あらすじ
婚約者・坂庭真実が姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。「恋愛だけでなく生きていくうえでのあらゆる悩みに答えてくれる物語」と読者から圧倒的な支持を得た作品が遂に文庫化。《解説・朝井リョウ》
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「人生で一番刺さった小説」との声、続出! 恋愛だけではなく、生きていく上でのさまざまな痛み、あらゆる悩みに答えてくれる物語。
主人公・西沢架は、いつも通り帰宅した自宅に、同棲中で家にいるはずの婚約者・坂庭真実がいないことに気付く。突如失踪した真実の手がかりを探すべく、架は真実の過去と向き合うこととなる。浮かび上がる現代社会の生きづらさと、徐々に明かされていく失踪の理由からは目が離せない。
本作の見どころは、なんと言っても描写の細やかさです。作家の朝井リョウさんによる巻末の解説の中でも触れられているように、この作品では「何か」「誰か」を選ぶときに私たちに起こっていることを主題としています。"選ぶ"という行為の中でどういったことが起きているのかを細部まで描写することで、私たち読者の心に何かしらひっかかるものを与えてくれます。
もちろんすべての人におすすめですが、人間を傲慢と善良の2種類に分けたとして、自分はどちらかというと善良側の人間だという人にこそ是非読んでいただきたい1冊です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ヒト・男女のオモテとウラについて、感情が溢れんばかりに考えさせられました。自分自身に思い当たること、あの人この人など周りの多くの人たちの立ち位置や考えを重ねることができて、ちょっと怖いくらいでした笑
相手の感情をストレートに受けていい場合とひとひねり考えてあげなければいけない。これから、人と接する時の学びになりました。
Posted by ブクログ
善良な人を拒否することが傲慢なるのなら、
自分の気持ちに正直になる事は傲慢なのか。
読み始めてから靄がかかったような気持ちだった。善良とは。傲慢は。
善良も傲慢も全ての人がもっている
その両方共、結局は他人の評価にすぎない
自分の人生を自分で決める。
沢山の言葉や感情が心を揺さぶるけど
最後は自分で決めて進みたい
そんな気持ちになった作品でした。
Posted by ブクログ
女性が【ワカル】となる場面がとても多い作品だと感じました。女性特有の暗黙の了解や空気感がひしひしと伝わってきます。
親の過保護+田舎であることで新しい価値観が取り入れられない環境なのかなと思いました。
率直に【いい子ちゃんな女性】と【考えない男性】
Posted by ブクログ
『自己評価は低いのに自己愛は強い』は相反するものだと思っていたがその価値観が覆された。
真実は親が決めたレールの上を歩いてきたから″不正解″は選んでこなかった。
自己評価が低いのは自分で選択してこなかったから。なのに自己愛が強いのは不正解を選んでない時点で自分を嫌いになるものには出会わなかったから。
ピンとこなかった、は無自覚に相手の価値が自分の価値に見合うのかを考えてしまった結果だ。とわかって納得した。
Posted by ブクログ
久しぶりに面白い本を読んだ!と思える内容だった。
長年の婚活経験者にはとても刺さる内容。
真実が出会って残念と評価した男性のような人達には、自分もたくさん出会ってきたが、こんな具体的に相手の性格やバックグラウンドを分析することもなく「ああ今回も違ったな」で済ませてきたので、「なんか違う」の理由が明確になってスッキリしたところがある。
ボランティアに行くくだりはなんか違う話のようにも思えるが、そこでこれまで真実を囲ってきた殻のようなものが壊れていくところは読んできて気持ちが良い。
二人には幸せになったらいいな、と思うが、現実には70%と思っていた相手が逃げ出してしまったら自分だったらもうそれきりだと思ってさっさと次に行くかな。
男性は女性よりもタイムリミットの概念が薄いのか分からないけど、式場キャンセルもせずずっと待ち続けるなんて、相当好きな相手でなければありえないよなーとは思う。
Posted by ブクログ
読み応えのある本だった。失踪した真実を探すなかで、どんどんと話が展開していく。それぞれの立場の考えや当たり前がぶつかって、何度もハッとさせられた。美奈子達が真実にストーカーの話をする場面は、架視点と真実視点であんなにも読み手の感じ方が変わってしまうのかと衝撃的だった。真実視点を読んでいる時、美奈子に怒りを感じてしまった。
