小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
まず三十二人すべての生徒にスポットライトが当たるという作風がとても良い。誰ひとり脇役ではなく、人それぞれの背景や思い、悩みなどが語られる。
加賀美先生だからこそ
与えられる・伝えられる32人への教え。
'お前ら、人が死ななくてもちゃんとやれよ。人が死ぬからがんばるんじゃない。誰かが死ぬから毎日が尊いわけじゃない。余命を聞いたから周囲の人間が大切になるんじゃない。それでも当たり前のように日常が過ぎていくことが尊いんだ。いまのみんなにはわかると思う。平凡だと思う毎日を、今日1日だけでいい。大切に生きてください。'
終盤に加賀美先生から発せられるこの言葉の説得力が半端ない。
作中で語られた我行我素、わたし自身もこの言葉をこころに留めておきたいと心から思いました。
文句なしの⭐︎5です。 -
Posted by ブクログ
凄まじい本です。著者の日々の生活にまつわる労働と感情と行動と思索、そのそれぞれと直結した言葉が、読んでいる自分のいる場所を揺さぶってきました。「知らなかった」では収まりのつかない「知ろうとしてこなかったこと」「見ようとしてこなかったこと」「考えようとしてこなかったこと」が次々と襲いかかってくる感じ。そして食とか、格差社会とか、外国人問題とか、高齢化のこととか、ジェンダーのこととか、労働問題とか、教育のこととか、いのちとか、生産性とか、この本棚でもちょいちょい気になっているテーマがこの一冊の中で絡み合ってくるのです。著者の身体と思考の重なり合いから生まれるつぶやきのような文章がページをめくるごとにどんどん積み重なっていきます。その言葉が生まれるのは夫と庭先養鶏の延長としての養鶏場を始めようとしている家庭という場所と、食鳥処理衛生管理者資格取得のために働き始めた食鳥処理場の二つの現場から。記される文字も家庭の言葉は明朝体、工場の言葉はゴシック体で分けられています。明朝がプライベート、ゴシックがパブリックって感じですが、それぞれの違いと触発が絡みあい、まさに「鶏まみれ」になっていくのです。「鶏まみれ」は「命まみれ」であり、そして「血まみれ」なのです。この本のP174〜175に気になってしょうがない箇所があります。
『ある本のなかにこんな一節を見つけた。
「穢れとは何か。人の死にまつわる穢れがあり、女性の月経・出産にかかわる穢れがあり、そして、 敵の肉や皮革処理がもたらす穢れがある」
(赤坂憲雄『東西/南北考 いくつもの日本へ』より)
私の目はこの2行に釘づけになった。出産を撮影し、狩猟の撮影しながら肉を食べ、ときには 死に関わる撮影もする私にとって、この符合は思ってもみないことだった。穢れを撮ってきたつ もりはまったくない。急に胸騒ぎがしてきた。
(『山と獣と肉と皮』より)
また、でてきた。』
この引用はゴシックなのですが最後の『また、でてきた。』だけ明朝なのです。現代社会の不可視化領域「穢れ」がこの本で自分を揺さぶるテーマなのではないか?と考えています。どうでもいいけど、この本の読書中に初めて全国チェーンの極安焼鳥店で食事をしましたが徹底的にシステム化されたオペレーションと味に「生き物」と「食べ物」の分離を感じてしまいました。この本で語りかける言葉は日常生活にかなり揺らぎを与えているようです。 -
Posted by ブクログ
読むのがものすごく遅い私が半日で読みきってしまうくらい、ページを捲る手が止まらない。
すっごく面白い。
何よりも楽俊の存在が大きすぎる。
怪我の手当をしてくれて、世界のことを教えてくれて、一緒に旅をしてくれて、そんな親切さを疑っていた陽子に腹を立てるでもなく、信じてくれて嬉しいと言ってくれる、道徳心の塊のようなネズミ。
楽俊との出会いで一気に物語が動き出した。
あまにも出来すぎた人格のせいで下手したらストーリーを進めるためのご都合キャラになりかねないのに、全くそんなことなく物語に溶け込んでる。
