグレクトに陥って、自暴自棄になったり生きるのをやめたくなってしまっているときに誰かがそっと手を差し伸べてくれたり、誰かの血の通った温かい食事を食べるだけで救われる事って本当にあるし、相手がそのつもりがなくても当事者からするとそれらの経験はその後の人生に大きな影響を与えると思う。
私はせつなというキャラクターが好きでした。
大切な人たちが周りからいなくなっていってしまうたびに傷つき、そのたびに心が弱っていってしまう。それなら傷つかないように人との距離を詰めないようにするところとか自分の心を守るために必死なところが人間らしく素直な人なんだなと涙が出ました。
本屋大賞を受賞されているだけあり、みんなの心に寄り添う小説で本当に好きな物語でした。

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2025年12月24日

Posted by ブクログ

とても素敵な本でした。今自分の隣にいてくれる人たちのことをどれだけ理解できているのか。長く時を過ごしてきたとしても、その人にとってのほんの一部しか理解できていないのかもしれない。だからこそ、言葉で伝えよう、大切な人こそ向き合おう、そう思わせてもらいました。

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2025年12月23日

Posted by ブクログ

ポルトガル語で、「愛する人の髪にそっと指を通す仕草」を意味するカフネという単語。こんなに素敵で優しい言葉が、単語として存在する国があるんだなあと心が温かくなった。
人それぞれに愛する人がいて、愛し方も人それぞれで、愛が上手く伝わらないこともあるけれど、それでも皆が必死に自分なりの愛を表現しようともがいている。愛を伝えることに失敗して後戻りできなくなってしまった時は、めいっぱい悩み反省して、次に活かす力を得る。失敗を乗り越える姿はたくましく、人を大切にすることを諦めない力みたいなものを貰えた。

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2025年12月23日

Posted by ブクログ

普段ミステリーを好んで読んでいますが、本屋大賞受賞作品とのことで気になって読んでみました。
読んだ後に、この本を大切な人に渡したいなと思いました。
こういった題材の本を読むと涙で感情が揺れすぎてしまって疲れるので避けています。ただ、カフネを読んでからしばらくは殺人事件とかそんな内容の話は読みたくないな、余韻に浸っていたいなと思わせられる作品でした。

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2025年12月23日

Posted by ブクログ

苦労からの前への進み方、話も意外性のある展開があり面白かった。今の世の中についても問題提起してる。いろんな形の愛があると感じた

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2025年12月23日

匿名

購入済み

濃くて深い話が沢山詰まっている。これでもかというほどの人の感情や思いが伝わってくる。色んな生き方があり、自由も人それぞれだと思い知りました。彼女達みたいに自分らしくいたい。

#切ない #感動する #タメになる

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2025年11月16日

匿名

購入済み

さすが本屋大賞

読んでよかったな、読了してから感じたのはまずその言葉でした。本作では料理を通じて愛が語られていくストーリーになっています。誰かのためを思って料理をすること、普段何気なく行っていること、やってもらっていることが実は1番の愛の表現ということなのだなと改めて感じさせるものでした。普段は自分の分だけ料理をする私ですが、たまには自分自身を喜ばせるためにも、少し豪華な食材を使ってなにか作ってみようかなと思いました。

#泣ける #深い

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2025年06月12日

Posted by ブクログ

阿部暁子さんの小説『カフネ』は、「誰かの存在が、言葉以上の優しさとなって人を救うことがある」という静かで深いテーマを描いた、余韻の残る作品です。タイトルにもなっている「カフネ(cafun?)」というのは、ポルトガル語で「愛する人の髪を優しく撫でる仕草」を意味する言葉で、この何気ないけれど確かに心に触れる行為が、本作の中心的な象徴となっています。物語全体を通して、この「カフネ」のような、言葉にならない優しさや思いやりが、登場人物たちの心に静かに沁み込み、やがて癒しと再生へとつながっていきます。

本作の登場人物たちは皆、それぞれに心の傷や過去を抱えていて、それを表に出すことなく、淡々と日常を生きています。けれども、誰かとふと交わす一言、何気なく差し伸べられた手、沈黙の中にある気遣いといった、小さくて見過ごしがちな瞬間が積み重なって、登場人物たちの心を少しずつ解きほぐしていくのです。その描写はとても繊細で、派手な展開やドラマチックな起伏があるわけではありませんが、むしろその静けさの中にこそ、人間の心の奥深さや、真のやさしさの力が描かれていると感じます。

