【感想・ネタバレ】傲慢と善良のレビュー

あらすじ

婚約者・坂庭真実が姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。「恋愛だけでなく生きていくうえでのあらゆる悩みに答えてくれる物語」と読者から圧倒的な支持を得た作品が遂に文庫化。《解説・朝井リョウ》

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「人生で一番刺さった小説」との声、続出! 恋愛だけではなく、生きていく上でのさまざまな痛み、あらゆる悩みに答えてくれる物語。
主人公・西沢架は、いつも通り帰宅した自宅に、同棲中で家にいるはずの婚約者・坂庭真実がいないことに気付く。突如失踪した真実の手がかりを探すべく、架は真実の過去と向き合うこととなる。浮かび上がる現代社会の生きづらさと、徐々に明かされていく失踪の理由からは目が離せない。
本作の見どころは、なんと言っても描写の細やかさです。作家の朝井リョウさんによる巻末の解説の中でも触れられているように、この作品では「何か」「誰か」を選ぶときに私たちに起こっていることを主題としています。"選ぶ"という行為の中でどういったことが起きているのかを細部まで描写することで、私たち読者の心に何かしらひっかかるものを与えてくれます。
もちろんすべての人におすすめですが、人間を傲慢と善良の2種類に分けたとして、自分はどちらかというと善良側の人間だという人にこそ是非読んでいただきたい1冊です。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

まさにタイトル通り傲慢と善良の作品です。
読む人の年代…生まれてきた地域によって大きく感想が変わってきそうな作品です。

架の気持ち。真実の気持ち。を考えるだけで、
自分も傲慢と善良があるなと気付かされる作品です。過去の自分の行動や経験を省みると、あの時何であんな考えだったのだろうか?
今思えばあんな上からな態度とっていたのかと…振り返らないと一生忘れてた(逃げてた)記憶がよみがえってきます。

そうい事に気付かさせれた作品です。

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2026年06月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すっごくリアルで、つい自身の状況に当てはめて読み進めてしまった。
そんなつもりはなくても、いつの間にか「自分に相応しい人」を選んで関わってしまう。相手の、自分に向けられたごく一部の情報だけを見て、アリかナシかを判断してしまう。まさにアプリで相手を探している時の自分だった。傲慢だとは思いつつ、人から”いい人”と言われる人を恋愛対象として見られないことに罪悪感を覚える。これが私の善良の部分、?(なんてお相手に失礼すぎて言えないけど、、)

人は善良で傲慢で、でもその全てをひっくるめて人間らしいと思えるような、軽やかで柔軟な大人になりたいなぁと思った。
(内容はヘビーだったからこそ、感想はライトに、笑)

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2026年06月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ


 婚活する二人の男女を視点に、物語を通して
   人間の傲慢さと善良さ
を見事に抽出!

 これ以上ないという相手に巡り会えたにも関わらず、結婚を想像できず別れてしまった経験を持ちながら、婚活するときは自分は選ぶ側であり、ピンとこないという理由でなかなか結婚に踏み出せずにいた、架の傲慢さ

 自分の意思がなく、周りの意思に従って振る舞い、自分のためすら嘘をつけない清廉潔白な、真実の善良さ
 
 そして物語が進むと、この構図は一転

 特に、初めは架が傲慢ポジションで真実が善良ポジションとしてスタートしていくが、真実の失踪をきっかけに
   真実の傲慢さと架の善良さ
がジワジワと炙り出されていく様子は圧巻!

 架と真実、それぞれの精神状態がきめ細かく描写されていて、まるで自分に起きていることのように引き込まれていく!

 読後感も重厚で、題材が題材なだけに、改めて自分自身についても考えさせられる名著でした!





