筑摩選書作品一覧

  • ことばの道草 ――言語学者の回想と探求
    NEW
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    日本における社会言語学の泰斗が来し方を振り返り、人生と研究に思いをめぐらせるエッセイ集。幼い日の思い出から語り起こし、言語学を志すに至った経緯、なぜソ連研究やモンゴル研究、さらにはクレオール研究までを志すようになったのか、そのいきさつを綴る。数多くの道草をやり過ごして先を急いできた言語学者が、こころに残るそれらを思い起こし書きとめた断章のつらなりから、領域を横断する知の世界が見えてくる。 【目次】まえがき──この本を書くわけ/I 幼き日々の残照/II モンゴル研究からシベリアへ/III ドイツからフィンランドへ/IV 道草の数かず/V クレオール語研究の初しごと/VI 抵抗する言語──ウクライナ問題と言語学/VII ノモンハンのたたかい──モンゴルの存立/あとがき
  • 議会制民主主義という神話 ――イギリス近代史の真実
    NEW
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    「議会制の母国」といわれるイギリスにおいてすら、議会は民主主義を実現するために形成されたものではない。成り立ちの異なる議会と民主主義の相性は悪く、今日その破綻が指摘されている。では本来イギリス議会政治とはどのようなものか。その転換点となったディズレーリvs.グラッドストンによる「奇蹟の10年間」(1866-76年)にイギリス政治は、貴族政治から、労働者階級までを取り込んだ大衆民主政治へと転換を遂げた。この原点からイギリス議会政治の本質を捉え直す。 【目次】はじめに/序章 議会制民主主義という神話/第一章 自由主義のためのイギリス議会(前史)/第二章 議会政治の転換期 第一幕──ジェントルマンと大衆/第三章 議会政治の転換期 第二幕──保守党と自由党/第四章 議会政治の転換期 第三幕──ディズレーリとグラッドストン/第五章 大衆民主政治の到来と議会政治の衰退/終章 議会政治に再生はあるのか/おわりに
  • 日本政治、再建の条件 ――失われた30年を超えて
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    機能不全に陥った日本政治。いまや自公は少数与党となり、一方で野党はまとまることができず、右派ポピュリスト政党が存在感を増している。こうしたなかで、わが国の政治を立て直すには何が必要か。「平成の政治改革」から現在まで、野党再編、政権構想、選挙制度改革、ジェンダー平等、西欧の右派ポピュリスト政党、2025年参院選など複数の視点から検証。現在地を浮かび上がらせるとともに、来るべき日本政治を展望した、必読の論集! 【目次】はじめに(山口二郎)/第一章 日本政治の失われた三〇年と野党の蹉跌――なぜオルタナティブは生まれなかったか(山口二郎)/第二章 平成の政治改革と「二党制の神話」――なぜ小選挙区比例代表並立制は機能しなかったのか (中北浩爾)/第三章 ジェンダー政治の三〇年――平等で包摂的な社会に向けた成果と課題(辻由希)/第四章 政党政治の危機状況――西欧の混迷から考える(古賀光生)/終章 二〇二五参議院選挙と政党政治の再編(山口二郎)/あとがき (中北浩爾)
  • アメリカの覇権喪失と世界の転換
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    1巻2,244円 (税込)
    アメリカはついに覇権国の地位から脱落し、民主的な国際社会の構築という大実験のリーダー役を自ら放棄してしまった。なぜアメリカは覇権を失ったのか。中国はアメリカに代わる覇権国となりうるのか。急激に存在感を高めるグローバル・サウス、旧覇権国であるヨーロッパの国々の動向は? そしてその中で日本はどう動くべきなのか――大転換の時を迎えた国際社会における、世界各国の動きと今後の展望を、長年にわたり国際政治を見つめてきたジャーナリストが鮮やかに読みとく。 【目次】はじめに/第1章 世界がアメリカに引導を渡す/第2章 脇役の暴走が、世界の構図を書き換える/第3章 アメリカが失ったものの大きさを知るとき/第4章 中国の夢──単なる強大国か、真の覇権国家か/第5章 グローバル・サウスは従来の世界秩序に挑戦する/第6章 我々は民主主義を捨てられるのか/終章 ヨーロッパが「新たな世界」に向けて持つ意味/あとがき
  • エメ・セゼール ――「黒人(ネグリチュード)」の発明
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    現代カリブの最重要知識人セゼールは、『帰郷ノート』(1947)で「ニグロ」の語から「ネグリチュード」概念を創出し、植民地主義を批判。一躍世界的な詩人としての評価を確立した。政治家としても半世紀にわたり市長と国会議員を兼任し、詩と政治の2つの営みによってマルティニークがフランスの「共和国」理念に基づく「都市(シテ)」となることを目指した。セゼールを、彼と共振した人々の歩みとともに、公文書資料やセゼール自身へのインタビューをもとに描き出す、日本で初めての画期的評伝。
  • 地方自治全史
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    明治時代の「官治」の地方制度から、戦後の民主化、高度経済成長期、「地方の時代」と呼ばれた1980年代、地方分権改革が行われた平成期をへて令和の現在まで、日本の地方自治を一望に収める初めての全史。時代ごとに、国政レベルとの地方自治の関連や、全国的にも有名になった代表的な知事とその県政も紹介し、自治体行政の歩みを具体的かつダイナミックに理解できるよう配慮。平成の改革とは何だったのか、地方と国政の関係はどうあるべきかを問いなおす、最良の概説書。
  • 松本清張と水上勉
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    ほぼ同時代を生きた松本清張と水上勉には、意外にも共通点が多い。最大の共通性は雑食性。ともに社会派ミステリ作家として出発するもミステリ以外にも手をつけ、清張は小説・ノンフィクションの二刀流を展開し『昭和史発掘』『古代史疑』など歴史評論にも進出、水上勉も『寺泊』で川端康成文学賞を受賞した私小説路線と並行して、寂れゆく辺境や滅びゆく伝統工芸のルポルタージュ、一休や良寛といった高僧の評伝に新境地を切り開いた。好一対だった大作家の歩みと名作を読み解く。 【目次】序章 清張と勉――その軌跡/第1章 文壇作家時代の松本清張/第2章 初期水上勉は私小説家だったのか/第3章 清張の乱歩批判/第4章 『天城越え』は『伊豆の踊子』をどう超えたか/第5章 清張の江藤淳批判/第6章 映画「砂の器」は小説をどう補修したか/第7章 『点と線』から『日本の黒い霧』へ/第8章 推理小説家時代の水上勉/第9章 日本型私小説を究める――その後の水上勉/第10章 国民的文化人・松本清張――『読書世論調査』の結果から/第11章 言葉を超えた世界へ・水上勉――『才市』の奇跡/あとがき/松本清張・水上勉年譜/人名索引
  • 和平学入門 ――戦争を止める13の法則
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    戦争を止めるにはどうすればよいか。紛争を和平合意へと至らせる方法を科学的に研究してきた紛争解決学を、さらに「和平学」へと刷新。日本国内の法的な視点から紛争解決学を実践してきた弁護士と、NGOを通じた実務と研究の二刀流で国際紛争における紛争解決学を追究してきた国際政治学者が、数多くの実例から導き出した13の和平法則をもとに、和平合意までの交渉・仲介の道と和平合意後の平和構築の道を理論と実践を往復しつつ描き出す、和平への新たな知的挑戦。 【目次】はじめに 廣田尚久/序章 和平学とは何か――紛争解決学2.0/第一章 法律学からの紛争解決学(ミクロ起点)/第二章 国際関係論からの紛争解決学(マクロ起点)/第三章 和平法則――戦争を止める13の道標/第四章 和平合意――交渉と仲介の諸理論/第五章 和平合意後の和解/第六章 日本外交の羅針盤――和平法則を用いた仲介者/終章 平和実現へのパラダイムシフト/参考文献/あとがき 上杉勇司
  • 日本哲学 ――世界哲学への貢献
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    西洋哲学の概念や思考法のみが純粋なものであるという特権的な意識は、いまや世界的に大きな批判に晒されている。西洋独占主義的な哲学観を輸入した日本が、「日本哲学」を再び検討すべき時期がやってきた。アメリカ、日本、ドイツでハイデガーの哲学、現象学・解釈学から仏教思想・京都学派までを幅広く研究し、日本の哲学史を専攻の一つとしてきた著者が、日本哲学とは何かを、定義・内容から深く問い直し、世界規模の対話に開かれた日本哲学がもつ可能性を総合的に考察する。 【目次】まえがき/序 章 日本哲学の定義と範囲を再考する/第一章 日本・哲学・とは何か/第二章 西洋独占主義的な哲学観を問い直す/第三章 日本哲学の定義を問い直す/第四章 日本哲学の内容を問い直す/終章 世界における日本哲学、日本における世界哲学/参考文献/解説 世界の思考資源としての日本哲学 中島隆博
  • 戦争に抵抗した野球ファン ――知られざる銃後の職業野球
    4.0
    日中戦争から太平洋戦争へと戦線が拡大し、すべてが戦争に奉仕させられる時代にも、野球場には、戦争から背を向けるように声援をおくる名もなき野球ファンたちがいた。彼らは一体何を思い、そこに何を観たのか? プロ野球創成期をノンフィクションという形で切り取り、戦争の悲惨さを語り続けてきた著者が、戦後80年を機に、これまで語られてこなかった市井の野球ファンたちの姿に焦点を当て、戦時下の野球文化を描く。 【目次】第1章 魅了された人々/第2章 襲いかかる戦火/第3章 強まる戦時統制/第4章 密かな娯楽/第5章 反骨の人々
  • 詳伝 小杉放菴 ――近代日本を生きた画家とその交流
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    若き青木繁のライバルであり、国木田独歩も認める文才の持ち主。洋画家として「日展」の前身である「文展」で二年連続の最高賞受賞。欧州遊学後は南画を手掛け、「片ぼかし」の手法を編み出すなど、横山大観ら多くの日本画家たちに影響を与えた。春陽会の設立の中心人物として活躍し、東京大学安田講堂の壁画を完成させる。美術史上いくつもの重要な役割を果たしたにもかかわらず、その多彩な才能ゆえ全体像が理解されにくかった小杉放菴の本格的評伝。 【目次】表現の地肌に触れる。──小杉未醒(放庵・放菴)への道案内 水沢勉/はじめに/第一章 日光の山中にて/第二章 不同舎入塾/第三章 『戦時画報』特派員/第四章 独歩と共に/第五章 水戸コネクションの拡がり/第六章 田端の運動家/第七章 『方寸』同人/第八章 欧州遊学/第九章 日本美術院再興をめぐって/第十章 春陽会設立/第十一章 壁画制作への情熱/第十二章 『奥の細道画冊』の旅/第十三章 摠見寺その他の襖絵/第十四章 赤倉の山荘にて/あとがき/参考文献一覧/人名索引
  • 昭和期の陸軍
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    現代人に必須の知識である昭和史。だが昭和の戦争・軍隊とりわけ陸軍の歴史については、少なからぬ間違いを含んだ書籍が広く流通しており、正確な叙述による理解が求められている。本書は、長年にわたり昭和陸軍史研究をリードしてきた著者による、信頼できる昭和陸軍史論集。大正時代の陸軍の考察から始まり、昭和陸軍の派閥抗争史、二・二六事件の真相とその研究史など、昭和陸軍の理解に不可欠な論考を収録。昭和戦争史のブックガイドまで完備した、昭和史理解に必携の一冊。
  • 関東大震災 虐殺の謎を解く ――なぜ発生し忘却されたのか
    5.0
    関東大震災で多くの朝鮮人が殺されたのはなぜか。荒唐無稽な流言に人びとが脅えたのはなぜか。百年を経た今も謎の歴史に迫るため、陸軍の記録、小学生の作文、海軍練習艦の無線傍受録、隠されていた閣議の決定、恩赦をめぐる行政文書など新たな手がかりを読み解き、実際に何が起きていたのか、多くの犯罪者が罪に問われなかったのはなぜか、虐殺はなぜ忘却されたのかを徹底追及。人間の行動の深層にあるものを冷静に問い続けるジャーナリストによる関東大震災研究の集大成。
  • 対話と論争で読む哲学史入門
    -
    哲学は「驚き」から始まる――とプラトンは言った。古代ギリシアに端を発し、連綿と現代までつながる思索の歴史を、かつてない方法で辿ろう。哲学は、ある時は二者の議論と吟味により、またある時は別の視点からもたらされる対立関係により展開してきた。この本では、その流れを「存在論」、「倫理学」、「政治学」の3つに分け、さまざま問題を哲学者たちがどのような考え、その思索がいかに鍛えてきたかをわかりやすく解き明かす。今、新しい「哲学史入門」の扉が開く!
