小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
ネタバレ読み終わった後の余韻がすごかった。すぐに、二回目読んでいます。文章の構成が素晴らしい。少しずつ出てくる、事故の真実。事故が発生した時は、出てきたのは亡霊?とぼんやりした記憶。美容室に行く度、過去を思い出す描写。再会した時の、息子から産みの親へのストレートな感情。元夫からの、事件直後意識はあったとの告白。
車を運転することが怖くなった。また今ある何てことない日常を、より大切にしたいと思った。
「犯罪者の母親の子供と、母親が死んだ子供、どちらがより不幸か考えろ。」刑務所から出てきた人に言う言葉としては、最低な言葉。ただもしこれが現実起こったら、向きあえないのかもしれませんが。つい、おまえもちゃんと向きあえよ!と思ってしまった。夫にも読んでもらいたい本。
そして、この物語こそ私にとっての本屋大賞だと感じた。色んな作家さんの本を読むきっかけとなる、本屋大賞は永遠に続くべき賞レース! -
Posted by ブクログ
心に響く言葉が本当に多い一冊でした。
あのちゃんの言葉はストレートで、ときにはかなり強い。それでも、だからこそ伝わってくるものがあるのだと思います。
読んでいて強く感じたのは、「自分の感じ方や生き方を、他人に否定されたからといって手放さなくてもいい」ということでした。
冒頭に、
「人から見たらどうでもいいことかもしれないけど、“それはどうでもよくない”って言うために書きたい。」
という言葉があります。
この一文からも、自分にとっての違和感や大切なものを、他人の基準に合わせて「どうでもいいこと」にしない人なのだと感じました。
特に印象に残ったのが、あのちゃんにとっての「復讐」という考え方です。
学生時代にいじめられていた経験から、あのちゃんは「復讐」を、相手を傷つけたり陥れたりすることではなく、自分の力で這い上がることとして捉えていました。
自分がテレビに出ることで、かつて自分をいじめていた人がテレビを見て笑ったり、自分の音楽がその人の生活の一部になったりする。それこそが復讐なのだと。
誰かに仕返しをするために力を使うのではなく、自分自身を前に進めるために力を使う。
すごく素敵だなと思い、とても印象に残りました。
一方で、「僕には復讐しかなかった」という言葉には、かなり胸を突かれました。
長いあいだ復讐を支えにして生きてきたからこそ、それを「もう終わりにしていい」「許せばいい」と簡単には手放せない。その背景には、惨めさや屈辱、これまでの自分の人生そのものを否定されたような感覚がある。
正直、耳が痛く、心も痛む話でした。
しかし同時に、これがあのちゃんのアイデンティティーなのだろうとも思いました。
人それぞれ、ここまで生きてきた背景は違う。だからこそ、自分には理解できない誰かの「大切なもの」を、簡単に否定しない人でありたい。自分自身のアイデンティティーも大切にしながら、他人のそれもできるだけ尊重したいと思いました。
また、「群れなくたって人は闘える」という考え方にも共感しました。
人と関わること自体は大切だし、興味がなくても「一旦試してみる」という負担も、ときには必要だと思います。
しかし、それが義務になってしまうなら、無理に群れなくてもいい。
「群れられない自分は駄目なんじゃないか」と不安になる必要もない。
自分のペースで人と関わり、自分のペースで進んでいけばいい。
そう思えるだけで、少し生きやすくなる気がしました。
そして、私があのちゃんの考え方に惹かれる一番の理由は、「壊れたものだけが持つ強さ」のようなものを感じるからです。
一度も挫折したことのない人には、なかなか持つことが難しいかもしれない、人の痛みを想像する力。
そして、挫折したところから立ち上がった経験があるからこそ知っている、自分なりの立ち直り方。
それは、ただ強いというより「しなやかな強さ」を持っているということなのだと思います。
私は歌手のAimerさんも好きなのですが、惹かれる理由は少し似ているのかもしれません。
一度傷ついたり、壊れたりした経験があるからこそ、暗闇にいる人へ届く言葉や音楽がある。
この本を読んで、改めてそんな「しなやかな強さ」に惹かれている自分に気づきました。
他人から見ればどうでもいいことでも、自分にとってはどうでもよくないことがある。
誰かに理解してもらえなくても、自分の感じ方まで否定しなくていい。
もちろん、それを少しでも理解してもらえる人に出会えたならとても幸せなことのように思います。
