【感想・ネタバレ】爆発物処理班の遭遇したスピンのレビュー

あらすじ

この面白さ、解除不能。恐怖とスリルに満ちたミステリー。表題作ほか、「ジェリーウォーカー」「くぎ」を含む8編の超絶エンタメ短編集!

爆発物処理班の遭遇したスピン
●東京で開催されるオリンピックの警備に参加するため、対テロ訓練を実施する鹿児島県警警備部機動隊の爆発物処理班。その訓練中、鹿児島市内の小学校に爆破予告があった。現場に向かった班員たち。爆破予告はおそらく虚偽だろう──彼らがそう思い込んだとき、強烈な爆風が班員を吹き飛ばす。テロ組織からの犯行声明、そして新たな爆破予告。やがて爆発物処理班が直面したのは、未知なる〈量子力学〉の謎だった。

ジェリーウォーカー
●おぞましくも魅惑的なクリーチャーをつぎつぎと生み出し、〈クリーチャー界の王様〉と称賛される世界的CGクリエイター、ピート・スタニック。自身も映画スターのように扱われるようになった彼は、都会の喧騒を離れ、オーストラリアのハンターバレーに広大な土地を購入して製作に没頭する。人々には決して明かせない重大な秘密を隠したまま……。短編ながらハリウッド大作の雰囲気を併せ持つ、収録作中でも人気の高いSFスリラー。

シヴィル・ライツ
●新宿歌舞伎町に事務所を構える暴力団。未曾有の財政難を解決するべく金策に姿を消した組長に代わって、若頭の舟伏(ふなぶし)がトップに立った。冷酷な舟伏の節約主義は常軌を逸し、廃車寸前のスクーターを盗まれただけで「指を詰めろ」と迫られる組員。ただし、刃物で指を切り落とすほかに、恐るべき別の選択肢もあった……。独裁者と化した若頭のもとで、己の仁義を貫こうとする一人の組員を描いた特異なノワール。

猿人マグラ
●福岡が生んだ最高の小説家・夢野久作。しかし夢野先生の小説は、なぜか福岡ではあまり読まれていない。にもかかわらず、〈私〉の育った福岡市南区には、夢野先生の代表作『ドグラ・マグラ』に関連するとおぼしき不思議な言葉が残っていた。その由来を調べる〈私〉は、終戦直後に起きた怪事件を知るに至り……。著者みずから『Ank: a mirroring ape』(大藪賞・吉川英治文学新人賞)の準備作と位置づける都市伝説系作品。

くぎ
●社会に溶け込めず、暴力事件を起こして保護観察となった少年・安樹。それでも塗装店に就職し、同僚たちとまじめに働いていた。ある日、個人宅の天井補修の塗装依頼が入る。いつも通り仕事を終えようとするが、住人の思いがけない態度から、現場は不穏な空気に包まれて……。著者初の〈川崎〉を舞台にした、のちの『テスカトリポカ』(直木賞・山本周五郎賞)につながる作品。日本推理作家協会賞短編部門候補作。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

 帳が下りる。狂気に満ち、恐怖が溢れ出る。

 一つ。これは狂気に翻弄される物語である。
 二つ。これは狂気に魂を売り渡す物語である。
 三つ。これは狂気に身を委ねられなかった物語である。
 四つ。これは狂気が過去から襲いかかる物語である。
 五つ。これは狂気に身を滅ぼされる物語である。
 六つ。これは狂気に蓋をする物語である。
 七つ。これは狂気に支配された物語である。
 八つ。これは狂気の側にありながら、狂わなかった者の物語である。
 
