【感想・ネタバレ】神の蝶、舞う果てのレビュー

あらすじ

「ときどき思うのよ。偶然って、本当にあるのかしらって。この世には、私たちには見ることも、思い描くこともできない複雑な糸がはりめぐらされていて、その壮大な布の中では、どれもが、あるべきところにあるとしたら……」(本文より)

降魔士の少年・ジェードは、神と魔物、光と闇が共に宿っているとされる、神聖でありながらも恐ろしい聖域<闇の大井戸>で、魔物から聖なる蝶を守る役目を負って暮らしていた。ある日、ジェードの相棒である少女・ルクランが、聖なる蝶が舞い上がって来る予兆の鬼火に触れる事件が起きる。他の降魔士たちと違い、なぜか、予兆の鬼火に激しく反応してしまうルクランは、聖域を守る者のなかで波紋を呼んでいた。自分がなぜ、そんな反応をするのかを知りたいと願うルクランと、ルクランを守りたいと思うジェード。それぞれの思いをよそに、ふたりは壮大で複雑な運命の糸に絡め取られていく。

1999年から2001年にかけて、上橋菜穂子の代表作である『守り人』シリーズの創作と並行して執筆されたこの物語は、のちの『獣の奏者』、『鹿の王』、そして『香君』にもつながる、作者の創作の軌跡を知ることができる貴重な作品でありながら、これまで書籍化されていませんでした。
この物語は、人と人との関係だけでなく、人間と他の命ある存在との繊細で複雑なつながりを描きたいという著者の想いから生まれました。
執筆から二十年以上の時を経て、円熟の域に達した著者の手で加筆修正され、力強くも美しい物語へと成長した物語が、ついに世界へと解き放たれます。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

30年以上前に連載していた作品を修正して1冊にしたということを知っていたので、作品に懐かしさをより感じた。勢いを大切に修正は最低限なのも私的には良かったと思う。
確かに設定などにやや「?」と気になるところもあるが、それを置いてもやはり丁寧な作りの作品だと感じる。
ご飯のくだりで沢山出るファンタジー用語と美味しそうな描写はやはり上橋さんだなと。美味しそう。
話がどんどん展開していくので読みやすいが、もっと作品を味わいたいと思う気持ちもありつつ…
とりあえず上橋さんのファンタジー世界は好きだなと改めて思えた作品だった。

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2026年07月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ジェードとルクランはペアになって、ラムラーと呼ばれる花の受粉を助ける
<神の蝶>を<蝶の影>から守る、降魔士という仕事についている。

ラムラーの実は滋養に満ちており、一年に何度も実をつけてくれることから、
人々から大切にされてきた。

<神の蝶>と<蝶の影>は聖域である<闇の大井戸>から出てくるため、
ジェードとルクランは<闇の大井戸>の近くで暮らしている。

ルクランには不思議な特徴があり、<神の蝶>と<蝶の影>が現れる予兆である
鬼火に反応し、意識のない状態で鬼火に触れようとしてしまうのである。

ある日、ルクランは自分が育った孤児院に向かうことから、
ルクランの育ちが少しずつ明らかになっていき…。

時を同じくして、ラムラーに異変が生じる。

古くからの言い伝えが断片的にしか伝わってきていないことも重なり、
ここから一気に話が動くのが上橋先生の本の特徴である。

しかし、上橋先生の本の特徴の1つである隠密集団が出てこない。

先生の大ファンであり、待望の本であったがゆえに、
少し残念で、星を1つ減らして星4とした。

あとがきの言葉は心に沁みました。上橋先生の本が好きな理由がここにある。
「私の中にはずっと、人間同士のやりとりだけを見ていては見えないものが
あるのではないか、という思いがありました。この世には、実に多様な生命が
満ち溢れていて、それぞれが様々なつながり方で複雑に関わり合っている。
人もまた、その中に組み込まれているひとつの命の姿なのだから、その在り方を
見つめることで、見えてくることがあるのではないか、という思いです」

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2026年09月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書はもともと1999年から2001年にかけて雑誌に連載されたものだそうで、長らく書籍化はされていなかったそうです。
それが、編集者さんの情熱と上橋さんの決断で書籍化が実現しました。書籍化までのエピソードにもとても感動しました。
ありがたい。。

人にとって役に立つものが、すべての生き物にとって役に立つとは限らない。
著者の作品はいつも、何を以て善悪を判断するのか、立場によってものの見方が変わる危うさを教えてくれます。
いつものような政治的な話は薄めで、世界の繋がりを少年少女が解き明かしていく展開はちょっと難しいけれども、子供にこそ読んでもらいたい一冊だと思いました。

内容的にもそうだけど、本作は色彩の豊かさが特徴的な作品でもあるので、そういう意味でも絵本をめくるように読めるのではないかなーと思います。。

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2026年08月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「精霊の守り人」シリーズや「獣の奏者」などの作者が、かつて雑誌連載した作品を書籍化したもの。
きちんと組み立てられた異世界の物語で、すっとその世界に入り込める。
ラムラーという唯一無二の作物を得るため、その受粉を助ける神の蝶をまもり、神の蝶を食べてしまう蝶の影を狩るカタゼリム(降魔士)は男女の2人組で狩りを行う。
主人公のジェードと相棒のルクランはカタゼリムではあるが、ルクランが予兆の鬼火に異常に反応してしまうため、実際の狩りはしたことがなかった。なぜ、そうなるのか。ルクランの出自の謎に関する不吉な噂まで流される。
実のところ、神の蝶や蝶の影、予兆の鬼火はなぜ同じ闇の大井戸から現れるのか。わからないままに何十年も経過していた。しかし、ある時、事件が起きる。
貧富の差や差別の問題なども織り込まれ、読み応えのあるファンタジーだった。
あとがきで書籍化のきっかけが書かれていたのだが、年月の経過もさることながら、古本屋を探しまくり、足りなかった掲載誌を全て集めた編集者たちの執念に感謝した。それがなければ30年近く経ってからの書籍化を作者が許可しなかったのではないか。小学生の時に連載の第一回しか読めなかった編集者さん、ありがとう(^^)

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2026年07月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

上橋さんの物語は、設定がとてつもなくファンタジーだけれど、リアリティがすごい。食べ物はいつだって美味しそうで、その世界には連綿と続いてきた歴史の息遣いまで感じてしまう。

本作品を新作だと思っていたので、あとがきを読んでびっくりした。

自然はあまりにも壮大で、人間基準での神聖視では噛み合わない事象が生じてくる。人間の善悪とは無関係に、植物や生物はあるがままの生を全うしているだけなのだから。

利権も絡んで、神聖さを維持するための辻褄合わせや隠蔽、さらには犠牲も厭わないと考える人たちと、全てを受け入れてこれまでのあり方を変えていこうとする人たち。ファンタジーだけれど現実世界にあるあるなこと。
緊張と深いため息の物語だった。

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2026年08月22日

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