【感想・ネタバレ】世界99 上のレビュー

あらすじ

小説というものの輪郭が、いわば地球を覗く窓の形が、本書によりまた大きく更新されました。
それはつまり、この本の中で初めて寛げる人がいるということです。
救済と爆弾は同じ姿で在れるのだと気付かされました。
朝井リョウさん(作家)

本当は貴方もわかっていたんだろう? と迫る声が脳内に鳴り響く。
熱に浮かされるようにページを捲る手が止まらない。
これは本型ワクチン。
世界99に誘われ、もう元いた場所へは戻れない。
宇垣美里さん(フリーアナウンサー・俳優)

足元の地面がふいになくなり、
正常と異常の境目が消え失せ、目眩がする。
人間という生き物の滑稽さ、グロテスクさ、美しさ、不思議さが、
この本の中にすべて詰まっている。
岸本佐知子さん(翻訳家)

空子がこの世界で体に蓄積する小さな暴力の音とか、風とか、どれも僕の心に刻まれていきました。
物語で一緒に過ごせた時間は、僕の宝です。
ロバート キャンベルさん(日本文学研究者)


この世はすべて、世界に媚びるための祭り。

性格のない人間・如月空子。
彼女の特技は、〈呼応〉と〈トレース〉を駆使し、コミュニティごとにふさわしい人格を作りあげること。「安全」と「楽ちん」だけを指標にキャラクターを使い分け、日々を生き延びてきた。
空子の生きる世界には、ピョコルンがいる。
ふわふわの白い毛、つぶらな黒い目、甘い鳴き声、どこをとってもかわいい生き物。
当初はペットに過ぎない存在だったが、やがて技術が進み、ピョコルンがとある能力を備えたことで、世の中は様相を変え始める。

3年以上にわたる著者初の長期連載がついに書籍化。
村田沙耶香の現時点の全てが詰め込まれた、全世界待望のディストピア大長編!

【著者略歴】
村田沙耶香 (むらた・さやか)
1979年千葉県生まれ。玉川大学文学部芸術文化学科卒。2003年「授乳」で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)受賞。2009年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、2016年「コンビニ人間」で芥川賞受賞。著書に『マウス』『星が吸う水』『ハコブネ』『タダイマトビラ』『殺人出産』『消滅世界』『生命式』『変半身』『丸の内魔法少女ミラクリーナ』『信仰』などがある。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

こんなにもリアルでグロテスクで気持ちの悪い話はない。読んでいて本当に吐きそうになるくらいに酷い現実。
空子は自分を、コミュニティによって使い分けていて、それぞれに世界を持っている。幼少期から歪んだ性格、自己肯定感は低い。けど、生き抜くために周りが望むキャラを作り変身して、周りを気持ちよくすることを得意としている。
そして、この話の肝となるのが、ピョコルンとラロロリン人。ピョコルンがはじめはペットだったが、それが徐々に性的な存在になり、人々の人生に入り込んでいく。物語初めからなんとなく違和感があって気持ち悪さもすごいから、何かあるだろうと思ったら、実は人間のリサイクルだったという謎技術。
人は生きている世界によって何を信じて、何を大切にするか全く異なる。そしてそれは自分自身もそうで、ある集団では、ある人の悪口で盛り上がらなければならないみたいな世界を実感している。そういう時に自分は素直にその世界に溶け込めず、だいたい黙る。つまらないと思う。自分の中の世界99がなんでこんなことしているのかな、早く終わらないかなと言っている。
最終的に思うのは、このグロテスクで吐き気のする物語は現代の自分の話。そしてそれを少し誇張しているにすぎない。
自分の年齢と近い空子の話もあり、本当に自分の話かと錯覚する時があって、これを書いたのは本当にすごいと思った。
下巻はさらに年齢が進んでいく。そして、世界はすべに崩壊し始めている。最後はどんな世界になるんだろう。たぶん、あまり変わらず結局繰り返しているというオチかな。
400ページ長いなと思っていたが、3日で読み終えた。今の所間違いなく今年一番の本。

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2026年01月10日

Posted by ブクログ

面白いけど気持ち悪い
本読んでて気持ち悪いって何かと思ってたけどこう言うことか
分厚くて長くて読み応えがすごい分
じぶんの読解力が全然足りて無くてキャパいっぱいだけど続きが気になって読み進めてる感じ
何もない主人公が気持ち悪い
ピョコルンがキモちわるい

