【感想・ネタバレ】苦役列車(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

劣等感とやり場のない怒りを溜め、埠頭の冷凍倉庫で日雇い仕事を続ける北町貫多、19歳。将来への希望もなく、厄介な自意識を抱えて生きる日々を、苦役の従事と見立てた貫多の明日は――。現代文学に私小説が逆襲を遂げた、第144回芥川賞受賞作。後年私小説家となった貫多の、無名作家たる諦観と八方破れの覚悟を描いた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を併録。(解説・石原慎太郎)

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Posted by ブクログ

父親が性犯罪者として捕まったことで、社会の底辺に転がり落ちてしまった男性の孤独と葛藤が荒々しく、生々しく、唯一無二の文体で描かれた私小説。

悲哀と渇望の描写が凄まじく、男性の体臭や酒臭さまで感じられる、この感覚ははじめて。

怖いもの見たさで、ほかの作品の全部読んでみたい。

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2026年02月15日

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『一私小説書きの日乗』がとてもよかったので手にとってみると、あまりにその延長線上にあるので驚いた。私小説とはそんなものなのかもしれないが、”貫太”と”賢太”の距離は想像以上に近かった。
『日乗』と相も変わらず、貫太の鬱屈とした日々がたんたんと綴られるだけではあるが、短編としての完成度の高さにこれまた驚かされた。私小説というからには順番に読まなければいけないのではと不安だったが、まったく問題なく、だらだらと続いていく人生のうちのほんの一場面をこんなにも上手く切り取れるものかと衝撃を受けた。またその構成もよく練られており、展開が気になるようなトピックを提示しておきつつ、最後にはそれに絡めたカタルシスがきちんと用意されているのが素晴らしかった。
石原慎太郎さんの愛のある解説もよかった。

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2025年12月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

はるか昔に単行本で読んだはずだが記憶に薄い
文庫本で再読

いや面白い
そして無限に読めてしまいそうな文章力
これほどハイスピードでページをめくれる体験は最近の読書では無かった

こんな作品を忘れるわけがないので単行本は記憶違いなのかもしれないと思った

長らく滞納している家賃支払いのため1日500円貯金、風俗のため1000円貯金は笑った

急に連投される「プリミティブ」にニヤリとし、日下部カップルの会話にうんざり

著者にしてやられた満足感
これはもう全作品読まないといけない作家だわ

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

これは私のことか!?と思いました。無性に私小説を書きたくなりました。激おすすめ。孤独感や劣等感、友達づくりに悩んだり、周りに壁を作りがちな人に読んでほしいです。悩むなら、とにかく読め、読めーー!!

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2025年11月06日

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19歳で友達も居らず女の子にもモテない、仕事も低賃金で過酷。一見大変そうだし大変なんだろうけどそういう環境でしか得られない価値観はそういう環境でしか得られないんだろうな。キラキラしてる側は自分がキラキラしてることに気づけないんだろうな。

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2025年11月06日

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なるほど。名が知られる人にはそれ相応の理由がある。
これほど味の濃い作品は本当に読んだ事がない。においがきつく、味が濃い。

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2025年09月18日

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10年ぶり3回目。
石原慎太郎の解説がサイコーだぜ

収録されている『落ちぶれて袖に涙のふりかかる』こそ白眉
この作品は著者自身の思い入れが強く、これ以降を自身の創作の第二期ととらえ、作風も変わっているとのこと。表題作にしたかったが、苦役列車が芥川賞をとったため急遽で同時収録にあいなったとされている(やまいだれの歌、あとがきより)

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2025年09月06日

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小説らしい非現実性よりもクズの私小説が好きだと改めて認識した。人間失格を初めて読んだ時のような感覚。面白いものでも読んで気分のいいものでもなく、自分の中の汚い部分が照射されたような気持ちになる小説。

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2025年08月06日

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私小説への印象を変えてくれた1冊です。

読む以前は、「私小説=不幸自慢」という印象がやはり少しばかりありました。
ですが本作品は、恥辱や怨望のような人間誰しもが抱いてしまう上に、他者には中々吐露しにくい心情を正直に・誠実に描くことで、このような感情をある種の美しさにまで昇華することを実現していると感じます。
これを可能にしたのは、作者自身が身をもって苦難を体験していたことに由来しているのではないでしょうか。それによって、石原慎太郎さんが仰っていたような、「現代の作品にはあまりみられない作家の心身性やリアリティ」を孕むことに成功しているのだと思います。

また、少々くどい文体も、それ自体が主人公の精神性(暴力的だが繊細・短絡的だが回りくどい)を表しているように思えます。難読な漢字等についても同様で、もちろん時代によるものもあるとは思いますが、主人公自身が自身の豊富な語彙を持つことを他者に対する優越感として抱いていることを表現しているようにも感じました。