 帷が上がる。狂気は消え去り、残ったものは希望か絶望か。

━━━━━━━━━
 今回も非常に面白かったですはい。短編集であるからこそ、物語が駆け抜ける疾走感を味わえる。佐藤究の演出する恐怖に身が痺れる。
 さて、今回のテーマは狂気だと仮定する。気が狂っている状態、心が常軌を逸している状況のことだが、これらは周囲から見ても分からないものである。「狂人の真似とて大路を走らば即ち狂人なり」という言葉があるが、これの逆である。狂人が常人の真似をして、出力するものも常人と同じものならば、周囲から見て常人なのである。しかし、狂人サイドからしたら同じではない。己の裡から溢れるものには嘘をつけない。
 それぞれの短編の世界観が繋がっていないのが良い。アベンジャーズ的演出はニヤリとできる一方、何度も続けば味付けが固定される。恐怖と狂気は鮮度が命であり、ホラーとアベンジャーズは反りが合わないのである。

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2026年02月15日

Posted by ブクログ

2022年発刊の短編集

「爆発物処理班の遭遇したスピン」
爆発物を処理できなくても、楽しめる。
波動関数が理解できなくても、引き込まれる。
鹿児島に生まれた思考が、1935年のアメリカへと跳ぶ快感を読む。
理屈よりも 物語の推進力に身を委ねたい一編。

「ジェリーウォーカー」
冴えない映像クリエイターが辿り着いたキメラ創造という設定の奇抜さが魅力。
舞台は(読後の空気として)アメリカらしき近未来を感じさせ、SF性と現実的な承認欲求の絡み合いが印象的。
短編ながらラストの収め方はシャープで、余韻を残す締めで満足感がある。

「シヴィル・ライツ」
弱小反社の底辺組員の市民生活。
佐藤究が、反社とワニガメを絡ませると、こうなる。

「猿人マグラ」
福岡出身の夢野久作。
同じくタモリ。
同じく佐藤究。

『ドグラ・マグラ』は、まだ読めていない。
その巨大な作品を背後に置きながら、
こんなにもシュールな短編を描いてしまう。

「スマイルヘッズ」
シリアルキラーのアートのコレクター。
そういう人種は、世界中にいるのだろう。
タイトルのエッジの効き方がすごい。
シリアルキラーのアートコレクターの、シリアルキラー。

「ボイルド・オクトパス」
黄色人種への差別を暴力的に。
タコを媒介として。
オクトパスは 直訳のタコであるのか、侵略者と読むのか。佐藤究が書いたものとすると、読み解きたくなる。

「九三式」
太平洋戦争敗戦後の日本、東京。
ニューギニアから帰還した兵士。
金のために引き受けた、GHQからの仕事。
帝銀事件から入るくだりに、一気に引き込まれた。坂口安吾の『堕落論』が、ここで生きてくるのかと感嘆する。
松本清張にしても坂口安吾にしても、その時代を生きて書いている。
では、同時代を生きていない作者は、どうやってこの感性を獲得するのだろう。

「くぎ」
舞台は川崎。
なぜか、佐藤究の小説に登場する悪い奴らには、いつも哀愁がある。
解説者の言葉を借りれば、「社会的底辺の倫理観」。まさにそれだ。
この作品がラストに置かれていることで、
この作家をもっと読みたくなる。

佐藤究という人は、途方もない勉強家なのか。
それとも、一度取り込んだ知識や情報を天才的に消化してしまう人なのか。
幅広い参考文献は、決して衒学的に浮かび上がらず、すべてが独自の小説世界となっている。

私は全作品が好きだが、乙女の皆様に無理に薦めはいたしませんd( ̄  ̄)
暴力描写は多くはないものの、確かに存在しますもの。

8編の短編集。連作ではない。
その中で、三島由紀夫の「サド公爵夫人」と「わが友ヒットラー」のように呼応する作品を潜ませる。
導入から思いもよらぬ展開へ。
どの短編も、読み応えがある一冊でした。

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2026年02月11日

Posted by ブクログ

まだ途中だけど感動を忘れないうちに書いてしまおう。佐藤究先生の作品はどれもこの世のどこかで『事実』なのでは?と錯覚させられそうになるものばかりで。実際にどこかの世界線での本当に話なのかもしれないが。それくらいリアルとファンタジーを融合させるのが上手い。事実が練り込まれた嘘は騙されやすいとよく言うが、まさに、この短編集のどの作品も『事実』が軸に構成されており、佐藤究先生のとんでもない知的好奇心が伺われる。特に猿人マグラなんて私自身の生まれ育った土地が舞台であったため、情景も思い浮かんだし、なによりもリアルに感じられた。ただのSFなんかじゃない、実際にあったかもしれない嘘とリアルが巧妙にまぜこぜにされた作品集。ちょっとだけグロ描写あり、薄気味悪い〜軽いホラー好きな方にはおすすめ。