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2026年06月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2年ほど前に読んで、とても面白かったし刺さるフレーズがいくつもあって、善良とは?傲慢とは?女とは、、、、って考えた1冊なのに、
2年越しに言葉で感想を残そうとすると、まず浮かぶのが「真実にかなりイライラした」って感想(笑)

イライラしたのは、同じ女性として甘ったれてんな〜もっと頑張れよ、、、と思う部分と、もしかしたら真実ルートを辿っていたかもしれない自分の姿が想像できてしまったから、かも。
地方で箱入り娘なのは私も一緒。でも勉強して国立行って自分で大手に就職先決めて働いて自立した。普通に生活してたら出会いはないけど自分で出会いを探して恋愛もした。読んだ時は結婚してなかったけど、今は結婚もした。なんでもかんでも親に決めてもらってのらりくらり、私決められないの〜って、でもかけるの女友達を頭の中でバカにする真実を見て、呑気で何も頑張ってないのになんでそんなプライド高いんだろう、って思ったのと同時に
お気楽でいいな、努力していなくても価値がある、と自分を認められていていいな、、と思った。

かけるの女友達、大概な嫌なやつだけど、真実も大概したたか。


真実は、自分で選択したり探したりと言った行動をせず、無条件で居場所が与えられてきた。地縁や血縁。
でも世の中は歳を重ねるにつれ自分で選択したり探し、選択縁を形成していく。選択縁は自分自身で選べる自由さはあるけど、自分自身も選ばれる側にもなる。選ばれない孤独の恐怖に常に晒される。
恋愛・友人関係・就職活動で、「選ばれない」事の怖さを真実が初めてつきつけられている。


解説の朝井リョウの文がしびれたので引用。

解説 朝井リョウ 
文庫p498
-
周囲や社会が求めるものに応えている期間は、そこに意志はなくとも不正解を叩き出すわけでもないので、間違わない自分への自己愛は募っていく。
その結果、いざ結婚相手を"選ぶ“となったとき、どんな相手が目の前に現れても、「ピンとこない」という常套句の裏にある「この不正解のない人生に相応しくない」という思いに立ち塞がられてしまう。

-
自分の意思によるビジョンを掲げるのではなく、不正解を避け続ける減点法の人生。
その人生を送っているうちは、不正解なわけではないので、取り立てて明確な不満も生まれない。だがその状態に慣れると、自分が何を不満に思うのかというアンテナまでも鈍っていく。不正解でもこれがしたい、という推進の意思を失うことは、正解であってもこれをしたくない、という反発の意思を失うことと同義

~
この世の中に、「自分の意思」がある人間が果たしてどれだけいるだろう。まみを責めることができる人間が、一体どれほどいるというのだろうか。

どこまでが自分で、どこからが社会なのか。どこまでが理性で、どこからが本能なのか。これまで私たちが選んできた何もかもは、果たして本当に自分の意思で選択したものなのか、名もなき大いなる流れの中で選択させられていたものも多いのではないか。

-
数多いる種の中でもヒトだけが、自分のなんとなくの寿命、つまりある程度の未来と必ず訪れる死を把握しながら生きている、というものだ。その真偽はさておき、滅多なこがない限り生後七、八十年ほどで死を迎えることを知ってしまっている私たちヒトは、何かを選ぶ時、どうしたって未来や死から逆算する思考を働かせてしまう。未来や死のことはわからないのに、わからないものを起点に逆算させられている。

~
誰にも選ばせず、自分で決めて、自分でも予想外の行動を沢山する。その日々を通してまみは、自分の輪郭を知っていく。社会や周囲からの圧でできた凹みや盛り上がりではなく、自分で動かすとその心身がどういう形になるのかを理解していく

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2026年06月05日

ネタバレ 購入済み

突然号泣しました

石母田のおばあちゃんの「あんだら、大恋愛なんだな」に突然どばっと涙が込み上げました。渦中にいる人同士はわからんけど、確かにそうだと。

そして最初は架が主導権を取っていたようなこの恋愛が最後は真実の方がどちらかといえば主体になっていて、ちゃんと対等に立てているのが羨ましいような気持ちになり、こんなお似合いの夫婦はないだろうと、心から2人を祝福したくなりました。

この先の人生、子供や親戚、友人付き合い、いろんな事が起きてもきっと、自分たち夫婦の軸を大事にして生きていけるのだろうと思えました。

架も真実も最高のタイミングで出会いをして、偶然を積み重ね、そして真実の嘘も失踪も2人の恋愛には必要なイベントだったのだと思います。

この夫婦も10年後には同じように思うのではないかと思います。架も真実も恋愛だけでなく人として成長した。自分というものを見つめ直せた、こんな最愛の相手はいないだろうと。

架は、婚活に疲れ果ててまたゼロから探すのが億劫だったから別の相手を探さなかったわけではなく真実がよかったんですよね?