  • 復帰50年の沖縄世論
    -
    沖縄では、米軍基地に対する態度と、自身のナショナル・アイデンティティの位置づけが結びつくような状況がある。2022年9月、両者の複雑な関係を明らかにするために行われた世論調査は、沖縄県民3800人を対象とし、1000人以上から回答を得た大規模なものになった。本書は、その結果から見えてきたものを示す。
  • 戦争と西洋 ――西側の「正義」とは何か
    -
    20世紀に世界は二度の全面戦争を経験した。主権国家が並び立つ国際秩序を確立した〈西洋〉が、外部を征服し「世界化」したそのとき、世界中を巻き込む大戦争が起こったのだ。総力戦と化した戦争は核兵器を生み、戦争は人類破滅を招きかねない「不可能」なものとなった。にも拘わらず、世界大戦終結から80年、世界はふたたび全面戦争への傾斜の上に立っている。冷戦終結が世界の平和をもたらすはずではなかったのか? なぜこうなったのかを西洋精神史を参照項に検証する。
  • 美学講義 ――バウムガルテンからグリーンバーグへ
    -
    夏目漱石、森鷗外、高山樗牛、岡倉天心、萩原朔太郎らが、ハルトマン、カント、ヘーゲル、クローチェなどの「美学」といかに対峙したかを詳述する「美学の近代」。ヴァレリーによる「制作学」を考察し作品概念の地平を拓く「美学批判をめぐって」。20世紀アメリカを代表する美術批評家グリーンバーグの「批評」に対する数々の「批判」を採り上げ、現代芸術と連動する実践的批評と美学との関係を問う「批評と美学」。「美学すること」を追求する著者畢生の美学講義。
  • スピノザ ――「変性の哲学者」の思想世界
    -
    スピノザは、17世紀の他の思想家に比し、人間像と思想像において際立つほど多面的に受けとめられてきた。ユダヤ教会からの「破門」によって始まった「思考する実存」としての生。著作や書簡の読解から浮かび上がる固有の「精神の運動」。それらはどのような思想世界を形づくったのか。本書は、従来のイメージにとらわれることなく、スピノザにおける倫理学と政治学、そして聖書批判の内的連関を見定め、その思想を統一的に描き出す。
  • 情報敗戦 ――日本近現代史を問いなおす
    4.0
    この国において、政府やメディアなど権力の「大本営発表」への批判精神が皆無なのは八十年前と同じ。知識人も庶民もしっかりとした歴史を見る眼を持たず、歴史に無関心なため、いま再び「情報敗戦」に直面しているのだ。正しい歴史観を持たない限り、日本は今後も新たな敗戦への道をひた走るだけだろう。松本清張や辺見庸、アレントやサイード等々、内外の知識人たちの遺してきた貴重な史論や思想を手掛かりに、日本社会に隠された「情報のカラクリ」を暴き、歴史の虚実を検証する。 【目次】はじめに――「情報のカラクリ」/序章 問題の発見/第1章 史観で眺める日本/第2章 「昭和維新」と満洲/第3章 清張史観の遺したもの/第4章 戦後日本とは何か/第5章 世界史的大転換/第6章 人間とは何か/第7章 「民主主義は暗闇の中で死ぬ」(Democracy Dies in Darkness)/結章 絶望に抗う/あとがき――なき妻へ
  • 江戸・東京水道全史
    -
    徳川家康による都市建設の当初から、江戸の水道は高低差を緻密に計算し、複雑な地形を利用する形でつくられてきた。中心部の小石川上水、それを発展させた神田上水、そして玉川上水を基盤とした水道は、明治以降には近代化され引き継がれてきた。急速な工業化や関東大震災からの復興、戦後復興・高度成長を経て水道がいかに拡張され、また経営されてきたか。江戸・東京の経営史を専門とし、東京都水道局に長年勤務してきた著者による、世界屈指の都市の決定版水道史。 【目次】プロローグ/I 江戸時代/第1章 家康と水道/第2章 天下普請の時代/第3章 城下町・江戸と神田上水/第4章 玉川上水の新設/第5章 上水経営の実際/II 明治時代~現代/第7章 近代水道にいたる道のり/第8章 近代水道の成立と関東大震災──拡張の始まり/第9章 大東京と水道/第10章 拡張に次ぐ拡張の時代──戦災復興期から高度経済成長期まで/第11章 量から質へ──低成長時代から現在まで/あとがき/索引
  • ドキュメント 北海道路線バス ――地域交通 最後の砦
    4.0
    鉄道廃線を引き継いだ北海道の路線バスは、過疎化や少子高齢化により危機に瀕している。自然環境もきびしく、冬の日本海沿いでの運行は突風、ホワイトアウト、猛吹雪で困難を極めるが、運転手は高度な運転技術と旺盛な使命感で日々闘っている。バス輸送の現場はいかなる問題に直面しているのか。運行管理者、運転手の生の声を徹底取材。DMV、BRTの現在や、イギリスのバス復権の動きも調査し、バス2024年問題や運転手不足への対策に向けた提言も行う。 【目次】まえがき/第一章 真冬の路線バス――過酷な気象条件のなか北を目指す/第二章 自然とのきびしい闘い――今日も走る国鉄代替バス/第三章 生活バス路線を守る――道東・中標津町の闘い/第四章 道北を走る長距離都市間バス――札幌~枝幸298㎞、5時間半の旅/第五章 日本最北のバス路線――宗谷バスを走らせる人たち/第六章 人手不足社会への試行――自動運転バスはどこまで進化するか/第七章 DMVとBRT――バスの可能性を広げる試み/第八章 イギリスのバス復権――徹底したバス優先施策で利用客を呼び戻す/第九章 続く路線バス運営の試練――コロナ禍と2024年問題/終章 バス運転手不足への提言/あとがき/参考文献
  • 虚構の日米安保 ――憲法九条を棚にあげた共犯関係
    -
    そもそも日米安全保障条約は虚構であった。1960年の日米安保改正での岸首相とダレス国務長官の非公式合意が、今日も変わることなく継続している。日米地位協定、核密約、憲法九条の棚あげ、安保条約を再定義した日米安保共同宣言、そして日米政府間協議の実質的な最高権力化……。本書は歴代内閣と米国による日米共犯関係の戦後史をえぐり出す一方、米国の戦後一貫した安全保障政策、同盟国・米国と日本との信頼にズレが生じつつある実態を解明する。 【目次】序章 日米安保と日本国憲法/第一章 日米、異なる安保構想/第二章 被爆国にとっての核の安全保障/第三章 日米軍事一体化と憲法九条/第四章 「セキュリティ」──原点と変遷/第五章 地殻変動期に入った日米安保/終章 立憲主義の復権を目指して
  • 国連入門 ――理念と現場からみる平和と安全
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    ウクライナ侵攻とガザ情勢の悪化以降、国連は機能不全に陥っている。国連は現在どうなっているのか。冷静沈着に国連の役割と限界を見据え、いま何ができるかを考えることが重要である。外交官として国連日本代表部に二度勤務した著者と、長年にわたり国連の理論的研究に携わってきた著者の二人が、現場での実務経験を縦糸に、研究者の体系的な理解と分析を横糸にして、国連の実像に迫る。初学者にも、学びなおす人にも、最先端の情勢と研究を知るために有益な画期的入門書。
  • 清沢満之の宗教哲学
    3.0
    明治期、真宗大谷派(東本願寺)の一僧侶としてその半生を生きた清沢満之。40歳を待たずに病没したが、日本の哲学界に深い影響を与えた思想家でもある。しかしこれまで彼についてなされてきた理解は妥当なものであったのだろうか――。本書は、生い立ちや時代的背景を踏まえ、「教」「行」「信」「証」という4つの観点から清沢の宗教哲学の根幹に迫る。厳密なテキスト読解によって定説を覆し、清沢の全体像と思想的意義を鮮やかに呈示した著者渾身の書。
  • ゴッホ 麦畑の秘密
    4.3
    カラスが飛びたつ不穏な麦畑、激しく渦巻く夜の空、黄色の花瓶に生けられた黄色のひまわり……ゴッホの描く絵画はその純粋で孤独な魂そのものだ。耳切り事件やピストル自殺により、狂気の画家・悲劇の主人公とも言われてきたこの画家は、発作が起きていない時は知的かつ冷静な画家として、わずか十年余の間に2000点以上の作品を制作したという。ゴッホの夢や恋愛の挫折、芸術修業、自己懲罰癖、知られざる人間像と画業の真実に、長くオランダに住む美術史家・画家である著者がかつてない光を当てる新しい力作評伝。
  • ほんとうのフロイト ――精神分析の本質を読む
    4.0
    フロイトの慧眼は人間論にある。人間の欲望と不安に関するフロイトの深い洞察にこそ、普遍的な人間性の本質がある。人間性に関するフロイトの理論――幼児性欲論やエディプス・コンプレックス、リビドー論、去勢不安など――は独特な仮説で、科学的に証明できない。だがその理論が指し示す現象の意味を吟味し、仮説の裏側にある本質を考察するという「本質学の観点」から諸理論を捉えなおせば、現代的な意義が明らかになり、見過ごされてきたほんとうのフロイト像が見えてくる。
  • 都市社会学講義 ――シカゴ学派からモビリティーズ・スタディーズへ
    -
    都市社会学とはどんな学問か。絶えず変調しつづける現代世界において、なおも都市という場に注目する意味とは何だろうか。20世紀初頭の「衝撃都市」シカゴに花開いた古典的な都市社会学やその批判者であるニュー・アーバン・ソシオロジー、世界経済の緊密化とともに台頭する空間論や移動論的転回。そこで何が問われ、何が見落とされてきたか。長年、都市社会学やコミュニティ研究を主導し、モビリティーズ・スタディーズの導入に尽力してきた著者が都市/都市社会学の軌跡をたどり、その現状と可能性を問う。
  • 比較文明学の50人
    -
    古くから、日本の思想や宗教はつねに自己を他者と熱心に比較してきた。そうした知的伝統から、きわめて独創的な比較文明論が数多く産み出されてきた。本書では、本居宣長、岡倉天心、鈴木大拙、賀川豊彦らを経て、現代の梅棹忠夫、伊東俊太郎、石牟礼道子、緒方貞子に至る鋭敏な比較文明的感覚を持っていた日本の50人を選出。比較文明学会に所属する17人の研究者が、日本の比較文明学とはなにかを問いつつ、50人が繰り広げる豊かな知の世界を縦横無尽に論じる。
  • 基軸通貨 ――ドルと円のゆくえを問いなおす
    3.5
