【感想・ネタバレ】苦役列車(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

劣等感とやり場のない怒りを溜め、埠頭の冷凍倉庫で日雇い仕事を続ける北町貫多、19歳。将来への希望もなく、厄介な自意識を抱えて生きる日々を、苦役の従事と見立てた貫多の明日は――。現代文学に私小説が逆襲を遂げた、第144回芥川賞受賞作。後年私小説家となった貫多の、無名作家たる諦観と八方破れの覚悟を描いた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を併録。(解説・石原慎太郎)

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Posted by ブクログ

主人公が限界社会人(10代)であるため、下品な表現や描写が多いが、それが男のリアルという感じで面白い。自分の浪人生時代を思い出した。(主人公は中卒で働いているので、自分の浪人生時代とは違うのだが、日々劣等感を持ちながら生き、友人の些細な発言が自分を馬鹿にしているのではないかと思ってしまうあたりに共感できた)

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2026年04月15日

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芥川賞を獲った作品を読み進めていて、手に取る。

19歳の人夫が、日雇い生活を汲々としながら過ごす日々が私小説的に綴られる。
酒を呑んで現実を誤魔化し、風俗で性欲を誤魔化し、人に嫌味を言って自分を誤魔化す。

出自に同情する部分はあるが、それをもって尚、「こいつはクズだ」と吐いて捨てることができてしまう。
そんな全く好感を持てない主人公だが、息遣いをリアルに感じる物語。

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2026年03月01日

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父親が性犯罪者として捕まったことで、社会の底辺に転がり落ちてしまった男性の孤独と葛藤が荒々しく、生々しく、唯一無二の文体で描かれた私小説。

悲哀と渇望の描写が凄まじく、男性の体臭や酒臭さまで感じられる、この感覚ははじめて。

怖いもの見たさで、ほかの作品の全部読んでみたい。

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2026年02月15日

Posted by ブクログ

『一私小説書きの日乗』がとてもよかったので手にとってみると、あまりにその延長線上にあるので驚いた。私小説とはそんなものなのかもしれないが、”貫太”と”賢太”の距離は想像以上に近かった。
『日乗』と相も変わらず、貫太の鬱屈とした日々がたんたんと綴られるだけではあるが、短編としての完成度の高さにこれまた驚かされた。私小説というからには順番に読まなければいけないのではと不安だったが、まったく問題なく、だらだらと続いていく人生のうちのほんの一場面をこんなにも上手く切り取れるものかと衝撃を受けた。またその構成もよく練られており、展開が気になるようなトピックを提示しておきつつ、最後にはそれに絡めたカタルシスがきちんと用意されているのが素晴らしかった。
石原慎太郎さんの愛のある解説もよかった。

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2025年12月30日

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ネタバレ

はるか昔に単行本で読んだはずだが記憶に薄い
文庫本で再読

いや面白い
そして無限に読めてしまいそうな文章力
これほどハイスピードでページをめくれる体験は最近の読書では無かった

こんな作品を忘れるわけがないので単行本は記憶違いなのかもしれないと思った

長らく滞納している家賃支払いのため1日500円貯金、風俗のため1000円貯金は笑った

急に連投される「プリミティブ」にニヤリとし、日下部カップルの会話にうんざり

著者にしてやられた満足感
これはもう全作品読まないといけない作家だわ

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2025年11月28日

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これは私のことか!?と思いました。無性に私小説を書きたくなりました。激おすすめ。孤独感や劣等感、友達づくりに悩んだり、周りに壁を作りがちな人に読んでほしいです。悩むなら、とにかく読め、読めーー!!

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2025年11月06日

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19歳で友達も居らず女の子にもモテない、仕事も低賃金で過酷。一見大変そうだし大変なんだろうけどそういう環境でしか得られない価値観はそういう環境でしか得られないんだろうな。キラキラしてる側は自分がキラキラしてることに気づけないんだろうな。

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2025年11月06日

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なるほど。名が知られる人にはそれ相応の理由がある。
これほど味の濃い作品は本当に読んだ事がない。においがきつく、味が濃い。

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2025年09月18日

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10年ぶり3回目。
石原慎太郎の解説がサイコーだぜ

収録されている『落ちぶれて袖に涙のふりかかる』こそ白眉
この作品は著者自身の思い入れが強く、これ以降を自身の創作の第二期ととらえ、作風も変わっているとのこと。表題作にしたかったが、苦役列車が芥川賞をとったため急遽で同時収録にあいなったとされている(やまいだれの歌、あとがきより)