自分には、坂庭家や美奈子達をおかしいと思う感覚がある。それは当たり前だと思って居た。でも、違うように感じる人もいる。自分の価値観は、誰かにとっては偏っているんだということを知れた。無知の知だった。正直、傲慢さを持つことはダメなことだと、善良な人が良いのだとずっと思ってきた。きっと、傲慢さも善良さも程々が1番いいんだと思う。価値観の外にいる人と出会った時、その人が大切な人やその家族だった時、私はどう感じるのだろうか。そういう人もいるんだと鈍感になれるのか、攻撃するのか、拒絶するのか…。どれが良いのかの正解はない。誰かしらが傷ついてしまうのだろう。
この本に出会える人生でよかった。大袈裟かも知れないが、少しだけ自分の生き方が変わると思う。
【解説を読んで】
読んでいて感じた自分自身を見つめ直す感じを、浅井りょうさんは、「自己の内面を見つめさせられる。部分の中にある無自覚の傲慢さを探らされる。」と表していた。
なるほど。私は、読みながらうんうんと感心したり、うわぁっと恥ずかしくなったりする事こそが、無自覚の傲慢さを感じていた作業だったのか。傲慢さは程々だって思っていた自分が恥ずかしくなるが。
Posted by ブクログ
架の女友達の女特有の怖さがリアルすぎて心臓がバクバクしました笑
本作のタイトルである『傲慢と善良』。
読めば読むほどその意味が分かってきて、自分にも当てはまっているのではないなと改めることもできる作品でした。
「ピンとくる、こないの感覚は、相手を鏡のようにして見る、皆さんご自身の自己評価額なんです。」
この言葉にはゾッとするような感覚さえ覚えるほどにグサリと自分自身に刺さりました。
自己肯定感は低いのに自己愛は強い。まさしく自分だなーと思いました。
新しい価値観に出会えた本でした。
読んで本当によかったです!
Posted by ブクログ
一気読み。ストーカーは誰なのか。まさかの展開に唖然としながらも、自分に重なる部分が多々あって、ちょっと辛い気持ちになったり。売れ残りのワゴンセールか。なるほどその通り(笑)親の気持ち、真実の気持ち、架の気持ち。みんなそれぞれの立場で勝手な事を思う。側から俯瞰して見れば、皆んな勝手だなと思うけど、自分だって勝手、傲慢だったんだな。
Posted by ブクログ
面白くてスラスラ読めた。自分の感じたことのある感情が言語化されている。善良でいたい自分と、時々傲慢な行動をとっている自分がいるから行動を見直すきっかけとなった。自分の人生なのに親に決められたレールの上を歩んでいくのはしんどいなあと思う。
Posted by ブクログ
緻密な心理描写・心理分析が素晴らしい。
人の「自己愛ゆえの傲慢さ」「世間知らずな善良さ」を暴く物語だが、自分にも心当たりがありすぎる。
容赦無く深掘り言語化する。
「あなたは傲慢ではないですか?」
「世間知らずではないですか?」
「自分の意思がありますか?」
検察官に詰問される犯人のように、読者をたじろがせる程だ。
それと同時に、傲慢でも、善良でも、いいじゃないか、と思った。
傲慢で当然だ。
この先の長い人生、半世紀以上一緒にいるかもしれない相手を吟味して何が悪い。
覚悟が決まるタイミングも人によって様々だ、何が悪い。
自分に嘘をつき、生半可な覚悟で、体裁だけ整える人よりよっぽど正直で良いだろう。
明確なビジョンを持てない、いや、持たない事は、この流動的で不明確な現代に於いては当然じゃないか。
善良で、無知で、結構だ。
この宇宙の全てを理解する事など不可能だ。いつまでも無知な良い子ちゃんで居て何が悪い。
責められるべきは、狡猾さがないと生きていけない社会の方じゃないのか。
飄々と生きる嘘つきの方がよっぽど罪深いだろう。
ああ、恋愛ミステリーの傑作と言われるのも納得。
本当に面白かった。
着想元であるジェインオースティンの「高慢と偏見」も読んでみたい。
匿名
いろんな形がある
自分も真実と同世代なので共感できるところがたくさんあった。女友達の意地悪さは胸糞だけどこういう人いる〜と思った。最後はグッときた。
傲慢と善良、誰しもが抱いているものだと思う。 婚活アプリやマッチングアプリは今や使っている人が多くなっているもの。自分がいざ使うことになった時、この人たちと同じような感覚に陥るような気がした。
なるほど
考えさせられる本でした。新しい視点を感じました。物語の中盤で「え?」となりましたが、最初から予想出来た人はいるのでしょうか、、、、!さすが辻村先生、、、、!