また、阿部暁子さん特有の、余白の多い文章と抑制された感情の表現が、読者に登場人物の心情をじっくりと想像させ、物語に深く入り込ませます。言葉にしすぎない、言葉にできない感情の余韻が、読後にふわりと胸に残り、「人と人とがそっと寄り添うことの意味」を改めて考えさせられるような体験になります。泣けるというよりは、胸が静かにあたたまる、あるいはしんと静まり返るような感動があり、「こういう小さな優しさが、人の心を確かに支えているのだ」と思わせてくれる作品です。

『カフネ』は、忙しい日常の中で見落としてしまいがちな、人との繋がりやさりげない思いやりを、そっと拾い上げて見せてくれるような一冊です。読み終えたあとには、自分自身の周りにある静かな優しさや、大切な人との時間を、少し丁寧に感じ取ってみたくなるような、そんな静かな余韻が残ります。

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2025年12月23日

ネタバレ 購入済み

想いで満たされる

美味しい食事の話かと思っていました。
満たされることの幸せ、が描かれているのかと。

確かに美味しそうなレシピは出てきます。
でも、それをつくる人の想いや食べる人の環境や想いがたくさん詰まっていて、読んでいて胸がいっぱいになりました。
そして、こんなにも自分は人を想ったことがあるだろうかと、少し心がさみしくなりました。

読み終わるのがもったいなくなった1冊です。

#泣ける #切ない #共感する

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2025年06月07日

購入済み

さすが本屋大賞

とても心に残る共感できる話で涙が止まらない。自分の境遇にも似てて、展開も面白い。
ドラマになれば人気でるんじゃないかな。

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2025年10月30日

購入済み

大変良かったです

亡くなった弟の死因に迫るミステリーと思いきや
現代社会の暗い現実と、それを補いながら進んでいく
周囲の人たちのお話で物語の中心、著者さんの伝えたい所はもっと違う所かな?

何だか泣きそうになる場面多数、流石本屋さん大賞
またディグりたい著者さんに出会えました。

#エモい

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2025年05月15日

QM

購入済み

泣いた。
読み進めていくうちに、つっけんどんな態度だったせつなの隠された事情や春彦をめぐる姉すら知らなかった事実など、読んでいて胸が張り裂けそうなくらい辛いものが多かった。

人前ではあんなだけど本当はすごく愛があって相手のことを見てよく考えているせつな、人間味がとってもあって好き。
中学生の男の子と妹に対して本気で心配しはたから見たら若干暴走気味になってたところも胸を打たれた。
本当に、周りをよく見る子でこれから過去の分までいっぱい愛を注がれて受け止められるようになっていけたらいいと思う。

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2025年05月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

序盤は、薫子のボロボロさとせつなのブレなさの対比が書かれていましたが、薫子が覚醒してからは立場逆転でしたね。
有能で、転んでも起き上がる不屈の女。痺れます。

いくら歳が離れてるとはいえ、ちょっと気持ち悪いくらいに姉弟仲良くないか?と若干寒くなりながら読んでいたが、
春彦のパーソナリティと、ともすれば過干渉ともいえるような薫子の愛情深い性格が分かるにつれ、なるほどと思わされた。

家族でも友人でも恋人でも同居しててもセックスしてても、本当のその人のことはその人にしか分からない、というせつなのセリフ。
大人だから触らずに傷つけ合わずにそっと離れていく。そういう選択肢もあるでしょう。
でも、そうじゃなくて、人って面倒なもので、大切な人のことはどうしてもわかりたいと思ってしまう。押し付けになってしまっても、遠慮なく心配できたりお節介できたり、愛情を注いだりする相手が欲しいんだ。
それが薫子にとって、春彦や公隆、彼女の赤ちゃんを経て、せつなになったんですね。

本書を通じて、私も、家族や友人や恋人のような愛する人たちに堂々とお節介をする権利が欲しいんだなあ、それを許してもらえること、喜んでもらえること、その人のためになったりするのが嬉しいんだ、それって生きる意味なのかも、と思わされて、涙が出ました。