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2026年01月10日

Posted by ブクログ

空っぽでいいんだ、空っぽなのは自分だけじゃないんだ、と救われた気持ちになった。
そうとは認識していなかったが、私も母親を搾取して、面倒な家事・育児を押し付け、自分が楽をしようとする苛めに加担していた。父は残業まみれで土日も働いていたが、それはそれで脳死して働いていればいいからある種楽だったのかもしれない、会社に搾取されたいたが。母は、家事育児全般をを専業主婦が当然やるものという価値観の中で搾取されていたのだが、私はそれに無自覚で、母親なら子供を愛してすべてあれこれやってくれるのがあたりまえっしょ、と思っていた。
もちろん現実的には、子供が小学生ぐらいの年齢になって手がかからなくなると手が空いたり、親が老人ホームでも入ってくれれば手がかからないが、そうでないケースは地獄を見続ける。性欲のはけ口まで担うとしたらホンマに奴隷として搾取されたもんやな。
所属するコミュニティーによって、自分のキャラを使い分ける感じもあるし、そのコミュニティーの自分のキャラクターって、そのコミュニティーに合わせたものになるので、自分が空っぽだなぁと思う感覚も言語化されて良かった、私、ほんと空っぽなんよなぁ。というか、自分の意見なんてなくて、自分の意見だと思っても、実はそれって誰かが言ってたことの影響を受けてたり、誰かの言ってることそのままだったりするので、そういう意味でも人間は空っぽで、人間マシーンなんだよな。
命がけの出産も今は生物学的に女性が担っているが、ぴょこるんではなくとも、女性の子宮を使って出産しなくてもよい未来が来た場合、今ある価値観は覆される。
母親を搾取してきたのではないか?という芯を喰った指摘に、この本は妻には読まれてはならない、と思った。知らなくてもいいこともある。私が楽をするために。

刺さった言葉たち。

P200 白藤さん、とっても楽しそう。そうだよね。人を救うってすごく気持ちいいもんなぁ、と私は思った。
P94 「あのね、だから、私に意志なんてないのよ。危険を回避して、安全に生きていくこと。誰とも摩擦を起こさず、ただただ楽に生き延びること。私、それだけなの。ただそれだけの生き物なの。でも、本当はみんな、そうなんでしょう?」
P86 「夢」はきらきらした麻酔のようで、それがあるとたくさんの現実が麻痺するみたいだ。

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2026年01月08日

Posted by ブクログ

気持ち悪い
はやく逃げたい
そのためには読み進めないと、終われない
そんな気持ちで一気に読み進めた
学生時代、人によって性格が違った自分のことを思い出した。
私はずっとトレースしていたんだ。
いまだって、話す人によって自分の言葉を関西弁にも九州弁にも変えてる。ずっとトレースして私になっている。
じゃあ本当の私って?

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2026年01月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本屋でたまたま手に取った一冊。最初は「ディストピアもの」という設定に構えていたけれど、読み進めるうちに、今の自分たちが無意識にやっていることの延長線としてあり得るなと思ってゾワッとした。

​自分の心地よい世界を守るために、別の世界を作ってキャラを使い分けながらコミュニケーションをとる姿。これって、今の世の中で生きていくために、私たちが当たり前のようにやっている「自己防衛」そのもの。面倒な現実や汚らわしいものを見ないようにして、自分のテリトリーから追い出す。そうやって自分を保つことは、今の社会では生きていくための「正解」ですらある。

​もう一つこの本が視点として与えてくれたのは、「自分たちの快適さ」の裏側でどんなことを犠牲にしてるかということ。最初はただ可愛くて便利なピョコルンが代理生殖器になったり、実はそれがリサイクルされた人間だったとか。自らの便利さ、欲望を保つために、モノ効率よく消費し、面倒なことをすべて外部にアウトソースするシステムのグロテスクさに、それを平然とやってしまう考えにもドキッとした。

​ピョコルンやラロロリン人が何のメタファーなのかはまだ完全には掴みきれていないけれど、読み終えた後は、自分の「心地よさ」を疑わずにはいられなくなった。

文章がとにかく上手くて引き込まれる分、その「エグみ」がダイレクトに心に突き刺さってくる。物語の続きを追いかけながら、この歪んだ世界線と自分との繋がりを、もっと深く掘り下げていきたい。

