あらすじ
小説というものの輪郭が、いわば地球を覗く窓の形が、本書によりまた大きく更新されました。
それはつまり、この本の中で初めて寛げる人がいるということです。
救済と爆弾は同じ姿で在れるのだと気付かされました。
朝井リョウさん(作家)
本当は貴方もわかっていたんだろう? と迫る声が脳内に鳴り響く。
熱に浮かされるようにページを捲る手が止まらない。
これは本型ワクチン。
世界99に誘われ、もう元いた場所へは戻れない。
宇垣美里さん(フリーアナウンサー・俳優)
足元の地面がふいになくなり、
正常と異常の境目が消え失せ、目眩がする。
人間という生き物の滑稽さ、グロテスクさ、美しさ、不思議さが、
この本の中にすべて詰まっている。
岸本佐知子さん(翻訳家)
空子がこの世界で体に蓄積する小さな暴力の音とか、風とか、どれも僕の心に刻まれていきました。
物語で一緒に過ごせた時間は、僕の宝です。
ロバート キャンベルさん(日本文学研究者)
この世はすべて、世界に媚びるための祭り。
性格のない人間・如月空子。
彼女の特技は、〈呼応〉と〈トレース〉を駆使し、コミュニティごとにふさわしい人格を作りあげること。「安全」と「楽ちん」だけを指標にキャラクターを使い分け、日々を生き延びてきた。
空子の生きる世界には、ピョコルンがいる。
ふわふわの白い毛、つぶらな黒い目、甘い鳴き声、どこをとってもかわいい生き物。
当初はペットに過ぎない存在だったが、やがて技術が進み、ピョコルンがとある能力を備えたことで、世の中は様相を変え始める。
3年以上にわたる著者初の長期連載がついに書籍化。
村田沙耶香の現時点の全てが詰め込まれた、全世界待望のディストピア大長編!
【著者略歴】
村田沙耶香 (むらた・さやか)
1979年千葉県生まれ。玉川大学文学部芸術文化学科卒。2003年「授乳」で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)受賞。2009年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、2016年「コンビニ人間」で芥川賞受賞。著書に『マウス』『星が吸う水』『ハコブネ』『タダイマトビラ』『殺人出産』『消滅世界』『生命式』『変半身』『丸の内魔法少女ミラクリーナ』『信仰』などがある。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
独創的でSF展開でとても面白い!
なんでこんな面白い展開とフレーズが思いつくんだろてしみじみ思う。
過去作品をブラッシュアップした感じ。
みなが日常で無意識に行っている行動を改めて描写しているため、感情や人格を知る教科書みたいな印象。
人が自分らしさをどのように定義するかは、他人との関わりでわかる。
というより、付き合う他人ごとで見せる自分がそれぞれあって、作者は分裂と表現する。
第二章(35歳)は朝井リョウの生殖記と似てて、各人がそれぞれの世界に支配され、道具と化している
Posted by ブクログ
なんだ、これは?!面白い!!
第一章ではただ空子の人生を描いてるのかなと思っていたけど、第二章ではコミュニティを『世界』として使い分けることで話のテーマが出たかなと思いました。
初めは空子のサイコパス具合に全く共感できなかったけれど、だんだん「あっ、この使い分ける感じあるかも」と『世界』が登場してきたあたりから共感できることが多くなり、ますます惹き込まれました。周りに合わせる→空気を読むというキャラ作りは誰にもあると思います。それを世界①〜99と使い分ける感覚は斬新で興味深かったです。どうしてここまでこんな人物(絶対に空子はサイコパス!)の心情が分かるんだろうと不思議です。
そして、とにかくピョコルンがめちゃめちゃ気になる〜!!思わず「ピョコルン 画像」で調べたくなったけど、出てきたものを見るのが怖くなってやめました(笑)
今回の上は読み始めて止まらなくて1日で読み終わりました。続編もすぐに読みたいです!