彼女の本当の姿の中に自分がひかれるもの、見えたもの、そしてそれらを丸ごと愛する思いが芽生えたから、彼女を好きだと言ったんですよね?

そこだけもう一度読み直してみたいと思います。

選ぶという事は、自分に見合うかどうか価値をつけている、やたら自分の評価だけは高い、など人が普段隠しているもしくは無意識にやっているような、心の深いところまで掘り下げた、剥き出しに描写したすごい作品だなぁと感じました。

#エモい #深い

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2023年07月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・女友達の性格が悪すぎて。でもあぁいうタイプまじで居るんだよなぁ。その度を超えた悪ノリみたいなのをいつまでもやってる連中とはツルめないよって架には気づいて欲しかった。最後に真実も言ってたけど、架はまじ鈍感。
・毒親ってことなのか、しかし娘も親離れ出来ていないような。すごく特殊な関係性に見えるけど、多分世の中にはありふれた親子なんだと思う。
・自己評価額が適正価格なのか自分自身に問いかけよう。
・人の気持ちがよく描かれた小説で満足!

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2026年06月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

登場人物のほとんどがおかしなことを言ってるなと思ったけれど、でもその人の視点で見れば妙に納得することができてしまうような不思議な作品だった。結婚に対してピンとこないっていう感覚はよく分からんが、まあ躊躇してしまう人も多数いるよなと思った。自分が束縛してるくせに娘は何もできないからと盲目になって余計なことをしてしまう、自分がおかしいと思っていない真美の母親が1番怖いし胸糞悪かった。最後は余計な人物も要素もなくスッキリと無事にゴールを迎えたから良かった。

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2026年06月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分という人間を理解して、相手のことも理解する。ふたりともある種素直だし、いい人なのだけど、傲慢さもあり、人間らしいなと思った。登場する人々それぞれ良いところも、嫌なところもあり「なんか知ってる」感情にもなった。良かれと思って言ったことが傷つける。それは悪意かもしれないけれど。

最後どうなるかと思ったけれど、ホッとしました。幸せになってほしいふたりです。

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2026年06月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まさに無知は罪。

傲慢と善良、両方とも混在しているものであるからこそ価値観のズレが生じるし、うまくいかないこともある。でもそれもスパイスになると思うし、大恋愛にもなるよね。

確かに真美の目線にたったら、悲観的に捉えてしまう気持ちもとってもわかる。条件や将来のことを考えすぎて、好きという気持ちが疎かになってしまうことは、年齢を重ねた大人であるからこその問題だと思う。三波神社のおばあちゃん最高のキューピット。

年齢など関係ないという諦めのようなものが何かを決断する時に時に大事になるんだなと真美が仙台に行って一皮剥けた姿を見て思った。

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2026年06月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

婚活というテーマを超越して、自らの「意思」を持つことができない者が、善良な者と見做される現代日本の構造を描き出している。

人を評価する時、自分の高めの評価を映し出しているというのは刺さった。

自分が住んでいる世界の外に飛び出してみることが、「意思」を持つことに繋がる。

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2026年06月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なんとなーく気後れして読めてなかった本作品。書影とかけ離れたヘビーさだけど辻村さんの文体に救われた。

婚活も恋愛なんだよな、元を辿れば。それが誰かに選ばれなければいけないというプレッシャーで迷子になるだけで。
人間が傲慢も善良も持ち合わせているのはどうしようもなく事実だから、相手の美しい善良を称え、醜い傲慢さも愛せるような関係性でありたいと思える。

※以下は個人的に...架は点数を言わされただけのように感じていて。それを点数つけた!とネタにする女性陣にめちゃくちゃ腹が立ちました。人の恋愛に首突っ込むな、そんなもので値踏みすんな。

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2026年06月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分の意思がわからない。
選ぶ場面になった時傲慢になる。
真実の気持ちにとても共感した。
自分の心が見透かされているようだった。
描写されている心情の解像度が高く、
自分の心にも感じていたことをひたすら細かく言語化してくれている。

話の展開としてはゆっくりで少し長ったらしいかな?