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2025年12月28日

Posted by ブクログ

若くして亡くなってしまった弟の元恋人と、愛する弟を亡くした姉

2人がどんなふうに関わっていくのか気になりつつ、隙間時間に読み始めましたが、いやいやこれは読み始めたら止まらない予感がして、家でゆっくり時間を取って読み進めました。

面倒くさいと言われる程に真面目な姉の薫子と、不器用で自分の身を頑なに守りながら生きてきた、元恋人のせつなが、お互いを知り、お互いの感情の根幹を深く感じることで、関係がどのように変化していくのか。
出会うことがなかったかもしれない2人が、亡くなった弟の春彦によって強く繋がれていく様は、そこに春彦がいないという絶対的な不在を噛みしめなくてはいけない辛さが同居していました。

小さな頃から人の感情を感じ過ぎてしまっていた、春彦。自分の感情よりも相手の感情を優先して生きてきた春彦。
「自分の欲しいものがよくわからないんです」と言った春彦。切なさが募りました。

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2025年12月28日

Posted by ブクログ

阿部暁子さんの『カフネ』は、大きな出来事よりも、人の心に静かに積もる感情を丁寧にすくい取った物語だと感じました。日常の中でふと立ち止まり、自分の内側と向き合わざるを得なくなる瞬間。その戸惑いや痛み、そして少しずつ前を向こうとする過程が、過度な説明なく描かれています。

登場人物が抱える喪失感や孤独は決して特別なものではなく、誰もが人生のどこかで経験するものです。だからこそ、読みながら自分自身の過去の出来事や、言葉にできなかった感情が自然と重なりました。何気ない会話や行動の一つひとつが、人を支え、救いにもなり得るという描写には、胸がじんわり温かくなります。

この作品は、無理に立ち直ることを求めず、「立ち止まってもいい」とそっと肯定してくれるように感じました。読み終えたあと、世界が少しだけやさしく見え、自分にも他人にも余白を与えたくなる。そんな静かな力を持った一冊です。

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2025年12月28日

Posted by ブクログ

ぶつかり合っても結局は人間の優しさに支えられて生きる。信じ合えることで寄り添え合える。暖かい美味しいものを食べる。
シンプルなことを守る。しっかりとした伏線を綺麗に回収してくれる。

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2025年12月27日

Posted by ブクログ

愛は性愛だけじゃなく、親子愛、友愛、ペット愛などさまざまであるが、そういった言葉では括れない愛の話だった。カフネとはオランダ語で「愛しい人の髪に手を通す仕草」のことである。ニッチな言葉だが、それを想像するだけで、守りたいとか大事にしたいという愛しさが伝わるような素敵な言葉だと思う。

この小説には、料理とそれを作る工程が多く出てくる。料理はもちろんお腹を満たすため、生きるためにすることの一つの選択肢に過ぎず、コンビニやスーパー、レストランで済ませてしまうこともできる。しかし、食べた時のおいしいリアクション、笑顔を想像しながらじっくり料理をすることは、腹を満たす以上の喜びがあると思う。それこそ「カフネ=愛しい人の髪に手を通す仕草」のように「愛しい人を想像しながらする料理」に名前があってもいいな、なんてことも考えた。とにかく、そんな種類の喜びもこの小説の芯にはあった。

1番グッときたのは、後半の薫子と公隆のシーンだ。不妊治療をすることで関係が悪化し、夫婦関係が悪くなったり、場合によっては離婚に至ったりという話をよく聞く。読んでいて初めて、その原因について小説の本筋とは違うが自分の中にピンときたことがあった。セックスに愛以外の「目的」が入ってきてしまうからではないか。それまでは愛ゆえの営みであったものが、妊娠のためにタイミングを考え、時にはその目的のためだけの行為になってしまう可能性がある。そうなったとき、夫婦の価値観や考え方にズレが生じる「隙」ができてしまう。自分とは絶対無縁の話とは言い切れない。もし将来そうなったとき、今回気づいたことは、答えではないけどヒントにはなるかもしれない。

正直な話、テーマは良かったけれど、この文体は好きではない。上手く言えないけど、強いて言えば、「説明が多い、わざとらしい」ように感じてしまった。感情の流れをわかりやすく書かれると少し冷めてしまう自分がいる。余白を持たせて欲しい。ただの好みだが。

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2025年12月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