Posted by ブクログ
現実世界の見る視点が増えそうな本。そういう本は貴重だから嬉しい、ほんとに無感情な人が俯瞰的に世界を見るとこんなに滑稽でグロテスクなんだなと思った。ストーリー自体も面白い。
以下気に入った文。
○4歳
わたしはなんだか、薄気味悪くなった。七夕の短冊の色くらいで、一体なぜみんなで泣いているんだろう。変な儀式の真ん中にいるみたいだった。
○6歳
「お母さん」はとても便利だけれど、その内側に常に何かを溜め込んでいるのが見てとれた。もしそれが爆発すれば私は怖い目に遭うだろうし、便利な存在を失うかもしれないから、それなりに大切に扱ったほうがいい。それが、当時の私の漠然とした感覚だった。
○11歳
私を育てるために一生懸命お金を稼いでいる父のことを、かわいそうだなあと思う。
○12歳
「あのね、だから、私に意思なんてないのよ。危機を回避して、安全に生きていくこと。誰とも摩擦を起こさず、ただただ、楽に生き延びること。私、それだけなの。ただそれだけの生き物なの。でも、本当はみんな、そうなんでしょう?」
○14歳
レナは自殺をしたのではなくて、心が殺されたので、身体をそれに合わせただけなのだ。そんな簡単なことが、なんでみんなすぐに理解できないのか、よくわからなかった。
○20歳
同性の世界に媚びている男の人を見ると、私だったらもっとうまくやるのに、と思う。
可愛い女の子を口説いて、コミュニティにハメ撮りでも献上できたら、媚びはかなり成功するだろう。ブスがマグロだったとか、顔はいいけど喘ぎ声が大きくて萎えた、という話も、定番とはいえ自分ならもっと大袈裟に、うまく話して喜ばれる自肩がある。身近な女の子の容姿やその劣化、便利さをはみ出した生意気な態度をこき下ろすのも、私はとても上手に、いろんなバリエーションでやることができる。
みんなの記憶が都合よく改竄されているのだろうか。それとも、私の記憶が間違っているのだろうか。どちらでもいいのかもしれなかった。こうなってしまえば、これが真実なのだ。
記憶は多数決だなぁ、と思う。
「白藤さんが誘導しているのって、「正しい』教だよね。それって、世界一規模が大きいカルト宗教でしょ?それに入すると、とっても正しくて、自分が世界を守っているんだ、って思えるんだよね。とても楽しそうだし、気持ちよさそうだね」
喋りながら、あ、これが「意思」か、と思った。なるべく「楽」に生きたい。ただそれだけだった私が、こんなに強く意思のようなことをしゃべるのは、初めてのような気がした。
「この資格をとったら、私は『典型例の人生』から解放されるって思えるの」
「典型例?なにの?」
「何もない人間の。何もとりえがなくて、やりたい夢もなくて、意思も感情もない、かといって『女』としての奴隷労働もあんまり好きじゃない。そういう、『無』の人間の」
○35歳
野口くんは小学校でも中学校でも、女子に人気のある男の子だった。地元のコミュニティで集まると、当時の力関係の世界に久しぶりに来られてうれしい、と彼が全身で発言しているのを感じる。
世界①は、地元の友人たちから繋がって出来上がっているコミュニティだ。定期的に飲み会があり、クリーン・タウンの近隣に住んでいる子も多いので、いつもここで集まっている。
世界②はある程度お金がある人が多いので、世界①とはだいぶ金銭の感覚が違うが、所属してみると、それだけではないなあと思う。世界②のコミュニティには、世界①の友達よりずっとお金がない人もすっと入ってきて、自然に溶け込んでいる。楽しく生きたいように生きていて、なにか明権にやりたいことや才能があること。とくに決められたわけではないが、そういう人物像が、世界②にいるときには求められている、と感じる
世界②は、風水とか占いが好きな人が多くて、私たちにはとても信頼しているライフアドバイザ
1がいる。ライフスタイルコーディネーターの一ノ瀬さんのセッションをほとんどの人が受けている。
「一ノ瀬ちゃんの話だと、来年は、部屋の中に、わざとごちゃごちゃっとした場所をつくるのがいいんだって。そこに悪い「気』をわざと集めるの。あと、過去のカオスへの感謝って意味もあるんだって。私、感動しちゃって」