    現在、米ドルは基軸通貨としてますます強くなっている。なぜドルは基軸通貨になったのか。そもそも基軸通貨とは何か。基軸通貨の定義や成立経緯と、米ドルを中心に構築された現代の世界経済体制を解説し、米ドルの覇権に挑戦してきた国際通貨の歴史を検証。さらに近年における新興国のドル離れ、脱ドル化について分析し、将来的に米ドルの基軸通貨としての位置づけが揺らぐ可能性についても検討。そして日本円が米ドルとの関係の中でどうなってゆくのか、そのゆくえを展望する。
  • 個性幻想 ――教育的価値の歴史社会学
    5.0
    なぜ「個性」は人々を惹きつける社会的テーマとなったのか。日本社会は「個性」にどんな理想=幻想を思い描いてきたのか。大正期に教育的価値として「個性」が浮上し最初のブームが起こったあと、1980年代に再ブームが到来。『窓ぎわのトットちゃん』のヒットもあり、臨時教育審議会で「個性化教育」路線が推進される。そして社会的価値として定着したこの言葉は、現在も「障害も個性」のような言説によって論争のタネであり続けている。日本の公教育の歩みに即しつつ、「個性」概念の来歴を振り返る。
  • アルジャイ石窟 ――モンゴル帝国期 草原の道の仏教寺院
    5.0
    1巻1,925円 (税込)
    13世紀のモンゴル帝国時代に大きく栄えた、内モンゴル草原の知られざる石窟寺院、アルジャイ石窟。その歴史と文化を歴史人類学的視点と文献学的視点の両面から解説する初めての本。モンゴルとチベット仏教の関係から説き起こし、アルジャイ石窟をめぐる政治的・宗教的勢力の興亡を描きつつ、石窟寺院の考古学的特徴と石窟内部の貴重な壁画や文字・写本などの文化財を紹介。チベット仏教の世界化へのモンゴル人の関わりと、草原の道、遊牧民の世界での仏教信仰の実態を解明する。
  • 天皇たちの寺社戦略 ――法隆寺・薬師寺・伊勢神宮にみる三極構造
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    古代の天皇たちが建立した社寺建築は天皇の血筋を可視化し、即位の正統性を強くアピールしていた。社寺建築の配置タイプは天皇たちの血筋に明確に対応していたのだ。聖徳太子創建の法隆寺若草伽藍は塔と金堂がタテ一列だったが、天智天皇はこれを真っ向から否定し、塔と金堂がヨコに並ぶ法隆寺西院伽藍を建立。一方、天武天皇は三極構造の薬師寺を建立し、その妻持統天皇は三極構造を伊勢神宮の社殿配置に導入した。〈タテ→ヨコ→三極〉の変遷に秘められた天皇たちの戦略を探る。
  • 日本半導体物語 ――パイオニアの証言
    3.0
    1955年にトランジスタラジオをソニーが商用化して以降、日本の半導体産業は次第に地力をつけ、80年代末には世界トップの市場シェアを獲得した。だがその後、日米半導体摩擦の影響を受け弱体化が始まり、摩擦が収まった後も日本半導体の市場シェアの低落傾向は続いて今日に至っている。この栄枯盛衰のドラマの裏側には技術者たちの奮戦があった。日本の「ミスター半導体」と呼ばれ、生涯を半導体とともに歩んできたレジェンド技術者が語る、業界の内側から見た日本の半導体開発70年史。
  • 「信教の自由」の思想史 ――明治維新から旧統一教会問題まで
    3.3
    欧米のように血みどろの戦争と迫害の中から生み出されたのではなく、いわば上から降ってきた「信教の自由」を、日本人はいかに受け止め、その法規定の解釈・運用や改正をめぐり議論してきたのか。宗教者・知識人らの論争から、その底流にある「信教の自由」をめぐる思想の変転を跡づける。さらに、オウム真理教事件を契機とする宗教法人法改正にあたって論議となった創価学会と政治との関係、安倍晋三元首相銃撃事件後の旧統一教会の被害者救済などの政策動向などを踏まえて、今後の「信教の自由」のあるべき姿について提言する。
  • 戦場のカント ――加害の自覚と永遠平和
    -
    哲学者カントが訴えた〈永遠平和〉の眼目は、敵意が終わることにある。しかし、それは人間に可能なのか――。「撫順戦犯管理所」。中国で非道を為した日本兵たちがいた場所である。ここで中国人と日本人の間で起きた事態は、カントの理念の現実性を鮮烈なまでに突きつける。撫順を経た人々に加え、本書はアウシュヴィッツ収容所の帰還者やパレスチナ紛争の被害者の声にも耳を澄ませ、人が人を赦すことの意味を問う。人間の根底に光をあてた哲学的考察。
  • 坂本龍馬の映画史
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    映像作品での坂本龍馬の描かれ方は大きく変わってきた。サイレント映画では阪東妻三郎や月形龍之介、榎本健一といったスターが龍馬を演じた。戦後しばらくは主役級が龍馬を演じることはなく、それを転換したのが司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』。土佐弁を喋る庶民的合理主義者として龍馬は映像化され一躍人気者となる。1970年代以降は革命家のイメージやテレビドラマでのヒーロー、パロディー作品など多様に龍馬は演じられていく。龍馬イメージの変遷に歴史観と時代の価値観の反映を見る。
  • 人種差別撤廃提案とパリ講和会議
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    1巻1,760円 (税込)
    1919年パリ講和会議、それは日本が初めて大国として世界の檜舞台に立った瞬間だった。日本による人種差別撤廃提案は、人種差別否定という重要な世界史上の意味を持つと同時に、大国日本が国際会議で注目を浴びた最初の案件だった。本書は日本が有色人種のために利他的に人種平等を主張した提案だとことさら持ち上げるのでも、山東権益の取引材料として持ち出しただけと貶めるのでもなく、人種差別撤廃提案の真実の姿を明らかにし、その歴史的意義の正当な評価を試みるものである。
  • アメリカ大統領と大統領図書館
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    アメリカ合衆国大統領の様々な記録やゆかりの品々を収集、保存、展示、提供する稀有な施設、それが大統領図書館だ。第31代ハーバート・フーバーから第43代ジョージ・W・ブッシュまで、全米各地に現存する全13館を訪れ、それぞれの大統領の知られざる横顔とともに紹介する。大統領資料をめぐる制度や現在の大統領図書館が抱える問題はもちろん、大恐慌、第二次世界大戦、ウォーターゲート事件、ベトナム戦争、ソ連と核軍縮、9・11……「その時、大統領は何を考えたか」を描く。アメリカ現代史とそれを彩る歴代大統領を知る格好の入門書。
  • 空白の團十郎 ――十代目とその家族
    -
    十代目市川團十郎(本名・堀越福三郎)は、明治の名優・九代目市川團十郎の長女・實子の婿養子。「慶應」を出て銀行員として勤めたが、九代目の死後、30歳を前に歌舞伎の世界に身を投じ市川三升を襲名。1956年に75歳で亡くなる近くまで舞台に立ち続け、死後「十代目」を追贈された。これまで経歴に不明点が多く、はっきりと評価もされてこなかった十代目は。果たして「團十郎」の名跡に値しない人物だったのだろうか。「空白の團十郎」の生涯を、家族との関わりとともに描き出す。
  • 日蓮の思想 ――『御義口伝』を読む
    4.0
    『御義口伝』は、日蓮が身延山で口述した法華経についての講義を、弟子の日興が筆録したものとされるが、その難解さ故に解説書は少ない。そこに展開されている日蓮の法華経解釈、ひいてはその底流にある仏教思想を、NHK「100分de名著」の名講義でも知られる著者が懇切丁寧に解説する。南無妙法蓮華経と唱えるのは、失われた自己を回復し、真の自己に目覚め、人格を完成させるためだと日蓮は説く。そうした日蓮の人間主義の思想を、『御義口伝』をテーマ別に再編成しつつ読み解く。
  • イエスは四度笑った
    5.0
    キリスト教において正典とされる四つの福音書のどこにも、イエスの笑いは出てこない。だがナイル川流域の土中から1970年代に発見された『ユダの福音書』では、イエスは四度笑っている。一人のグノーシス主義者によって書かれたこの笑いはいったい何を意味するのか。じつは四度ならず、イエスは大いに笑ったのだ――『寅さんとイエス』で、イエスが寅さんのようなユーモアに満ちた存在だったことを描き出したカトリック神父が、聖書のミステリーに挑む。 【目次】はじめに/第一章 イスカリオテのユダと『ユダの福音書』/第二章 イエスを四度笑わせた『ユダの福音書』/第三章 正典福音書におけるイエスの〈怒り・苦しみ・悲しみ・喜び〉/第四章 正典福音書におけるイエスの〈ユーモア〉/第五章 正典福音書におけるイエスの〈笑い〉/追記1 聖夜を前に聖書ひもといて/追記2 ガザの「壁」/おわりに
  • 人新世と芸術
    -
    人新世(アントロポセン)。人類が地球の地質や生態系に与えた影響に注目し、近年提唱されている地質区分である。人新世は、気候変動や環境破壊をもたらし地球を危機に陥れた。では芸術はこれとどうかかわってきただろう。美術作品は環境変化にきわめて敏感であり、芸術とサイエンスをつなぐものとしてエコロジーの思想は培われてきたのではないか。そういった見通しの下、17世紀から20世紀に描かれた美術作品に焦点を当て検討する。優れた観察者で、記録者だった画家たちはその変化をどう描いただろう。新たな西洋美術の見取り図を提案する。 【目次】第1章 かつて地球は寒かった――小氷期とコロニアリズム/第2章 エコロジーとエコノミー/第3章 火山の噴火/第4章 アルプスの氷河/第5章 産業革命の表象/第6章 霧のロンドン/第7章 印象派と大気汚染
  • 訟師の中国史 ――国家の鬼子と健訟
    -
    1巻1,925円 (税込)