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2025年09月06日

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スマホもSNSもない、しかし現代的な社会は完成しつつある時代の底辺から、人間存在の核心的一部分を捉えるような作品だと思った。嫌らしさや卑しさ、粗雑さ、体液と埃に塗れた汚らしさとともに描かれる主人公の尊大さは情けなく居た堪れないが、不思議なエネルギーがあり、それが難読漢字や古臭い表現を取り入れた文章とともに迫ってくる。

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2026年03月27日

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 著者が芥川賞受賞後に連載を開始した「一私小説書きの日乗」が「本の雑誌」で連載されるようになった時、初めて著者の文章に触れました。そして、今この時代にこんな無頼な作家がいることに驚くとともに、なんだか嬉しくなりました。
 その彼が急逝した時、さもありなんと思ったのはその通りです。苦役列車の主人公、北町貫多は多分そうなるはずの生き方をしています。劣等感に苛まれ、人間関係もうまく作れず、日雇い仕事の日給は酒とタバコと風俗に消費され、月1万円の家賃さえも毎度毎度踏み倒して、最後は母親に無心する、というより強奪していきます。

 私小説ですが、昭和の時代までの青年たちは、多かれ少なかれ北町貫多のような感情に支配され、あるいはその感性、感情に対してシンパシーを持っていたはずです。私もそうです(Z世代などではどうなのかわかりませんが)。青年時代を思い出し、思い返しました。

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2026年02月17日

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とんでもねえゴミカスだと思ったらまさかの私小説とは…
描写も細かく、繊細な文体と難しい単語が目立つ。
それであって喋りとのギャップがまた面白い。
あまりにも底の底すぎるが、
自分もまたこうなる可能性があったと思うと、
戦後日本の平和を享受できるのも、
限られた人間にのみ許されたもので、
全ての人間がそうではないんだと思わされたり。

性格があまりにも自分の暗い部分に似ていた。
こういう側面って誰にでもあって、
環境によってそれが主になってしまう、
ということもあるのだと思う。

しかしあっこから小説家になるとは…
いやはや何が起こるか人生とは分かったもんじゃあないな。

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2026年02月16日

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私小説。正直にいうと私小説というものがわからない。最初に随筆のように読んでしまって、違うなと気づいた。自身の体験や感情をもとに書いているのだろうけど、客観視してるというか分裂してる視線を感じる。
主人公のように、劣等感に振り回され感情にまかせその時のみを生きているだけなら、この文章は書けないんだろう。シニカルなユーモアや主人公の愛嬌を巧みにふりかけていて、上手いなぁと思う。
ご本人はどんな人だったんだろうか。興味がでて、会ってみたかったと思った。

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2026年02月15日

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退廃した自分を書いた私小説。これだけの文章が書けるのだから、元々頭の良い人で子供のころの環境が悪かったから、自堕落になってしまったのだろうな。

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2026年02月07日

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ネタバレ

西村氏の私小説的作品。貫多が自己投影のキャラクターであるからか、語り部が一人称的にも三人称的にも映る。それ故に、貫多のクズっぷりを内省的にフォローする形で話が進むので助かる。
途中で出会う同い年の専門学生、日下部と親しくなるものの、徐々に貫多と"普通"の同級生とのズレが顕著に表れて虚しい。家庭環境から翻って日常生活、人や金の豊かさ、それ故の距離感や怜悧さの違いがもたらす羨望が卑屈さに変わり、相手を侮蔑することでプライドを保つ虚しさと成長の無さは共感性羞恥をもたらす。ただ、厭世的な雰囲気はあるものの、悲愴感こそ感じさせない主人公である貫多のメンタルもあって、読むのが苦痛になることは無い。

後半の「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」では、同人誌『不同調』で藤澤清造を批判する堀木克三について、非難と憐憫を持ち合わせた所感が記されていて、半分エッセイのような仕上がりになっている。

藤澤清造以前にも読書を嗜んでいたのか、語彙が豊かで難しい表現を用いる貫多の発言から伺え、作家の名も挙げられることから、この時から文学への興味は持ち合わせていたのだろうと推測できる。
やはり、勉強は大事。交友は大事である。
それ以外、人足に始まり人足に終わる、何も変化のない淡々とした物語であった。