「サラー」は、汚染された廃棄物や、処理できないような不燃ごみを、粉にして、食べられる状態にしたものだ。それを食べ、体の中で分解して外に出す。そうすると、世界を汚す存在だったごみたちは、綺麗な土になる。
「サラー」は美味しくはないし、身体にも悪い。食べている人間自身が汚染された廃棄物になってしまわないよう、定期的に検査も受けなければならない。けれど、自分の身体を使って恐ろしいごみを分解し、濃過し、少しでも地球がよくなることに貢献できているのだと思うと、がんばって食べることができる。
世界③は、奏さんの大学時代の仲間から繋がったコミュニティで、その友達の友達だとか、仕事でたまたま会って価値観が合った人がぼんやりと連なって出来上がった世界だ。私は白藤さん経由でこのコミュニティの集まりに顔を出すようになった。
世界③にいると、世界①や世界②にいたときの自分が、ドラッグでもやっていたのではないかと不安になる。たくさんの人が苦しんでいる世界で、いったいなぜ、あんなに能天気にしていられたのだろう。
世界③の人と話していると本当に落ち着く。同時に、悲しくてつらくなる。
ミドリさんと奏さんは、サラーだけでなく汚染水を飲んで身体で浄化する活動も始めている。専門のお医者さんに管理してもらわないとできないので、私はまだ始めていないが、自分も早くあの水を飲みたい、と思う。
わかるのは、自分がこの人間に捨てられたら、一人では食べていけない存在だということだ。
3つの世界があるとすれば、ここは世界⓪なのだろう。私と明人だけのコミュニティのようでいて、私は明人の道具でしかない。
私は急いで明人の食事の準備を始めた。ポケットの中でスマートフォンが震えるたびに、3つの世界が顔を覗かせる。世界①から『また来週集まらない?油小路さんがおすすめしてた映画、みんなで観にいこうよ!」、世界②から、『一ノ瀬ちゃんが新しいサプリ始めたんだって。予約完売らしいんだけど、特別な人の分はキープしてくれてるって~!愛してる!』、世界③から、『ごめん抱えきれなくて、このニュースがあまりに残酷で、苦しすぎて』、世界①、②、③、それぞれの言薬が、私の中へこぼれ落ちてくる。
富裕層が、ピョコルンで性欲処理をし、ピョコルンに子供を産ませるようになったのは、就職して少し経ったころだと思う。
最初にウエガイコクのそのニュースを聞いたときは驚いた。白藤さんは激怒していた。女性が病院で卵子をとり、男性の精子を体外受精し、それを手術によって人工子宮を備えたピョコルンの中に入れると妊娠し、ピョコルンから人間の子供がちゃんと出てくる、というニュースは私には衝撃的なものだった。こんなことは残酷だとみんな反対するだろうと思ったし、実際に最初はそうだったはずなのだが、今では、私たちの生殖にピョコルンが関わることは、少しずつ自然なことになってきていた。
こともなげに世界②の小早川さんが答える。
「世界99?」
「月城さんみたいに、世界①、②、③、④、って同時進行的に自分がいたら、その世界の後ろのほうに、世界が並んでいるのを見つめてる世界、があってもよさそうじゃないですかー?世界1万でも、世界100万でもなんでもいいんですけど、とにかく、たくさんの世界で生きている無数の自分をその世界の自分がぼーっと見てる感じ、すごくわかりますー」
Posted by ブクログ
冒頭から村田氏の世界観全力。下巻に出てくる言葉も含め、多様なワードが刺さる。呼応、ダウンロード、セッション、データ、正しい教、粒子。国家や人々の区分も興味深い。
Posted by ブクログ
「可哀想」という暴力、「正しい」という名の宗教、「恋」という疑似結婚的な肉体労働、「感動」という記憶の捏造、などなど。
この作品を構成する要素は多種多様で、今まで見てなかった側面に光が当てられ、新たな気付きを抱かせてくれる。下巻以降でさらなる要素の展開を期待している。加えて、第二章で明らかになる「ピョコルン」の存在意義が今後どういった展開になるのか、人類がどう変化していくのか、もあわせて楽しみである。
主人公は自分という意思が欠落している。自分発信の意見が芽生えない。そのため相手に好かれる人格を幼少期から終始、多面的に使い分けて社会に馴染もうとする。意思がないからこそ俯瞰的に物事を捉え、思考が言語化され整理される。この作品はとにかく俯瞰的な視点から、どこか冷笑的だが物事の核心をついているような言葉が多く、ただただ感心させられる。