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2026年06月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

もろに自分と重ねてて読んでて、真面目(と自分で自分のことを思う)であることは傲慢だ、とただただ否定されている感覚がして、半分くらいまで読んでいて辛くなった。他の人はどう思いながら読んでるのだろう、と思わず読者レビューを検索した。すがるように。
でも最後まで物語を見守った人たちの感想から読み取れたのは、そんなどうしようもなく真面目な人たちを後ろから支え、応援しようとする作者の姿ばかりだった。だからもう一度読み始めた。
そしたら本当に応援しているだけだった。真面目さがゆえに何が辛いのか、どうすれば辛くならないのか。たくさんたくさん考えて作られた作品だった。

自信のない時、なかなか自分では気がつきにくいけど、そのつらさはほとんど、他者と比べていることからきていると感じる。
その比較を手放して、自分の人生と正面切って向き合う時、辛さはほんのすこし、少なくなるのだと思う。


〜気付きをもらった言葉たち〜
・今考えると、アユは、現実をちゃんと見ていただけなのだ。これから先の自分の人生設計を、自分の手でちゃんと摑もうとしていた。それを「怖い」としか捉えなかったのは架の未熟さと身勝手さだ。

・その期間を彼女が待っていてくれるものと思っていたこともまた、架の傲慢だった。
アユから別れを切り出されるまで、架は一度たりともアユが自分のもとから去る可能性を考えなかった。それぐらい長く深いつきあいになったように思っていたし、家族のように思ってし甘えていた。
まだ家族ではなかったのに。
家族のように思いたいなら、家族になるべきだったのに。

〜結婚とは〜
・特別でない、と思っていた恋人だった。けれど、そもそもそんなふうに思うこと自体が傲慢であり、間違いだった。
自由気ままな恋人同士ではなく、ともに家族まで巻き込んだ社会的な関係になり、親を安心させる。あれだけ抵抗があった結婚に伴う「責任」こそが、むしろ欲しくてたまらないものに感じられるようになってくる。
ーーー
自分と生きてくれる誰かと、家庭を持ちたい。
あれだけ趣味や仕事に費やす時間を尊く思えていたはずだったのに、この先いつまでこの調子で生きていくのかと思うと、一人きりで過ごす残りの人生がひどく長いものに思えた。その年月を、このまま耐えられると思えなかった。無理矢理にでもいいから、誰かに東縛や制約をされたい。そういう煩わしかったはずのものが、無性に懐かしく、欲しくなっていた。
考え方がひとつ変わると、見える景色は百八十度変わる。
これまでは子どもがいる友人たちを単に「大変そう」「自分の時間がなくなる」くらいにしか思っていなかったのが、見方が変わっただけで、その「大変だ」という話が必ずしも言葉通りなだけではなく、楽しさの代償としての惣気話のように聞こえた。

・「親御さんに言われれば、本人もおそらくはそういうものかとやる気になるのでしょうけれど、それは、恐怖や不安に突き動かされた社会的な要請によってであって、そこに本人の意思はありません。そして、そんな理由でもうまくいって結婚できるなら、私はそれでいいと思います。そうしなければ、その人たちは結婚しないでしょうから」
ーーー
「みんながみんな、どうしても結婚しなければならないってものでもないでしょう?
結婚したくないならそうする自由だってある。僕はたまたま結婚を考えましたけど、そうしない生き方だってあっていいわけだし」
「独身を選択するも何も、最初から、そこに本人の意思がないんです」
「真実さんを含め、親御さんに言われて婚活される方の大半は、結婚などせずに、このままずっと変わりたくない、というのが本音でしょう。三十にもなれば仕事も安定し、趣味や交友関係もそこそこ固まって、女性も男性も生活がそれなりに自分にとって居心地がいいものになりますから。けれど、そのまま、変わらないことを選択する勇気もない。婚活をしない、独身でいる、ということを選ぶ意思さえないんです」
架が絶句する。小野里が続けた。
「ですから、親に言われてでもなんでも強引に、選択しないまま、新しいステージに飛び込む方がいいんです。何も考えないまま結婚して、出産して、それでいいのではないか、と私は思います。もちろん、結婚しない生き方を自分で選択された方たちを否定するつもりもありません。それとこれとはまったく別の話なんです」
「でも、それなら、最初に紹介された相手で結婚を決めてしまいそうなものですけど。」
「今は情報が溢れているせいか、どんな方でもまずは結婚の前提として恋愛を求める傾向が強いです。自分にはこの人じゃない、ピンとこない。ードラマで見たり、話で聞く恋愛ができそうもないと、ご自分にたとえ恋愛経験が乏しくても、『この人ではない』と思ってしまう。そのうえ、皆さん、他人から理想が高いのではないかと指摘されるとたちまち否定されます。理想が高いなんてとんでもない。ただ、今回のお相形が合わなかっただけで、自分は決して高望みをしているわけではない。自分が高望みできるような人間でないことはわかっているし、と。とても謙虚な様子で、むきになられて」
でもね、と小野里が上目遣いで、試すように架を見た。
「皆さん、謙虚だし、自己評価が低い一方で、自己愛の方はとても強いんです。傷つきたくない、変わりたくない。ー高望みするわけじゃなくて、ただ、ささやかな幸せが掘みたいだけなのに、なぜ、と。親に言われるがまま婚活したのであっても、恋愛の好みだけは従順になれない。真実さんもそうだったのではないかしら」
架は黙ったまま、小野里を見つめていた。
理想が高いんじゃないか、というのは、婚活をしている間、架もまた周りに言われ続けてきた言葉だった。そのたびに、確かに思った。高望みをしているわけじゃない。ただ、合う人と巡り合えていないのだ、と。
「・・・・・・違うんですね」「恋愛相手を探すのと、婚活は」

