あらすじ
小説というものの輪郭が、いわば地球を覗く窓の形が、本書によりまた大きく更新されました。
それはつまり、この本の中で初めて寛げる人がいるということです。
救済と爆弾は同じ姿で在れるのだと気付かされました。
朝井リョウさん(作家)
本当は貴方もわかっていたんだろう? と迫る声が脳内に鳴り響く。
熱に浮かされるようにページを捲る手が止まらない。
これは本型ワクチン。
世界99に誘われ、もう元いた場所へは戻れない。
宇垣美里さん(フリーアナウンサー・俳優)
足元の地面がふいになくなり、
正常と異常の境目が消え失せ、目眩がする。
人間という生き物の滑稽さ、グロテスクさ、美しさ、不思議さが、
この本の中にすべて詰まっている。
岸本佐知子さん(翻訳家)
空子がこの世界で体に蓄積する小さな暴力の音とか、風とか、どれも僕の心に刻まれていきました。
物語で一緒に過ごせた時間は、僕の宝です。
ロバート キャンベルさん(日本文学研究者)
この世はすべて、世界に媚びるための祭り。
性格のない人間・如月空子。
彼女の特技は、〈呼応〉と〈トレース〉を駆使し、コミュニティごとにふさわしい人格を作りあげること。「安全」と「楽ちん」だけを指標にキャラクターを使い分け、日々を生き延びてきた。
空子の生きる世界には、ピョコルンがいる。
ふわふわの白い毛、つぶらな黒い目、甘い鳴き声、どこをとってもかわいい生き物。
当初はペットに過ぎない存在だったが、やがて技術が進み、ピョコルンがとある能力を備えたことで、世の中は様相を変え始める。
3年以上にわたる著者初の長期連載がついに書籍化。
村田沙耶香の現時点の全てが詰め込まれた、全世界待望のディストピア大長編!
【著者略歴】
村田沙耶香 (むらた・さやか)
1979年千葉県生まれ。玉川大学文学部芸術文化学科卒。2003年「授乳」で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)受賞。2009年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、2016年「コンビニ人間」で芥川賞受賞。著書に『マウス』『星が吸う水』『ハコブネ』『タダイマトビラ』『殺人出産』『消滅世界』『生命式』『変半身』『丸の内魔法少女ミラクリーナ』『信仰』などがある。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
とにかく面白い。ここまで突き詰めて心理描写を書いてるのすごい。ぼくもピョコルンになりたくなっちゃうような説得力があった。なりたくないけど。主人公が有能すぎて爽快。よくこんなに体力あるなって思った。人はいくつもの世界を持って生きている。タイトルも好き。また読み返したくなる気がする。
Posted by ブクログ
良い意味で狂ってる、気持ち悪い話だけど、誰しもが空子ほどでは無いけど分裂した自分と世界があって、そこに適合したコミュニケーションを取る自分を客観的に見ている世界99があると思われるから、共感できることが多いと思うし、そういう自分に嫌気がさしてる人も本書を読んで救われると思う。
Posted by ブクログ
作中では、新しい価値観や空気がどんどん更新されていく中で、登場人物たちも違和感を抱えながら適応していく。その姿が、SNSや現実社会の空気感とも重なって見えて怖かった。
特にピョコルンの存在が不気味だった。
かわいらしい名前や親しみやすさとは裏腹に、正体や意味が曖昧なまま社会に浸透していく感じが、みんながなんとなく受け入れている空気そのものみたいだった。
この作品は単純な社会風刺というより、人間が違和感に慣れていく過程を観察しているような感覚がある。
読んでいる自分自身も、気づかないうちにその空気に順応しかけている感じがしてゾッとした。
下巻読むのも楽しみ!!
Posted by ブクログ
不気味で怖くて面白くて一気に読んだ。
私も便利な道具になるのは嫌だ。
正社員共働きで生活費折半を求められて相手もして出産もするの…?それ私に何かメリットあるの…?