上巻の個人的に印象的なシーンとして、映画を観に行くシーンをあげる(重要なネタバレではありませんが、気になる方はここまでにして下さい)。
主人公が中学生のとき、友人が失恋を機にいじめが横行され、遂には自殺で亡くなった。二十歳のころ、その出来事を美化した話が巷で広まり話題となって映画化された。ただ、映画内容は叶わぬ恋に悲観し自殺を選んだ悲しい恋愛物語として歪曲されている。
主人公は中学校時代の友人達とともにその映画を観に行く。友人の中には美化した話を創作した者や、いじめの加害者として自殺の原因を作った者も含まれる。
しかし、その友人たちは、映画に感動しひたすら涙をこぼす。中学校時代の記憶も映画とともに捻じ曲げ美化しているともいえる。いじめの加害者が、自殺した被害者をモデルにした映画で号泣している。その涙は何で死んじゃったのと言わんばかりの涙で、主人公は「え、殺したのお前じゃなかったっけ」と困惑する。
これには全く同意である。現実のいじめ加害者もおそらくこうなのだろう。罪悪感は無く悲しい出来事として記憶しているのだろう。
映画を観終わった後の感想会でも、実際の過去の出来事は触れられず、友人たちはいじめ被害者の恋愛が体感できた良かったと話す。友人皆が記憶喪失にでもなってるかのように、都合の良い思い出を語りあう。
人の記憶は時間とともに風化され薄れていき、細かな箇所は忘れる。そうなったとき人は都合良く今の価値観で美化して補おうとする。そこに「感動」という刺激が加われば、都合良く美化した捏造された記憶が定着する。そういった人が世の中にごまんといる事を考えると悲しくも悍ましいとも思えた。
Posted by ブクログ
最後10ページで訳がわからなくなった。早く下巻読みたい。おもしろかった。
・ケア・奉仕に使われる女性
・ウエガイコクとシタガイコクの差別
・痴漢、性加害
・遺伝子による差別
・何かの考えを信仰しているかのようなそれぞれのコミュニティ
自分のキャラはそこまで変わらないように思うけど(思ってるだけでそんなことはないのかもしれない)、地元コミュニティ世界①、金持ちスピ系世界②、意識高い系世界③も、なんとなく自分も見たことがあるように思った。作中に出てくるほど顕著に違う世界を自分で目の当たりにしたことはないけど、なんとなく予想ができた。
小早川さんと繋がって嬉しかった感覚、すごく伝わってきたのに「結局1人か、まあなんとなく予想できてた」と思う空子、かわいそうだったけど、世界99にいる彼女はそういうふうに考えるよな。
426
「孤独ほど抗えないエネルギーはない。(…)孤独はなによりも強力な力を持ったエネルギーで、それに突き動かされてるとき、少し変だなと思っても、それに逆らうことは決してできない。」
→なんでかよくわかんないけど、この一連の文章がすごく残った。孤独な時、誰かと異常なまでに繋がりたいとき、それをすることをやめられない。自分にも経験があるのかな?考えるとよくわかんないけどなぜかすごく残ってる。
Posted by ブクログ
めっちゃいいね。この世界と限りなく近い。
ピョコルンとかラロロリン人とか、そういう作中独自の象徴はこの世にあるけど固有名詞として明言していないだけで、普通に色んなものに置き換えることができるよね。「Aさん(仮名)」みたいな感じ。
主人公の言っている「呼応」みたいなのもすんなり理解できる……というかまあ人間ならみんなそうだし特にその感覚が強い人ね、みたいなとっつき易さがある。性的、社会的な役割の割り振りっていうのはこの作者の物語によく出てくる概念だしね。
なんならこれ一冊でも話としていい感じな気もするんだけど、ここからどうやって下巻の話が展開されるのか楽しみ。
Posted by ブクログ
ちょーーーおもしろい!!!
うっすら考えてるリアルを誇張しつつラストはSF強め
今日は午後6時間使ったわ!読書はいいねぇ!
これで完結感あるけどな...!
あっきーはどんなピョコルンになるのか、音ちゃんの逃避行は?とか、ピョコルンの扱いがどうなっちゃうのかは確かに気になるけど、ここで終わらせないの多くの小説家の一歩先を言ってる気がする村田さんよ...