同じ事象を見る面からで異なることを思い知らせ、小説というより哲学書のように感じる面がある作品です。でも、辻村深月です。一気に引き込まれ、最後まで一晩で読みました。良かった!
人への深い分析が刺さる
恋愛小説だと思って、軽い気持ちで読み始めました。しかし、その中身は何とも深く人間心理を描いたミステリー。自分にも思い当たるなんとなく感じていたことや、していた行動がかなり解像度高く言語化されており、自分自身を見つめ直すきっかけとなりました。
辻村さんの小説を他にも読んでみたくなりました。
突然号泣しました
石母田のおばあちゃんの「あんだら、大恋愛なんだな」に突然どばっと涙が込み上げました。渦中にいる人同士はわからんけど、確かにそうだと。
そして最初は架が主導権を取っていたようなこの恋愛が最後は真実の方がどちらかといえば主体になっていて、ちゃんと対等に立てているのが羨ましいような気持ちになり、こんなお似合いの夫婦はないだろうと、心から2人を祝福したくなりました。
この先の人生、子供や親戚、友人付き合い、いろんな事が起きてもきっと、自分たち夫婦の軸を大事にして生きていけるのだろうと思えました。
架も真実も最高のタイミングで出会いをして、偶然を積み重ね、そして真実の嘘も失踪も2人の恋愛には必要なイベントだったのだと思います。
この夫婦も10年後には同じように思うのではないかと思います。架も真実も恋愛だけでなく人として成長した。自分というものを見つめ直せた、こんな最愛の相手はいないだろうと。
架は、婚活に疲れ果ててまたゼロから探すのが億劫だったから別の相手を探さなかったわけではなく真実がよかったんですよね?
彼女の本当の姿の中に自分がひかれるもの、見えたもの、そしてそれらを丸ごと愛する思いが芽生えたから、彼女を好きだと言ったんですよね?
そこだけもう一度読み直してみたいと思います。
選ぶという事は、自分に見合うかどうか価値をつけている、やたら自分の評価だけは高い、など人が普段隠しているもしくは無意識にやっているような、心の深いところまで掘り下げた、剥き出しに描写したすごい作品だなぁと感じました。
泣いた
私は真実に近いなぁ、すごく似ているなぁ、もしかしたら真実って私のことなんじゃないの?と思い、真実に感情移入しながら、私自信のこれまでの、いろいろうまくいかなかった人生と重ね合わせながら読んでいきました。というより、そうせざるを得ないような、内面をえぐり出される内容でした。架のような、女友だちも多い彼氏がいたことが私にもあり、もやもや、鬱々としながら、おそらく結婚してもうまくいかないであろうと思い、お別れした経験があります。
思い出したくもないような、自分が不器用が故の失敗や恥ずかしかったこと等を思い出しながら、真実と自分を重ね合わせながら読み進め、泣きすぎて瞼が腫れています。
めちゃくちゃ心に刺さる一冊でした。
匿名
著者との対話が楽しい
この著作の最大の魅力は、著者の人間分析の深さであろうと思います。その複雑微妙なところの言語化において、著者の視点による考えが成功しており、我々読者との対話も深まる満足感が大きいと思います。
Posted by ブクログ
比喩とかではなくて、読んでいて本当に胸が痛くなった。感想を書いている今も物理的に胸が痛い。
ストレスか??あまりにもグサグサと読者を抉ってくるその切れ味にまんまとやられてしまったのかもしれない。
架にも真美にも両親にも友達にも終始イライラしっぱなしだったけど、現実にもいるよねこういう人たち。
というか、作中でも語りかけてきたけど、明確な自分の意思を持って、自分の選択と行動に責任をもって主体的に選び取れる人って、多分かなり少数。
学校の宿題みたいに期日が決まっているわけでもなく、なんなら宿題をやらない選択だってできるのだから、自分の人生がぼやっとした抽象的なものになって、気づいたら時間だけが経ってたなんて人は本当にたくさんいると思う。大人って、自由って、楽しいけど、素晴らしいけど、残酷だな。