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2026年01月03日

Posted by ブクログ

衝撃的なピョコルンの事実に読む手が一瞬止まりました。
新年早々に読んだ本が世界99というなんともいいスタートダッシュを切れたかと思います(笑)。
下ではどのような展開がされるのか楽しみです。

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2026年01月03日

Posted by ブクログ

如月空子…月城
ピョコルン
白藤遥
権現堂
カズミ
タクト
アミ
酒井
廣瀬
キャサリン

竹田
川木
根岸

エミの妹
徳永
沢岡
レナ
ナオト
高崎
相崎
明人
健人
徳岡
ヒナ
カスミ
菊川
清水
麻木
関谷
ヨーコ
カヨ
ナルミ
ゴン
竜ヶ崎
野口
トシ
ジュン
キョーコ
油小路
アケミ
一ノ瀬
ラロロリン人
丸山
小林
ミドリ
クローバー
タクロー
ハナエ
テル
小早川
鷺沼
マリナ
ナナ
シホ

キリ
ユミ
ソラ
吉岡
ピアノ
黄昏ブルース
マキ
琴花
サキ

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2026年01月01日

Posted by ブクログ

登場人物が全員うっすら気持ち悪い。この狂気に引き込まれた。早く続きが読みたいので下巻に行ってきます。

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2025年12月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

世界の分裂ってあまりにも壮大な設定だと思ったけど、私も同じことやってるなって気づいてから読むの止まらなかった
空子ほど露骨に世界を変えないけど、この友達と会うなら話すジャンルはこれっていうのが私の中で決まってるので、小さいけれどそういうことだなと思う
めちゃめちゃ共感できることにプラスして、倫理観がぶっ壊れてる(褒めてる)村田さんワールドが展開されるので病みつきすぎる

だけどせめて1人くらいはまともな男が登場してほしかった、、、登場する全男、終わってる、、、

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2025年12月29日

Posted by ブクログ

人間社会の成り立ちから果てまでを独自の観点から綴られている創世録。
不気味で生理的な嫌悪感をひきずりながらもずぶずぶと抜け出せなくなる面白さ。

1冊が分厚い上に上下巻あるけど、ぜひ一度読んでみて世界観に囚われてほしい。

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2025年12月26日

Posted by ブクログ

ディストピアSFという鍋に格差や陰謀論
弱者に対する加害の無自覚など、現代社会の問題を
多重構造で表現した物語。
登場するマスコットキャラクターが辛い事を押し付けてゆくメタファー的に描かれているが、恐ろしい気がしました。
やはり筆者はクレイジーでした……(褒め言葉)
下巻がどの様な展開になるか、怖さもありつつ楽しみです。

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2025年12月21日

Posted by ブクログ

主人公が生きるいくつもの世界。性と生に関わる行為を人間の代わりにこなしてくれるある生物の存在が怖くもありがたいような。登場人物やワードなど全てが村田ワールドどっぷり。考えさせられる部分もたっぷり。凄い作品でした。

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2025年12月17日

Posted by ブクログ

グロい。本に対して今まで抱いたことがない感想だが、グロすぎる。
でも引き込まれてページを捲る手が止まらない。

世界観が完全なフィクションではなく、ああこういうの残念ながら実在するな、を感じるからこそ、余計に現実と小説の世界の境目がぐちゃぐちゃになりました。

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2025年12月14日

Posted by ブクログ

想像力の安全圏を軽々と踏み越えてくる、とてつもない作品だった。理解しようとするほど思考が追いつかず、読者はただ頁をめくることしか許されない。物語を読むというより、異常な世界に放り込まれる体験に近い。

「性格のない人間」という設定の時点で共感は不可能なはずなのに、空子はあらゆる人間を俯瞰し、内情を正確に言語化し、相手に最適化された応答を返す。
その異様な完成度に惹かれつつ、これは他者の心を完全に理解したいという自分自身の欲望の投影なのだと気づかされる。

人は誰しも、属するコミュニティごとに性格を変え、感情を調整し、適応のために自分を削って生きている。空子の存在は、その行為を極限まで突き詰めた結果として提示されているように思えた。

空子自身は、呼応とトレースを繰り返すしか生きられない自分を早々に受け入れ、むしろ特別性として享受している。
しかし、無数のキャラクターを生きるうちに、確かに「孤独」が立ち上がる。その瞬間、救われてほしいと願う気持ちと、同時に絶対になりたくない人生だという拒否感が押し寄せる。