誇張されてるけど嫌な登場人物ばかり。
こういう人いるよなぁって。
特に女を見下して家事育児マシーンだと思ってる登場人物。
論点はそこじゃないんだろうけど、とても嫌な気持ちになれた。
世界によって自分を使い分けるって空子程じゃなくてもみんなやってるよね。SNSは垢によって人格違う(笑)
ピョコルン…ピョコルン!
このままの勢いで下巻突入します。
Posted by ブクログ
あらゆる世界に対応して生きる、元々は無感情、しかし最終的には99あると、この子自身は思える数多い世界に顔を持つ(特殊というわけではなく、誰しもが没個性してしまえばなれる顔)女の子の半生。この子は、その世界ごとに浮いたり仲間から外れたりしないように、あらゆる感情をその世界の人々からトレースする。
各世界には良いところも悪いところもあり、対応しやすいとことしづらいところ、そこにうまくハマっていくためのこの子自身が思う術(すべ)がある。
結局各世界の側面を読み取る力がなんともユーモラスでもある。
男の生々しい「性」への嫌悪、が根幹に。
Posted by ブクログ
独創的でSF展開でとても面白い!
なんでこんな面白い展開とフレーズが思いつくんだろてしみじみ思う。
過去作品をブラッシュアップした感じ。
みなが日常で無意識に行っている行動を改めて描写しているため、感情や人格を知る教科書みたいな印象。
人が自分らしさをどのように定義するかは、他人との関わりでわかる。
というより、付き合う他人ごとで見せる自分がそれぞれあって、作者は分裂と表現する。
第二章(35歳)は朝井リョウの生殖記と似てて、各人がそれぞれの世界に支配され、道具と化している
Posted by ブクログ
なんだ、これは?!面白い!!
第一章ではただ空子の人生を描いてるのかなと思っていたけど、第二章ではコミュニティを『世界』として使い分けることで話のテーマが出たかなと思いました。
初めは空子のサイコパス具合に全く共感できなかったけれど、だんだん「あっ、この使い分ける感じあるかも」と『世界』が登場してきたあたりから共感できることが多くなり、ますます惹き込まれました。周りに合わせる→空気を読むというキャラ作りは誰にもあると思います。それを世界①〜99と使い分ける感覚は斬新で興味深かったです。どうしてここまでこんな人物(絶対に空子はサイコパス!)の心情が分かるんだろうと不思議です。
そして、とにかくピョコルンがめちゃめちゃ気になる〜!!思わず「ピョコルン 画像」で調べたくなったけど、出てきたものを見るのが怖くなってやめました(笑)
今回の上は読み始めて止まらなくて1日で読み終わりました。続編もすぐに読みたいです!
Posted by ブクログ
現実世界の見る視点が増えそうな本。そういう本は貴重だから嬉しい、ほんとに無感情な人が俯瞰的に世界を見るとこんなに滑稽でグロテスクなんだなと思った。ストーリー自体も面白い。
以下気に入った文。
○4歳
わたしはなんだか、薄気味悪くなった。七夕の短冊の色くらいで、一体なぜみんなで泣いているんだろう。変な儀式の真ん中にいるみたいだった。
○6歳
「お母さん」はとても便利だけれど、その内側に常に何かを溜め込んでいるのが見てとれた。もしそれが爆発すれば私は怖い目に遭うだろうし、便利な存在を失うかもしれないから、それなりに大切に扱ったほうがいい。それが、当時の私の漠然とした感覚だった。
○11歳
私を育てるために一生懸命お金を稼いでいる父のことを、かわいそうだなあと思う。
○12歳
「あのね、だから、私に意思なんてないのよ。危機を回避して、安全に生きていくこと。誰とも摩擦を起こさず、ただただ、楽に生き延びること。私、それだけなの。ただそれだけの生き物なの。でも、本当はみんな、そうなんでしょう?」
○14歳