このタイミングでこの本に出会えて良かった。
少し早かったり遅かったりしたら、多分違う見方や感想になってたと思う。これも巡り合わせだと感じた。
Posted by ブクログ
すごい!こんなに自分の内面を見透かされた感じがする小説は初めてかも。これを読んで自分のことを言われているようでヒヤヒヤする人多いだろうな。辻村深月は天才だわ。
Posted by ブクログ
普通のミステリーやと思って読み進めてたら全然違った。自分が婚活してる身やから色んな言葉がグサグサ突き刺さる。特に小野里さんのセリフ、「ピンと来ないの正体は、その人が自分につけている値段です。」にグサグサきたわ。。。自分に言われてる感じがした。でも真美がボランティアに行ってそこで出会うひとたちとの交流で、真美が少しずつ変わっていくところはすごく温かい気持ちになった!最初から最後まで心理描写が深すぎたし、傲慢と善良さについてめちゃめちゃ考えさせられた。
Posted by ブクログ
身近にゴロゴロある話をよくぞこんなに解像度高く表せるなと感嘆
謙虚と自己愛の強さの両立の発見、という解説にも膝を打った
文字情報的に、「まみ」と「しんじつ」が混乱した....
Posted by ブクログ
「ピンとこない、の正体は、その人が、自分につけている値段」
この本を通して、人が何かを選択するとき、無意識に自分と釣り合っているかを比べてしまっている。自分は好きで選んだはずなのに、選ばされていなかったか‥それは社会なのか、親なのか、友達なのか。
これから自分は選択する度にこの本を思い返して、本当に好きなのか、自分が決めたのかを意識しながら生きていくことになると感じた作品
Posted by ブクログ
男ってバカだなって感じ。
第一部の終わりに架の友達が言い出すまで全然嘘という可能性を考えてなかった。
第二部の始まり方も視点が変わってて面白い。
真実や架の心理描写とか解像度が高すぎて衝撃的。
歳を重ねるごとに自然な恋愛なんて無くなってくるし、ワゴンセールなんて表現はまさにって感じがした。
作者の表現力に度肝抜かれた作品。
Posted by ブクログ
私はよく結婚はノリだと言うけれど、それだけでいいわけないんだ。勢いや思い切りが必要だという意味では間違いなく正しいけれど、結局誰だって怖い。自分の人生その先数十年が決まる決断をするなんて、怖いに決まってる。そしてそこにその人の経験や価値観が反映されるのだって、至極当然。そうか、昨日のしおんも、そういう話をしていたのか。
真実ちゃんについては、私は沢山思うところがあった。絶対に友達にならないタイプ(なんなら向こうから怖がられる)だからこそ、こういう人たちが何をどう考えているのかに気付かされたよね。未婚かつなんだかそれに適していなさそうなのに願望は強くて、でもそのギャップにちゃんと自覚のある主人公珍しいなあと思ってたけど、私がそういう立場を理解しようとしてこなかっただけなのかもしれないと今ふと思った。
結局は自分で正解にするしかないと思うよ。そのために沢山向き合って考えたいなと思いました。
Posted by ブクログ
ストーカー被害というハラハラとする冒頭から始まり引き込まれた。
婚活で出会った男女のストーリー。
自身も恋人を作らなきゃと相手と向き合っていた際、こんな風に判断したり他者からの評価が気になったりしていたことがあったなと思い出した。
ある程度人を見てきた現代の婚活市場はこんな考え方の人(自分では気づいていないが自身への評価が高い=傲慢さがあるため妥協できない)が多いんだろうなと。
本の中でもタイトルの傲慢と善良という言葉がよく使われていた印象。
Posted by ブクログ
傲慢と善良というタイトルが秀逸です。
震災後の東北でのボランティアという究極の環境に身を置いて初めて自分を見つめ直すことができたというのはやや過剰な後押しに感じますが、それまでの人の心を容赦なく抉る描写の生々しさがショッキングでした。
ハッピーエンドにならなくても良かったのに。