・現代の結婚がうまくいかない理由は、「傲慢さと善良さ』にあるような気がするんです」
「現代の日本は、目に見える身分差別はもうないですけれど、一人一人が自分の価値観に重きを置きすぎていて、皆さん傲慢です。その一方で、善良に生きている人ほど、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多すぎて、自分がない”ということになってしまう。傲慢さと善良さが、矛盾なく同じ人の中に存在してしまう、不思議な時代なのだと思います」
「その善良さは、過ぎれば、世間知らずとか、無知ということになるのかもしれないですね」

・「ー婚活につきまとう、『ピンとこない』って、あれ、何なんでしょうね」
「ピンとこない、の正体は、その人が、自分につけている値段です」
「値段、という言い方が悪ければ、点数と言い換えてもいいかもしれません。その人が無意識に自分はいくら、何点とつけた点数に見合う相手が来なければ、人は、「ピンとこない”と言います。私の価値はこんなに低くない。もっと高い相手でなければ、私の値段とは釣り合わない」
「ささやかな幸せを望むだけ、と言いながら、皆さん、ご自分につけていらっしゃる値段は相当お高いですよ。ピンとくる、こないの感覚は、相手を鏡のようにして見る、皆さんご自身の自己評価額なんです」

・希望が「ごめんごめん」と軽い調子で架に謝る。真顔に戻った。
「母に限らず、真実もきっと自分の物語が強かったんだよ。こんな過去や好みを持った自分を理解してくれる相手、みたいなものを求めすぎて、逆に相手もそういう物語を持ってるかもしれないってことの方は疎かになる」
「小野里さんに言わせると、お見合いがうまくいかない人はみんな、自分に釣り合う相手じゃなければ納得しないし、その基準が控えめだと言いつつ、実は相当高いそうなんです。実際には相手の方が収入があったりして、ステータスが高い場合でもそう思うって、不思議なものですけど」
「じゃあ、そういう場合は相手の方が外見が悪いとか、社交下手だとか、そういうことなんじゃない?みんな、自分のパラメーターの中のいい部分でしか勝負しないんだよ。
自分の方が収入が低くても、外見が悪くても、相手より勝ってる部分にしか目が向かない。傲慢だけど、人ってそういうものじゃない?」

・皆か行くから大学に行き、親が決めたから就職し、そういうものだからと婚活する。
そこに自分の意思や希望はないのに、好みやプライドとー小さな世界の自己愛があるから、自由になれない。いつまでも苦しい。
しかし、この世の中に、「自分の意思」がある人間が果たしてどれだけいるだろう。
真実を責めることができる人間が、一体どれほどいるというのだろうか。