総じて、私小説という形式だからこそ描くことが出来た醜くも美しい物語という感想を抱き、このジャンルに対する理解が少し深まったと感じました。

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2025年03月09日

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とんでもねえゴミカスだと思ったらまさかの私小説とは…
描写も細かく、繊細な文体と難しい単語が目立つ。
それであって喋りとのギャップがまた面白い。
あまりにも底の底すぎるが、
自分もまたこうなる可能性があったと思うと、
戦後日本の平和を享受できるのも、
限られた人間にのみ許されたもので、
全ての人間がそうではないんだと思わされたり。

性格があまりにも自分の暗い部分に似ていた。
こういう側面って誰にでもあって、
環境によってそれが主になってしまう、
ということもあるのだと思う。

しかしあっこから小説家になるとは…
いやはや何が起こるか人生とは分かったもんじゃあないな。

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2026年02月16日

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私小説。正直にいうと私小説というものがわからない。最初に随筆のように読んでしまって、違うなと気づいた。自身の体験や感情をもとに書いているのだろうけど、客観視してるというか分裂してる視線を感じる。
主人公のように、劣等感に振り回され感情にまかせその時のみを生きているだけなら、この文章は書けないんだろう。シニカルなユーモアや主人公の愛嬌を巧みにふりかけていて、上手いなぁと思う。
ご本人はどんな人だったんだろうか。興味がでて、会ってみたかったと思った。

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2026年02月15日

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退廃した自分を書いた私小説。これだけの文章が書けるのだから、元々頭の良い人で子供のころの環境が悪かったから、自堕落になってしまったのだろうな。

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2026年02月07日

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ネタバレ

西村氏の私小説的作品。貫多が自己投影のキャラクターであるからか、語り部が一人称的にも三人称的にも映る。それ故に、貫多のクズっぷりを内省的にフォローする形で話が進むので助かる。
途中で出会う同い年の専門学生、日下部と親しくなるものの、徐々に貫多と"普通"の同級生とのズレが顕著に表れて虚しい。家庭環境から翻って日常生活、人や金の豊かさ、それ故の距離感や怜悧さの違いがもたらす羨望が卑屈さに変わり、相手を侮蔑することでプライドを保つ虚しさと成長の無さは共感性羞恥をもたらす。ただ、厭世的な雰囲気はあるものの、悲愴感こそ感じさせない主人公である貫多のメンタルもあって、読むのが苦痛になることは無い。

後半の「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」では、同人誌『不同調』で藤澤清造を批判する堀木克三について、非難と憐憫を持ち合わせた所感が記されていて、半分エッセイのような仕上がりになっている。

藤澤清造以前にも読書を嗜んでいたのか、語彙が豊かで難しい表現を用いる貫多の発言から伺え、作家の名も挙げられることから、この時から文学への興味は持ち合わせていたのだろうと推測できる。
やはり、勉強は大事。交友は大事である。
それ以外、人足に始まり人足に終わる、何も変化のない淡々とした物語であった。

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2026年01月06日

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私小説とは自身をピエロに仕立て小説として売るものだろう。そこに虚飾があってもよいが、コンプレックスも何もかも丸出しにして人間の底の底が描けていなければ、丸裸の人間がここにいると思われなければ、読者の共感は得られない。よく「どんな人にも一冊は小説が書ける」と言われるが、それはそれで厳しい話だ。
ほぼ実録私小説のように読める本書は、まず父親の犯した性犯罪が学歴や怠惰な性格といった主人公(著者)の劣等感の根本的出どころとして描かれる。これは本人には責任がなく世の中の不条理ではあるのだが、そこに反発はあるにせよ概ね世間目線を受け入れる代わりに、怠惰で無軌道な自己を社会に当てつけているフシがある。これがこの小説の世間とのやり取りの形であり、綺麗事の世界からこぼれ落ちるものを捉えている。

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2026年01月04日

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物語の主人公である北町貫多は、自分よがりで、見栄っ張りと決して褒められるよう人ではない。
物語を読み進める中で、貫多までは思わないまでも、すごく気持ちがわかる。それは人間という生物が必然的に思うことなのだと思う。
誰だってみにくい感情はある。それを表に出さない、出せないだけで。この小説は、作者が心情に正直に書いているおかげで、透明感が半端じゃない。
人には言えないようなみじめな感情に対して、みんな思うことなんだよと言ってくれる。それだけで救われるものだと強く感じた。
ダメなところもある自分のままで、堂々と生きようと思えた作品だった。

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2026年01月03日

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父親の犯罪から歪んでしまった主人公・貫多が中学卒業後、肉体労働を経て日々を過ごしていく。

この小説は私小説、つまり西村さんの人生なわけだが、鬱屈とした性格?やグレていた頃、肉体労働の経験、自己責任とはいえ人生がどうにも崩壊していってしまう模様、そのどれもが私のことではないかと思い、読んでいるのが辛くなってしまった。

