あらすじ
「ときどき思うのよ。偶然って、本当にあるのかしらって。この世には、私たちには見ることも、思い描くこともできない複雑な糸がはりめぐらされていて、その壮大な布の中では、どれもが、あるべきところにあるとしたら……」(本文より)
降魔士の少年・ジェードは、神と魔物、光と闇が共に宿っているとされる、神聖でありながらも恐ろしい聖域<闇の大井戸>で、魔物から聖なる蝶を守る役目を負って暮らしていた。ある日、ジェードの相棒である少女・ルクランが、聖なる蝶が舞い上がって来る予兆の鬼火に触れる事件が起きる。他の降魔士たちと違い、なぜか、予兆の鬼火に激しく反応してしまうルクランは、聖域を守る者のなかで波紋を呼んでいた。自分がなぜ、そんな反応をするのかを知りたいと願うルクランと、ルクランを守りたいと思うジェード。それぞれの思いをよそに、ふたりは壮大で複雑な運命の糸に絡め取られていく。
1999年から2001年にかけて、上橋菜穂子の代表作である『守り人』シリーズの創作と並行して執筆されたこの物語は、のちの『獣の奏者』、『鹿の王』、そして『香君』にもつながる、作者の創作の軌跡を知ることができる貴重な作品でありながら、これまで書籍化されていませんでした。
この物語は、人と人との関係だけでなく、人間と他の命ある存在との繊細で複雑なつながりを描きたいという著者の想いから生まれました。
執筆から二十年以上の時を経て、円熟の域に達した著者の手で加筆修正され、力強くも美しい物語へと成長した物語が、ついに世界へと解き放たれます。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
SL 2026.2.19-2026.2.21
上橋菜穂子さんの初期の作品。四半世紀を経て書籍化。担当編集者の方に感謝。
上橋菜穂子さんの作品は奥行きが深くて人と自然のかかわりを深淵に描き出す。
作者のあとがきがとてもいいです。
Posted by ブクログ
上橋ワールド炸裂だった。
会話も大事、人物造形も大事、あらすじも大事。でもやはりいいファンタジーは情景描写がしっかりできていることだとあらためて思った。
年末に大好きな町田その子さんのファンタジーに、がっかりしてしまった。なんでかなあ?と思ったのだがこの作品を読んで納得。情景描写の差だ。
新作ではないそうだ。しかし、上橋菜穂子はやっぱり上橋菜穂子だ。
守り人シリーズを読んだ時の感動がよみがえった。
Posted by ブクログ
上橋さんのシリーズはどれもいい
人間、生物、植物、それぞれが絡み合って織り成す物語
自然、宿命や運命、生命の弱さと強さ、葛藤
それらをまた感じられる作品でした
Posted by ブクログ
面白かった!!!
読み進めながら香君と系統が一緒?と思っていたらあとがきでも言及されていて嬉しかった。
上橋先生が物語を描いてくれて本当に良かった。
そして、出版してくれて本当に良かった。
読めて幸せ。
また上橋先生の作品を読みたいと貪欲な気持ちが湧き上がる。
主人公たちよりも生態系の描かれ方、呪い歌がファンタジーみが溢れていてのめり込めた。
児童のときに読めたら一体どんな瑞々しい気持ちで読めただろう。
Posted by ブクログ
大好きな上橋菜穂子さんの作品。
植物を含めた生態系の話。
あとがきにも書いてあった、
「この世は多様な生命いて、それぞれが複雑に関わりあっていて、人間はその中に組み込まれている生命のひとつ」という考え方。
香君や鹿の王など上橋菜穂子作品でよく感じられるテーマだが、この作品はよりシンプルに表していたと思う。
短い話のはずなのに、この世界観にぐっと引き込まれて、読み終えた後に異国を旅してきたような感じになった。
Posted by ブクログ
上橋菜穂子さんの世界が堪能できて、読書時間がとても楽しかったです。
人が中心で物語が進められていきますが、人(自分が理解できる範囲)からの見方が全てだと思い込んでしまうことの危険さを痛感させられました。読書中に説教されるとか教訓めいた言い回しではなく、本の世界にいつの間にか入り込んでそう思うようになる、、。
登場人物は皆魅力的ですが、私はラド先生が好きです。
一回読んだ著者さんの別の作品を読み返したい衝動に駆られています。
Posted by ブクログ
上橋菜穂子最高!