・架と出会っていこれで一生ひとりじゃない、と束の間、思えた時もー。
今考えたら、親に代わる依存先を私は探していたのかもしれない。
ひとりじゃ生きられないと思っていたのは、親もだけど、私もだったから。
架と出会って、ようやく自分が依存してきた親が、大きかった母たちが、意外に小さかったことを知ったのに、それでも私は、架のところを飛び出して、最初に親のところに戻ろうとした。
そこしか、行けるところがなかったから。
深く考えるより先に、まず、心と体が頼ってしまう、その罪深さ。業の深さ。
今も、何が正しいのかなんてわからない。
自分が間違っていると言われたら、そうなのかもしれない。
けれど、今は、こうも思う。
親に頼ってきた娘の自立が、次の依存先を探すことなんだとしても。
親が、子の結婚を焦るのは、自分の代わりの次の依存先を見つけてやろうとしている行為なんだとしても。
それの何がいけないのか、と開き直れるくらいには、気持ちが強くなった。
間違っていると言われてもいい。
構わない。

・これから先、大丈夫かどうかなんて、自信がない。勝手なことをしたツケはきっと、実の両親からも架の母親からも、山積みで回ってくるだろう。何かにつけ、思い出してはねちねち言われるーそんな結婚生活になるかもしれない。
だけど、それでも。
今、この人と二人で祈ることにはきっと意味があるはずだと信じたい。
この結婚に、迷って決めたこの決断に意味があるのだと思いたい。
その祈りが、少なくとも、自分の横にいるこの人に届きますように。

・本当は、これでよかったのだろうか、と望みがかなった今も、考えていた。自分が希望したことなのだから、もちろん、そんなことは口が裂けても言えないけれど。
これから先のことが、何も不安でないと言ったら、嘘になる。
「架くんは何考えてるの?」「よかったなって」
まるで真実の心を読んだように、そう言った。
「いろいろあったけど、よかったなって、思ってるよ」この人のこの、気負わない鈍感さに、夫であるけれど違う人間であることに、これから何度救われるのだろう。
顔を上げて、ああーと思う。
目の前に、海に続く広い空が広がっている。それは、どこまでもどこまでもー。
「真実」
架に呼ばれ、手を引かれる。手をつなぎ、正面を向く。そこにまた、カメラのフラッシュが光る。
架に掴まれたその手を、自分の意思で、真実もまた強く握り返した。

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2026年06月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自己評価は低いけど
自己価格(自己愛)は高い
っていう言語化に、
腑に落ちるところがありすぎてもう…だった。
実際に婚活をしてたので、
終わりの見えない未来の不透明さや
現在の閉塞感は痛いほどわかるし、
それを抜けたからこそ
条件で決めるのは危ないという目線でも読めた。
そんな頭が固まって歪んだ現状から、
あんなに素敵な読後感になるとは。
いつまでも並んで歩いて欲しい。

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2026年06月15日

ネタバレ 購入済み

著書名の意味

本のタイトルに惹かれて手にしました。
その後、映画化決定ということを知り、ちょうど読んでいる最中だった書籍を
一旦置いておいて目を通しました。

私の年代で読むには、婚活がテーマなので、かなり若い内容かと思いました。
と同時に私が若かりし頃に「お見合い叔母さま」から言われたことが痛烈に蘇り、
いつの時代も婚活は同じなんだなと思いました。
気になっていた、タイトルの意味もすぐにわかりましたし、納得出来ました。
最後は予想通り収まってしまい、少々物足りなさを感じましたが、総じて
意外性もあり、面白かったです。今どきの小説という感じがしました。

#共感する

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2024年12月17日

ネタバレ 購入済み

傲慢と善良

婚活で知り合った2人の結婚までの紆余曲折の話…と思っていたが、大人しく良い子と周りから言われていたが自分に自信も無く、、決められない人。誰でもそんな部分はあるのではないか?私もそうだし。心を取り出して曝け出されたかのような気持ちになった。ただ、真実のように失踪する程の怒りや勇気は持ってない。

#深い

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2024年03月17日

匿名

ネタバレ

アラサー〜30代の独身の子には勧められない本no.1 (笑)

私は多分架の女友達に近い傲慢な人間なのだと思いながら読んだ。

実際は真実のような女性とハイスペ架が結婚することってそうない。それこそストーカーされてるってウソを付くくらいしない限り。だからこそ女友達の猛反発も少し共感できてしまう(彼女たちが直接傷つけることを言ったのはダメだけど)