幸福に辿り着けない構造の中で、女性としての尊厳すら侵食されていく空子に対し、ピョコルンという存在が秩序維持装置のように機能する展開は、弱肉強食の世界観を強烈に印象づける。

これほど既成概念を破壊してくる物語でありながら、舞台はあくまで日常で、人間が抱える嫉妬、妬み、苦しみ、性への衝動が淡々と描かれているだけ、という事実がむしろ恐ろしい。

フェミニズムをめぐる描写には強烈な村田沙耶香節が炸裂する。目を背けたくなる不快さと、現実にも確かに存在するという諦観。その気持ち悪さに強く共感してしまうことで、これは個人の偏見ではないのだと確認させられる。

息継ぎも余白もないまま、上巻は目眩く展開で終わる。この世界がどこへ向かうのか、下巻を読まずにはいられない強烈な引力だけが残った。

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2026年01月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読みながらずっと「気持ち悪いのに等身大でこれは私たち全員にとっての物語で、嫌すぎる」と思っていて、読み終わった後も改めてうわ嫌すぎる と思いました。
ピョコルンとかラロロリンとかとにかくネーミングがポップだし、ファンタジー文脈で現代を皮肉る感じなのかなあと悠長に構えていたら、いやそうなのかもしれないんですが、どの「世界」もリアリティがありすぎてずっと嫌でした。
空子はどの世界にも軸足を置いていない世界99がアイデンティティの人だから、各自の世界を壊された人にとっては光り輝いて見えたからラストシーンで殺到したのかも。でも、それって、皆薄々、それぞれの基準で、空子が世界99の人なんだろうなって分かってたってことで。そうなると本当に普遍的な話だな、となって、また嫌だなあ…になりました
そしてp16であった「「自分より自分」である人間に出会ったとき、多くの人間がこうして陶酔するのだった。」が、空子は小早川さんに対してそれになってるし。あーーー(以下略)

ずっと嫌だと言ってるんですが、それでもページを捲る手が止まらず、駆り立てられるように続きを読んでしまう、そんな力のある作品だなと思いました。下巻も必ず読みます、どんな「嫌さ」と対面させられるのかをとても楽しみにしています……

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2026年01月11日

Posted by ブクログ

属する組織や相手によって、たぶん誰もが大なり小なり自分のキャラを変えて接する事はあると個人的には思う。
それをこの壮大なストーリーにバラして再構築し組み込む村田沙耶香は恐ろしい。

ピョコルン
ラロロリン人
響きだけだと可愛く牧歌的なものを想像してしまう。
このネーミングセンスも凄いわ

人間の賞味期限と使用期限
ゾクッとするほど心理と社会構造を突いた表現が的確すぎて恐怖を覚えるほど

評価で☆5をつけたかったけど、まだ下巻未読のためとりあえず4で

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2026年01月09日

Posted by ブクログ

色々と衝撃を受けた本。

村田沙耶香さんはコンビニ人間をさらっと一読したくらいで、ちゃんと読むのはこれが初めて。

ジャンルとしてはSFになるのだが、人間の本質を上手く突いているヒューマンドラマ的な側面がかなり強く、今後の物事の捉え方に影響を与えそうな予感がしている。

人間は時代や流行に適応していく生き物で、それが10年前は受け入れ難いものであっても、周りも含めそれに慣れてしまえばなんだって順応できてしまう。本書であればピョコルンが比喩的にそれを表していると思う。

世界を分裂させて生きている主人公。これはたまたま主人公の視点で描かれているからそう見えるだけで、他の登場人物にも色々な世界があるはずである。
我々でも同じことが言えて、仕事、家庭、サードプレイスあらゆる場面で我々はそのコミュニティに適した、もっと言えば利益を享受できる人格でいなくてはいけない、と暗黙的に感じ、自分を世界を作っているのである。

これはなかなかに人間の本質をついた物語で、それをディストピアSFにうまく落とし込んでコミカルに表現した作品で、村田沙耶香の真髄を見た気がする。

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2026年01月05日

Posted by ブクログ

ディストピアSF。
善悪って何か?汚い感情を恐れるあまりみんな同じ感情で本当にいいのか?人間らしさって何か?合理性ばかり追及していて良いのか?といったことを考えさせられる小説だった。
自分を持たない主人公空子の異常な分析眼を通して、人間社会に存在する差別や利己性、自己は誰かのトレースで作られているに過ぎないこと、社会への迎合、嘘等がありありと描き出されている。自分もしてしまっていないかとぎくっとさせられるような分析もあった。
妊娠出産性欲処理家事等が「便利な機械・下の人間のやること」「みんながやりたくないこと」としておそらくあえて極端に描かれているが、(この小説で書かれているような感情を向けられていたら嫌だけど)それは必ずしもそうでもないのではとも思った。(そう思いたくなった?)