Posted by ブクログ
村田沙耶香の本は相変わらず気持ち悪い。褒めている。
誰しもが分類して生きている世界をこうも言語化して、文章にできるのか、
生きていてこの奇妙で不気味で、でもとんでもなくリアルで面白い文章を読めてよかった、
私も世界99の住民であると空子に言いたくてどうしようもなかった途端に、音ちゃんが来て、最後みんなが世界99の住民になってと、
どうしようもなく続きが気になる終わり方で終わった。
下で会いたい空子よ。
Posted by ブクログ
一体どのように生きたらこんな風に人間、世の中をこんな角度で見れて文字に起こせるのか。不思議で堪らないです。また村田沙耶香ワールドに引き込まれました。
Posted by ブクログ
相変わらず村田沙耶香先生は奇妙キテレツながら妙にリアリティのある恐ろしい世界をつくるのが上手い。
人間の中のドス黒いものが事細かに描写されすぎてて、読み進めるのにかなりの精神力を削がれる。そこがいいところなのは重々承知だけど、結構しんどい。もちろんつまらないとかじゃないよ。
でも、その時々に所属するコミュニティで自分の人格を変えるっていうのはわりとありがちなことだと思う。みんな意識はしてないかもしれないけどね。
これは平野啓一郎先生の著作『空白を満たしなさい』の中で「分人」という考え方として、同じように表現されていたことを思い出した。となると本当の自分、つまり素である状態というのは周囲に誰もいない、自分一人のときだけなのだろうか?それってほぼ素を表出する機会がないということでは?ってことは素の自分ってほぼ存在しないものと同義なんじゃない?と飛躍した考えが一瞬頭の中をよぎったが、だからどうなるというわけでもないので特に意味のないことであった。そういうことを一人で無駄に考えることは結構好きなんですよ。
兎にも角にも様々なコミュニティを様々な人格を形成して順応し、渡り歩いていた主人公。その中で見つけた自分の本当の世界、「世界99」。決して相容れることのなかったそれぞれの世界が、最終的に融和ではなく崩壊という形で世界99に収束するという結末に到達するなんて本当にどういうことを普段考えてたらこんな展開を思いつくんだろう。恐ろしすぎて脱帽です。しかもこれがまだ上巻というね。これ以上どうやってこの世界をかき乱すっていうんだ!
本筋とはまったく関係ないけど、ラロロリン人とかピョコルンとかわけのわからん固有名詞のネーミングセンスが秀逸すぎる。わけわからんけどさ!
Posted by ブクログ
読み進めながら「なるほど、なるほど、分かる分かる」と引き込まれていく。
単なるフィクションというより、倫理の限界を問うケーススタディとしても読める、非常に骨太で参考になるストーリーです。
描かれている世界は、私たちが目指すユートピアのようでもあり、同時に最悪のディストピアのようでもある。この両極端な感覚がせめぎ合い、まだ言葉にできません。この興奮のまま、下巻へ没入します。
Posted by ブクログ
如月空子には性格がなく、出会う人それぞれに合わせて人格を作り出していた。相手の感情と〈呼応〉し、行動を〈トレース〉する事で相手にとって居心地の良い人間を演じる。
舞台は現代の日本のようだけど少しディストピア的な世界で、愛玩用の新しい生物ピョコルンや、優秀な遺伝子を持つとされるラロロリン人の存在が物語に大きな影響を与えていく。
この世界、とにかくロクな人間がいなくて読んでいてしんどい!しんどいのに展開が気になって面白い!
男尊女卑、人種差別、セクハラモラハラが当たり前な社会で、人々もそれを受け入れながら生きている。
その場に合わせたキャラを作るのは実際誰でもしていることではあるけど、空子はキャラ作りが特に上手いうえにキャラの数も多い。場に応じてキャラを使い分ける器用さと同時に危うさもあって目が離せなくなる。
そしてピョコルン…空子の暮らしに大きな影響を与えてきたピョコルン…衝撃だった…!
Posted by ブクログ
だれしも社会に適応するために無意識に行っていることをそこまで極端に露悪的に描写しなくても…と思ったり思わなかったり
最近現実世界でモフリンというペットロボットをみて、ピョコルンを連想せずにはいられなかった
Posted by ブクログ
上巻は10歳の記憶から始まる。相手により自らのキャラを変えて人格を重ねていく女性の物語で、キャラを変える自分と対比する対象である白藤さんとの出会いの記憶からだ。キャラを相手によって変えていくことは、程度の差こそあれ誰もが経験していることなので “キャラ変ネタで下巻までどうやって物語を維持するんだ?と思っていただけに、上巻終盤に受けたショックは大きかった。差別的な世の中に生きる主人公のエピソードだけではなく、とんでもない要素を加えられ、より加速度を増して下巻を読み進めていった
性別、人種等目に見えるモノから、DNAの特性といった見えないものまでを差別、格付けの具にする苦しい世界を著者は描いている。ページを繰るごとに語られる物語は、差別的で暴力を内包している現実世界を描写しているが、グロテスクな感じがなく、ただ淡々と語られていく。まるで、フィリップ芸のあるあるネタを見ているようだ。
物語は、清潔で美しく皆幸せに暮らすユートピア世界に至り落着くが、それはとんでもないディストピアの様相を呈していた。
Posted by ブクログ
愛とか、優しさとか、思いやりとか、他人を敬うとか、助け合いとか、そういうのが一切ない。
何と言ったら良いか・・・悪意に満ち溢れ、みんな何かの奴隷であり、何かに対して従順に生きている世界の話。
主人公空子は、周りの空気を読むどころか、シンクロしてしてしまい、その時々に自分がいる集団の中に溶け込むことで、自分がしんどい目に合わないように生きていきます。
ただ、空子の中には主義や、思想はなく、その場その場でシンクロした際に思うことはあるけど決してそれを持ち続けません。
集団が変わったら、あっさり捨ててしまいます。
考えることを放棄する免罪符の様に繰り返されるセリフ「私は馬鹿だから」っていうのが印象的でした。
このセリフ、下巻の話でなんかつながるんですかね?
