あらすじ
第147回直木賞、第15回本屋大賞の受賞作家が到達した新境地!
長く辛い不妊治療の末、栗原清和・佐都子夫婦は、民間団体の仲介で男の子を授かる。朝斗と名づけた我が子はやがて幼稚園に通うまでに成長し、家族は平穏な日々を過ごしていた。そんなある日、夫妻のもとに電話が。それは、息子となった朝斗を「返してほしい」というものだった――。
自分たちの子供を産めずに、特別養子縁組という手段を選んだ夫婦。
中学生で妊娠し、断腸の思いで子供を手放すことになった幼い母。
それぞれの葛藤、人生を丹念に描いた、胸に迫る長編。
河瀬直美監督も推薦!
「このラストシーンはとてつもなく強いリアリティがある。」(解説より)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
audible⭐︎
それぞれの心境を濃く描いている。
最後は続きがまだまだあればいぃのに…と名残惜しい気持ちになった。きっと皆が自分の人生を歩んでいくんだと思う!そぅ思わせてくれた♡
ドラマもみていたから川島海荷さんの演技を思い出した。
Posted by ブクログ
すごくよかった。
中学生で妊娠してしまい、その後も全然幸せになれず、読み進めるのも辛くなる内容でしたが、、
ひかりがこの後、暖かい人たちに囲まれ幸せになっていくに違いない!と思える終わり方で、よかったです。
Posted by ブクログ
不妊治療をしてもなかなか授かる事ができなかった佐都子だが、養子縁組で朝斗を迎える。朝斗と夫と穏やかな日々を暮らしていたが、「息子を返して」という連絡が入るとこから物語が進んでいく。
不妊治療を受ける夫婦間や親族とのいざこざや、養子縁組に出す側の家族の関係、生みの親の心情、人生のステータス等…ありとあらゆる問題がリアルに描かれてて胸が苦しくなった。
置かれた環境がどれも孤独で裏切りもあり、その中で頑張ろうとしてるのに上手くいかないひかり。
事情は知らないけどそんなひかりを最後には優しく包み込む佐都子が素敵で、どこまでも純粋で母の名前を呼ぶ朝斗に感動した( ´ー`)
Posted by ブクログ
特別養子縁組をテーマに、男の子の育てのお母さんと、産みのお母さんの、双方の視点から各2章ずつ描かれる本作。
仲介団体のベビーバトンが掲げる、"この制度は子どもが欲しい親のための制度ではなく、産まれたが育てられる環境にない子供のための制度である"という理念が本作の全体構成に大きく影響していることが、とてつもなく長く、壮絶で、こちらの感情を何度も揺さぶられる、3章目を読んで気づく。
そして20ページほどしかない4章で、こんなラストが待っていたなんて、と久々に涙が溢れました。
まだ義務教育を受けている年齢の産みのお母さんの環境やキャラクターの描かれ方について2点。代表作の「傲慢と善良」に通ずる家庭環境・親娘関係がこの娘にもネックになりつつ、作中での行動の判断基準として克明に描かれていて、辻村さんの細やかな取材力や表現力に感嘆しました。もうひとつは、辻村さんはこの年頃の主人公を描くときに、何人かの具体的な親友やクラス内での立ち位置などを若者なりの視点で細やかに描くことが多いのに対し、本作で彼女の同級生で出てくる具体的な人物は彼氏だけに絞ることで、その後の広島の寮で出会った友人や生活が如何に当時の彼女の人格形成に大きく影響を与えたのかが、自然と浮き立って感じられた。
あまりに没頭して2日間くらいで読み進め、読み終えてしまったくらい、本当に名作/傑作だと思いました。
Posted by ブクログ
圧巻だった。
久しぶりにすごい小説を読んだ。
全てがつながる伏線回収はもちろんのこと、話が進む事に見えてくる世界の真実が、重く、リアルで、凄まじい。