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2026年01月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

村田沙耶香作品の中でも、最も静かで、最もグロテスクな一冊だと感じた。
舞台は、差別や暴力が排除されたとされる「クリーン」な未来社会。しかし読み進めるうちに、その清廉潔白さが実はとてつもない欺瞞の上に成り立っていることに気づかされる。
​特に戦慄したのは、この世界における「女性の役割」の扱いだ。
表向き、女性は産む苦しみや性的な役割から解放されている。しかし、それは男性優位社会が反省したからではなく、「ピョコルン」という別の生き物に、かつての男尊女卑的な欲望(性欲処理、家事労働、生殖)をすべてアウトソーシングしたに過ぎないからだ。
「人間には人権があるから殴ってはいけないが、製造された生物なら愛でるも犯すも自由」。この構造は、現代社会が抱える「見たくないものを不可視化して成り立つ平和」の究極系であり、洗練されたミソジニー(女性蔑視)の最終形態と言えるだろう。
​主人公・空子が最後に選んだ道は、一見すると破滅に見える。だが、自分の「記憶(=個としての歴史)」を差し出し、思考停止した愛玩動物へと堕ちるその姿は、ある種の「悟り」のようにも映った。
自我という幻想にしがみつき、複雑怪奇な社会で摩耗するくらいなら、いっそ人間を辞めてしまったほうが幸福なのではないか。
読後、自分の生きている現実世界の床が抜けたような感覚に陥る。傑作。

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2026年01月04日

Posted by ブクログ

「呼応」「トレース」によって軸がない主人公の人格がコロコロ変わっていくのが気持ち悪すぎる!主人公ほどとは言わないけれど、自分も無意識に初対面の人や目上の人や気に入られたい人に呼応、トレースしてしまうことがあるなあと、主人公に自分を投影して嫌な気持ちになった、、笑

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2025年12月28日

Posted by ブクログ

性格のない空子。
トレースして生きてきた主人公の話。

特にやりたいことがない人間は、
やりたくない事を消去法で削除しながら
自分の未来を決めるしかない。
夢はきらきらした麻酔のようで、それがあるとたくさんの現実が麻痺するみたいだ。

私たちは便利な連鎖の道具の中にいる。
「母」という名前の仕事は、最底辺であちこちから「便利」の矢印を背負うだけの存在に見えた。

私が「呼応」すると、大抵の人が「呼応」で返す。
性格はセッションだ、とこう言う時特にそう感じる。

「ピョコルン」「ラロロリン人」、という聞いた事ないワード。
そしてピョコルンの正体、、

なかなか重たい話だし
グロというか気持ち悪さというか。

世界⓵も②もその他の世界もまるで現代のネットのようだなと思いながら読んでいた。

下巻も気になります。

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2025年12月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ


すごく ん?てなる話だったけど
続きが気になってずっと読み続けました。

人間の人格って確かに
どうやってつくっていくんだろ?
本当の自分ってどれなんだろ?
...たしかに言われたら考えちゃう。
自分らしくってどういうことなのかな?
と考えながら読みました。

最後ぴょこるんが衝撃すぎて。
ゾワッとしてしまいました。
また続編読もーっと!

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2025年12月21日

Posted by ブクログ

主人公は、したたかなのか、はたまたとんでもなく愚かなのか。私だったらとても耐えられそうにない暮らしだけど、彼女はそれほど悲観しているわけでもなさそう。ピョコルンやラロロリン人の存在のせいもあって、ザワザワした気分がとまらない。気持ち悪いけど、読まずにはいられない。この世界、下巻でどうなっていくのか。

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2025年12月15日

Posted by ブクログ

読んでてきつくて苦しくなるというのが1番の感想。
それでも人間が生きていく上でかなりの人が通るであろう仄暗い人間臭いやりとりを解像度高く描いているから、すごいなぁと思う。
人間ってこういう生き物だよなぁ〜、ってか、どこのコミュニティでもなんでこんな感じに収束していくものなんだろう?みたいな問いをもらった。
あと自分は男性だが、「男性の究極の気持ち悪さ」みたいなものを女性の視点でこれでもかってくらい書かれて、なんかボコボコになった気分がある。
とはいえ、新しい視点というか、幼い娘を持つ親としてなんだか大事な視点を授けられた気もした。
人におすすめするかって言われたらしないけど、まぁ色々考えさせられる意味で「余裕があるときなら読んでも良いかな〜」とは思う感じ。