とはいえ、西村さんもとい貫多は実家がもともと裕福で金を無心しがちなクズである一面もあり、そこは腹が立った。私も中退して肉体労働をしていたので、この人生が『苦役列車』なんて言うなら、私はさらに悲惨であろう。

このことについては石原慎太郎も解説で触れていたが "どんな人生だって生きている限り『苦役列車』である。"

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2025年12月16日

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自身の存在意義を確立できていない人間にとっての、この社会での生きづらさや不安要素、感情の動きが事細かに表現されていて、いい意味で不快感がすごかった。だけども実際そんな人間が考える妬み嫉み他責は、全部自信の無さから派生している感情だろうから目に見える実績を求めるのだろうな〜という思考回路がよく分かるお話だった。
私自身にも重なる部分が多々あって耳が痛いような気分になりました。ここまで赤裸々に人間臭さを表現してくれるなんて、仲間を見つけたようでなんだか嬉しい。それでも何もしなくても居心地のいいところなんて大体成長がないんだから長居するのは良くないね。

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2025年11月30日

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YouTubeを見ていて、売れない若手芸人がこの本を好きでずっと読んでいたというのを聞いたので。

自分とは真逆の人間です、この主人公は!だから感想としては、不器用だな〜この人、もっとこうすればいいのに。である。だけど、これも人間だし、ゼロイチじゃないから自分にも少なからずこういう部分はあったりして、それが誰しも多かれ少なかれ当てはまるんだろうな。だから読まれ続けるんだろうな。

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2025年11月27日

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正直自分は、これに共感することは無かったんだけれども、人間の鬱屈とした感情を包み隠さず、そして何故か活き活きと描かれていて、ページを捲る手が止まらなかった。

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2025年09月16日

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女々しく且つだらしない貫多の行動と洞察、思考に共感する所がある。具体的には貫多の他責思考で嫉妬深く自分本位な性格なところや、坊主憎けりゃ袈裟まで憎しで嫌いになった友人とその彼女までもを卑劣な目に合わせたくなるその攻撃的な衝動と言動。

それらは読者である自分にも見出せる共通点でもありつつも長らく蓋してきた醜悪な部分でもあり、ページをめくるごとに眼前に取り出して見せられ眺められているようだった。辱めを受けたかのような錯覚を受け、同時にその反応すら見られているような。そんな私小説の醍醐味を久しぶりに味わえた。

視点を変えると、私はここまで自分を曝け出すことはできるだろうかと考える。恐らくできない。

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2025年02月23日

Posted by ブクログ

育った環境も、思考も性格も恵まれず、体たらくな生活を送る主人公。
読後に私小説だと知って少し驚いた。
人生の理不尽さというよりも、自分が悪いと分かっていながらどうにかする気も起きない主人公の性や、自己嫌悪、他人を妬み蔑むような人間の醜さが強く印象に残る。
普通に憧れるなら、それなりの努力をすればいいのに、それをせずに勝手に卑屈になっていくところが痛々しい。

そんな主人公が人間的な成長はなくとも小説家になれるのは、ある意味サクセスストーリーだと思った。

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2026年02月04日

Posted by ブクログ

主人公の気持ちに共感までは持てなかったが、人間味ってこういうことなのかも。大なり小なり人間くずな部分もあるし、卑屈な部分もあると思ってる。どんな人生でも生きてる限り苦役列車なんだと思ってしまった。

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2026年01月05日

Posted by ブクログ

そんなこと言うなよ、と思いながらも主人公の罵詈雑言を聞いていると、じぶんの”やっちまった”失言や行動を思い出す。

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2025年12月03日

Posted by ブクログ

ただただ貫太が最低で気持ちがいい。私小説と言っても、今まで読んできた太宰治屋三島由紀夫やドストエフスキーは、どれも文学少年のどこか上品な絶望を書き綴ったものだった。

それに対して西村賢太は上品の欠片もなく、ただただ下品。下品なのと裏腹に難しく古風な言葉使いが対照的でおもしろい。これも貫太の見栄っ張りで衒学的なところと合ってる気がする。開けっぴろげにしてくれてありがとうまたよもう

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2025年09月18日

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どこまでいっても卑屈で逆に清々しい。
やはり人間どこか歪んだ部分、歪んだ思考はあるけどそれを隠して出来るだけ綺麗に見せようとするものだけど、こんなに卑屈さを隠さずにいると寧ろ卑屈さを貫くことに価値があるのではと思ってしまうほど。
貫多がどんなに卑しい人間だろうとやはり、文字が読める、書籍が買える、著者の感情を拾う感性、文章で表現できるという強みがあって良かったなと思った。

