あらすじ
婚約者・坂庭真実が姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。「恋愛だけでなく生きていくうえでのあらゆる悩みに答えてくれる物語」と読者から圧倒的な支持を得た作品が遂に文庫化。《解説・朝井リョウ》
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「人生で一番刺さった小説」との声、続出! 恋愛だけではなく、生きていく上でのさまざまな痛み、あらゆる悩みに答えてくれる物語。
主人公・西沢架は、いつも通り帰宅した自宅に、同棲中で家にいるはずの婚約者・坂庭真実がいないことに気付く。突如失踪した真実の手がかりを探すべく、架は真実の過去と向き合うこととなる。浮かび上がる現代社会の生きづらさと、徐々に明かされていく失踪の理由からは目が離せない。
本作の見どころは、なんと言っても描写の細やかさです。作家の朝井リョウさんによる巻末の解説の中でも触れられているように、この作品では「何か」「誰か」を選ぶときに私たちに起こっていることを主題としています。"選ぶ"という行為の中でどういったことが起きているのかを細部まで描写することで、私たち読者の心に何かしらひっかかるものを与えてくれます。
もちろんすべての人におすすめですが、人間を傲慢と善良の2種類に分けたとして、自分はどちらかというと善良側の人間だという人にこそ是非読んでいただきたい1冊です。
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突然号泣しました
石母田のおばあちゃんの「あんだら、大恋愛なんだな」に突然どばっと涙が込み上げました。渦中にいる人同士はわからんけど、確かにそうだと。
そして最初は架が主導権を取っていたようなこの恋愛が最後は真実の方がどちらかといえば主体になっていて、ちゃんと対等に立てているのが羨ましいような気持ちになり、こんなお似合いの夫婦はないだろうと、心から2人を祝福したくなりました。
この先の人生、子供や親戚、友人付き合い、いろんな事が起きてもきっと、自分たち夫婦の軸を大事にして生きていけるのだろうと思えました。
架も真実も最高のタイミングで出会いをして、偶然を積み重ね、そして真実の嘘も失踪も2人の恋愛には必要なイベントだったのだと思います。
この夫婦も10年後には同じように思うのではないかと思います。架も真実も恋愛だけでなく人として成長した。自分というものを見つめ直せた、こんな最愛の相手はいないだろうと。
架は、婚活に疲れ果ててまたゼロから探すのが億劫だったから別の相手を探さなかったわけではなく真実がよかったんですよね?
彼女の本当の姿の中に自分がひかれるもの、見えたもの、そしてそれらを丸ごと愛する思いが芽生えたから、彼女を好きだと言ったんですよね?
そこだけもう一度読み直してみたいと思います。
選ぶという事は、自分に見合うかどうか価値をつけている、やたら自分の評価だけは高い、など人が普段隠しているもしくは無意識にやっているような、心の深いところまで掘り下げた、剥き出しに描写したすごい作品だなぁと感じました。
Posted by ブクログ
・マッチングアプリがどうのうこうのみたいな噂だけ聞いて読んだら、婚約者が失踪してそれを調査するというミステリーっぽい導入で驚き
・真実の関係者に話を聞いていく中で書かれている、現代の婚活中の人間に対する解像度の高さ
・自分もまさにアプリなどを通して婚活していたので食らった
・「ピンとこない」みたいな感覚とかまさにあって、「それが自分につけてる値段の高さです」とか耳が痛い
・「人は自分の長所でしか勝負しない」も自覚はないけどそうやってる節はありかねないなと思い、婚活に限らず気をつけようと思う
・あと地方住みの母親についても自分の母親がそんな感じだから共感の嵐
・自分の見えている世界の中でどうにか事実を結びつけて原因や理由を決めつける感じとか
・自分の周りの人やものを過大評価する感じとか
・お母さんヒス構文もそうだけど、お母さんのテンプレみたいなものってあるんだな
・最近アプリの恋愛と学生時代の恋愛の違いとして物語の有無があるのかなと思ってた
・学生時代の恋愛ではいいなと思う瞬間やグッと距離が近づくタイミングに物語性が生まれやすいけど、アプリだとそれが薄い気がする
・今作でもアプリがきっかけの恋愛で100%本気になれない架が失踪した真実を追うという物語を経て100%本気になる
・さすがに現実とフィクションじゃ話は違うだろうけどそんなことも思った
Posted by ブクログ
我が家の親子関係知ってたんですか?と言いたくなるぐらい、心当たりがありすぎて胸がヒリヒリ。
真実の母親の過干渉、自らの知っている世界でだけ通用する常識を押し付ける行為は、母親にとっては"愛情表現"。なんなら、自らの子育てに自信満々で何の間違いもないですと言わんばかりの厚かましさ。