年を重ねて物語の中に入り込めなくなった私に、神の蝶の匂いを感じさせてくれて久しぶりに物語の中に入り込むことができた。
裾をはためかせているインガの描写が印象的だった。
Posted by ブクログ
大好きな上橋菜穂子作品。
軽やかな筆致でありながら、文化や政治、生態系に至るまで緻密に作り込まれた異世界は、
まるで実在する歴史を辿るかのような圧倒的な手触りがある。
やはり上橋先生の構築する物語は別格だ。
本作を象徴する言葉は「輪廻転生」。
一つ一つの命が単体で存在するのではなく、
大きな理の中で繋がり、巡り続ける様が、
静謐かつ力強く描かれている。
個の運命が壮大な世界の流れに溶け合っていく光景は、
言葉を失うほどに美しい。
命の連なりを肌で感じ、
自らもその環の一部であると気づかされるような、
魂に響く名作だった。
Posted by ブクログ
人は、理性・感情・経験・思考あらゆる精神的活動を駆使して、さまざまな判断をします。
自分にとっては正しいと思うことも、他の人から見れば間違ってみえたり、自分にとっては正義であっても、他の人から見れば悪であったり。
生態系―植物や動物や物質などのあらゆる生命活動―から通してみれば、自分がこだわっている価値判断は取るに足らないことであったり、人間の目ではない別の「系」からみれば、別の意味合いや、それこそ別の世界観があるのかもしれません。
自然との関わりが希薄になった今日、自分のなかで、知らず識らずのうちに人間中心主義が強くなっていたように感じます。
この物語を読んで、自分がすごく凝り固まった存在になっていたように思いました。
身体も心も緩めて、自然や空気の流れに五感を浸しながら、大きな視点で世界を捉えてみる、たまにはそんな時間を作りたいと感じました。
Posted by ブクログ
四半世紀も前に執筆した作品を、こうして読むことができるなんて感動です。分厚いですが、ふりがなが多く行間も余裕があるため、子どもでも読みやすいと思います。タイトルどおり蝶が舞う表現がなんともいえないほど幻想的でした。
Posted by ブクログ
若き上橋さんが紡いだファンタジー。
いやあすごいなあ。
ファンタジーとしてのイメージが鮮烈で美しくて強烈。
そして闇の大井戸や鬼火や神の蝶、蝶の影の正体に意表をつかされ驚かされた。
それにしても相変わらず世界観の説明が絶妙。
読み始めてすぐにすっと初めての世界に飛び込んでいける。
いやすごい。
守り人シリーズを描いていた時期に執筆されたと言うことだけど、たとえば伝承の歌の中に真実が隠されているのはもちろん『精霊の守り人』を思い出したし、そのイメージのスケール感は『闇の守り人』を彷彿させる。
これは若い頃にしか描けないお話かもしれない。
そう言う意味では最近の作者の作品は、科学的な正しさを意識するあまり、ファンタジーとしての奔放さに少し欠けるきらいがあると感じていたのだけど、このお話はまさにファンタジーとしての豊かなイメージと驚きを与えてもらった。
書籍化に感謝。
Posted by ブクログ
光と闇がそのまま単純に善と悪でない、少々込み入ったストーリーになっていて味があるなぁと思います
最後のルクランがどうなったかはもう少し詳しく描いてくれるともっとよかった
Posted by ブクログ
やはり上橋菜穂子先生の物語は良い。心が洗われる。正直なんかよくわからないなと思ったとこもあるけど、世界観が好き。ジェードとルクランにはこの先、幸せになってほしい。ルクランは結局のところ、「人」でいいのか……?
Posted by ブクログ
食べ物や文化、言語、国の成り立ちなど世界観が作り込まれていて、物語に入りやすい。
全体的に読みやすい。が、ちょっと説明不足な部分がなくもない。とくにルクラン周辺。
表紙が白浜鴎なのが嬉しい!人物紹介のイラストも!!
Posted by ブクログ
上橋先生の幻の初期作品、しかも改訂版となれば読むしかない、ということで文庫化を待てずに購入。
終盤は急転直下というか、やや短い気もしたが、展開された世界は紛れもなく上橋ワールド。
「獣の奏者」と「香君」の息吹をはっきり感じることができた。
Posted by ブクログ
30代の上橋菜穂子先生が〈守り人シリーズ〉を書いているときに連載していた小説。瑞々しく、花や神の蝶の香りを生々しく感じる。後の上橋先生の世界に通じる。すばらしかった!