レナは自殺をしたのではなくて、心が殺されたので、身体をそれに合わせただけなのだ。そんな簡単なことが、なんでみんなすぐに理解できないのか、よくわからなかった。
○20歳
同性の世界に媚びている男の人を見ると、私だったらもっとうまくやるのに、と思う。
可愛い女の子を口説いて、コミュニティにハメ撮りでも献上できたら、媚びはかなり成功するだろう。ブスがマグロだったとか、顔はいいけど喘ぎ声が大きくて萎えた、という話も、定番とはいえ自分ならもっと大袈裟に、うまく話して喜ばれる自肩がある。身近な女の子の容姿やその劣化、便利さをはみ出した生意気な態度をこき下ろすのも、私はとても上手に、いろんなバリエーションでやることができる。
みんなの記憶が都合よく改竄されているのだろうか。それとも、私の記憶が間違っているのだろうか。どちらでもいいのかもしれなかった。こうなってしまえば、これが真実なのだ。
記憶は多数決だなぁ、と思う。
「白藤さんが誘導しているのって、「正しい』教だよね。それって、世界一規模が大きいカルト宗教でしょ?それに入すると、とっても正しくて、自分が世界を守っているんだ、って思えるんだよね。とても楽しそうだし、気持ちよさそうだね」
喋りながら、あ、これが「意思」か、と思った。なるべく「楽」に生きたい。ただそれだけだった私が、こんなに強く意思のようなことをしゃべるのは、初めてのような気がした。
「この資格をとったら、私は『典型例の人生』から解放されるって思えるの」
「典型例?なにの?」
「何もない人間の。何もとりえがなくて、やりたい夢もなくて、意思も感情もない、かといって『女』としての奴隷労働もあんまり好きじゃない。そういう、『無』の人間の」
○35歳
野口くんは小学校でも中学校でも、女子に人気のある男の子だった。地元のコミュニティで集まると、当時の力関係の世界に久しぶりに来られてうれしい、と彼が全身で発言しているのを感じる。
世界①は、地元の友人たちから繋がって出来上がっているコミュニティだ。定期的に飲み会があり、クリーン・タウンの近隣に住んでいる子も多いので、いつもここで集まっている。
世界②はある程度お金がある人が多いので、世界①とはだいぶ金銭の感覚が違うが、所属してみると、それだけではないなあと思う。世界②のコミュニティには、世界①の友達よりずっとお金がない人もすっと入ってきて、自然に溶け込んでいる。楽しく生きたいように生きていて、なにか明権にやりたいことや才能があること。とくに決められたわけではないが、そういう人物像が、世界②にいるときには求められている、と感じる
世界②は、風水とか占いが好きな人が多くて、私たちにはとても信頼しているライフアドバイザ
1がいる。ライフスタイルコーディネーターの一ノ瀬さんのセッションをほとんどの人が受けている。
「一ノ瀬ちゃんの話だと、来年は、部屋の中に、わざとごちゃごちゃっとした場所をつくるのがいいんだって。そこに悪い「気』をわざと集めるの。あと、過去のカオスへの感謝って意味もあるんだって。私、感動しちゃって」
「サラー」は、汚染された廃棄物や、処理できないような不燃ごみを、粉にして、食べられる状態にしたものだ。それを食べ、体の中で分解して外に出す。そうすると、世界を汚す存在だったごみたちは、綺麗な土になる。
「サラー」は美味しくはないし、身体にも悪い。食べている人間自身が汚染された廃棄物になってしまわないよう、定期的に検査も受けなければならない。けれど、自分の身体を使って恐ろしいごみを分解し、濃過し、少しでも地球がよくなることに貢献できているのだと思うと、がんばって食べることができる。
世界③は、奏さんの大学時代の仲間から繋がったコミュニティで、その友達の友達だとか、仕事でたまたま会って価値観が合った人がぼんやりと連なって出来上がった世界だ。私は白藤さん経由でこのコミュニティの集まりに顔を出すようになった。