架がアラフォーで真実が28歳とかならあるあるは組み合わせだけれども、
それまでモテてこなかった女性が30半ばで急に大逆転ってほんとに聞いたことがないから、ラストも含めてファンタジーだし、
真実みたいな女苦手だなーと思いつつ面白かった

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2024年01月07日

ネタバレ 購入済み

恋愛小説だったのか

出だしといい失踪という展開といい、サスペンスかミステリー小説だと思って読んでいました。
「善良」と「傲慢」が、登場する人たちの中で目まぐるしく表れて…
男性視点のパートの後半は、読んでいて息苦しく嫌な気持ちになるくらいでした。
それは巻末の解説で浅井さんが指摘していたことそのもののせいだと、読了して気づきました。
それだけに、ラストは納得できないというか、主人公達を理解できませんでした。

皆さんは、どう読んでいるんでしょうか。

#深い

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2023年11月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【あらすじ】
西澤架39歳東京育ち。大学卒業後は銀座にある中堅の広告代理店に就職が決まりキャリアを積んでいたが、父がくも膜下出血で亡くなった後、父親の後を継いでイギリスの地ビールを専門に取り扱う代理店『ブリューイング・カンパニー』で働いている。恋愛経験が豊富で女友達(美奈子や梓など)も多い。結婚願望もなく選ぶ側という傲慢さがあった架は元カノ(飲み会で知り合った外資系のファッションブランド勤務の三井亜優子とは結婚に踏み切れずフラれる)の結婚や出産を目の当たりにするうちに、未婚で生きていくことに不安を抱く。そんな中婚活アプリで、善良な雰囲気を醸し出す年下の坂庭真実という女性に出会う。交際が始まり二年たっても架は同棲や結婚に踏み切れなかったが、真実がストーカーが家に来て被害にあったと話をしてから安全のため同棲・結婚の流れになる。結婚式場の予約まで終えたある日、真実は突然姿を消してしまう。警察は事件性がないと判断し動いてくれず、架は「群馬でのお見合いで出会った人がストーカー」という真実の証言を元に、真実が30歳を越えるまで暮らしてた地元群馬県前橋市へ向かいストーカー探しを始める。
真実の実家で父正治(市役所勤務で定年後は私立大学で嘱託扱いの事務)と母陽子と話したり、真実が婚活で訪れた結婚相談所『縁結び 小野里』を訪れたり、小岩に住む真実の姉の希実(都内の証券会社で働き、デザイナーの夫・剛志と3歳の娘・桐歌がいる)や、真実の中学の同級生で同じ県庁で働いていた有阪恵(25歳で他部署の男性と結婚し子持ち)、真実の見合い相手金居智之(電子機器メーカーのエンジニアで現在は既婚で子供もいる)や花垣学(父親からの歯科医院を弟が継ぎ兄として助手として働く)にも会って話を聞く。真実が事務として働いていた英会話教室のスタッフから真実のインスタグラムのアカウントを聞いて見たり、真実が失踪する前夜に架の友達の美奈子と梓が真実と会って話をしていたことを知り、真実は架が思ってたような女性ではなくストーカー被害も結婚するためのウソだったと知る。

架に70点と付けられた事が嫌だった真実は、架の家を出て前橋の実家を目指すが、母からの電話で今までの母の言動を振り返り思いとどまる。全部が順調だった姉にも理解されないと思い、金居が東北被災地のボランティアをしていた話を思いだし、宿泊付きでボランティアができる『プロセスネット』に連絡をいれる。スタッフの谷川ヨシノに紹介され、樫崎写真館で写真の洗浄と整理の手伝い(館長の正太郎、孫の耕太郎、早苗と力の親子と出会う)や石巻周辺の地図作り(地図製作会社で働く地図調査員の板宮50歳代や静岡から来た高橋30歳と出会う)をして数ヶ月過ごす。
耕太郎に促され久しぶりにインスタグラムを開くと架からの「(ストーカーは)いませんね。もう一度僕と話をしてください」というコメントに気付き動揺する。ヨシノや耕太郎、石母田(洗浄した写真に写っていた三波神社の管理者で過去にそこで結婚式もあげている)に自分や架の事や今までの経緯を話し、石母田に架に会うようにアドバイスされる。
地図の作業が落ち着いた7月、真実は陸前大塚駅で半年ぶりに架と会う。真実は別れることも覚悟していたが架に再度プロポーズをされて受け入れる。予約していた式場ミランジェハウスはキャンセルし、真実と架2人だけで三波神社で式をあげる。結婚式の記念写真を撮るために耕太郎だけには来てもらう。
【感想】
P279
相手の気持ちを蔑ろにし、自分が納得した相手でなければ自分の人生の物語に存在しないものとして目に映さない=傲慢。
P280
相手のことを見ずにあくまで自分の意に沿うものしか見えない恋=孤独
P282
自分の意思や希望はないのに、好みやプライドと小さな世界の自己愛があるから自由になれない。いつまでも苦しい。