    訟師とは人びとの訴訟を助けた者たちである。彼らは狡智にたけた悪党とみなされ、清代では職業として訴状を代作しただけで、しばしば死刑一歩手前の重刑が科せられた。しかし実際には、それは中国国家が自ら生み出した鬼子であった。宋代以降、訴訟が多発する健訟社会となったのだが、伝統的な政治思想と訴訟制度そのものが逆に人びとに訟師を必要とさせたからである。また訟師には訟師であることに誇りを持つ者さえいた。訟師の全体像を中国史と世界史のなかで初めて明らかにする。 【目次】序章 訟師というカギ/第1章 悪訟師のイメージ/第2章 訟師有用論/第3章 伝統中国の訴訟制度/第4章 訴状への虚偽と誣告の書きこみ/第5章 私代書の容認から処罰へ/第6章 積慣の訟棍/第7章 名士と犯罪者のあいだ/第8章 北京への直訴/第9章 世界史のなかの訟師/第10章 江戸との相違/第11章 訟師自身による訟師観/第12章 訟師の終焉/終章 現代中国の訴訟制限/あとがき
  • 岩波書店の時代から ――近代思想の終着点で
    4.0
    1960年代からポストモダンの時代を通じ岩波書店で多彩な出版活動を展開した大塚信一に、同じく編集者だった堀切和雅が問う――脱魔術化され、人間の精神が寄る辺をなくした近代において学問や芸術は何と格闘してきたのか。河合隼雄・中村雄二郎・大江健三郎・山口昌男・宇沢弘文・木田元・磯崎新らとの仕事を組織しつつ、何を理解しようとしてきたのか。近代の思考もまた新手の魔術だったのではないか。我々はなぜ地球的破局に向かう終着点にいるのか――人類の思想史を対話でたどる。 【目次】はじめに 堀切和雅/第1章 「敗戦」のアンビバレンス/第2章 「近代」という問題群をまるごと問う/第3章 日本近世・準備された逆説/第4章 言語と「場」、そして意識/第5章 「主体」の観念、以前/第6章 「心」──変性するもの/第7章 ポストモダン思想の淵源/第8章 リアリズム・ニヒリズム・ファンタジー/第9章 トポスと人物/第10章 思考空間としての社会/第11章 「場所」から考える/第12章 脱魔術化と再魔術化/第13章 生・ロマン・崇高/終章 いま、破局に至るのか/あとがき 大塚信一/人名索引
  • SF少女マンガ全史 ――昭和黄金期を中心に
    3.3
    1960年代から少女マンガの時代が始まり、70年代半ばになると優れたSF作品が続出、SF少女マンガ黄金期が到来する。岡田史子、竹宮恵子、萩尾望都、山岸凉子、山田ミネコらが頭角を現し、SF的想像力で少女マンガを大きく変えていった。そこにはどんな創作上の冒険があったのか。70年代半ば~80年代の黄金期を中心に、ファンタジー的作品も含め、揺籃期から現在までのSF少女マンガの歴史を、SF評論の第一人者が語りつくす。読み継がれるべき、おすすめ作品ガイドとしても必読の書。 【目次】はじめに――SF少女マンガ黄金期伝説/第1章 SF少女マンガ概史――分かりやすさと独自な表現のはざまで/1 マンガ表現はどうやって生まれたか/2 少女マンガの揺籃期/3 少女にSFは分からない?/4 SFブームと少女マンガ/5 女性SFは何を描くのか/第2章 挑発する女性状理知結晶体/1 山岸凉子――抑圧と理知の先にあるもの/2 倉多江美――シュールで乾いた宇宙/3 佐藤史生――科学と神秘の背反する魅力/4 水樹和佳――王道SFロマンを求めて/5 「見えない壁」と「見える壁」を超えて/第3章 思考するファンタジー/1 少女マンガSFの詩人・山田ミネコ/2 大島弓子――少女の心象はハラハラと舞い散る/3 共同制作と見せ場主義のエンタメSF・竹宮恵子/4 少女感覚とSFファンタジー/第4章 時を超える普遍を見つめて――萩尾望都の世界/1 SFは自由への目醒めをもたらす/2 萩尾SFの絵画論的・音楽論的宇宙観/3 多様な異世界生命体と性別の揺らぎ/4 危機から目を逸らさず、希望を捨てず/第5章 孤高不滅のマイナーポエットたち/1 岡田史子――その花がどこから来たのか私たちはまだ知らない/2 内田善美――圧倒的画力が創り出すファンタジー世界/3 高野文子――絶対危険神業/あとがき/主要参考文献
  • 日本と西欧の五〇〇年史
    4.5
    西欧の歴史は休みない戦争の歴史であり、特に16~18世紀は「軍事革命」の300年だったと言える。西欧はそれを奇貨として、宗教改革によって強化されたキリスト教信仰と「新大陸幻想」に駆られて、新世界の発見・拡大に躍り出る。その歴史はスペインとポルトガルに始まり、オランダ、イギリスを経て、アメリカの「脱領土的世界支配」に至る。そして今日、中国の勃興を背景に流動化する国際秩序は、「新たな中世」の到来を告げているかのようだ。世界覇権をめぐる500年の争いを俯瞰し、日本が立ち向かうべき「現実」の正体に挑む著者渾身の一冊。 【目次】
  • 金正恩の革命思想 ――北朝鮮における指導理念の変遷
    -
    思想が社会を規律統制し、人々の思考を規制している北朝鮮。その体制を引き継いだ金正恩は、祖父の主体思想、父の先軍思想に代わる、現在の困難を乗り越え次の展望を切り開く思想を創出する必要に迫られた。本書は、2011年末からの金正恩時代における指導理念の変遷を通史的に考察し、北朝鮮の置かれた国内・国際情勢とリンクさせつつ検証する。さらに近年、金正恩が提唱している農村における「思想革命」についても紹介。北朝鮮情勢分析の第一人者が、満を持して放つ最新研究報告。 【目次】第1章 金正日総書記の死と金正恩時代のスタート/第2章 金日成・金正日主義/第3章 独自的な指導理念の模索/第4章 人民大衆第一主義の芽生え/第5章 「十大原則」の改編/第6章 第七回党大会/第7章 人民大衆第一主義/第8章 わが国家第一主義/第9章 米朝首脳会談決裂と「正面突破戦」/第10章 コロナ禍と「自力更生」/第11章 第八回党大会と党規約改正/第12章 「人民的首領」への道と「金正恩革命思想」の登場/第13章 「農村革命綱領」=「新農村テーゼ」の提唱/第14章 「わが国家第一主義」の統治理論化/第15章 「金日成・金正日主義」の継承・深化・発展/終 章 金正恩の指導理念を振り返る/あとがき/参考文献・資料/北朝鮮の主な歩み(年表)
  • 漫画家が見た 百年前の西洋 ――近藤浩一路『異国膝栗毛』の洋行
    3.0
    近藤浩一路は藤田嗣治・岡本一平と東京美術学校の同級生。油彩、水墨画を描く一方、漫画記者として活躍した。そんな彼が画家友達とともに1920年代の西洋を初めて訪れる。欧州航路をマルセイユへ、そして芸術の都パリへ。マルク暴落のドイツ、闘牛のスペイン、イタリアでは最先端の未来派の酒場を訪れ、婦人参政権運動が盛んなイギリスにも足を延ばす。異国を訪れる旅が「海外旅行」ではなく「洋行」と呼ばれた時代の異文化体験はどのようなものだったのか? 百年後の私たちの旅と何が違って何が同じなのだろう? 【目次】プロローグ 戦争・パンデミックの終焉と、笑いの紀行文学/第1章 洋服洋食嫌いの、洋行下稽古/第2章 富士屋ホテルで「外遊予習」、東京漫画会の『東海道漫画紀行』/第3章 ツーリズム時代の幕開けと、帝国の郵船の寄港地/第4章 パリで藤田嗣治に、一〇年振りに再会する/第5章 ストラスブールから、敗戦で疲弊したドイツへ/第6章 闘牛に燃えるスペイン、ルネサンス美術のイタリア/第7章 大英帝国のロンドンからパリ、待ち遠しい日本へ/あとがき/『異国膝栗毛』関係年表(1908~1928年)/本書から始まる関連文献10冊の読書案内
  • エラスムス 闘う人文主義者
    5.0
    中世の大ベストセラー『痴愚神礼讃』の名を知る人は多いだろう。ヨーロッパ文化への貢献者に与えられる栄えある賞に今もその名を残す、西洋知性の粋、デジデリウス・エラスムス。宗教改革をはじめ、世俗権力と教会の対立が顕在化し、争いが絶えなかった狂乱の時代を生きた彼は、つねに学問に打ち込み、「何者にもその道を譲らない」という自らの信条が揺るぐことはなかった。派閥に属さない知性的な態度や人間味あふれる魅力的な人柄、「世界市民」としての生き方を、西欧文化を知悉する著者が憧憬をこめて描き出す傑作評伝。 【目次】まえがき/第1章 我、何者にも譲らず/第2章 不信の時代/第3章 変革への底流/第4章 古代へのめざめ/第5章 ふたつの友情/第6章 イタリアへの旅/第7章 ヴェネツィアの印刷業者/第8章 ゆっくり急げ/第9章 『痴愚神礼讃』/第10章 宗教改革の嵐/第11章 嵐のなかの生涯/第12章 自由意志論争/第13章 栄光ある孤立/はしがき
  • 日本思想史と現在
    3.5
    私たちは、私たちの文化と言語とを形成してきた永い歴史を受けて、その流れの中で、感じ、思い、考えている。では、過去にどのようなことがあったために、いま私たちはこのように感じ、思い、考えるのか。そして、その過去に気づくことによって私たちは何を得られるのか――そうした日本思想史と現在の関わりについての問題を研究してきた著者が、これまでに様々な機会に発表してきた短い考察を集成。碩学による「日本」をめぐる長年の思想史探究を集成した、驚きと刺戟に満ちた珠玉の小文集。 【目次】はじめに/I その通念に異議を唱える/II 日本思想史で考える/III 面白い本をお勧めする/IV 思想史を楽しむ/V 丸山眞男を紹介する/VI 挨拶と宣伝/索引
  • 台湾の半世紀 ――民主化と台湾化の現場
    4.5
    1972年日中国交樹立によって、日本は中華民国(=台湾)と断交した。その同じ年に大学院に進学、研究をスタートさせた著者の研究人生は奇しくも台湾が民主化し、中国とは明らかに異なるアイデンティティ(=台湾化)へと進んだ道程と重なる。政府要人や台湾人研究者、歴史的事件の関係者との交流……。いまや中国は経済的にも軍事的にも大国となって、アメリカのライバルへと躍り出た。黎明期から台湾を見つめ続けた著者が、米中両大国に翻弄されつつも主体性を模索する台湾のこれまでを振り返り、現状と今後のゆくえを分析する。 【目次】プロローグ 台湾現代史における一九四九年と一九七二年/第I部 民主化の現場を歩く──オポジションから入る/第一章 日台断交の頃──台湾研究事始めと初めての台湾訪問/第二章 民主化の胎動に触れる/第三章 「自由の隙間」に立ちあがる台湾ナショナリズム/第四章 国民党一党支配の揺らぎ/第五章 民主化と「バランサー」李登輝の闘争──「憲政改革」の政治過程を見つめる/第六章 日本台湾学会の設立──台湾理解の知的インフラ/第II部 台湾化の脈動を見出す──アイデンティティの政治の背景に眼をやる/第七章 船出する新興民主体制──総統選挙が刻む政治のリズム/第八章 大国の狭間で──「中国要因」の政治の登場と米中の対立/第九章 中華民国台湾化論を提起する──台湾政治研究の曲がり角で/第十章 中華民国台湾化の不均衡な展開──新興民主体制下の国家再編と国民再編/エピローグ パフォーマンスする主権──「台湾の定義はまだできていない?」