世界③にいると、世界①や世界②にいたときの自分が、ドラッグでもやっていたのではないかと不安になる。たくさんの人が苦しんでいる世界で、いったいなぜ、あんなに能天気にしていられたのだろう。
世界③の人と話していると本当に落ち着く。同時に、悲しくてつらくなる。
ミドリさんと奏さんは、サラーだけでなく汚染水を飲んで身体で浄化する活動も始めている。専門のお医者さんに管理してもらわないとできないので、私はまだ始めていないが、自分も早くあの水を飲みたい、と思う。
わかるのは、自分がこの人間に捨てられたら、一人では食べていけない存在だということだ。
3つの世界があるとすれば、ここは世界⓪なのだろう。私と明人だけのコミュニティのようでいて、私は明人の道具でしかない。
私は急いで明人の食事の準備を始めた。ポケットの中でスマートフォンが震えるたびに、3つの世界が顔を覗かせる。世界①から『また来週集まらない?油小路さんがおすすめしてた映画、みんなで観にいこうよ!」、世界②から、『一ノ瀬ちゃんが新しいサプリ始めたんだって。予約完売らしいんだけど、特別な人の分はキープしてくれてるって~!愛してる!』、世界③から、『ごめん抱えきれなくて、このニュースがあまりに残酷で、苦しすぎて』、世界①、②、③、それぞれの言薬が、私の中へこぼれ落ちてくる。
富裕層が、ピョコルンで性欲処理をし、ピョコルンに子供を産ませるようになったのは、就職して少し経ったころだと思う。
最初にウエガイコクのそのニュースを聞いたときは驚いた。白藤さんは激怒していた。女性が病院で卵子をとり、男性の精子を体外受精し、それを手術によって人工子宮を備えたピョコルンの中に入れると妊娠し、ピョコルンから人間の子供がちゃんと出てくる、というニュースは私には衝撃的なものだった。こんなことは残酷だとみんな反対するだろうと思ったし、実際に最初はそうだったはずなのだが、今では、私たちの生殖にピョコルンが関わることは、少しずつ自然なことになってきていた。
こともなげに世界②の小早川さんが答える。
「世界99?」
「月城さんみたいに、世界①、②、③、④、って同時進行的に自分がいたら、その世界の後ろのほうに、世界が並んでいるのを見つめてる世界、があってもよさそうじゃないですかー?世界1万でも、世界100万でもなんでもいいんですけど、とにかく、たくさんの世界で生きている無数の自分をその世界の自分がぼーっと見てる感じ、すごくわかりますー」
Posted by ブクログ
村田沙耶香は私たちが当たり前に享受している概念をぶっ壊してくれる。それがたまらなく気持ちよく、快感なのです!
そして読み終わると人(特に男性)のことが少し嫌いになっている笑。
今回の村田沙耶香ワールドも面白くて面白くてページをめくる手が止まらなかった。今回は上下巻と大ボリュームなので、もう終わってしまう…!という心配がなくて良かった。
パラレルワールドのはずなのに現実よりも本音と実感に満ちている世界。そして急にくるSFトンデモ展開も大好き。
Posted by ブクログ
読み終わって、呆然としています…
ザ・村田沙耶香ワールド。
ひたすら繰り出されるカオスな状態に疲弊しながら読みました。
ピョコルンにラロロリン人。
途中、衝撃的な事件が起こり、開いた口が塞がらず…
途中で挫折してしまう人もけっこういるそうですが、気持ち分かります(汗)
えげつない表現が多いし、みんな急に人格が変わったかのように豹変したり。
でも淡々と進む物語、怖い、気持ち悪い。
フィクションなのに、どこか現実とリンクする場面もあって、それが読んでて苦しい。
そして後半「世界99」というタイトル回収。
最後の締めくくりはアッパレとしか言いようがないですね、もうこれで“完”でもいいと思いますが、下巻があるのですね、これ以上何があるんでしょうか笑
正直お腹いっぱいな感じはありますが、最後まで見届けるため、下巻に進もうと思います!