真実は、母親と物理的な距離ができたこと、母親の管理から離れた世界に出ることでようやく違和感を抱くも、長年にわたって築かれてきたある種洗脳に近い思考回路はそう簡単には改善されない。
でも、失意の中とはいえ、自分の意思に従って新しい世界に飛び込んだ経験が、真実を大きく変化させる。
人生の分岐点といわれるものには、その瞬間はそうと思わなくとも、あとから振り返ってみて「あぁ、あの時がターニングポイントだったのか」と思う瞬間がある。このときの決断を、自分がしたか何か他のものに流されたか。自分の意思で行動したかどうか。真実はおそらく初めて、自分の意思に従った。
この「意思に従って行動した」という自覚こそが、自分という「軸」になる。解説の朝井リョウさんの言葉を借りるなら、(この解説も非常に良かった)「自分の輪郭」が明確になる。
……と、真美と母親についてだけでもハッとさせられる描写の数々。久しぶりの辻村さんでしたが、読みやすいのに読み応えがあり満足。
いやでも自分の内面を暴かれてしまう恋愛もいいもんだなと思いつつ、こう思えるのは、自分がもう当事者にならないからだろうな。
Posted by ブクログ
Audibleで聴いた。トータル11時間超の大作。本だと何ページになるんだろう。
「ピンとくる」の解釈とか、
「売れ残りのワゴンセール」とか、
「100点中の70点」(点、じゃない、%だってカケルが最後弁明してた)とか、
所々で、絶妙に心をえぐるパンチラインが出てくる。
タイトルにもある傲慢と善良。
両方ともどんな人間にも内在すると思うが、本作では、より人間の傲慢さのほうが描かれているように感じた。
マミの狂言だということはすぐ察せるので、ミステリーという括りは少し違う気が。
どちらかというと、人間の怖さを感じるサスペンスかな、と。
特にカケルの女友達。
さすがにあれを本人の前で言わないだろ、、
女性の妬み嫉み僻みってあそこまでなのか?
Posted by ブクログ
辻村深月さん作品で避けては通れない話題作。ボリュームも書いてある内容も重量感があり、読んでいてしんどかった…。
婚活と結婚観に留まらず、文章の矛先は読み手個人にも鋭く向かっているように感じました。進学、就職、結婚、出産、介護などのあらゆる選択に置き換えて、自分のためなら「傲慢」が、誰かのためなら「無知の善良」が、際立つから気を付けてねって言う忠告だと思っておきたい。それぐらい優しく解釈しないとやっていけない(;´∀`)
『しかし、この世の中に「自分の意思」がある人間が果たしてどれだけいるだろう。真実を責めることができる人間が、一体どれほどいるというのだろうか。』
「闇祓」「ツナグ」「かがみの孤城」を読んできて、摩訶不思議パワーが出てくるファンタジーが定番なのかと思っていた。今回それが一切無かったので、新しい発見でした!
2025.2
著書名の意味
本のタイトルに惹かれて手にしました。
その後、映画化決定ということを知り、ちょうど読んでいる最中だった書籍を
一旦置いておいて目を通しました。
私の年代で読むには、婚活がテーマなので、かなり若い内容かと思いました。
と同時に私が若かりし頃に「お見合い叔母さま」から言われたことが痛烈に蘇り、
いつの時代も婚活は同じなんだなと思いました。
気になっていた、タイトルの意味もすぐにわかりましたし、納得出来ました。
最後は予想通り収まってしまい、少々物足りなさを感じましたが、総じて
意外性もあり、面白かったです。今どきの小説という感じがしました。
傲慢と善良
婚活で知り合った2人の結婚までの紆余曲折の話…と思っていたが、大人しく良い子と周りから言われていたが自分に自信も無く、、決められない人。誰でもそんな部分はあるのではないか?私もそうだし。心を取り出して曝け出されたかのような気持ちになった。ただ、真実のように失踪する程の怒りや勇気は持ってない。
匿名
アラサー〜30代の独身の子には勧められない本no.1 (笑)
私は多分架の女友達に近い傲慢な人間なのだと思いながら読んだ。
実際は真実のような女性とハイスペ架が結婚することってそうない。それこそストーカーされてるってウソを付くくらいしない限り。だからこそ女友達の猛反発も少し共感できてしまう(彼女たちが直接傷つけることを言ったのはダメだけど)
架がアラフォーで真実が28歳とかならあるあるは組み合わせだけれども、
それまでモテてこなかった女性が30半ばで急に大逆転ってほんとに聞いたことがないから、ラストも含めてファンタジーだし、
真実みたいな女苦手だなーと思いつつ面白かった
恋愛小説だったのか
出だしといい失踪という展開といい、サスペンスかミステリー小説だと思って読んでいました。
「善良」と「傲慢」が、登場する人たちの中で目まぐるしく表れて…