たった2巻ではあるけれど、陽子の苦悩と側で見守ってきたから、再会した慶麒が陽子の成長ぶりに驚いているのをみたときは、なぜか自分まで誇らしい気持ちになった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ全巻を通して、とにかく没入感の凄い物語だった。長い作品ではあったけれど、それを感じさせないほど世界に引き込まれ、読み終えたあとの満足感も大きい。
下巻では絶望的な状況がこれでもかというほど続く。追い詰められていく登場人物たちの心情や、その場の空気まで伝わってくるような風景描写には凄まじい臨場感があり、読んでいるこちらまで息苦しくなるようだった。
中でも、真理亜と守の最期はあまりにも救いがなさすぎて辛かった。物語が終わってみれば、幼なじみだった5人のうち3人が犠牲になっている。その事実を改めて考えると、本当にやるせない。
そして何より印象に残ったのが、人間とバケネズミの関係だった。
もちろん、野弧丸が行ったことは到底肯定できないほど残虐だった。それでも、人間がそれまでバケネズミをどのように扱ってきたのかを考えると、単純に「野弧丸が悪だった」とは思えなかった。
人間はバケネズミの生殺与奪の権利を握り、自分たちの都合次第でコロニーそのものを消滅させることさえできる。そんな圧倒的な力を持つ存在に支配される側からすれば、生き残るために反逆を企てること自体は理解できる。
それにもかかわらず、人間たちは「バケネズミが自分たちに逆らうはずがない」と高を括り、彼らをぞんざいに扱い続けた。
先史文明が滅びてから1000年もの時間が経っても、圧倒的な力を手にした者が弱者を支配し、その反発によって再び争いが生まれる。結局、人間は歴史から何も学んでいないのではないか。そんな人類の愚かさを感じた。
そして最後に明かされる、バケネズミの正体。
彼らが「呪力を使えない元人間」だったという事実を知った瞬間、それまで見てきた世界の意味が一変した。
自分たちの社会を維持するために、同じ人間だった者たちを人間ではない存在へと変え、支配する側と支配される側を作り上げた。その事実には、人類の愚かさというより、もはや絶望すら感じた。
誰が善で誰が悪なのか、簡単には割り切れない。
平和な社会を守るためなら、どこまでが許されるのか。
人間とは何なのか。
壮大な物語を楽しませながら、最後にはそんな問いまで突きつけてくる作品だった。
読み終えた今、この長い物語を最後まで読んで本当によかったと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいっぱい書きたいことがありすぎて頭がぐちゃぐちゃになりながら書きますのでご了承ください
まずは柚木麻子さんの作品を初めて読ませてもらって
ひとつひとつの比喩表現がとても豊かで、しかもその数が恐ろしくてそれだけで読んでいてお腹が満たされました。
題名の通りバターを物語の中で重要なポイントになっていますが、あの旨味をほんとに口のなかに感じながら読んでいるようでした。私自身、影響されてエシレバターを買い、カルトカールを焼きました。今年のクリスマスケーキにはウェストのものを予約するつもりです。
もうひとつ気に入っている点としては、
出てくる女性がみんな生き生きとしていたことです。
日々いろんな感情を感じながらも、折れそうになりながらも踏ん張って楽しいことを探して回復して生きていく姿がかっこよかったです。
あとは個人的にこの人モテるなと思う人たちとカジマナがすごく印象が被ってて面白いなと思いました。
生命力があって、自分が楽しいと思うことしか基本やりたくないという姿勢で生きてる
自分勝手だし振り回されるし傷付けられるけど
なぜか魅力的だなと思っていたんですよね
この人に好かれていたいと思ってしまう
カジマナの取材録を通して私の周りのモテる人たちへの解像度が上がった気がしています。
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Posted by ブクログ
M&Aブティックは、企業の未来を救う灯台
ニュースでよく耳にする『M&A』。企業買収・合併。
経営を学ばなかった自分にとっては無知の世界。