Posted by ブクログ
嫌悪感を抱いたり、精神的に疲弊してしまうような展開なのにページをめくる手が止まらなかった。
自分にもそれぞれのコミュニティによって使い分けている顔があって、設定としてはありえない世界観なのに「わかる」と思えるところも多かった。だからこそこんなにも気持ちが削られていくのかもしれないと思った。
下巻の空子はどんな人生を生きるのかな。
Posted by ブクログ
世界と私が分断されていく。
それぞれに価値観や性格を当てていき適応する。性奴隷なる生き物の正体が最後明かされる。設定や展開が個性的で著者ならではの作品でした。面白かったです。
Posted by ブクログ
現実はこんなに酷い世界ではないと思いつつ、共感してしまう部分が多々あり、なんともいえない感情を抱いた。
人の尊厳をこれでもかも踏みにじった世界。
いじめや性的暴力の描写に、何度か離脱しかけたけれど、読むことをやめられず、第二章の世界の広がりに至ってからは読む速度が上がり、一気に読んだ。癖になる感情。
世界を股にかけるのは皆同じなのではと思いながら、それをかっちり意識して、キャラを作り上げる空子のような人は少ないのかもしれない。
全て破壊して終わった上巻、下巻はとうなるのだろうか。
Posted by ブクログ
コンビニ人間や地球星人に通ずるところもありつつ、それをさらに発展させたような。
村田沙耶香がまた新しい世界を生み出してきたように思った。
本文には大袈裟な表現ではあると思うが、誰にでも部分的にでも共感したり頷いてしまうところもあるのではないだろうか。
これまではそれを認識せずにしていたかもしれないが、読んだ以上はきっと思考の片隅にでも残り続けることだろう。
Posted by ブクログ
最初は性や人間のランク分け、女性の人間家電のようなテーマが重く感じて悶々とした。しかし後半から社会で生き延びるための自己の多様化や役割を演じること、孤独、本来の自分に素直に生きられない生きづらさなど考えさせられることが増えてのめり込めた。
とにかく設定が奇妙で違和感を持つが、こんな未来もあるのかもと思えてきた。それは少し怖いが。
下巻が楽しみ。
Posted by ブクログ
人間の本質や理性が、じわじわとグロテスクに暴かれていく感覚。
不快なのに、なぜか聴くのをやめられない中毒性がある。
世界ごとにキャラを使い分ける主人公を見ていると、“自分らしさ”って何だろうと少し怖くなった。
Posted by ブクログ
相変わらず村田沙耶香先生は奇妙キテレツながら妙にリアリティのある恐ろしい世界をつくるのが上手い。
人間の中のドス黒いものが事細かに描写されすぎてて、読み進めるのにかなりの精神力を削がれる。そこがいいところなのは重々承知だけど、結構しんどい。もちろんつまらないとかじゃないよ。
でも、その時々に所属するコミュニティで自分の人格を変えるっていうのはわりとありがちなことだと思う。みんな意識はしてないかもしれないけどね。
これは平野啓一郎先生の著作『空白を満たしなさい』の中で「分人」という考え方として、同じように表現されていたことを思い出した。となると本当の自分、つまり素である状態というのは周囲に誰もいない、自分一人のときだけなのだろうか?それってほぼ素を表出する機会がないということでは?ってことは素の自分ってほぼ存在しないものと同義なんじゃない?と飛躍した考えが一瞬頭の中をよぎったが、だからどうなるというわけでもないので特に意味のないことであった。そういうことを一人で無駄に考えることは結構好きなんですよ。
兎にも角にも様々なコミュニティを様々な人格を形成して順応し、渡り歩いていた主人公。その中で見つけた自分の本当の世界、「世界99」。決して相容れることのなかったそれぞれの世界が、最終的に融和ではなく崩壊という形で世界99に収束するという結末に到達するなんて本当にどういうことを普段考えてたらこんな展開を思いつくんだろう。恐ろしすぎて脱帽です。しかもこれがまだ上巻というね。これ以上どうやってこの世界をかき乱すっていうんだ!