  • 東京漫才全史
    4.0
    現在も人気のある日本の伝統的芸能「漫才」には「お笑い論」の書籍は数多く存在するが、「漫才」の、特に東京を地盤とした漫才の歴史に関する書籍は数少ない。この「東京漫才」に焦点を当て、漫才の源流にまで遡り、「東京漫才の元祖は誰か?」、「しゃべくり漫才の流入と定着」、「戦後東京漫才の御三家」、「東京漫才専門寄席」、「MANZAIブームの功罪」、「爆笑問題、ナイツの活躍」等をテーマに、その発生と栄枯盛衰を、通説の誤解を正しつつ記した、画期的な「東京漫才」通史。 【目次】序章 「漫才」以前/第一章 東京に漫才がやってきた/第二章 生まれる東京漫才/第三章 戦前の黄金時代/第四章 戦争と東京漫才/第五章 焼け跡から立ち上がる/第六章 東京漫才の隆盛/第七章 MANZAIブームと東京漫才/終章 新しい東京漫才の形
  • 歪な愛の倫理 ――〈第三者〉は暴力関係にどう応じるべきか
    5.0
    DV(ドメスティック・バイオレンス)に代表される、暴力関係から逃れられないひとには、実際、何が起きているのか。問題系を前提とした〈当事者〉ではなく、特定の個人に注目した〈当人〉の語りから議論を始めたとき、〈第三者〉は、どのようにして応答することができるのか。本書は、「なぜ暴力関係から逃れられないのか」という問いへの通説的な見解に対して、再考を迫る。あるべきかたちに回収されない異なるエートスを探求する、刺激的な論考。 【目次】まえがき 親密な関係に生じる暴力を問う――〈当人〉と〈第三者〉のあいだの亀裂/第1章 なぜ暴力関係から逃れないのか【通説編】――専門家らによる見解/1 加害者から離れたがらない被害者たち/2 専門家らによる代表的な回答/第2章 なぜ暴力関係から逃れないのか【異端編】――語られる歪な愛/1 分離以外の解決策の必要性――「離れたくない」/2 〈当人〉の言葉の真正性――「私は相手のことをよく知っている」/3 依存がもたらす救済――「依存によって生きのびられる」/4 欲望される暴力や支配――「私はマゾヒストである」/第3章 分離とは異なる解決策――DVと修復的正義/1 加害者との関係性切断を拒絶する被害者/2 DVにおける修復的正義の実践「サークル・オブ・ピース」/3 DVに修復的正義を適用することへの批判/4 日本の現状と今後/第4章 暴力的な存在と社会的排除――トルーディ事件を考える/1 トルーディ事件/2 トルーディの真正性/第5章 生きのびるためのアディクション――自己治療・自傷・自殺/1 自己治療仮説/2 日本における「生きのびるためのアディクション」/3 見えなくなっていく死(者)/第6章 介入と治療からの自由/1 〈第三者〉にできること:ドラマ『ラスト・フレンズ』から考える/2 自傷他害とパターナリズム
  • 意味がわかるAI入門 ――自然言語処理をめぐる哲学の挑戦
    -
    「AIは言葉の意味を理解している」――2020年に行われた調査で、回答者の半数近くがこのように回答した。2022年に公開されたChatGPTは、当時よりいっそう自然な受け答えが可能だ。はたして現在のAIは言葉の意味を理解しているのだろうか。そもそも意味を理解するとはいかなることなのか――。AIの開発史をたどりながら、現在のAIを支える大規模言語モデルのメカニズムを解き明かし、深い霧に包まれた「意味理解」の正体に一歩ずつ迫る。哲学者によるスリリングなAI入門! 【目次】序章 哲学者、大規模言語モデルに興味を持つ/第一章 AIの歴史──心の哲学を補助線として/1 ダートマス会議にはじまる/2 第一次AIブーム──「一人で立てたよ!」/3 AIの冬(1)──「時バエは矢を好む」?/4 第二次AIブーム──「知識には力が宿っている」/5 AIの冬(2)──「あなたたち人工知能研究者はいつもそうやって噓をつく」/6 第三次AIブーム──「私たちはずっと正しかったのだ」/7 1980年代のコネクショニズム批判/8 残された疑問──ニューラルネットワークは自然言語を扱えるのか?/第二章 自然言語処理の現在──言語哲学を補助線として/1 AIは言葉の意味を理解すると思いますか?/2 意味に対する伝統的アプローチ/3 真理条件意味論に対する疑い/4 コネクショニズム化する自然言語処理/5 分布意味論の批判的検討/6 大規模言語モデルと言葉の意味理解/7 意味と意味理解についてわかったこと、まだわかっていないこと/終章 機械に心は宿るのか?
  • 地方豪族の世界 ――古代日本をつくった30人
    4.0
    古代の地方の人びとはどのように暮らしていたのだろうか。史料の残っている豪族クラスの人物の活動に光を当てれば、彼らがいかに躍動していたかかがわかる。郡・郡司、国衙機構や在庁官人の研究により地方支配の歴史的変遷をたどり、立体的な地域史を復元してきた著者が、神話・伝承の時代から奈良時代末まで、そこから平安時代末までに活躍したそれぞれ15人の人物を選出。一般読者向け古代史書ではあまり扱われない人物30人を紹介し、地方の動向や中央との関係を通時的に描き出す。 【目次】はじめに/I 古代国家の形成と展開/1 八束水臣津野命──国引きから国造りへ/2 野見宿禰──相撲と埴輪のはじまり/3 上毛野君の祖荒田別──海外への雄飛/4 上道臣田狭──吉備氏の力/5 筑紫君磐井──中央集権化への画期/6 箭括氏麻多智──神々との交渉と開発の推進/7 笠原直使主──国造制の施行/8 朴市秦造田来津──白村江戦での奮闘/9 尾治宿禰大隅──壬申の乱を勝利に導いた力/10 他田神護──中央出仕と郡司就任/11 壬生直小家主──後宮を支えた女性官僚/12 高麗朝臣福信──天皇への近侍と地域への貢献/13 生江臣東人──東大寺領の開発/14 田中真人広虫女──郡司妻の経営手腕/15 越優婆夷──仏教信奉の利益/II 古代国家の成熟と転換/16 伊治公呰麻呂──征夷三十八年戦争のはじまり/17 入間宿禰広成──征夷事業を支えた坂東の豪族/18 槻本公老──桓武天皇即位秘話/19 大墓公阿弖流為──坂上田村麻呂とも対峙した蝦夷の英雄/20 佐伯直真魚(空海)──真言宗の将来と布教/21 壬生吉志福正──国分寺塔の再建と子息涯分の租税前納/22 春澄朝臣善縄──祖父の学業支援と最優秀成績者の足跡/23 円仁──入唐求法の辛苦と天台密教の確立/24 於保臣(磐城臣) 雄公──地域を支配する郡司氏族の力/25 武蔵武芝──平将門の乱を誘発したもう一つの武士への道/26 真髪成村──膂力の相撲人/27 安倍頼時──源頼義・義家との対決/28 阿波民部大夫成良──神戸港の礎を築いた平清盛の家人/29 伴信明──島津庄の経営と薩摩平氏との対立/30 伊福部臣資経──流人源頼朝を支援した余慶/おわりに/人名索引
  • 世界中で言葉のかけらを ――日本語教師の旅と記憶
    3.8
    「ぜんぶ英語でいいじゃない」という乱暴な意見に反論し、複言語能力の意義を訴え続けてきた日本語教師が、中国の雲南省、セルビア、フランス、ブルガリア、ハンガリー、エストニアなど、世界の各地を旅して慣れない言葉を使い、感心し、絶句し、立ち止まり、また歩き出す。あるいは日本語を教えていて、慣れない言葉を使う学生たちの日本語の魅力に気づく――そのような、言語を体験した驚きの瞬間とその記憶を読者の皆さんと共有したいという想いから綴られた、言葉をめぐる旅の記録。 【目次】まえがき/第一章 ちがう言葉でおなじ世界を夢に見る──日本語教師としての経験から/1 落ち葉を拾う/2 週末、何をしましたか?/3 いつも、はなちゃんのせい/第二章 どうかあらゆる泉に敬意を──「ぜんぶ英語でいいじゃない」への長い反論/1 君は僕の髄液/2 地図と鉛筆と紙があれば/3 色気あるカミュの声と、「せんせい、まっておれ!」/4 積みあげれば自分の背の高さになるまで/5 おばあちゃんと話したいから/6 ひとつのちから/第三章 そういえば猫さえも国がちがう──三者三様の言語教師/1 良い風が巡っていますように/2 私はワイマールに生まれました/3 ひまわり畑がすごくって/第四章 ぶらごだりや──言葉が通じない場所への旅/1 長く、安く、遠くに/2 季節はずれのサンタクロース/3 みなさまのために歌います/4 レモンをはさんだ枝で/第五章 さえぎらないで、妄想中だから──歩くこと坐ること、食べること着ること/1 行きなさい、迷うことはない/2 あの味を手に入れるために/3 へりに立つ人/4 はじめてのママ友/5 あなたに平安がありますように/6 風をさがす――二〇二〇年/注/あとがき
  • 南北戦争を戦った日本人 ――幕末の環太平洋移民史
    -
    南北戦争の兵役記録には2名の日本生まれの兵士の名がある──サイモン・ダン、ジョン・ウィリアムズ。英語名の彼らは誰なのか? なぜアメリカにいたのか? その人物像は? 人の移動が厳しく制限されていた日本を離れ、アメリカに生きた/生きねばならなかった彼らの消息を、日米両国の資料から丹念に探査する。漂流民、密航者、あるいは幕府使節の脱落者……海を渡った日本人移民の歴史と19世紀中頃のアメリカ社会史が、アメリカ戦史上最大の死者を記録した南北戦争で交差する。 【目次】序章 日系アメリカ人二世テリー・シマとの出会い──はじめに/1 南北戦争に従軍した日本人がいた/2 アジア・太平洋系移民と日本人移民/3 南北戦争に従軍した日本人──これまでの研究と人物像/第1章 南北戦争とマイノリティ──アジア・太平洋系移民/1 南北戦争前の移民動向/2 一八六三年連邦徴兵法/3 アジア・太平洋からの移民兵士/4 中国人兵士の記録/5 中国人兵士の表象/6 マイノリティとしての立場/第2章 日本生まれの二人に近づく──アメリカでの記録から/1 サイモン・ダン/2 ジョン・ウィリアムズ/3 報奨金とブローカー/4 さらなる探索/第3章 漂流者・密航者たち/1 漂流者たち/2 漂流者ジョセフ・ヒコ/3 漂流者の実像/4 密航者たち/第4章 幕末の日本人の移動──使節団と密航者との接点/1 幕末の使節団/2 咸臨丸の概要/3 乗組員と不明者/4 乗組員の記録──センサスと死亡統計/5 万延元年の遣米使節団/6 竹内使節団と池田使節団/7 留学生/終章 旅の終わりに/あとがき