なんとなく買収・合併されたら、一企業がなくなるか名前が残るかというぐらい。
『ブティック』は企業同士が、10年後、20年後…中長期目線で
企業の未来を救うM&Aブティックにいる、秋都、栞、坂崎。
そして一企業を抱える取締役社長の葛藤が描かれていた。
企業の取締役たち、光島商船、内藤エレクトロン、そして立野マイナリー…。
M&Aで企業、従業員を救うのか。そういった時の創業者・社長の腕が試される部分。
中長期目線で企業の未来を組み立てられる、悩んだ挙句なぁなぁと現在地のままでいる…。
そういう彼らを見た時に、自分はその人の元で働けるのだろうかと思ってしまう(かも)。
買収される側する側それぞれに「見え隠れしてるリスク」が存在するんですよね。
法律に反していれば、合併したあとに炙り出され負荷が重くなり暴かれれば企業価値が下がる。
経営にしても何にしてもなだらかな線で進まない…と改めて思う。
一歩間違えれば沈む。大きな船を運行してるような感覚。
大きな船をなだらかにし、時間をじっくりかけて着地点まで案内するのが
M&Aブティックなんだと思った。
M&Aブティックという企業そのものがあるとは知らなかった(銀行が行ってるのかと思ってた)のと
同時にM&Aブティックの役割。彼らが買収前の調査分析を行う役目も大変だった。
創業者・取締役の葛藤がありながら秋都、栞、坂崎たちがサポートし霞んだ未来に光を灯す。
ボリュームのある物語だったけど、2日間で一気に読み終えた、非常に面白い作品でした。
これから、買収・合併と続くであろう日本の企業。
未来の光が見えることを願いながら。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ有栖川有栖氏初読み。最高傑作との呼び声高い本作を選んだが、評判通りの面白さで、700頁近い大作もサクサク読めた。
実は推理小説を好きになったキッカケが、子供の頃に読んだ『エジプト十字架の秘密』だった。なので「読者への挑戦状」が出てくるクイーン系の論理的推理小説は大好物なのである。
探偵江神がラストで犯人相手に延々と謎解き語りをするシーンはいささか冗長に感じだが、二つの殺人事件が鮮やかに結び付いた瞬間には「これぞ推理小説」と拍手喝采であった。
あと、著者はこのタイトルが気に入っていると「あとがき」で言っていたが、正直私は合っていないように感じた。 -
Posted by ブクログ
フレンドさんのレビューを読み、落ち着いたら読もうと決めていた作品✨
藤岡陽子さんは初読みです♪♪
ネタバレしないように書きましたが、カスっていたらごめんなさい_(._.)_
なんせ" 泣かさる "ということだったので、連休中に読むことにしたのですが…ホント、何度も泣かさりました。(;´Д⊂)ヨンデヨカッタ-
素直で優しく、家族想いな主人公・成道の、何事にもひた向きに頑張る姿勢や、その考え方に胸を打たれました。
『でもさ、努力って消えないんだ。頑張ったことは、一生自分の中に残る。生きる力になっているんだ』の成道の言葉に共感♪♪
私にも、昔めちゃくちゃ頑張ったことがあって、それが大きな"自信"となり、今でも自分を支える力になっていたりする✨
どんな職業でも、「こうありたい✨」と、高みを目指して頑張っている人って、ステキだなぁと思います✨
弟の事故のシーン。自分を責め、母親にも責められ、砕かれ乾いてしまった成道の心を、手塚先生の言葉が優しく潤していく。
『あぁ、この人は自分のことを思ってここまで足を運んでくれたのだ』
胸の奥底に長い時間閉じ込められていた成道の思いを、ゆっくりと丁寧な言葉で母親に伝える…… このシーン泣かさるけど大好き✨✨✨
他にも、藤岡さんが紡ぐストーリーや共感できる言葉の数々が、色んな摩擦ですり減った心に沁み込みました♡(˘︶˘)♡
ソコソコ年齢を重ねると、努力したり、頑張ったりって気恥ずかしかったりするけど、そんなこと関係なく、理想とする人生の実現のためにチョット色々頑張ってみようかなぁ…と、思わさった一冊✨
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