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2026年01月10日

Posted by ブクログ

人によってキャラを変えるという『人間あるある』を誇張した空子に共感できるけど不気味なまま進む。誰しもリトル空子が心の中にいる。

自分はそれが得意じゃないのでその器用さを羨ましくも思う。素(世界99?)から上手く1や2に行けない感じ。

でも「人間は地球にとって有害だ、もっと美しい世界を作る」的な終盤のラロロリン・ブレーン・グループの主張はちょっとありきたりで残念だった。色んな作品の悪役が似たような事を言ってるのを聞いたことがあるから。ムスカとか檜山蓮とか。

そもそもなんで"世界"(界隈?グループ?)みたいなのができるんだろう。素のままじゃ不安で固まって安心したいからかな。でもそれに合わさるために精神使ってたら本末転倒な気もするけど作内の孤独よりマシなんだろう。

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2026年01月08日

Posted by ブクログ

自分はそうでないと思いたいが、目の前の相手の求める回答を出したがったり、トーンを合わせたりする自分が全くいないとは言い切れない。主人公の「トレース」要素が、自分にも僅かにでもあることを自覚して苦しい。

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2025年12月30日

Posted by ブクログ

私は、この小説の中に出てくる「世界」や「干支」なるものを、「レイヤー」と呼んで区別していたことに気づく。

この人はどのレイヤーで世界を見ている人なのか。

感情?論理?感情的な論理?それを俯瞰する自分?はたまたさらに俯瞰している自分?

どのレイヤーで目の前の現実やこの世の中を見ているか、で、私はどの部分を差し出すかを決めることは日常だったため、同じことを自覚している仲間と出会うことは、この上なき興奮を呼ぶ、というところも、理解できる。

最近読んだ朝井リョウ氏の「イン・ザ・メガチャーチ」に登場した国見、という人物と、この主人公は
どこか似ているところがあるな、とも思った。

自分が所属する世界が少ない、ということは、信じられるものが多い、ということなのだろう。

一方主人公のように、世界99に属する人間は、信じられるものが少ないが故に、色々世界をコレクションしてしまうのだと思う。

ただ、表現や設定がグロくて残酷なので、下巻を購入するかは、とても迷っている……。

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2025年12月30日

Posted by ブクログ

怖いしグロい。でも読むのをためらいつつもやめられない。
こんなの全然違う、フィクションだと言い切れない。むしろ頷けるし、現実世界にリンクする部分が多い。

私の世界はいくつあるのか?数えたくなる。
家族や友人や知人だって、わたしの前で見せてる世界とホントの99の世界があるのかもしれない。
誰だって多面的だと思うけど、それをこんなにもわかりやすく文章化できるところに村田さんの筆力を感じた。いや、すぐに下巻読まないと!

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2025年12月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

オーディブルで読み聞く。他者のトレース、自分の世界の多層化など。それにしても空子20歳までに近寄る男の資質が気持ち悪い。また女性からみた専業主婦的な女性像や男性性がゾッとする、人間家電、性欲処理の対象など…そしてピョコルンなるものへの性対象の転換…

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2025年12月23日

Posted by ブクログ

コミュニティごとに人格を切り替えるのって、程度の差はあれど大勢がやってることだと思う。表の顔と裏の顔みたいなことじゃなく、もっと複雑で曖昧で保守的に。空子が世界を振り分けたように、それぞれの世界の住民もまた分岐した世界を持ってるはずで、そこに想像があまり及んでないのがいかにも村田沙耶香の主人公だった。共感性が明らかに欠け、それを補うためにひたすら観察し模倣し調和する。けど本当はみんな空子が思うほど一面的じゃない。心というものに形があるなら、それはつるつるのハート型じゃなく複雑な多面体なんだと思う。
あまりに低俗な人間ばかり出てきて(特に男は全員終わってる)、この内容でこの分量はストレスだし下巻は読まないかな〜と思ってたけど、ラストで一気に引き込まれてしまい悔しい。この世界がどう閉じられるのか見届けたくなっちゃう。

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2025年12月17日

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