  • 北京の歴史 ――「中華世界」に選ばれた都城の歩み
    -
    1巻2,090円 (税込)
    黄河文明の辺境に位置し、江南文化とも遠く離れた長城地帯に近接する政治都市・北京。古代国家の首府でもあったこの地は、「中華世界」の拡大とともに、いかにして辺境の地から中心地へと飛躍してきたのか。古代から現代まで長きにわたるその歴史をダイナミックに描き出す。漢族と非漢族、農耕と遊牧という対立する要素が交流・融合する、坩堝としての都城が果たした役割にも注目。多民族国家中国の首都に選ばれ続けてきた波瀾万丈の歴史から、伝統中国の政治文化の本質に迫る。 【目次】はじめに/第一章 文明の辺境──燕国/1 のちに「北京」と呼ばれる地域空間/2 薊城──都市「北京」の起源/3 戦国の七雄としての燕/第二章 東北の重鎮──幽州/1 郡県と封建のゆらぎ/2 諸族融合の坩堝/3 中原諸王朝の前進基地/第三章 諸族争奪の舞台/1 早すぎた大燕皇帝の登場──安史の乱/2 燕雲十六州問題──胡・漢最大の係争地/3 政治的中心地への道──遼の「南京」/第四章 中都から大都へ/1 宋朝に格下げされた「燕山府」の混乱/2 金の海陵王と「中都」遷都──はじめての帝国首都/3 クビライの「大都」建設/第五章 華夷一統のために/1 漢族王朝の再興と北京遷都/2 北京定都と嘉靖帝の都城改造/3 近世東アジアの百万都市/第六章 拡大された中華帝国/1 明清交替/2 非漢人政権にして中国の正統王朝/3 タタール・シティとチャイニーズ・シティ/第七章 皇帝の住まなくなった紫禁城/1 紫禁城──外朝と内廷/2 拡大された中華世界の三つの中心/3 円明園炎上/終章 廃墟からの再生/1 北京最後の日/2 天安門での建国セレモニー/主要参考文献/あとがき/図版出典一覧/人名索引
  • 関東大震災と民衆犯罪 ――立件された一一四件の記録から
    4.0
    1923年の関東大地震。その直後から自警団による、朝鮮人、中国人らに対する襲撃事件が多発し、日本人を含む多くの犠牲者をだしたが、その実態はいまだ明らかではない。誰が誰をなぜ殺したのか? 検察が立件、起訴した600人以上の被告、約90人の日本人被害者のプロフィールを分析するなどして、民衆犯罪の全貌に迫る。事件から100年、地域に根差した庶民が起こした史上最大最悪の惨事=ヘイトクライムをとらえなおす。 【目次】はじめに/第1部 関東大震災下の国家と民衆/1 軍・官・民一体のエスノサイド/2 自警団、その組織と活動実践/3 エスノサイドの背景/第2部 刑事事件化した民衆犯罪の動向/1 朝鮮人襲撃事件にみる自警団の情動/2 日本人襲撃事件の実態と被害者像/3 自警団員裁判の実態と加害者像の再検証/第3部 沖縄出身者と自警団/1 沖縄出身者襲撃伝承とその特徴/2 関東大震災、ふたつの体験記/3 沖縄出身製紙労働者の震災経験/4 沖縄における伝承の形成と定着/巻末資料/結びに代えて/索引
  • 十字軍国家
    3.0
    十字軍と言えば、もっぱら運動としての面が注目され、十字軍士たちが各地に建設した諸国家、すなわち十字軍国家の全体像が語られることはなかった。だが、1098年のエデッサ伯国建国から、1798年のナポレオンによるマルタ島攻撃までの実に700年にもわたり十字軍国家は存続していた。ローマ教会、ビザンツ帝国、神聖ローマ皇帝、イスラーム勢力や地中海の諸商業都市、傭兵団、さらには来襲するモンゴル勢など、多種多様な勢力が複雑に絡み合う興亡の歴史を、第一人者が活写する。 【目次】序 十字軍国家とは何か/I ラテン・シリア/第1章 ラテン・シリアの誕生(1097-1099年)/第2章 ラテン・シリアの形成(1098-1118年)/第3章 ラテン・シリアの成長(1118-1146年)/第4章 ラテン・シリアの発展と分断(1146-1192年)/第5章 ラテン・シリアの回復と再分断(1192-1243年)/第6章 ラテン・シリアの混乱と滅亡(1243-1291年)/II キプロス王国/第7章 キプロス王国の形成と発展(1191-1369年)/第8章 キプロス王国の混乱と消滅(1369-1489年)/補章1 ヴェネツィア領キプロス(1489-1573年)/補章2 キリキアのアルメニア王国(1198-1375年)/III ラテン・ギリシア/第9章 ラテン帝国(1204-1261年)/第10章 フランク人支配下のモレア(1)(1204-1311年)/第11章 フランク人支配下のモレア(2)(1311-1460年)/補章3 カタルーニャ傭兵団とアッチャイオーリ家(1311-1462年)/IV 騎士修道会国家/第12章 ドイツ騎士修道会国家(1225-1561年)/第13章 ロドス期の聖ヨハネ修道会国家(1310-1523年)/第14章 マルタ期の聖ヨハネ修道会国家(1523-1798年)/あとがき/主要参考文献/十字軍国家支配者一覧
  • 南北朝正閏問題 ――歴史をめぐる明治末の政争
    -
    1巻1,595円 (税込)
    国定教科書の記述をきっかけとして起きた、日本の南北朝時代において南朝と北朝のどちらが正統かをめぐる明治末の論争は、当時の閉塞的な政治状況もあり、重大な政治問題と化した。最終的に政府は危機を乗りこえたが、深刻なダメージを負った。多様なアクターがそれぞれ自分の信念や思惑をもって活動した結果として生じた、深刻かつ複雑なこの南北朝正閏問題を、現代政治における歴史問題・皇室報道問題の原点として徹底的に掘り下げて考察。そこから浮かびあがる近代日本の特質に迫る。 【目次】はじめに/第一章 南北朝正閏問題の背景/第二章 南北朝正閏問題の突発/第三章 藤沢元造の質問に向けて/第四章 大日本国体擁護団と政府弾劾決議案/第五章 桂内閣による「第一の政治決着」/第六章 南北朝正閏論争の構造/第七章 桂内閣による「第二の政治決着」/おわりに/参考文献/言説分析原典一覧/あとがき
  • 古代中国 説話と真相
    4.3
    殷の紂王の《酒池肉林》、呉王夫差と越王句践の《臥薪嘗胆》、秦の始皇帝の《焚書坑儒》……、『史記』にも記され、広く知られる古代中国の説話は真実か? もちろん、これらは後世の創作である。本書では、信頼できる資料に拠って、これらの虚構を検証すると共に、貴族制が専制君主制に移行した春秋・戦国時代の社会制度、勢力バランス、法治システムを浮彫りにする。初期の王朝から貴族の台頭、そして中国統一へ、説話を検証し、中国古代史をいきいきと再構築してみせる意欲作! 【目次】はじめに/第一章 三皇五帝――禅譲・放伐/第二章 夏の禹王――九州の治水/第三章 殷の紂王――酒池肉林/第四章 周の幽王――笑わない褒姒/第五章 斉の管仲――衣食足りて礼節を知る/第六章 楚の荘王――鼎の軽重を問う/第七章 夫差と句践――臥薪嘗胆/第八章 魯の孔子――由らしむべし、知らしむべからず/第九章 魏の恵王――五十歩百歩/第十章 蘇秦と張儀――合従連衡/第一一章 戦国四君と呂不韋――奇貨居くべし/第一二章 秦の始皇帝――焚書坑儒/終章 古代中国史の研究方法/結び/主要参考文献
  • 風土のなかの神々 ――神話から歴史の時空を行く
    -
    日本の神々とは日本人にとってどのような存在だったのか。神々は日本の風土のなかでどのような役割を担っているのか。日本の神は、自然を畏敬し国土の安寧を願う出雲系と、天皇による国家支配を正当化する高千穂・日向系に分かれる。高千穂・日向・出雲で景観問題の解決に奔走した著者が神話の舞台を歩き、「古事記」「日本書紀」編纂の場である飛鳥の遺跡に身を置いて、神々の来歴にひそむ謎を解く。【目次】序章 女神はなぜ洞窟に隠れたか――高千穂神話の世界から/第I部 出雲の神々の世界へ/第一章 スサノオの国づくりと和歌の起源――出雲平野の「わが心すがすがし」/第二章 斐伊川水系大治水計画――昭和・平成のオロチ退治/第三章 天下経営の大神――出雲大社表参道神門通りの道づくり/第四章 水に臨む神々――城原川流域委員会/第五章 疫病神の活躍――鞆の浦まちづくり/第II部 風土に生きる神々/第六章 巨大ナマズと戦う神々――要石とプレートテクトニクス/第七章 「ふるさと見分け」の方法――姥ヶ懐・裂田溝の危機/第八章 白き山の姫神――在地神と外来神/第九章 座問答――古代の大合併と合意形成の知恵/第十章 神々誕生の海岸――宮崎海岸侵食対策事業/第III部 神話から歴史への旅/第十一章 飛鳥にて――『古事記』『日本書紀』編纂スタートの地/第十二章 神話と歴史をめぐる三つの疑問/第十三章 飛鳥浄御原宮――神話と歴史を編む/第十四章 前例としての日本神話/第十五章 古代からの伝言――危機の時代のリスクマネジメント
  • 実証研究 東京裁判 ――被告の責任はいかに問われたか
    -
    従来の東京裁判論は、主に政治・外交史を基調とし、また「日本無罪論」で知られるインド代表判事パルやオランダ代表判事レーリンクによる個別反対意見をもっぱら話題とし、本来の東京判決での多数意見を軽視してきた。本書は、東京裁判の事実認定がいかになされ、責任がどう問われたのかを実証的に解明。法廷で適用された責任論や、各被告人に対する判定の根拠を体系的に分析する。判決七五周年に向けて、東京裁判を国際刑事裁判史にどう位置づけて評価すべきか、その功績と問題点とを明らかにする。【目次】まえがき/第一章 裁判の歴史的文脈と枠組み/第二章 平和に対する犯罪の争点/第三章 日本政府組織論/第四章 戦争犯罪の争点/第五章 「東京判決」――多数派判事による判決/終章 今日の国際刑事裁判にみる責任論
  • 日本人無宗教説 ──その歴史から見えるもの
    4.3