初見の集団でも相手をトレースすることで、瞬時にキャラを作り馴染むっていうところで、いわゆる多重人格とはちょっと異なる感じですかね。
ラロロリン人とピョルコン(これも、なんか人を小馬鹿にしたような、イラっとするネーミングですね。なんだよ、ラロロリン・ガール・ラブって(笑)。こういったところにも作者の悪意みたいなものを感じました。)という多分何かのメタファーが話の展開を劇的に変えていき、上巻の最後もピョルコンの正体が明らかになったところで終わります。
まだ下巻に続いていくのですが、ここまで読んだ感想は、よくもまあここまで毒々しい内容の話が書けるようなぁ・・となんか一周回って感心してしまいました。
いじめの描写とか、痴漢の話とか、バイト先のおっさん?の話とか、習字のセラピーの話とか、終盤にかけて欲望のはけ口にしていたピョルコンの正体がXXで、それを確認した際に現れたのが△△であったりとかの件とか。
特にこの話に出てくる男の描き方が酷い・・・・そんなに男って人種はクズなん?っていくらい酷い。
ここまで酷いと、作者の方の男性観というか世の中の男性に対する呪詛か?と勘ぐってしまうくらい。
なんというか、毒を毒と分かって挑まないと、強烈さに取り込まれててしまうのでは?と思いました。
感受性豊かな思春期の子供には絶対読ませたくない(笑)。
Posted by ブクログ
GWを使ってなんとか読み切れた。
Page turnersのYouTubeで、竹下さんと三宅さんが激推ししていたので、読まねばと思っていたが、なかなか読むタイミングを掴めず購入できないでいた。
海外出張が入ったので、機内で読もうと思い、いくつか電子書籍を購入していた。その中の一つが本書だ。
結局その時は機内で読むことができなかったので、読むタイミングを伺っていたが、そんな折にGWがやってきたというわけだ。おまけに旅行の予定もなく、さらには軽く風邪を引いてしまったこともあり、この大作を読み通すにはちょうど良かった。
他の賢い方々同様に大絶賛といきたいところだが、残念ながら自分の理解力が至らず、終始嫌な感じを引きずりながら読み進めた。あまりにしんどいので、必死に高速で読み進めた。
描かれるのは、空子という主人公だが、とても受け身で名前の通り空っぽのキャラクター。終始周りに合わせて、キャラを使い分けて、キャラに応じた世界を持っていて世界1〜99まである、ということでの世界99というタイトルになっている。
そんなにやりたいことがないなら死にたくなるだろうな、と思っていたら自殺のようなことをしていて、納得した。
ピョコルンという不思議な存在が、女性が押し付けられている嫌な役割を請け負っている。それは、家事だったり、性行為だったり、出産だったりする。
仕事の楽しさや生きる面白さは全く描かれず、ただただ"イエ(恋人間、夫婦間でのこと)"の中や"ウチ(近しい人間関係での出来事)"の中の負の側面ばかり描かれる。
稼げないと、誰かの経済力に頼らざるをえず、その生活はパートナーとの関係性に大きく依存したものになるー
一つの場所で生きれないと、そこでの人間関係をうまくやるしかなく、それに失敗すると詰んでしまうー
自分のやりたいことがなく、主張も何もないー
空子はこんなイメージで、それがためにその場その場に応じてキャラを使い分ける必要があった。
確かにこの本は新しい世界観の提示なのかもしれない。
そして読んだこと自体は、良かったし、幅は広がったと思う。
だがしかし・・・、内容が暗い。新しい知識や自分の人生をより良い方向に持っていく、という感じではない。
将来的に自分の子どもが進路に迷った時、周囲の人間に関わる際に、このような読書体験が活きることはあるとは思う。
だがしかし・・・、という思いが拭えない笑。
ただ、読んで良かったと思う。次回以降、このような本はもっと猛スピードで読めるようにしたい。