男性視点のパートの後半は、読んでいて息苦しく嫌な気持ちになるくらいでした。
それは巻末の解説で浅井さんが指摘していたことそのもののせいだと、読了して気づきました。
それだけに、ラストは納得できないというか、主人公達を理解できませんでした。
皆さんは、どう読んでいるんでしょうか。
Posted by ブクログ
どんな内容かまったく知らずに読み始めたので、婚活の話なのかと思い始めたときは若干本を閉じたくなったが、真相は気になり結局最後までページをめくる手は止まらなかった。
私自身、主人公女性と同年代の独身で、実際に結婚などについてリアルタイムで考えを巡らせていたりするので、婚活する男女の深い心理描写には見たくないものを見てしまったような感覚。
割と早い段階でタイトル回収され、そこからそれぞれの持つ傲慢さと善良さが見えてくる。読み進めながら、女性側の心理に「共感できないな」「こうなりたくないな」と感じ、そんな自分自身にも傲慢さがあることに気づかされ、なかなか苦しい。
そんな心理描写を受け止めきれず、だんだんいらいらしてきて、これを書いてるのは一体どんな人なのだと、作者は女性だと思ってたけど男性だったのか?とまで無駄に勘ぐってしまうほど。
小説がどのくらいビジネス的に創り込まれるものなのかはわからないが、読者ターゲット層のド真ん中おそらく私はいて、主人公女性に自身を置き換えたときに感じる共感と軽蔑の微妙なラインを作者によって攻めてこられたような気がした。
物語が物語の中に収まらず、その共感と軽蔑の隙間から「お前も傲慢だ」と言わんばかりに読み手の心理にじわじわ入り込んでくる感じが、この話が「刺さる」と言われる所以なのかもしれない。
そして私自身に最も「刺さった」のは、「自己評価は低いのに、自己愛は強い」という表現。これは素直に自分にもあてはまると思った。自己評価と自己愛は必ずしも一致しない。でもそれは、多くの日本社会に生きる人に言えることなのではないだろうか。自己評価を自己愛と同じぐらい高く持てばいいというものでもないし、逆に自己評価も自己愛も低かったら、おそらく生きていけない。実際、主人公女性は、ちゃんと自己愛があったから、青天の霹靂があっても自分で自分を落ち着かせる時間と居場所をつくるとができたのだと思う。
人は、傲慢さも善良さも兼ね備えている。自己愛も大事。というのが、私がこの話から得たものだろうか。
あとそれから、「結婚相談所は最後の手段じゃなく、最初の手段である」ということも。
ちなみに私は、主人公女性の名前が「真実(まみ)」であることから、彼女の話は真実(しんじつ)なのではとずっと思っていた。この名前が出てくるたびに「しんじつ」と読んでしまって何度も頭の中で読み直さないといけなかったので、違う名前にしてくれればよかったのにと思ったのだが、やはり、彼を好きだという気持ちは真実(まみ)のもので、真実(しんじつ)であったのだと思う。真実(まみ)と架(かける)の間にある、真実と架空、というのがこの話のテーマだとも言えるだろうか。
真実を軽蔑しながらも最後まで信じていた私には、「善良」な面もあったのかもしれない。
Posted by ブクログ
結果ハッピーエンドで良かったけど正直登場人物が誰も好きにはなれなかった。
でも私も「ピンとくる」の感覚がずっと分からなくて出会う人にピンと来ないって思ったことは多々あって、それが自分に見合う人じゃない、自分のレベルに合う人じゃないって無意識に思ってる感覚がピンと来ないなんだって言うのがなんかとても腑に落ちてちょっと自分の傲慢さを見直すきっかけになった。
あと善良すぎて損するって確かになと思ってずるさとかも必要だよな~って、今更な所でいい子ぶってないで出来る行動はしてから後悔しようよって思えた。
Posted by ブクログ
読み始めは共感することばかりで、自分の気持ち知られてる?って思うほどびっくりした。
一つ一つの描写の解像度が鮮明すぎた。
読み進めて真美が失踪してる真実も分かり、けどその理由にはまあり共感できなかった
あんまりかも。
オチが早い段階で分かる人には、あんまりかも。と思いました。
作者の世界観のリアルな女性像があまりにも簡易的すぎて、本当はもっと女性ってややこしいのになーって感じです。
匿名
微妙
微妙というか全くつまらなかった。
唯一主人公のみがまともな人間で、真実とスーパー過保護な母は読んでてイライラした。
真実は結局のところ自立できていないまま終わり、終盤に浮気の雰囲気もなぜか出てきて意味不明。
半年もの間、身近な人間に迷惑をかけた自覚があるのだろうか?
なんでここまで本の評価が高いのか微塵も理解できなかった。
やたら長い割に「え?それで?」という結末なのでガッカリ。
本を一言で言うと「傲慢=恋愛の理想を求める自分の欲望」「善良=自分を愛するあまり性経験の少ない状態」のこと。
主人公は傲慢で善良。笑
解説は良かった。