本筋とはまったく関係ないけど、ラロロリン人とかピョコルンとかわけのわからん固有名詞のネーミングセンスが秀逸すぎる。わけわからんけどさ!
Posted by ブクログ
読み進めながら「なるほど、なるほど、分かる分かる」と引き込まれていく。
単なるフィクションというより、倫理の限界を問うケーススタディとしても読める、非常に骨太で参考になるストーリーです。
描かれている世界は、私たちが目指すユートピアのようでもあり、同時に最悪のディストピアのようでもある。この両極端な感覚がせめぎ合い、まだ言葉にできません。この興奮のまま、下巻へ没入します。
Posted by ブクログ
如月空子には性格がなく、出会う人それぞれに合わせて人格を作り出していた。相手の感情と〈呼応〉し、行動を〈トレース〉する事で相手にとって居心地の良い人間を演じる。
舞台は現代の日本のようだけど少しディストピア的な世界で、愛玩用の新しい生物ピョコルンや、優秀な遺伝子を持つとされるラロロリン人の存在が物語に大きな影響を与えていく。
この世界、とにかくロクな人間がいなくて読んでいてしんどい!しんどいのに展開が気になって面白い!
男尊女卑、人種差別、セクハラモラハラが当たり前な社会で、人々もそれを受け入れながら生きている。
その場に合わせたキャラを作るのは実際誰でもしていることではあるけど、空子はキャラ作りが特に上手いうえにキャラの数も多い。場に応じてキャラを使い分ける器用さと同時に危うさもあって目が離せなくなる。
そしてピョコルン…空子の暮らしに大きな影響を与えてきたピョコルン…衝撃だった…!
Posted by ブクログ
だれしも社会に適応するために無意識に行っていることをそこまで極端に露悪的に描写しなくても…と思ったり思わなかったり
最近現実世界でモフリンというペットロボットをみて、ピョコルンを連想せずにはいられなかった
Posted by ブクログ
上巻は10歳の記憶から始まる。相手により自らのキャラを変えて人格を重ねていく女性の物語で、キャラを変える自分と対比する対象である白藤さんとの出会いの記憶からだ。キャラを相手によって変えていくことは、程度の差こそあれ誰もが経験していることなので “キャラ変ネタで下巻までどうやって物語を維持するんだ?と思っていただけに、上巻終盤に受けたショックは大きかった。差別的な世の中に生きる主人公のエピソードだけではなく、とんでもない要素を加えられ、より加速度を増して下巻を読み進めていった
性別、人種等目に見えるモノから、DNAの特性といった見えないものまでを差別、格付けの具にする苦しい世界を著者は描いている。ページを繰るごとに語られる物語は、差別的で暴力を内包している現実世界を描写しているが、グロテスクな感じがなく、ただ淡々と語られていく。まるで、フィリップ芸のあるあるネタを見ているようだ。
物語は、清潔で美しく皆幸せに暮らすユートピア世界に至り落着くが、それはとんでもないディストピアの様相を呈していた。
Posted by ブクログ
愛とか、優しさとか、思いやりとか、他人を敬うとか、助け合いとか、そういうのが一切ない。
何と言ったら良いか・・・悪意に満ち溢れ、みんな何かの奴隷であり、何かに対して従順に生きている世界の話。
主人公空子は、周りの空気を読むどころか、シンクロしてしてしまい、その時々に自分がいる集団の中に溶け込むことで、自分がしんどい目に合わないように生きていきます。
ただ、空子の中には主義や、思想はなく、その場その場でシンクロした際に思うことはあるけど決してそれを持ち続けません。
集団が変わったら、あっさり捨ててしまいます。
考えることを放棄する免罪符の様に繰り返されるセリフ「私は馬鹿だから」っていうのが印象的でした。
このセリフ、下巻の話でなんかつながるんですかね?
