小説・文芸の高評価レビュー
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杉並区の住宅街にある古びた屋敷。そこには4人の女が住んでいる。家主の牧野鶴代、その娘の佐知、佐知の友人の雪乃、佐知の刺繍教室の生徒である多恵美。4分の2は血が繋がってないのだが、"身内"の一員として今日もワイワイと過ごしているのだった。
第三者の目から語られる話型に、かなり面白い構成だなぁと思っていたら終盤で正体が明かされて笑ってしまった。佐知は大変な目に遭っているのに笑。善福川のカラスたちの総意の化身である善福丸の突然の登場にも。両者唐突すぎるのだ、ご登場が。小説なのだが、ホームドラマの映像としてありありと想像できる。(実際テレビドラマとして放送されていたらしい)お嬢様 -
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それぞれの短編の結末が心をスカッと、あるいはじーんとさせてくれる。それぞれの子供の未来には心がほっこりさせられて、宣伝通り、爽快な読後感がある。短編も全く世界が乖離しているわけでも、子供達が皆同じ時代を生きているわけでもなく、つながりを考察するのもなかなか楽しい。とてもよい作品。
逆ソクラテス:野球。犯罪者の息子。大人の先入観に立ち向かう、子供たちの姿が爽快な読後感を生んでくれる。「先入観は敵」、「僕は、そうは、思わない」響く言葉を得られた。
スロウではない(磯憲):リレー。いじめっこの変貌。いじめに関する自分の中の先入観にハッとさせられる。そんな世界線もあるのかと思い知らされた。
非オプテ -
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たかのてるこさんOL旅シリーズの、最後にして最高の締めとなった一冊だった。
月経に胃もたれと不調を極めている最中に、些細な出来事で自分の存在価値がゼロになった気がして酷く落ち込んだ。心が痛んで動揺する私と、俯瞰から見ている冷静な私がいた。
たかのさんから元気を分けてもらいたくて、そんな時に読み進めたくなる本だ。
高野さんと同じく、比較的若い頃からジプシーへの憧れが強くあった私は「今このとき」がすべての彼らに憧れているんだなということが明確になった。
ジプシーから「自分らしく生き残れ!」と教わった、たかのさんも私もまた地球を旅するジプシーなんだと心にかかる雲が晴れていく。
背負ってきた -
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ネタバレ世界観にのめり込んであっという間に読み終えたと言う感じ。東野圭吾、さすがの構成力と、ちゃんとあっとさせられる結末だった。読後感は良かった。他人の言葉を借りるならば、『人情推理もの』が彼の持ち味らしいが、なるほどなと感じた。
月並みだが、遺伝子情報って重大な機密データで容易に扱うべきものではないのだなと。人間皆平等というのは綺麗事だよなと気づかされもする作品。
映画と比較すると断然小説。映画は設定だけ使った別の作品だった、感情の動きが少なすぎる、アクションに振りすぎ。神楽が、スズランの存在によって、自分自身の生き方を考え直していく過程も人間味があっていい。全てはDNAで決まる考え方から、過程が大