Posted by ブクログ
幻の本、というので短い小さなストーリーかと思っていたら、とんでもなく壮大で勢いのある作品でした。これは世に出るべき!と評されるのはうなづける。
現在見えている部分ではない世界、普段は忘れられている世界が焦点なのは似ている。
特殊な能力を持ったものと、その運命に翻弄される人を守る人。うん、これまでの作品とコンセプトは似ているが、全く飽きずに新たな気持ちで読める。
運命の相手を見つけるチームワーク、素敵だなぁ。
Posted by ブクログ
上橋菜穂子さんの作品を読んでいると必ず起こると言ってもいいのが、物語の中の〝過去〟が歯車として〝現在〟に見え隠れし始め、それが近い未来への覆いをなくしていくあの瞬間、どうしようもなく体が震え始めるあの高揚感がとても好きで。
今回もそれを味わえて満足だったし、不思議な、当人たちにしかわからない絆を一緒に辿れたのも楽しかった。
『獣の奏者』とか『香君』の流れを思い出すなあと読んでて思ってたらこれはそれよりも前に書かれてた作品だったのですね!納得!!
Posted by ブクログ
上橋先生の本ということで嬉々として読みました。
四半世紀前に雑誌連載したのを手直し、ということで、守人シリーズとおなじ頃と考えると、とても納得できます。
おそろしくスケールの大きいファンタジーで、とても面白かったです。香君と同じく植物がテーマですが、あちらはどちらかというと人の物語、こちらは世界の物語だとおもいます。
☆を一つ減らしたのは、上橋先生が当時未完成だと考えられ、出版を随分と躊躇われた理由と重なるのではないかと思いますが、もう少し世界観の説明が欲しいところがあるからです。上橋先生の作品の場合、最後まで読めばわりとすっきり世界観とかが納得できるんですが、ちょっと消化不良の部分が残ってしまっています。
もちろん、上橋先生らしく深い世界観が描かれていて面白いのは間違いないです。
Posted by ブクログ
まず、この本が新作ではなかったということが驚き。30年近く前、守り人シリーズと同時期に雑誌に連載されていたものなのだそう。
あとがき「眠りから覚めた物語」に上橋奈穂子さんの思いがぎゅっと詰まっていて、妙に納得してしまった。
前の「香君」と同様、植物や虫などの自然に対する畏怖を感じずにはいられない。
ファンタジーには苦手意識があるけど、上橋さんの作品はスムーズにその世界に入っていけるのが不思議。昔の作品で読んでいないものもあるけど、読んでみたくなった。
Posted by ブクログ
序章 予兆
第一章 ルクランと鬼火
一 インガとナシェム
二 休日の午後
三 悪い噂
四 真夜中の鬼火
第二章 〈永久の祈り〉と呪いの歌
一 シェーシェム師
二 真夜中に
三 ロロ鳥の光
四 虫干し
第三章 異変
一 黒い花が咲くとき
二 神に選ばれた者
三 恐れ
四 光となる繭
終章 葦の島
一 生命の巡り
二 激流の果て
あとがき 眠りから覚めた物語
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〈神の蝶〉
〈蝶の影〉
ラムラー
ラシェラン国、ラシェラン人とラトゥール人
降魔士〈カタゼリム〉、魔族〈カタグ〉
“寝顔は、あんたが見たいその子の顔を映している鏡みたいなものよ”
“偶然って本当にあるのかしら”
元の民族が違う、文化が違う、言葉が違う、伝承、伝わっている歌、民族間の水面下に潜む不破。
この世界の不思議、理、成り立ち、人間とそれ以外との関係。
インガとナシェムが漁師の子であることに涙する。
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上橋菜穂子さんの物語を読みたいと思いつつ積読に積読を重ね、本書が初読みになりました。あとがき冒頭にある“本書『神の蝶、舞う果て』は新作ではありません。”について事前情報として知っていたこともあり、はじめて上橋菜穂子さんの生み出す世界へ浸るに相応しい物語だったと思っています。
他の物語も読みます。
Posted by ブクログ
聖なる神の蝶を、魔物である影の蝶から守る役目がある降魔士。その降魔士であるジェードと相棒のルクランのお話。
本作は、上橋さんを好きな理由が詰まってるなって思う本だった。上橋さんの物語を通して描く「人と人以外の生き物との関係」の考え方が好きなんだなぁと。
動植物は人ではないから本質は誰にもわからない。
だからこそ人間は、正解を求めて問い続ける。その答えは誰にもわからないから、それぞれの人なりの解があって。でも人は欲深いから、私欲に走って自分達の都合のいいように考え利用してしまう。そう言った人達に対して主人公達が、共存するには?大切な人を守るには?と迷い、踠きながら最適解を追求していく。その上橋さんの考えが作風が好きなんだと。
香君と話が似てて、そう思うと20年前から上橋さんの自然に対しての想いや考えは変わってないんだなって。
人間は自然の恩恵を受けてるのに、その真髄は何も知らない。だからこそ美しく、恐ろしい。今回その象徴が蝶と闇の大井戸を神だと思ってたのが、植物とだったと真実を知った時、人はどうあるべきか。上橋さんが解いたのは書きたかったのはそういうことなのでは?本作は、神ではなく植物だったって言う真実を伝える事がそれにあたるんだろうね。
「人にとって役に立つものが、全てのものの役に立つとは限らない」って上橋さんらしいこの問いが1番刺さった言葉でした。素敵な作品でした!