初見の集団でも相手をトレースすることで、瞬時にキャラを作り馴染むっていうところで、いわゆる多重人格とはちょっと異なる感じですかね。
ラロロリン人とピョコルン(これも、なんか人を小馬鹿にしたような、イラっとするネーミングですね。なんだよ、ラロロリン・ガール・ラブって(笑)。こういったところにも作者の悪意みたいなものを感じました。)という多分何かのメタファーが話の展開を劇的に変えていき、上巻の最後もピョルコンの正体が明らかになったところで終わります。
まだ下巻に続いていくのですが、ここまで読んだ感想は、よくもまあここまで毒々しい内容の話が書けるようなぁ・・となんか一周回って感心してしまいました。
いじめの描写とか、痴漢の話とか、バイト先のおっさん?の話とか、習字のセラピーの話とか、終盤にかけて欲望のはけ口にしていたピョコルンの正体がXXで、それを確認した際に現れたのが△△であったりとかの件とか。
特にこの話に出てくる男の描き方が酷い・・・・そんなに男って人種はクズなん?っていくらい酷い。
ここまで酷いと、作者の方の男性観というか世の中の男性に対する呪詛か?と勘ぐってしまうくらい。
なんというか、毒を毒と分かって挑まないと、強烈さに取り込まれててしまうのでは?と思いました。
感受性豊かな思春期の子供には絶対読ませたくない(笑)。
Posted by ブクログ
「小さな分裂を繰り返しながら、私は生きている。」
そんな衝撃的な言葉で始まったこの話は「普通って何?」と問い続けてきた村田さんの集大成的な超大作だった。
上巻だけで完結してもよいくらいのボリュームと完成度!えっ、ここからどうなるの?まだ続くの?と呆然としたし、おなかいっぱいだったのもあり、しばらく続きが読めなかった。
トレースしたり、集団ごとにキャラを変えたりというのは多かれ少なかれみんなやってることだけど、ここまで膨らましてここまで言語化するとこんなにゾワゾワするんだなぁ。
一息ついて、下巻に突入!
Posted by ブクログ
全体的に気色悪さ、特に男性が気持ち悪く、女性もそれぞれの世界で尖りすぎていて読んでいて消耗した。
空子は自分のことを賢くないと言うが、あれだけの「世界」を行き来しているのは器用だなと感心する。空子ほど極端ではないが、私も実生活で異なるコミュニティで多少異なるキャラを演じている節がある。その世界でうまく渡り歩いて行くために必要なこと。
「ピョコルン」が話の軸になるとは思っていなかった。多くの属性の人に受け入れられ、正当化されつつあった人類の発明には実はウラがあった…
ここまででお腹いっぱいではあるけれど、少し休憩をおいて下巻を読みたい。気持ち悪いと思いつつ、なんやかんや続きが気になる。空子がどのように生きていくか気になる。
Posted by ブクログ
人は誰でも表と裏の顔を持つことはあれど、どこまで多重人格者となれるのだろうか。空子の世界①から③まではついていくことができたが、後半に⑧まで進むともう何が何だかわからない。そして上巻の最後でこの本のタイトルの意味を知る。さらにはピョコルンの正体が明かされるが、このあと一体、下巻はどのような形で着地することになるのか、大いに謎。
Posted by ブクログ
野間文芸賞受賞ということで読み始めたが、、、。
自分の性格がない主人公の女性。その時々の相手に合わせながら、自分のキャラを使い分けていく。
今よりは、おそらくもっと進んだ世界の話、そこにはピョコルンという人間が作り出した生き物がいて、人間たちに飼われている。このピョコルンがやがて進化して人間たちと立場が逆転していく。
3ページに1回ぐらい、きつい表現があるので、単純に読むのがきつかった。