きょうだいなのに、死んだ後知る天使のような弟春彦の本当の姿にショックを受けながらも、生前関わりがあったせつなやトキさん、港航一と関わりながら、前向きに受け止めていく。
相手を自由に思っていながら、相手を無意識に縛っている。そのことに、気がついていくことが「生きていく」という気がする。
公隆の、離婚の理由もちゃんと判明し、薫子さんも受け止め、別れ際に「私と離婚してよかったと思えるように生きて」って言える格好よさ。
自分への愛が足りないと感じていたけれど、両親からの受けていた愛をちゃんと思い出せて。
私がいま、この本を読んだ価値を高くしてくれた。

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2025年12月25日

Posted by ブクログ

名作なのだろう。一気に読んでしまった。最初から最後まで感情が揺さぶられ続け、気持ちがサワサワした。でも面白かったよ。

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2025年12月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

お初の作家さん 2025年本屋大賞受賞作品

不妊治療で疲れ果て、夫に別れを告げられた 主人公 薫子
そんな薫子の溺愛していた弟が死んだ。
誕生日のお祝いに焼肉を食べて、春風のように微笑んでいた弟。
29歳で突然亡くなった彼は 遺言書を準備していた。
両親・薫子、そして 元恋人のせつなへ。
弟の最後の望みを叶えてあげたくて せつなと関わるうちに
弟が参加していた家事代行のボランティアに薫子も参加するようになる。

ボランティアで訪れる家の事情は様々で、どれも生々しくて 胸が苦しくなる
そして 薫子やせつなのバックボーンも 重く辛い
内容はけっこう重めですが、家事代行で訪れる先々で作るお料理がどれも丁寧に描かれて 心救われる「人間 食べたいと思えれば生きていける」

文章は軽快で読みやすく 色々な真実が明かされていく構成はおもしろい
不器用な主人公たちを見守るつもりで 年末のお休みにどうですか?
おすすめです。

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2025年12月23日

Posted by ブクログ

大切な人を失った人のお話。頑張って頑張って頑張ってって動いたってうまくいくなんてことはなくって。そこから立ち直るのも何がきっかけなんてわかるはずもない。悲しい物語がたくさんあるなかで、楽しいこと温かいことを見つけられるのは幸せなことだと思う。きっと困っている人が近くにいても気が付かないことがほとんどなんだろう。それを何とかしていけるといいなぁ。

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2025年12月22日

購入済み

家事代行カフネをご利用ください

どうしようもなく疲れて食事や掃除、片付けが疎かになり、立ち上がれなくなることは誰にでもある。大切な人を失ったり、仕事や子育て、介護に追われて別人のように疲れ果ててしまう。誰にも助けを求められず、落ちていくしかないんだなと。頑張る人ほど助けを求めるのが下手クソで。でも知ってる?不器用だけど、助けてくれる人は、あなたの力になりたいと思っている人はこんなにもたくさんいるんですよ。そう教えてくれる、優しい物語。ペイフォワード。

#カッコいい #憧れる #共感する

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2025年10月29日

Posted by ブクログ

真面目一徹タイプと自分をカラで完全防御するタイプ、まあ現実にいそうなひとをふた周りほどデフォルメした女性ふたりが引き起こす物語。
展開はオーソドックスだが、なぜか読後は爽やか。

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2025年12月28日

Posted by ブクログ

初めての作家さん
自分が悩みの渦中にいる時は他者への想像力を欠いてしまう事は誰でもあると思う。家族でも言えないこと、想像すらしないような悩みを抱えていることはごく自然な事。食べ物の描写が鮮やかで美味しいものを食べたくなる。美味しいと感じられる事がとても幸せなことなんだと思った。

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2025年12月26日

Posted by ブクログ

心が温まるわけでも、ほっこりするわけでもないんだけどなんだか後を引く感じ。

ちょっと私には言葉にするのは難しすぎるかもしれない

ひとつだけ明確に言えるのは卵味噌を作ってみますということだけ。気になる、卵味噌

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2025年12月23日

匿名

ネタバレ

がっかり

本屋大賞を受賞しているから期待して読んだけど、期待外れだった。こんなに全肯定で好評ばかりで信じられない。料理のレシピがいちいちくどく描写されてるのが、いかにも中年の主婦が書いた感じ。子供への執念が醜い。女性の性格はキツく、優しい弟。男が好きな男が出て来て、腐だと納得。

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2025年07月16日

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