【感想・ネタバレ】苦役列車(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

劣等感とやり場のない怒りを溜め、埠頭の冷凍倉庫で日雇い仕事を続ける北町貫多、19歳。将来への希望もなく、厄介な自意識を抱えて生きる日々を、苦役の従事と見立てた貫多の明日は――。現代文学に私小説が逆襲を遂げた、第144回芥川賞受賞作。後年私小説家となった貫多の、無名作家たる諦観と八方破れの覚悟を描いた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を併録。(解説・石原慎太郎)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

はるか昔に単行本で読んだはずだが記憶に薄い
文庫本で再読

いや面白い
そして無限に読めてしまいそうな文章力
これほどハイスピードでページをめくれる体験は最近の読書では無かった

こんな作品を忘れるわけがないので単行本は記憶違いなのかもしれないと思った

長らく滞納している家賃支払いのため1日500円貯金、風俗のため1000円貯金は笑った

急に連投される「プリミティブ」にニヤリとし、日下部カップルの会話にうんざり

著者にしてやられた満足感
これはもう全作品読まないといけない作家だわ

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

西村賢太作の私小説。芥川賞受賞作。
屈折した作家がその内面を自らの筆致で曝け出す私小説がとても好き。その人が本当に思っていることが体面を抜きに伝わる形式の娯楽は、人の言葉から不要な意味を受け取ってしまうことが多い自分にとってはとても安心して享受することができる。
自分がラジオやエッセイが好きなのもこの理由によると思う。
『苦役列車』の貫多はとにかく情けなく、コンプレックスに押し潰されて性欲を持て余す19歳の青年。p.98で日下部の彼女がブスだという描写に半ページくらい費やしているところが好き。執拗すぎる。居酒屋での会話から日下部はすでに彼女を顔ではなく内面で選ぶことができているのがわかるが、貫多はその感覚が全くピンと来ていなそうだった。日下部は高校の時普通に可愛い彼女と普通に恋愛していて、次のフェーズに進んでいるんだろうが、貫多はそれを伺い知ることすらできない。
p.108の、『差し当たり今の自分の日下部に対するスタンスを定める為に』日下部を野球観戦に誘うシーンも凄い。この説明リアルすぎる。まだ日下部に対する情はわずかに残っていたのに、丁寧に関係を修復していく気概もなければやりかたもわからずただ自傷的に関係を壊していくようすを、こんなに端的に表せるのがすごい。人に対するスタンスを定める、っていう感覚はもうヤンキーなんだけど、生来臆病な性格だからこういう書き方になるんだろうなと思う。
ことあるごとに「根は〇〇であるから、」という表現が挟まるのが面白かった。貫多が生まれついて頭が悪く、倫理観が低く、他者を理解し敬う心が欠けていることを強調する表現だとは思うが、著者も著者でちょっと性格を環境ではなく生来のものだと考えすぎだと思う。

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2024年08月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

個人的には読み終えてとても安心するような感じだった。

やはりかのような不慮の事態に陥るより先に、不覚の死に恥晒かすより先に、いっそ先手を打って自らの意思で自分に始末をつけてしまうのが結局は為だと、

と上記の文章にはとても共感できる気持ちになるのでした。

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2024年08月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

⚫︎感想
私小説らしきものはあまり読んだことが無かったため、身に迫るものがあった。貫多の父は連続強姦犯として、彼が小学生のときに捕まった。可能性として誰もが被害者、加害者、またそれぞれの家族になり得る。そんな危うさをしみじみと考えるきっかけとなった一冊。

⚫︎あらすじ
劣等感とやり場のない怒りを溜め、埠頭の冷凍倉庫で日雇い仕事を続ける北町貫多、19歳。将来への希望もなく、厄介な自意識を抱えて生きる日々を、苦役の従事と見立てた貫多の明日は――。現代文学に私小説が逆襲を遂げた、第144回芥川賞受賞作。後年私小説家となった貫多の、無名作家たる諦観と八方破れの覚悟を描いた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を併録。解説・石原慎太郎。

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2024年08月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

劣等感に溺れた男の物語。
自己や他人を顧みず嫉妬や承認欲求を暴走させて周りに悪態をつき勝手に一人になっていく。
人間が誰もがもってる本性を包み隠さず曝け出して生きていく過程を生々しく書いた小説だった。

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2025年01月19日

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