    「日本人は無宗教だ」とする言説は明治初期から、しかもreligionの訳語としての「宗教」という言葉が定着する前から存在していた。「日本人は無宗教だから、大切な○○が欠けている」という“欠落説”が主だったのが、1960年代になると「日本人は実は無宗教ではない」「無宗教だと思っていたものは“日本教”のことだった」「自然と共生する独自の宗教伝統があるのだ」との説が拡大。言説分析の手法により、宗教をめぐる日本人のアイデンティティ意識の変遷を解明する、裏側から見た近現代宗教史。 【目次】はじめに 藤原聖子/第一章 無宗教だと文明化に影響?――幕末~明治期 木村悠之介/第二章 無宗教だと国力低下?――大正~昭和初期 坪井俊樹/第三章 無宗教だと残虐に?――終戦直後~1950年代 藤原聖子/第四章 実は無宗教ではない?――1960~70年代 木村悠之介/第五章 「無宗教じゃないなら何?」から「私、宗教には関係ありません」に――1980~90年代 和田理恵/第六章 「無宗教の方が平和」から「無宗教川柳」まで――2000~2020年 稲村めぐみ/おわりに 藤原聖子
  • 隣国の発見 ──日韓併合期に日本人は何を見たか
    3.0
    1巻1,705円 (税込)
    日韓併合期(1910~1945年)の日本人のなかには、朝鮮の人や自然や文化を体験し、観察し、優れたエッセイを残した者たちがいた。谷崎潤一郎はその風景を「純然たる日本画の絵の具の色」と描き、柳宗悦や河井寛次郎は人々の生活ぶりに理想郷を見出した。新渡戸稲造が「彼等は実に有史以前に属するものなり」と断じた一方、安倍能成はステレオタイプと格闘した。植民地支配の産物として顧みられなかったこれらの作品を読み直し、日本人が発見した隣国の姿を浮かび上がらせる。 【目次】第一章 朝鮮の山河/1 海峡を越えて/2 禿山と岩山/3 朝鮮の山河/第二章 隣国の発見/1 少年の日の思い出/2 大人たちの見たもの/3 白磁の美の発見/第三章 もう一つの眺め/1 非好感の眺め/2 朝鮮人とはだれか/第四章 京城の歩く人/1 安倍能成の朝鮮エッセイ/2 浅川巧への惜別の辞/第五章 旅する科学者/1 挟間文一と辺境の地への旅/2 挾間文一の日記/付録 挾間文一の日記/3 朝鮮に与えられ、また与えた人
  • 悟りと葬式 ──弔いはなぜ仏教になったか
    4.7
    出家者の悟りのための宗教として機能していた仏教が在家者の葬式のための宗教としても機能するようになったのはなぜか。布施、葬式、戒名、慰霊、追善、起塔それぞれの始まりを求め、アジア各地の仏教を探っていく。悟りを開いた出家者の霊力に対し、在家者が抱懐する聖者崇拝。布施をくれる在家者の要望に応え、出家者が受容する土着習俗。仏教学、民族学、文化人類学の成果をもとに、アジア各地に共通の背景を解明し、弔いが仏教となっていく過程を俯瞰する。
  • 日本政教関係史 ──宗教と政治の一五〇年
    4.0
    宗教と政治の関係を考えるには、近現代史を踏まえねばならない。本書は日本の宗教行政・政策史を概観し、重要なトピックその中に位置づけ分析する。明治以来、政府は宗教団体法の制定を模索し、昭和にようやく国民精神動員の名目で成立させたが戦後、占領軍が廃止を命令。1951年成立の宗教法人法が宗教団体の自由と自治を大幅に認め、政教分離を明確に定めた。キリスト教公認問題、内村鑑三不敬事件、戦争と宗教、靖国問題などトピックから政教関係の全体像を照射する。
  • 寅さんとイエス【改訂新版】
    -
    現代聖書学については「二十世紀で最も進んでいる学問は原子物理学と聖書学であるといわれるほど発達した」(山本七平)とされる。イエスの実像に迫るには、マルコ・マタイ・ルカ・ヨハネの四つの正典福音書が典拠となる。その分析から導き出されたのは、イエスの風貌とユーモアが、寅さんの世界に類似しているとの意外な発見であった。読者が一気に読破できるように、大きな反響を呼んだロングセラーの表現や論理をより明確化。寅さんとイエスの風貌がより生き生きと見えてくる、待望の改訂新版。
  • 丸山眞男と加藤周一 ──知識人の自己形成
    3.0
    戦後を代表する知識人である丸山眞男と加藤周一は、いかにしてその思想を育んだのか? ともに青少年期に戦争を体験し、その時代の空気の中で「日本人のものの考え方とはいかなるものか」という問題意識を深めてきた。当時の政治や文化の動向を丹念に追い、その思索や行動の跡を示すノートやメモ等の豊富な資料とともに、出生から敗戦まで二人の自己形成過程を比較対照し、20世紀の日本に生まれた知的風土の根源に迫る。
  • 戦後空間史 ──都市・建築・人間
    4.0
    冷戦、高度経済成長、持家社会、革新自治体、バブル経済、アジア戦後賠償、農地の宅地化、東日本大震災……終戦から21世紀の現在まで、戦後の日本の都市・近郊空間はさまざまな出来事を経験し、大きく変容してきた。本書では、その戦後のあゆみを建築や都市の研究者が、社会や世界情勢、歴史的事件を含めて多角的に検討する。変質しながらも生き続ける戦後を思考する画期的試み。
  • 敗戦と戦後のあいだで ──遅れて帰りし者たち
    4.0
    敗戦後、歴史的力により戦地から本国への帰還が遅れてしまった人びとがいる。復興から経済発展へのパラダイムが形成されつつあるなか、拭いがたい違和感や齟齬をかかえ、彼らは戦後という時間をいかに生きたのか。五味川純平、石原吉郎、横井庄一、小野田寛郎、中村輝夫……。本書は複数の周縁的・両義的存在の歩みを丹念に読み解き、もうひとつの歴史を描きだす試みである。戦後日本社会を構成する条件とは何か、いま一度根本から問う。
  • 変容するシェイクスピア ──ラム姉弟から黒澤明まで
    -
    現在、英文学の代名詞として語られるシェイクスピア。元々は舞台の台本として書かれたその作品は、後世の創作家たちによっていかにして新たな息吹を吹き込まれ、世界に知られるようになったのか? 『高慢と偏見』『大いなる遺産』などの英語圏文学、ラム姉弟による児童文学『シェイクスピア物語』、ローレンス・オリヴィエ、黒澤明による映画など、時代と地域を超え、姿形を変えた作品の数々を分析し、名作の知られざる魅力に迫る。
  • 敗者としての東京 ──巨大都市の「隠れた地層」を読む
    4.2
    富と人口が集中し、世界最大規模を誇る都市、東京。だがこの都市は、少なくとも三度、占領されてきた。1590年の家康、1868年の薩長連合軍、1945年の米軍によってである。凹凸をなすこの都市の地形と結びつきながら、過去の「敗者たち」の記憶は、歴史的な地層をなしてきた。縄文の古代から現代までを視野に入れ、地球史的視座と家族史的視座とを往還しながら、江戸=東京に伏在する「敗者たち」の記憶の水脈を探り当て、「勝者」であり続けようとする令和の東京とは異なる可能性を探究した、比類なき「江戸=東京」論!
  • 東京10大学の150年史
    4.0
    19世紀後半に創設された教育機関を基とする日本の有力大学は、揃って創立150周年を迎える。そこで東京の10校の大学の歴史を振り返り、その歩みを日本近現代史のなかに位置づける。執筆者は各大学の第一線の実証史学研究者。創立理念や建学精神、成立経緯を明らかにすることで、各大学の特徴を描き出す。大学史をより深く理解し楽しむためのコラムも収録。年史編纂の歴史研究上の意義を示すとともに、近現代史への一視角としての大学史が興味深く学べる最良のテキスト。
  • 平和憲法をつくった男 鈴木義男
    -
    福島県出身の法学者・弁護士・政治家である鈴木義男は、東北帝国大学教授を務めるも、軍事教練に反対して教壇を追われ弁護士に転身。河上肇ら治安維持法違反者の弁護などで活躍後、戦後は衆議院議員として帝国憲法改正案の審議に携わる。鈴木の提案から第九条に平和の文言が加わり、GHQ草案にはなかった第二五条の生存権が追加された。「ギダンさん」と呼ばれ親しまれた鈴木義男の、平和憲法成立への知られざる努力を含む多方面の活躍と、その波乱の生涯を描く初めての本格評伝。
  • 公衆衛生の倫理学 ──国家は健康にどこまで介入すべきか
    4.0
    パンデミックにおける行動制限から肥満対策、健康格差や自己責任論、健康増進にかかわるナッジの問題点に至るまで。健康をめぐる社会のしくみは、人々の自由をどのように変えるのか。選択すべきは介入か、それとも個人の自律か──。高度化する健康管理の技術を注意深く読み解きながら、健康を守る社会の仕組みと個人の生き方の複雑な関係をめぐる問いにじっくり向き合う。自分自身で考え、共に生きるための倫理学。
  • 人類精神史 ──宗教・資本主義・Google
    -
    Gott(神)、Geld(お金)、Google(情報)という3つの「カミ」(3G)と、対応する3つのリアリティ(3R)。本書はこのフレームをもとに、狩猟採集民の時代から情報化社会の現代にいたるまで、人類の精神のあゆみを考える。そうすることで、人類精神史を貫く原理や転換点が見え、未来へ向かうための座標を獲得することができるだろう。危機の時代に生きる人びとに向けた、博覧強記の宗教民族学者による最後の書。
  • 「笛吹き男」の正体 ──東方植民のデモーニッシュな系譜
    3.0
    中世ドイツ・ハーメルンで起きた「笛吹き男」伝説。約130名におよぶ子供たちが突如消えた事件として知られる。その真相は、歴史の闇に隠れ、解明は困難であるとされてきた。諸説あるなか、本書は、事件が東方植民へのリクルートの際に発生したという説に立つが、問題はそこで終わらない。この東方植民をキーワードにすると、ドイツ史の暗部が見えてくる。
  • 基地はなぜ沖縄でなければいけないのか
    4.0
    沖縄への米軍基地の集中が続く。日本における同基地の面積の7割強がこの地にある。米兵による事件、米軍機などによる騒音被害は沖縄の社会・経済に深刻な影響を与え、選挙を通じて示される沖縄の民意は、基地の集中を拒絶している。にもかかわらず、長きにわたり解決策を見出せずにいる。そもそもなぜ、沖縄に基地が集中し、それが続くのか。その経緯を明らかにし、地理的な必然とも、安全保障をめぐる戦略上の必然とも言い切れないことを示す。その上で、基地問題の「解決」へと一歩を踏み出すための選択肢を提示した決定的な書!