Posted by ブクログ
前半はアラサー恋愛あるあるだなぁとしか思わなかったが、後半にかけてはかなり揺さぶられるというか、読みながら湧いてくる自分の負の感情と向き合うような読書体験だった
Posted by ブクログ
『傲慢と善良』を読み終えたあと、しばらく何も考えられなかった。これは失踪ミステリーでも恋愛小説でもなく、「人がどれほど簡単に、そして無自覚に、他人を誤解して生きているか」を突きつけてくる物語だったからだと思う。
前半を西澤の視点で読んでいると、どうしても真実に腹が立つ。結婚を決めたのに、突然いなくなる。連絡もない。普通に考えたら「無責任」「身勝手」「逃げ」だ。西澤が必死に彼女を探し、真実の実家を訪れ、過干渉で息苦しい両親を目の当たりにしても、なお「だからといって消えるのは違うだろ」と思ってしまう。このあたりの読書体験はかなり鋭くて、読む側の感情を意図的に西澤側へ引き寄せてくる。
ところが物語が真実の視点に切り替わった瞬間、その読み方がひっくり返る。
親の言いなりに見えていた彼女が、実はずっと「自分の人生を自分のものとして生きたい」と思っていたこと。善良であろうとしすぎて、自分の本音を後回しにし続けてきたこと。誰にも嫌われないように振る舞ううちに、いつの間にか自分がどこにいるのか分からなくなっていたこと。
「逃げた」のではなく、「自分を守るために離れた」のだと分かったとき、さっきまで感じていた怒りが、すっと別の感情に変わる。この切り替えの鋭さこそが、この小説が多くの人の心をえぐる理由だと思う。
この物語が描いているのは、他人から見える自分と、自分が感じている自分のあいだにある深い溝だ。
西澤から見た真実、親から見た真実、そして真実自身が感じていた自分。そのどれもが“ある意味では正しく”、同時に“決定的にズレている”。
誰かを思いやっているつもりで、実はその人を「こうあるべき姿」に押し込めてしまう。善良であろうとするほど、相手の声を聞かなくなってしまう。この小説が怖いのは、そこに悪者がいないことだ。真実の両親も、西澤も、真実自身も、誰かを傷つけようとしていたわけではない。ただそれぞれが「正しい」と信じるやり方で生きていただけなのに、結果として互いを追い詰めてしまう。
タイトルの『傲慢と善良』は、まさにこの状態を指しているのだと思う。人は善良であろうとするほど、自分が正しいと信じてしまう。そしてその正しさが、いつの間にか他人の人生を縛る“傲慢さ”に変わっていく。
後半の真実の語りは、読んでいて苦しくなるほど痛い。「ちゃんと自立したかった」「誰かの所有物として生きたくなかった」という思いは、とても静かで、でも切実だ。恋人の目にも、親の目にも「いい人」でいようとするうちに、自分が消えていく感覚。これは決して極端な話ではなく、多くの人がどこかで覚えがある感覚だと思う。
この小説が強いのは、恋愛の破綻を描いているのではなく、「人が人をどう理解し損ねるか」を描いているところにある。西澤は真実を愛していた。でもその“愛”の中には、「こういう人であってほしい」という期待が混じっていた。真実の両親も、娘を思っていた。でもその思いは、娘の自由を奪うほど強かった。そして真実自身も、善良でいようとするあまり、自分の声を押し殺していた。
読み終えたあとに残るのは、答えではなく問いだ。自分は誰かをどんな目で見てきただろう。相手のためだと思って、どれだけ自分の価値観を押しつけてきただろう。
『傲慢と善良』は、読者を優しく慰める本ではない。でも、自分が誰かと生きていくときに、どれだけ無自覚な暴力を振るい得るかを、これほど静かに、これほど誠実に描いた小説もそう多くない。
だからこの物語は、読み終わってからが本番なのだと思う。胸の奥にずっと残り続けて、「あのときのあの言葉」「あの沈黙」を思い出させてくる。それこそが、この本が“傲慢でも善良でもない場所”を、読者に探させる力なのだと思った。
Posted by ブクログ
傲慢とは?
善良とは?