Posted by ブクログ
闇の大井戸から飛び立つ神の蝶 その後に神の蝶を食べ始める蝶の影を狩る為に選ばれたジェードとルクランは 何故か神の蝶が出てくる前の鬼火に無意識に気付き鬼火に触れようとする 神の蝶により実をつけるラムラーが一斉に枯れ謎の黒い生物が現れる ルクランは悪魔の子なのか 歌いつがれた物語が現実になっていく
Posted by ブクログ
あとがきで著者が人と人だけでなく、人と人以外の関係も描きはじめる契機になった作品と書かれていた。四半世紀も前の作品を著者自ら手入れをして、本にしてくださったことに感謝。
Posted by ブクログ
回収されない伏線(っぽい意味深な設定)そっちのけで大団円を迎えるボーイミーツガールパート。上橋菜穂子先生何があったの⁉ と思っていたのですが、あとがきを読んで納得しました。二十数年前に子供向け雑誌で連載されていたものだったんですね。それを今、書き直さず最小限の修正だけで出版する上橋先生の器に敬服しました。
ジェードがいい子過ぎてなんだかいつもよりページをめくる手が遅くなってしまった。神官を目指しているジェードが相棒のせいで成果を上げられない…16歳の子供がその状況で相棒にあたらずにいられるかと思うと、降魔師たちが訓練し絆を深めていく過程がもっと見たかった気がする。
手放しで絶賛できなくても、この物語を読むことで自分が上橋先生の作品の何に魅力を感じていたのかわかった気がします。
私はきっと人のことなんて気にも留めない命のつながりと何とか折り合いをつけようと権力の目を盗んで真実を伝え続けるマイノリティの伝承に魅力を感じていたんだなと再確認しました。
Posted by ブクログ
「獣の奏者」よりも前に書かれた物語だということに驚きました。このお話もまた、生きとし生けるもののことわりについて、深く深く思いを馳せずにはいられない作品でした。
Posted by ブクログ
これまで何代に渡り、続けてきた風習や信仰が根柢から覆され、その威信が揺らぐとき、人はどうなるだろう
神を必要とする人間の弱さは脆くて危うい
静かに突き付けるテーマは、まだ熟していないから単行本化しなかったとあとがきにあるが、その時ではなく、いまだったという
自分を見失わないで、どう自分らしく生きられるか
世界がひっくり返ったときに信じられる人がいるか
願わくば、彼らのリレーションシップがどのように構築されたのか、その揺らぎや決定的瞬間がもう一段描かれていれば、世界が覆る局面で互いを信じる必然性が、より強い説得力をもって胸に迫ったのではないだろうか
なんて、上橋菜穂子好きにとってはそこに感情移入できなくて、勝手に惜しがってる
Posted by ブクログ
降魔士の少年・ジェードは、相棒のルクランと共に、聖域<闇の大井戸>で、魔物から聖なる蝶を守る役目を負って暮らしていた。ルクランは予兆の鬼火に激しく反応するという特性があり、そのため2人は実際に魔物を狩る前にその場を離脱していた。
そのルクランの出生の秘密が世界を揺るがす秘密につながっている。神とは、信仰とは何か、生きることの意味、他の生き物との共存、など著者の後年のテーマにつながるものが詰め込まれている。