恋愛がうまく行かない人々に刺さる文章が多い。
誰とも連絡をとらずに失踪するという真実の行動は理解できないけれど、両親の過保護過干渉で育った子供の心理は分からなくもない。

親との関係、現代の婚活事情、現代社会の生きづらさの根源が詰まった作品。

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2026年06月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アガサクリスティーの春にして君を離れ、を思い出す。
381ページ以降から「ーという夢を仙台駅で見た」とオチがあるのかとおもうぐらい現実ファンタジーな展開になってしまった。

本人不在のままマミを型作る第一部はおもしろかったし、こういう女嫌いだな、あっ今のはちょっと自分にもある部分だ、と度々ゆすられておもしろかった。

第二部でどんどんマミにとって都合が良くて優しい環境になるのがむず痒くなった。この子は被害者でもあるから、最後は良い終わり方にしよう、ってことなのか。

わかってるんです、気づいてるんです、って言い訳、言い直しみたいな描写めちゃくちゃあるのに「私も次の場所があるといいな」とか「モテるでしょ?」とかぽろっと本音の言葉出ちゃう。天然な部分もあるのこの子には、小さなつつじのお花にも気付ける子なのと言わんばかりに。
マミを語る第三者がいないので、むず痒くなる。欲しい言葉をもらえて、欲しい環境を与えられて、急に会ったばかりの男の人に恋されて、でも誰にも深掘りされない夢みたいな環境与えられて。婚約者に70点って付けられたことで逃避してるんです、警察に届け出されてます、実家に色々言われるのも嫌だし上手く言えないから帰れないだけなんですって言わない、言えない、聞かれない。急に人に、環境に守られて安心安全に住めるアパートに入居できる。

インスタ教えるシーンで、あの小っ恥ずかしいID教えたのかな、と思うと笑いそうになった。恥ずかしいと思いつつ見せても良いものしかない、とも同時に思ってる傲慢な女マミ。
お邪魔させてもらってるお家で、お写真見つけて届けに来ただけの家で自分語りする女マミ。語るシーンはカットされてるけど、絶対自分都合の部分だけ語っているはず。
人から咎められない、叱られない限り辞めたり止めたり行動を改めやしない女、マミ。

上手いこと婚約者が迎えに来て結婚式なんて夢オチであれ、と思ってしまった。でもさすがにそれは…同世代のマミに共感羞恥すら感じる私たちには現実的すぎるか。

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2026年06月13日

ネタバレ 購入済み

あんまりかも。

オチが早い段階で分かる人には、あんまりかも。と思いました。
作者の世界観のリアルな女性像があまりにも簡易的すぎて、本当はもっと女性ってややこしいのになーって感じです。

#タメになる

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2023年05月27日

匿名

ネタバレ

微妙

微妙というか全くつまらなかった。
唯一主人公のみがまともな人間で、真実とスーパー過保護な母は読んでてイライラした。
真実は結局のところ自立できていないまま終わり、終盤に浮気の雰囲気もなぜか出てきて意味不明。
半年もの間、身近な人間に迷惑をかけた自覚があるのだろうか?

なんでここまで本の評価が高いのか微塵も理解できなかった。
やたら長い割に「え?それで?」という結末なのでガッカリ。

本を一言で言うと「傲慢=恋愛の理想を求める自分の欲望」「善良=自分を愛するあまり性経験の少ない状態」のこと。
主人公は傲慢で善良。笑
解説は良かった。

#ドロドロ

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2023年03月03日

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