とても考えさせられる内容でした。
誰しもが思い当たる心情を描いていると思います。
結婚相談所の老婦人、小野里さんのお話はどれも興味深く読みましたが、
「ピンとくる、こないの感覚は、相手を鏡のようにして見る、皆さんご自身の自己評価額なんです」
この言葉が特に刺さりました。
第一部の後半〜第二部の始まりにかけて、あまりの展開にええぇ⋯と目を見張りました。
やっぱり辻村深月さん、やってくれます。
後半は自己の内省、心情が綴られていて、最後は自分の意思で行動することができて良かったな〜と思いました。
石母田さんが言う通り、きっと“大恋愛”なんですね。
Posted by ブクログ
婚活に留まらない、人間関係の心理描写がたくさんあったけど、スラスラと読めた。他人について自分が話す時、そこにはどうしても自身に対する自己愛の捉え方が出てしまう、というのは誰にも起こっていることなのだ。しかし、その自己愛を隠すことが人間関係を潤滑に、同時に複雑にしている気がする。
真実がしているのは、嫌われる勇気で書かれるアンチパターン(=好かれる安寧?)にあるような挙動かも。
著書名の意味
本のタイトルに惹かれて手にしました。
その後、映画化決定ということを知り、ちょうど読んでいる最中だった書籍を
一旦置いておいて目を通しました。
私の年代で読むには、婚活がテーマなので、かなり若い内容かと思いました。
と同時に私が若かりし頃に「お見合い叔母さま」から言われたことが痛烈に蘇り、
いつの時代も婚活は同じなんだなと思いました。
気になっていた、タイトルの意味もすぐにわかりましたし、納得出来ました。
最後は予想通り収まってしまい、少々物足りなさを感じましたが、総じて
意外性もあり、面白かったです。今どきの小説という感じがしました。
傲慢と善良
婚活で知り合った2人の結婚までの紆余曲折の話…と思っていたが、大人しく良い子と周りから言われていたが自分に自信も無く、、決められない人。誰でもそんな部分はあるのではないか?私もそうだし。心を取り出して曝け出されたかのような気持ちになった。ただ、真実のように失踪する程の怒りや勇気は持ってない。
人間の本音が浮き彫りに
この作家さんの本は8割は読んでると自負してるが本当にリアルな人間模様を描くのに長けてると思う。いる!いるよ、こういう奴!とか、人が抱える矛盾とか綺麗事ではどうにもならないリアルを描き出すから刺さると思う。
が!本当に思うのが恋人やパートナーや伴侶の側に自分より遥か昔から側にいるその相手にとって恋愛対象になりうる性を持つ友人や自分とは真反対で自分をあまりよく思わなそうな人間がいるのは実に厄介だという事、分かっていたが改めて痛感した。
そういう奴らは自分達の思想や言動が善良だと何ら疑いなく動き、実に傲慢な行動に出て時には、彼、彼女の為!と未来さえ破壊しにかかる。
関わると碌な事がない。
だから何か決める時には自分達だけで。
俺も真実と同じで架の側にいるあいつらが大嫌いだよ。見当違い、権利のない嫉妬で邪魔するな。
とりあえず今までの架の追跡費用と真実の逃亡費用と式場キャンセル代は奴らが全額負担すべき。
匿名
アラサー〜30代の独身の子には勧められない本no.1 (笑)
私は多分架の女友達に近い傲慢な人間なのだと思いながら読んだ。
実際は真実のような女性とハイスペ架が結婚することってそうない。それこそストーカーされてるってウソを付くくらいしない限り。だからこそ女友達の猛反発も少し共感できてしまう(彼女たちが直接傷つけることを言ったのはダメだけど)
架がアラフォーで真実が28歳とかならあるあるは組み合わせだけれども、
それまでモテてこなかった女性が30半ばで急に大逆転ってほんとに聞いたことがないから、ラストも含めてファンタジーだし、
真実みたいな女苦手だなーと思いつつ面白かった
恋愛小説だったのか
出だしといい失踪という展開といい、サスペンスかミステリー小説だと思って読んでいました。
「善良」と「傲慢」が、登場する人たちの中で目まぐるしく表れて…
男性視点のパートの後半は、読んでいて息苦しく嫌な気持ちになるくらいでした。
それは巻末の解説で浅井さんが指摘していたことそのもののせいだと、読了して気づきました。
