あらすじ
「私の人生の主は私。何ものにも、簡単に委ねてやるもんか」
20世紀初頭にアメリカで創業し、世界中から愛されるアニメーション会社となったスタジオ・ウォレス社。1937年、レベッカは類稀な画力でウォレス社に入社を認められたものの男性ばかりの社内で実力を評価されない日々が続く。それでも仲間と協力し作品創りに励むが、第2次大戦の影が忍び寄ってくる……。
時を隔てた現在、ウォレス日本支社で働く契約社員の真琴は、偶然見つけたデザイン画から、素晴らしい才能を持ちながら歴史から忘れ去られた「彼女」たちの人生を知る――。
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Posted by ブクログ
戦争、性差別、労使の反発といった逆境の中で、自分たちの意思が伝わる映像作品を作るという信念だけは貫いた、1940年代のアメリカの女性アニメーターたち4人のストーリー。
性差別により、実力に反して自分たちの発言力もない中で追い討ちをかけるように労使対立によるリストラの陰が彼女たちを待ち受ける。それを乗り越え、自分たちが思い描いたプロジェクトがようやく認められつつある中で、戦争により制作会社は政府からの戦争プロパガンダに基づいた作品作りしかできなくなり、お蔵入りとなってしまう。
そのような中であるきっかけで、約50年後の日本で、当該のアメリカ制作会社にあこがれを持つ女性アニメーターが、彼女たちが表立って発表はできなくとも、誰かに届くように倉庫に隠していた彼女たちの作品を見つけ出し、ようやく日の目を見ることとなる。
どのような逆境下でも、自分が信じることを貫き通せば、それが世間からすぐには認められなくとも、簡単に心が折れずに進んでいけるという勇気をもらえた。
Posted by ブクログ
ウォルトディズニーの会社になぞらえた、架空の会社、架空の人々、戦前戦中戦後を生きたアニメーションに携わる女子4人。第二次世界大戦、ストライキ、赤狩りに翻弄される時代を生き抜いた4人。僅かな痕跡しかない4人の業績を現代の同じ会社女子が解き明かしていく過程が面白い。大変な時代だったなと思うと同時に女性の地位がとてつもなく低くて不安定だった時代。
ディズニー映画好きだから、たいへん興味深く読めました。
映画題名も微妙に変えてあるから、これは白雪姫、これはバンビのことか?これはファンタジアだな?と想像するのも楽しい。
ただ漫画映画の素晴らしさを文字にするのはホントに難しいんだなとは思いました。ちょっと前に「ピアノマン」を読んで音楽描写の素晴らしさに感心したところだったので余計に。
バンビもファンタジアもピノキオも見てるから言いたい事は判りますけれども。そこだけ残念。でもそれ以外は感動できます!
Posted by ブクログ
レベッカも真琴も性別や時代に影響を受けて生きづらい人生だけど、信頼できる人たちに会えて、それが財産だなと思う。
女性だからすごいじゃなくて、属性に捉われず生み出されたものがすごいって評価されるべきって件に同意。
でも結局「未来を切り開いた女性たちがいた」って括られちゃうんだよね。それが悪いとも思わないけど、少し居心地の悪さは感じる。
Posted by ブクログ
1940年代のアメリカで性差別と戦い乍ら、自分たちの作品を手がける女性アニメーター。伝説の彼女らに憧れる派遣のアニメーター真琴。
過去と現代の二つのストーリーをディズニーで働くアニメーターの目を通して描いている。アメリカの物語が凄く良かった。
Posted by ブクログ
一応別名にしているが、ディズニーで働く女性たちの2つの時間軸の物語。
一つは20世紀初頭、ディズニー勃興期にアニメータやイラストレイターとして働いたレベッカとその仲間達が、女性ゆえの地位的差別や、世界恐慌第二次世界大戦などの激動の中で働き生きた物語。
もう一つはコロナ期つまり現代日本の契約社員真琴が、展覧会の企画に携わる中でディズニー勃興期に活躍した女性たち(つまり一つ目の物語)を知ることになり、その世界を探る物語。
いつ仕事がなくなるか、いつ首になるか、分からないなか、男性や正社員より安い給料で単純労働を優先的にさせられる、能力ある女性たちの苦闘。男である俺が読んでも本当の辛さは分かったものではないのだろうけど。
才能と努力でのし上がっていく姿は美しく正しい。それが大いに分かっているのに、何故が調子のよさとか口先三寸とかで成功したり、親の七光りでなんとかなっているヤツらもいて、そういう連中の居所を作るために才能と努力のヤツが座る席が足りなくなる。
普通によくある話…で済ませていたから、席には無能しかいなくなって、どうにもこうにも暮らしにくい世の中になってしまった…今の日本は、いやアメリカもロシアもイスラエルも、世界中が劣化して行ってる原因の一つはそういうことなのかも知れないな。
白雪姫の肌を日焼けさせるとか、そんな事じゃないと思うよ、多分。
Posted by ブクログ
20世紀初頭に創業した世界的なアニメーション会社であるスタジオ・ウォレス社。60年前に日本で開催した展覧会の展示品が発見され、新しい展覧会が行われることが決まった。日本支社の契約社員の西真琴は展示品の希望リストを作成するためアーカイブを確認していて魅力的なデザイン画を見つける。そこにはM.S.HERSEAのサインがあり…。
1930年代後半から40年代に活躍したスタジオ・ウォレスの名もなき女性アニメーターたち。現代の真琴の視点と、激動の時代を生きるレベッカの視点でM.S.HERSEAの正体、人生が明かされていく。
よく内容を知らずに手に取ったので女性アニメーターを描いた本だと読み始めて知った。ディズニーがモデルなのは間違いなく、著者も実際ディズニージャパンで働いていた人らしい。私はそこで詳しいわけではないのでどの作品がモデルなのかなとかはあまりわからなかったが、好きな人だとそういう視点でも楽しめるのかもしれない。
女性蔑視、ストライキ、第一次世界大戦と激動の時代と周囲に翻弄されながらも理想のアニメーションを作りたいと描き続けるレベッカたち。名前が残ることもなく、やりたくもないプロパガンダ作品を作らされ、戦後は仕事を奪われる。いつ仕事がなくなるか怯える不安定な契約社員である真琴の状況と、この時代の女性の苦境がそれぞれ描かれている。リストラに怯えつつ、抗うこともできない真琴がM.S.HERSEAを発見し人生を知ることで、上司や社員の女性と理解し合い、抗おうと変わっていく姿もよかった。
Posted by ブクログ
男女差別、正社員と非正規社員の格差、戦時中の人種差別など、色々詰め込まれていて、途中で話が長いなと感じた。同じ女性でも、立場が違うと何もかもが違う。性別に関係なく、頑張って成果を上げた人が正しく評価される社会になってほしい。