  • 日本の戦略力 ──同盟の流儀とは何か
    -
    日本はなぜ没落したのか。敗戦後の日本が再生を目指したところから説き起こし、プラザ合意以降の日米同盟のありように、日本没落の原因を見て、日本の政治・経済・官界における「戦略の不在」と「戦略的思考」の欠落をえぐり出す。中国による一帯一路構想の展開が、クワッド(米日豪印)戦略とせめぎ合う現実に対し、日本はどう立ち向かうべきか。リベラル派国際政治学者が新たな「同盟と戦略力の流儀」のあり方を検討し、ポストコロナ、ウクライナ戦争以後の世界で日本が生き残る戦略を明らかにする。
  • 雇用か賃金か 日本の選択
    3.0
    2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、航空業界は大きな打撃を受けた。売上が大幅に減ったなかで、これまで通り雇用を維持して賃金を払い続ければ会社が潰れる。「クビか、賃下げか」。世界中の航空会社において、労使がこの二極の間でギリギリの調整を行っていた。従来、日本は賃金引き下げが速く、人員削減が遅いとされてきた。それは今も変わらないのか。コロナ禍への対応の国際比較と、長期的に労働需要が減少した百貨店の事例から、日本の雇用調整の内実を明らかにする。
  • 闘う図書館 ──アメリカのライブラリアンシップ
    -
    格差の拡大に直面する現代社会において、図書館はいかなる役割を担っているのか。「無料貸本屋」と揶揄されるイメージとは異なり、移民受け入れや崩壊するコミュニティの再生、オバマケアの窓口、デジタル化の最前線と、様々な場面で民主主義の根幹を支える拠点となってきた。予算をめぐってトランプ政権と対立するなど数々の危機を乗り越え、理念と現実の狭間でもがくアメリカ図書館界の知られざる奮闘を活写する。
  • 入門講義 ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』
    3.5
    哲学の役割は物事を丸ごと説明するテーゼを提示することではない。ウィトゲンシュタインはぼやけた物の見方を論理的に明確化し、世界や人生のディテイルから目を逸らさぬようにと、私たちをガイドする──。20世紀最大の哲学書『論理哲学論考』とはどのような本なのか。独特の概念を一つずつ押さえ、難解かつ複雑に枝分かれした『論考』の議論をわかりやすく読み解くとともに、世界的な解釈論争にも分け入り、後期哲学への連続性も視野に、ウィトゲンシュタインの思考を生き生きと描き出す。
  • キリストの顔 ――イメージ人類学序説
    -
    キリスト教において、神の顔は、死後の救済の瞬間まで見ることは叶わないとされる。偶像禁止と、ひと目その姿を拝みたいという欲望との狭間で、「人の手によらない」という奇跡の像は生み落とされた。そのイメージは反復・伝播し、東西キリスト教世界で独自の変容を遂げていく。表象不可能なものの表象――ここに紛れもなく西洋のイメージの源流がある。有名無名の芸術家たちはいかにしてこの逆説を乗り越えたのか。神秘のヴェールを取り払い、西洋世界2000年にわたる壮大なイメージの歴史をたどり直す。イメージ人類学、期待の新鋭による新たな挑戦。
  • 死ぬまでに学びたい5つの物理学
    3.9
    母親に捨てられたニュートン、自殺したボルツマン、息子をナチスに殺されたプランク、ユダヤ人としてドイツを追われたアインシュタイン、原爆製造の汚名を着せられたハイゼンベルク……。科学の先端を切り拓いた物理学者たちの発見の陰には、孤独と苦悩の人間ドラマがあった。5つの革命的な知を生み出した天才たちの思考プロセスをたどり、科学はいかにして創られたかを解明する。文系の読者にも面白く学べる全く新しい物理学入門書。
  • 数学の想像力 ──正しさの深層に何があるのか
    4.0
    数学は音楽に似ている。論理と感性、理性と直観等、対立するもののように思われがちだが、音楽も数学も古来、天上へつづくかのような調和の美しさで人を魅了してきた。ところが数学者たちはやがて気づく。数の世界に潜む見えない数、無限、そして緻密な論理が孕むパラドクスの深淵。しかしそこに、数学が自由に飛翔するための契機があった──。古代文明から現代まで四千年にわたる数学の歴史をたどり、人間にとって正しさとは何かを問いなおす。
  • 映画とは何か ──フランス映画思想史
    -
    映画は人間の認識に何をもたらしたのか。映画とともに誕生した思考とは何であるのか。こうした問題を、ほかのどの国にもまして考察しつづけ、思想的系譜として育んできたのがフランスにほかならない。本書では、ジャン・パンルヴェからジル・ドゥルーズまでを貫くその歴史を、“自動性”の概念を軸に再構成し、映画の力による世界への信と希望の可能性を考える。
  • 弱いニーチェ ──ニヒリズムからアニマシーへ
    3.0
    ニーチェは一般のイメージとは異なり、「強い」価値や精神を否定していた。ニーチェの言う「超人」とは、「弱い」方向へと疾駆する、人間の生んだ「高い価値」とは無縁な総合的人間である。超人のなかでは、無数の他者やものやことが闘争しており、その過程で偶発的に生まれる〈あいだのいのち〉を感受して生きること(=アニマシー)こそニーチェが目指したものだった。世界哲学の視点からニーチェを読み直すことではじめて見えてくる生命力あふれる人間像に、混迷の時代を生き抜く新しい力を見出す。
  • 徹底検証 日本の右傾化
    4.1
    日本の右傾化が進んでいると言われて久しい。実際、ヘイトスピーチや改憲潮流、日本会議など、それを示す事例には事欠かない。ならば日本社会は、全般的に右傾化が進んでいるのか? 本書ではその全体像を明らかにすべく、ジャーナリストから研究者まで第一級の書き手が結集。「社会」「政治と市民」「国家と教育」「家族と女性」「言論と報道」「宗教」の六分野において、それぞれ実態を明らかにしていく。いま、もっとも包括的にして最良の「右傾化」研究の書である。 ※ 著者からの申し出により、本電子書籍版に「第6章 有権者の「右傾化」を検証する」は収録されていません。
  • 「魂」の思想史 ──近代の異端者とともに
    5.0
    合理主義と功利主義を基調とする近代。ゴッホ、ニーチェ、ボードレールから岡本太郎、三島由紀夫まで――、彼らは時代の趨勢に齟齬を覚えつつ、魂の声に引き寄せられ、思策と表現を行った。曖昧で無限定な概念でありながら、人々を揺り動かしてきた「魂」とはいったい何か。人間の内部と外部を通わせるその働きに、著者は現代人が見失ってしまったものを看取する。近代の異端者を通して生の息吹に触れる異色の思想史。
  • イスラームの論理
    4.0
    現代世界が直面しているテロの背景には、やむを得ない実力行使の側面がある。けれど、そもそもイスラームは本当に好戦的なのか。激しい攻撃にさらされてもなお、信仰者を増やし続ける魅力はどこにあるか。イスラームを貧困と暴政に陥れた“真犯人”は誰なのか。日本人がイスラームを理解することはできるのか―。日本人研究者、信仰者としてイスラームを30年以上見つめてきた第一人者が、イスラームの深奥を明らかにする。異文化を知ることは、自文化を知ることである。そこに立ち現れる日本の姿とは。【電子書籍オリジナルまえがき付き】
  • 越境する出雲学 ――浮かび上がるもうひとつの日本
    -
    現在は島根県東部の一地方である「出雲」の名を冠した地名や神社が、列島各地に存在するのはなぜなのか。出雲の謎とは、この国の成り立ちにかかわる問いである。各地に広がる出雲信仰の足跡や伝承、郷土史を丹念に播き、見えづらくなった古来の地域と地域とのつながりを再構成。一つの中心から勢力を拡大していく従来の国家像や近代的な中央集権国家の観念にとらわれない、もうひとつの日本の成り立ちを鮮やかに描き出す。
  • 鬼滅の社会学 ――家族愛・武士道から〈侠の精神〉の復権まで
    4.0
    『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴)が訴えかける問いを総ざらい。分断が進む現代社会において多くの人の心をつかみ熱くさせた物語は、人間の弱さ、家族の絆、仇討ちの是非、自己犠牲のあり方……生きるうえでぶつかる数々の課題に目を背けることなく正面から向き合い、胸に刺さる言葉で描き出す。古今東西の作品と思想を総動員しながら、本作が包含する現代人が取り戻すべき重要な価値観〈俠の精神〉に迫る。
  • 日清・日露戦史の真実 ──『坂の上の雲』と日本人の歴史観
    4.0
    歴史の謎を追うジャーナリストである著者は官修『日清戦史』の草稿を読み解き、不都合な事実を隠蔽、改竄して陸軍が戦史を編纂していたことを見つけ出した。隠蔽は戦争の根幹部分に及び、編纂方針はその後の戦史でも踏襲され、戦争の実態は国民の目から遠ざけられた。『坂の上の雲』が描いた日露戦争の姿に多くの日本人が驚いたのもそのためであった。隠された事実とは何だったのか。埋もれていた歴史を掘り起こし一二〇余年の歳月を超え日清戦争の実像に迫り、日本人の歴史観のあり方を問いなおす。
  • 「天下の大勢」の政治思想史 ――頼山陽から丸山眞男への航跡
    3.0
    丸山眞男は日本人の歴史意識の古層として「つぎつぎになりゆくいきほひ」を指摘した。「なりゆく」この「勢」の思想を最初に打ち出したのが頼山陽である。主体的能動的に「勢」の変化を制御していこうとする山陽の「天下の大勢」をめぐる思想は、日本近代史をいかに動かしていったか。幕末の老中・阿部正弘と堀田正睦、勝海舟、木戸孝允、徳富蘇峰、原敬の「大勢」認識から、三国同盟の「バスに乗り遅れるな」、終戦の詔勅の「世界ノ大勢亦我ニ利アラス」まで、「天下の大勢」思想の航跡をたどる。
  • 女教師たちの世界一周 ――小公女セーラからブラック・フェミニズムまで
    4.0
    『小公女』に登場するミンチン先生といえば、意地悪で醜い独身女。女教師に対してこんな冷たい眼差しが注がれていた19世紀イギリスで、男子校に引けを取らない教育を行う、教師養成のための女子校が誕生した。女教師は女教師を育て、やがて活躍の場を求めてイギリス本国を飛び出していく。インドやカナダ、アフリカ、そして西インド諸島――。大英帝国にイギリス式女子教育を広める冒険の旅は、各地に何を残したのか。その旅路の果てに、知られざる「ブラック女教師」の物語が立ち現れる。
  • 資本主義・デモクラシー・エコロジー ――危機の時代の「突破口」を求めて
    4.0
    自由民主主義体制は20世紀半ば以降、大枠としては機能してきたが、いまや多くの自由主義諸国で、代表制や複数政党制の機能不全が指摘されるようになっている。新自由主義が世界経済を席巻するようになるにつれ、格差社会化も進行している。地球環境の危機も深刻化している今、これら喫緊に課題とどう向き合うかを巨視的な枠組みから考究し、隘路からの脱出の方途を探った渾身の書である。
  • 北海道廃線紀行 ──草原の記憶をたどって
    3.8
    1巻1,705円 (税込)
    戦後、産業構造が変容し、最盛期には4100キロにのぼった北海道の鉄道の約四割が消滅した。そこでは何が失われ、何が残ったのか。紀行作家として鉄道の魅力を伝える著者が廃線跡を丹念に取材し、開拓史、地域の栄枯盛衰、そこに生きた人々の息遣いを活写する。鉄道への郷愁と憧憬とともに、かつて北海道の基幹産業だった、石炭、鉱山、にしん漁、馬産、砂金などの歴史エピソードを渉猟し、新しい「鉄道民俗学」を試みる。
  • 鉄の日本史 ――邪馬台国から八幡製鐵所開所まで
    3.0
    大陸から日本列島に伝わった鉄文化は、他の地域で類を見ない進化を遂げた。鉄鉱石資源に乏しい国土において砂鉄原料のたたら吹製鉄という独自の製鉄技術を開発し、切れ味鋭く強靱な日本刀を生み出す素材にもなった。類まれな技術の発展過程、幕末以降の近代製鉄技術を経て八幡製鐵所の創業までの道筋を辿る。古代から近代まで、およそ二千年に及ぶ日本における鉄文化の発展過程を追うことで、鉄がいかに長い時間をかけて私たちにとって身近な金属になってきたかを理解する一冊。

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