それだけに、ラストは納得できないというか、主人公達を理解できませんでした。
皆さんは、どう読んでいるんでしょうか。
渦中
真美が嫌いな人種に、自分はどちらかと言えば近くて、陰ではこんなにも嫌われているのかと思うと怖くなった。
本の内容とは全く関係ないだろうメッセージが
自分を見直すきっかけになった。
偏見とプライド
水知らずのうちに人にレッテルを貼るということの意味を知れたいい作品。
優しいにもいろんな意味がある、本当の優しさなのか、憐憫からくる優しさなのか。
人との接し方を教えてくれる作品。
Posted by ブクログ
架と真実。婚活の末、付き合いだしてもうすぐ2年。結婚直前になって真実は突然いなくなる。架は彼女の実家で両親から話を聞き、彼女の過去のことを調べ始める。結婚相談所、そこで会った男性、彼女の前の職場。前半最後の衝撃的事実が明らかになり、後半は彼女の一人称で失踪の軌跡が綴られる。自分の価値を高く見積もる傲慢な人と真面目で正直な要領の悪い善良な人。物語はモヤモヤな感情を見事に昇華させて爽やかに着地。よかった。
面白かった
先が読めるようで読めません。オチは正直言って賛否ある?とは思いますが、過程は十分楽しめると思います。一つ一つの些細な描写も、あーわかるわーってことがあり、個人的には親との関係など、共感できる部分がありました。全ての悩みに答える!と謳われてしまうとハードルが上がりますが、そこはさて置き読めば楽しめます。
Posted by ブクログ
読む人やタイミングによって感想が全く変わってくるとは思うが、やっぱり私は架が不憫で。真実の、自信がないのに他責思考で自己愛とプライドの高い傲慢さが好きにはなれなかった。だから女友達の気持ちもすごく分かってしまうところがあったが、それもまた傲慢で…。
誰もがもっている傲慢さを、嫌という程実感したそんな読書体験だった。
Posted by ブクログ
自分が一緒にいる人、友達や家族に無意識に傲慢に評価をしていたんだなと気付かされる作品だった。
気づいても尚、無意識な傲慢さを治すことができないものだと感じ、人間の性のせいだとまた言い訳を並べてる自分がいる。
最後の方に出てくる一説でもここまできても傲慢さが消えないところをみて、人は無意識に常に傲慢なのかもしれないとも感じた。
類は友を呼ぶという言葉もあるが、そういう傲慢さが重なり合った結果なのだろう。
周りが結婚しだして、焦ってる自分もいる。
それも私の選択が、友達のSNSを通して揺さぶられた結果だ。SNSが多様化する現代で、他人からどう見られるかではなく、自分がどうありたいかを考えて行動する勇気が必要なんだなと感じた。
Posted by ブクログ
学びの多い作品です!↓これから読む人へ
この生きづらい社会の原因は何なのか?主にSNSの普及により他人と比較する思考や社会を意識して生きるということが過剰に発達してしまった人間たち。
すぐに社会的な「正しさ」の物差し何かを測る。
自分の意思だけで選択できるような余裕を、最早人々は持ち合わせていない。
そして 傲慢と善良 という小説は、そんな社会の教科書と言ってもいいだろう。
善良でいる難しさ、上辺だけの謙虚とその下に潜む傲慢について考えさせられます。星3という評価ですが、個人的には3.5を付けたい作品です。ぜひ多くの人に読んでもらいたい一冊だと思いました!
あんまりかも。
オチが早い段階で分かる人には、あんまりかも。と思いました。
作者の世界観のリアルな女性像があまりにも簡易的すぎて、本当はもっと女性ってややこしいのになーって感じです。
匿名
微妙
微妙というか全くつまらなかった。
唯一主人公のみがまともな人間で、真実とスーパー過保護な母は読んでてイライラした。
真実は結局のところ自立できていないまま終わり、終盤に浮気の雰囲気もなぜか出てきて意味不明。
半年もの間、身近な人間に迷惑をかけた自覚があるのだろうか?
なんでここまで本の評価が高いのか微塵も理解できなかった。
やたら長い割に「え?それで?」という結末なのでガッカリ。
本を一言で言うと「傲慢=恋愛の理想を求める自分の欲望」「善良=自分を愛するあまり性経験の少ない状態」のこと。
主人公は傲慢で善良。笑
解説は良かった。