また本能的に気持ち悪く感じる描写がすごくリアルで読んでる途中で悪心がするほど。
異臭立ち込める私小説という印象でした。

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2025年09月06日

Posted by ブクログ

西村賢太の代表作にして、芥川賞受賞作。

北町貫多は、中学を卒業後、高校もいかずに実家を飛び出し、当面の生活費をまかなうために港湾での日雇い人足として働いていた。

日当5,500円で過酷な労働に勤しんでは、その金を安酒と安風俗に使い込んでしまう。
貫多は、そんな何も積み上がらない日常に危機感を持ちながら、自分の不運を嘆き、社会の不公平さを呪い、自らの自堕落さを嫌うのだが、相も変わらず同じ日常を繰り返すのだった。

そんなある日の港湾での勤務で、大学生の日下部に出会う。
日下部は貫多と同じ歳ながら、スポーツで鍛えた身体と端麗な容姿を持つ青年だった。
貫多は日下部に好意を寄せ、親交を深める。日下部は他に友達もいない貫太にとって、唯一の親しい親友になった。

日下部に感化され、貫多は真面目に働くようになり生活は好転し始める。
しかし、些細なことから日下部と口論になり、暴言を吐いてしまったために疎遠になる。また、港湾でも社員と揉め、出禁を言い渡される。

このような悲惨な状況になったところで第一部が終わる。
第二部『落ちぶれて袖に涙のふりかかる』では、中年になった貫多が売れない私小説作家として生計を立てている姿が描かれる。


以上があらすじ。

本作は私小説に分類される通り、作者西村賢太自身の経験を基に創作されている。

貫多は小学生の時に父親が性犯罪者となり、厭世的な性格と自暴自棄な考え方になってしまった。

短気で無愛想、無思慮で無遠慮、怠惰でありながら、周りの人を馬鹿にして生きている。
それ故に彼女もおらず、友人すらいない。
著者が同じ状況を体験していただけに、この描写にリアリティがあり、読み手に重いショックを与える。

本作の最大の魅力は、貫多が苦しみ、しかし強かに人生を生き抜いてゆく様を味わうことができる点にあるだろう。

貧困と孤独にあえぎながらも自尊心を持ち続け、最底辺で前向きに足掻いている。
この没落は決して我々と無関係ではない。可能性の程度はあれど、等しく起こり得ることであり、だから同情と興味を誘われるのだ。


巻末の石原慎太郎による解説が秀逸。

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2025年04月09日

Posted by ブクログ

卑屈を絵に描いたような男の話であるが、憎めないところもあり、どこかシンパシーも感じる。
この男が底辺から抜け出せない境遇は、自ら招いた所が大きいと思う。

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2025年03月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

劣等感に溺れた男の物語。
自己や他人を顧みず嫉妬や承認欲求を暴走させて周りに悪態をつき勝手に一人になっていく。
人間が誰もがもってる本性を包み隠さず曝け出して生きていく過程を生々しく書いた小説だった。

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2025年01月19日

Posted by ブクログ

汚いし、腹立つし、みっともないし…なんだけど、私の中にもある同じようなものが刺激される。
例えば日下部と美奈子に悪態をつく場面。私はそんな素直に言わないけど、結局頭の中ではいろんな人に悪態ついてる。口に出すか出さないかは大きな違いかも知れないけど、結局同じ。本を読んでそれに気づいちゃって苦い気分を味わった。

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2025年01月17日

Posted by ブクログ

人生で初めて読みました"私小説"。
意外と面白いジャンルですね!
その人の生きてきた道程や経験などが知れます。

作者の西村先生がどんな人間だったのか?
"素直さ"と"正直さ"どちらも似た意味かもしれないが
嘘を付いてない所と捻くれてない所と表そうか(笑)
文章で殴り書きされているので、なんか新鮮だった。
フィクションを交えてるのかなぁ~?
俺には全て事実にしか見えなかったです(笑)

僕的には、すっごい捻くれてるなぁ~って
感じがしました(笑)
読んでいて笑えましたし、なんか憎めないというか
近くにいたら「まぁまぁ」と宥める自分が想像できたり
だらしない男を見て、「おもろいなぁコイツ」って
思ってしまったかもしれないです。

解説で石原慎太郎が書いていたが
「どんな人間でも密かに悪行を夢見る」
これは誰しも考えた事はあるかもと思った。
遠回しに芥川賞に必要な要素も伝えてる様に見えた。
フィクションだけじゃつまらんみたいな(笑)

あまり女性にはお勧めできないな。
だらしない男の典型的な要素が詰まりつまっている。
でも、その人の人生を知るのは面白いから勧めたい。

あと漢字が難しかったなぁ。
畢竟とか煩瑣とか購めるとか(笑)
何回もSafariで調べて読んだ、勉強になりました。

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2024年12月26日

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