そんなことを考えさせてくれる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ理香さんによる拓人の「何者」アカウントの種明かしにゾクっと鳥肌が立った。ここに関してはサスペンス・ミステリージャンル要素すら感じる。
拓人の達観した態度や理香さんに指摘された「自分は他とは違う何か(何者か)」と信じたい気持ちにどこか心当たりがあり、夢中で読み進めながらも目を逸らしたくなっていた。他人から評価されることを恐れて、一歩下がったところから世界を眺め、あたかも自分だけが全知全能の神的な存在と信じてたい、そんな弱さが自分にもあると平手打ちを喰らった感覚。
サワ先輩の、投稿文の140文字に選ばれなかったところにその人の「何者」があると言った発言から、自分を含む多くの現代人が、不特定多数(鍵アカなら特定)の人に向かって、選び抜いた単語、文章、表現、絵文字、写真等を巧みに組み合わせて理想(?)の「何者」をSNS上に表出させようとしている。
その「何者」がそのまま受け取られることもあれば、読者によっては妬みや呆れ、怒り等様々な感情を伴って解釈された全く異なる、発信時の狙いからは歪んだ「何者」として受け取られ、自分の「何者」が至る場所、時間、受信者の中で構築されることになる。
今度からインスタ投稿する時は、「この投稿は何者になりたい用の投稿だろう」と一旦確認して投稿ボタンを押すことにしよう。 -
Posted by ブクログ
とても面白かった。(表現が陳腐)
何回も声を出して笑った。
まず、フリーランスで働くということの大変さがよくわかる。売れっ子ゆえだろうが、心から休める日が皆無。翻訳や執筆をしない日もあるが、疲労回復日か他の家事、介護が突発的に差し込まれる。
それにも増して、著者のプロ意識というか仕事の進め方、心意気を感じる。翻訳というものは終わりが見えない長い道のり、自分を鼓舞して、気が乗らなくてもとにかく歩みを進める。脇道かもしれないが参考文献に目を通す、思ったより時間がかかる、締め切りやメンタルプレッシャーとのたたかい。応援したくなること度々。
家を運営する(介護も育児も家事も)マネージャーとしても、著者はとても有能だけど、この領域がコントロールしがたく、疲労困憊ぶりが良いバランスで挟まっている。この分野が自己嫌悪や反省が多いような。
全く職種も環境も異なる自分だけど、著者から何か盗む、学びが多い。
こんなに気軽なエッセーだというのに。
他の本も読もうと思う。買って読もうと思う。(著者への敬意で。)
あと、ちょいちょい出てくる食事の写真が美味しそうで読んでいてお腹がすいた。
他の自分の経験を語っては行けない、(みんな気をつけて) -
Posted by ブクログ
表紙やタイトル、一穂ミチさんの作品ということで勝手にほんわかした小説を想像していたら、いい意味で裏切られました
どれも一筋縄ではいかない、珠玉の短編集です
7編とも個性的で面白かったのですが、個人的にホラーというかイヤミス的な終わり方が好みの「ピクニック」と、
往復書簡の形式で語られる男女の物語「花うた」がお気に入りです
特に「花うた」は静かでありつつも、手紙を通してふたりの感情が伝わってきて、最後少し泣いてしまいました
収録されている7編はどれも毛色の異なったものなので、読む人によってお気に入りが変わってくると思います
短編集ですが、少しずつ前後の作品と繋がりがあるところも面白いと感じました -
購入済み
最初は少し怖い話なのかなと思った。家出をして、知らない場所の夜の海で不思議な少女に出会うという設定は、どこか不気味で緊張感があった。しかし、読み進めていくうちに、怖い物語ではなく、孤独や家族への複雑な気持ちを抱えた人の心を描いた物語なのだと感じた。
特に印象に残ったのは、主人公が家を飛び出したときの気持ちである。家族に対する不満や、自分のことを分かってもらえないような苦しさは、誰にでも少なからず経験があるものだと思った。だからこそ、主人公のどこか遠くへ行きたいという気持ちが他人事には感じられなかった。
また、夜の海や白いワンピースの少女など、少し怖さを感じる描写が多いのに、読み終わった後には不思議と温かい気持ちが残った。読み終えると、この物語で描かれているのは幽霊よりも、人が誰かに出会うことで心が変わっていくことなのではないかと思った。
短い物語なのに、登場人物の気持ちが細かく描かれていて、家出という行動の裏にある誰かに分かってほしいという気持ちが伝わってきた。
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