Posted by ブクログ
「最悪」が積み重なる上巻。かなりキツイものがあるが、「面白い」と感じてしまう自分もいる。女性の地獄を描いているのか?と思いきや、段々と単にそういう話では無い事が分かってくる。社会人になってからの展開が面白すぎる。「加害者」側の人間としての共感が多く居心地悪いが、最後の1ページはなんとも言えないワクワクを感じてしまった。
Posted by ブクログ
村田ワールド全開!期待を裏切らない…裏切られた…どちらなんだろうか?最近、柚木麻子のBUTTERを読んだが、その次がこの本キツイ、心が病みそうだ。まだ、下巻があるのか...厳しいw
Posted by ブクログ
村田さんの作品はコンビニ人間しか読んだことないけれど、あの薄さでインパクトが凄いので、上・下巻の厚みと表紙の不気味さに興味が湧いて読んでみました。
最初からコンビニ人間を超えてくる異質な感じがあって「やばそう」と思いながら読み進めましたが、ほんとにほんとに異質すぎて怖い!
最終的に気持ち悪い。ずっと気持ち悪いなぁ〜って読んでたけど、上巻読み終わる頃にはマジで気持ち悪い。
こんな嫌悪感が付きまとう話なのに読みやすくわかりやすく書けるって凄い。村田さんの表現力が凄い。
こっちはこんなに心揺さぶられて何かしらこの作品のことを言葉として吐き出したいのに、上手くアウトプット出来ない。
下巻では一体何が起きるのか楽しみにしつつも恐ろしいです。
Posted by ブクログ
野間文芸賞受賞ということで読み始めたが、、、。
自分の性格がない主人公の女性。その時々の相手に合わせながら、自分のキャラを使い分けていく。
今よりは、おそらくもっと進んだ世界の話、そこにはピョコルンという人間が作り出した生き物がいて、人間たちに飼われている。このピョコルンがやがて進化して人間たちと立場が逆転していく。
3ページに1回ぐらい、きつい表現があるので、単純に読むのがきつかった。
Posted by ブクログ
男性に媚びる女性。女性を服従させようとする男性。養われている主婦=人間家電
人間でいるにはお金がいる。
えっ世の中ってこんな夢も希望もないの?
ピョコルンは人間のリサイクルーピョコルンの中から出てくる人間の体の部位...おぞましい
村田沙耶香さんの本ってこんな感じなんだ...
Posted by ブクログ
現実離れしている設定に見えて、実は心理の核をついている話のように思えます。
人間として当たり前のように思える振る舞いが話の中で「トレース」「分裂」と表現されていて客観視すると確かにこれは奇妙な行為なのかもしれないなと嘲笑しました。
いくつもの世界に生きている自分を冷静に捉える場面なんかは特に人間の心理の本質をついているような描写で何度も「わかるわかる、それバラしちゃうんだ」と半ニヤケでついふっ、と笑いが出ました。
Posted by ブクログ
やっと上巻読み終え、、、
キツくてなかなか進まなかった
独特の設定は面白いし、思考や社会問題にもドキリとさせられる けど
、、、まだ下巻がある、、、のがキツい
Posted by ブクログ
終盤には空子が少し人間味が出てきた、世界の数字は属しているコミュニティの区分けらしい、そしてそのコミュニティに応じて自分を変化させている。浮世離れしているようで自分の生きている世界とリンクしている所が混在している。誰しもが少なからず幾つかのコミュニティに属していて、空子のように適応しているのは確かだ。ただ彼女の場合は自我が薄いからなのか居心地が良くなさそうな所にも適応している。きっと自分ならそこから離れるだろうな。全ての物事や、他人の機微に俯瞰して思考する彼女にどこか尊敬するところもある。
いい意味で薄気味悪い醜悪な世界観を描くのが村田さんの持ち味なのかな?
終盤は様々な出来事が重なって自ずと頁を捲る手が速まっていた。
下巻が楽しみです