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2026年01月06日

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私小説とは自身をピエロに仕立て小説として売るものだろう。そこに虚飾があってもよいが、コンプレックスも何もかも丸出しにして人間の底の底が描けていなければ、丸裸の人間がここにいると思われなければ、読者の共感は得られない。よく「どんな人にも一冊は小説が書ける」と言われるが、それはそれで厳しい話だ。
ほぼ実録私小説のように読める本書は、まず父親の犯した性犯罪が学歴や怠惰な性格といった主人公(著者)の劣等感の根本的出どころとして描かれる。これは本人には責任がなく世の中の不条理ではあるのだが、そこに反発はあるにせよ概ね世間目線を受け入れる代わりに、怠惰で無軌道な自己を社会に当てつけているフシがある。これがこの小説の世間とのやり取りの形であり、綺麗事の世界からこぼれ落ちるものを捉えている。

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2026年01月04日

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物語の主人公である北町貫多は、自分よがりで、見栄っ張りと決して褒められるよう人ではない。
物語を読み進める中で、貫多までは思わないまでも、すごく気持ちがわかる。それは人間という生物が必然的に思うことなのだと思う。
誰だってみにくい感情はある。それを表に出さない、出せないだけで。この小説は、作者が心情に正直に書いているおかげで、透明感が半端じゃない。
人には言えないようなみじめな感情に対して、みんな思うことなんだよと言ってくれる。それだけで救われるものだと強く感じた。
ダメなところもある自分のままで、堂々と生きようと思えた作品だった。

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2026年01月03日

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父親の犯罪から歪んでしまった主人公・貫多が中学卒業後、肉体労働を経て日々を過ごしていく。

この小説は私小説、つまり西村さんの人生なわけだが、鬱屈とした性格?やグレていた頃、肉体労働の経験、自己責任とはいえ人生がどうにも崩壊していってしまう模様、そのどれもが私のことではないかと思い、読んでいるのが辛くなってしまった。

とはいえ、西村さんもとい貫多は実家がもともと裕福で金を無心しがちなクズである一面もあり、そこは腹が立った。私も中退して肉体労働をしていたので、この人生が『苦役列車』なんて言うなら、私はさらに悲惨であろう。

このことについては石原慎太郎も解説で触れていたが "どんな人生だって生きている限り『苦役列車』である。"

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2025年12月16日

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自身の存在意義を確立できていない人間にとっての、この社会での生きづらさや不安要素、感情の動きが事細かに表現されていて、いい意味で不快感がすごかった。だけども実際そんな人間が考える妬み嫉み他責は、全部自信の無さから派生している感情だろうから目に見える実績を求めるのだろうな〜という思考回路がよく分かるお話だった。
私自身にも重なる部分が多々あって耳が痛いような気分になりました。ここまで赤裸々に人間臭さを表現してくれるなんて、仲間を見つけたようでなんだか嬉しい。それでも何もしなくても居心地のいいところなんて大体成長がないんだから長居するのは良くないね。

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2025年11月30日

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YouTubeを見ていて、売れない若手芸人がこの本を好きでずっと読んでいたというのを聞いたので。

自分とは真逆の人間です、この主人公は!だから感想としては、不器用だな〜この人、もっとこうすればいいのに。である。だけど、これも人間だし、ゼロイチじゃないから自分にも少なからずこういう部分はあったりして、それが誰しも多かれ少なかれ当てはまるんだろうな。だから読まれ続けるんだろうな。

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2025年11月27日

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正直自分は、これに共感することは無かったんだけれども、人間の鬱屈とした感情を包み隠さず、そして何故か活き活きと描かれていて、ページを捲る手が止まらなかった。

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2025年09月16日

Posted by ブクログ

著者の西村賢太の自伝的な私小説。
ストーリーに劇的な展開はないですが、描写が生々しく特に罵詈雑言に満ちた文体は印象的でした。

父親が性犯罪を犯し、それが原因で家庭は崩壊し人目を避けながら暮らさざるを得なくなり、この体験によって大きなコンプレックスを抱えることとなってしまった青年の物語。

日雇い労働で稼いだ金もその日のうちに酒や風俗で使い込んでしまう事も多く、家賃は当然のように滞納し、強制退去を命じられる、など破天荒で荒れた生活が罵詈雑言に満ちた独特の文体で描かれる。