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2026年01月21日

Posted by ブクログ

あの大傑作『テスカトリポカ』の佐藤究の佳作短編集。SFあり、ノワールあり、暗いミステリあり、ジャンル分けしづらい短編集だが、いずれも悪夢めいたトーンが通底している気がする。やるせない不穏な空気。黒い余韻。なかなかの短編集だと思う。一作品の登場人物の名字が(全国で840人ほどしかいない)自分と同じで、妙な気分になった。

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2026年02月20日

Posted by ブクログ

どこか理不尽さを感じる作品群で、どれもいいね。個人的には「猿人マグラ」のオチのつけ方が上手に感じて、とても好みでした。

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2026年02月17日

Posted by ブクログ

「テスカトリポカ」で直木賞、「QJKJQ」で江戸川乱歩賞などいろいろ受賞している作者による短編集。短編それぞれに、というだけでなく、一篇の中でも読み進めていくうちに何のジャンルの話なのか分からなくなってくる。タグ付けが一つしかできないのでミステリーにするかSFにするか悩んだけど、とりあえず直感でミステリーにしてみた。

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2026年02月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

テスカトリポカやankに通ずる佐藤究ワールドの要素が詰まってる短編集だった。表題作が1番好き。それそのものがミステリーのようで直感的には理解し難い量子力学の理論。身近に関わることのない爆発物処理班や米軍の特殊部隊。得体の知れない恐さの要素が存分に詰まってた。

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2026年01月20日

Posted by ブクログ

中々読み応えあり過ぎる
ステーキと焼肉一緒に食べているかの様な
スリラー、ホラー
SF、戦後など
どれも恐怖で触れえる体験をどうぞ

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2026年01月14日

Posted by ブクログ

表題作が一番最初の短編集って珍しい。大体一番力のある作品が表題になるのでは?頭から読むタイプなので表題作から読み、その面白さに感動しつつも残り大丈夫かななんて心配してしまった。しかしそんなものは不要。進めば進むほど怪しさと危険度が増していく。怪異的な恐怖ではない、自分とそう遠くはないところに潜む社会の闇、そういったものを除くときの恐いもの見たさと好奇心を満たしてくれる短編集。個人的にはシビルライツがお気に入り。社会の底辺にだって人権はある。

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2026年01月13日

Posted by ブクログ

表題作ほか全8篇の作品集。「テスカトリポカ」が入り口だった自分は勝手に、佐藤究は長編作品が真骨頂だと思い込んでいました。が、濃度が濃いまま凝縮された短編もかなりヤヴァいです。

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2026年01月11日

Posted by ブクログ

経験したことのないバイオレンスで狂気的な物語ばかりなのに、どれも妙なリアルさを感じる短編集だった。
収録作ではジェリーウォーカーが一番好き。

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2026年01月21日

Posted by ブクログ

ある意味興味をひいたが難しい側面もあった。
結末がどうなるか?は気に入ったところ。
そこまで裏は無かったが…

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2026年01月10日

Posted by ブクログ

なかなか手が出なかった作家さんを初読み

各篇とも独特な世界観で引き込まれる
今度は長編に挑戦してみたい

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2025年12月23日

Posted by ブクログ

著者の知的探究心と発想力を凝縮したような珠玉の短編集。量子力学や生物科学から暴力や狂気が持つ昏い魅力まで、幅広いモチーフをエンタメとして昇華。白眉は「量子の相補性を利用した爆弾」処理の顛末を描く表題作。爆発物処理を巡る硬質な“お仕事ミステリ”と量子エンタングルメントを巡る知の巨人たちによる“哲学的思索”が絡み合う見事な一作。大好物です。

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2025年12月17日

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