「小説の出来事は9割以上が本当」らしく、主人公の泥臭い内面と破天荒な生活に圧倒される。
劇的な展開はほとんどないが、その生々しさとリアリティが胸に刺さる。

この生い立ちから芥川賞作家にまでなれたことには驚くばかり。

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2026年04月03日

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拗らせクズの話。
普段見ない難しい言葉や漢字使ってるのにすらすら読めたのは作者自身の経験を元にしたリアリティさと僻みや欲まみれのどうしようもない貫多に共感する部分があったからかも。
日下部の彼女に女紹介してもらおうとするくだりがカスすぎてオスすぎて笑えた。

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2026年03月28日

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第144回芥川賞受賞作。表題作と短編の二編を収めた作品集。

いずれも作者自身を色濃く反映した私小説であり、貧困や孤独といった現実の中で生きる人物の内面が赤裸々に描かれている。そこにあるのは美化された苦労ではなく、妬みや僻みといった感情を隠すことなくさらけ出す姿であり、その率直さが強く印象に残る。

一見すると閉塞的で救いのない状況にも思えるが、その中で描かれるのは、何も持たないがゆえの自由や、社会に縛られない生き方の一側面でもある。決して前向きとは言えないが、どこか突き抜けたような軽さも感じられた。

また、『芥川賞選考委員の乞食根性の老人』といった表現に象徴されるように、言いにくいことをあえて言ってしまう姿勢には、破天荒さと同時に一種の覚悟のようなものも感じられる。その危うさも含めて、この作品の魅力の一つだろう。

粗削りでありながらも強烈な個性を放つ作品であり、好き嫌いは分かれるが、一度読めば印象に残る一冊だった。今となっては、もう少し長くこの作家の作品を読みたかったと思わせる存在でもある。

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2026年03月18日

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ネタバレ

面白いか?と思って読んでいたら、私小説だったのかと驚いた。内容としては特段面白くはなかったが読みやすかった。

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2026年03月01日

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育った環境も、思考も性格も恵まれず、体たらくな生活を送る主人公。
読後に私小説だと知って少し驚いた。
人生の理不尽さというよりも、自分が悪いと分かっていながらどうにかする気も起きない主人公の性や、自己嫌悪、他人を妬み蔑むような人間の醜さが強く印象に残る。
普通に憧れるなら、それなりの努力をすればいいのに、それをせずに勝手に卑屈になっていくところが痛々しい。

そんな主人公が人間的な成長はなくとも小説家になれるのは、ある意味サクセスストーリーだと思った。

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2026年02月04日

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主人公の気持ちに共感までは持てなかったが、人間味ってこういうことなのかも。大なり小なり人間くずな部分もあるし、卑屈な部分もあると思ってる。どんな人生でも生きてる限り苦役列車なんだと思ってしまった。

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2026年01月05日

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そんなこと言うなよ、と思いながらも主人公の罵詈雑言を聞いていると、じぶんの”やっちまった”失言や行動を思い出す。

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2025年12月03日

Posted by ブクログ

ただただ貫太が最低で気持ちがいい。私小説と言っても、今まで読んできた太宰治屋三島由紀夫やドストエフスキーは、どれも文学少年のどこか上品な絶望を書き綴ったものだった。

それに対して西村賢太は上品の欠片もなく、ただただ下品。下品なのと裏腹に難しく古風な言葉使いが対照的でおもしろい。これも貫太の見栄っ張りで衒学的なところと合ってる気がする。開けっぴろげにしてくれてありがとうまたよもう

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2025年12月14日

Posted by ブクログ

どこまでいっても卑屈で逆に清々しい。
やはり人間どこか歪んだ部分、歪んだ思考はあるけどそれを隠して出来るだけ綺麗に見せようとするものだけど、こんなに卑屈さを隠さずにいると寧ろ卑屈さを貫くことに価値があるのではと思ってしまうほど。
貫多がどんなに卑しい人間だろうとやはり、文字が読める、書籍が買える、著者の感情を拾う感性、文章で表現できるという強みがあって良かったなと思った。

また本能的に気持ち悪く感じる描写がすごくリアルで読んでる途中で悪心がするほど。
異臭立ち込める私小説という印象でした。

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2025年09月06日

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