物語はさとこ41歳の目線で始まる。さとこが抱く子育てや親同士の苦悩、キャリアと旦那、長く厳しい不妊治療、そして養子縁組をむすぶまでの心の変化、迎えた後に訪れる大きな幸せ。
その全てが丁寧に、精密に描かれる。
前半の栗原家の内容だけで十分に面白く充実した物語になるのに、なんと生みの親であるひかりの物語も、後半2章を丸ごとかけて甘く、切なく、苦しく、全てを教えてくれる。
我々はここまで詳細に見ていいものなのだろうか。
何度もわらい、何度も驚き、何度も涙した。
旦那やパートナーにも読んでもらいたい1冊。
Posted by ブクログ
わたしは42歳男性、不妊治療5年目。
当事者のように心に刺さる内容だった。読んでいて辛かった。自分のことのように、妻のことのように感じた。
ひかりちゃんの話も辛かった。誰もが生きていて感じる理不尽さ、自身の学のなさ、心の弱さ。どこを読んでも、自分のことのように感じて、逃げ場がなかった。つらい読書体験だったが、そのぶん、とても記憶に残るだろう。
Posted by ブクログ
社会問題として深く考えさせられるところが山ほどあって、ずっしりと読み応えがあった。
辻村さんの作品は、それぞれの登場人物にどうしようもない共感ポイントがあってグロテスクな程にリアルなところが魅力だと勝手に捉えているが、今回も例に漏れずページを繰る手が止まらず。
最後に柔らかい光が差すところも含めて、好きな作品の一つになった。
Posted by ブクログ
初めてオーディブルで小説を読んだ。すごく良かった。自分の目で読む小説ももちろんいいが、ナレーター瀬奈じゅんさんの感情のこもった声を通して聴く小説もとてもよかった。
さて、小説の内容を簡単にまとめる。
ある日、幼稚園生の子供がいる栗原家に無言電話がかかってくる。その後も、無言電話は、何回かかかってきて、平穏な家庭にどこが、ざわざわとした不安を感じさせる。
その不穏な要素を一旦脇において、物語の中では、幼稚園での子供同士のトラブルといったいつもの日常が描かれる。このトラブルもとてもリアルで自分が親になったら、こういう感じだろうかという想像をさせてくれた。
トラブルも一旦落ち着き、我々読者もそっと胸を撫で下ろすタイミングで、例の無言電話の主が「子供を返してください。それができないなら、お金をください。」と告げる。栗原家の母と同時にまさに絶句してしまった。急転直下である。
ここからの話が本当にすごい。米原家の子供アサト君は養子として育てられてきたことが分かる。そして、何故養子を取ることになったのかの経緯が、夫婦の苦悩と葛藤が克明に描かれていた。次には、子供を手放すことになった、広島のお母ちゃんの悲惨としかいえない物語が描かれた、。
夫婦の方では、不妊治療で精神がすり減っていく2人の様子を見て、胸が痛くなった。広島のお母ちゃん、ひかりの方は、もっと酷かった。中学生で妊娠してしまい、最初は純真無垢で淡い素晴らしい未来を持っている若者だったが、失敗し、人や親、知人にも見捨てられ、裏切られ、どんどん転落していく。考え方が甘いと思う場面もあったけれど、実際自分も同じ歳で、同じ場面に出くわしたら、正しい選択をできる自信はない。1度間違えたら、もう戻れない人生の儚さ、怖さを感じました。
社会福祉、家族、親・子供、人生、そんなテーマについて深く考えさせられました。
Posted by ブクログ
子ども同士のトラブルから始まるこの話が、まさかこんな展開になるとは思わなかった。
どこにでもいそうな女の子が、思春期故に、世間知らずが故に、自分の心への素直さと周りの人間の悪意のせいで堕ちていってしまう様子が本当に読んでいて苦しくなった。それでもすごく引き込まれて読み進める手はとまらず、だれか助けてあげてと祈るような気持ちで読み続けた。
100%のハッピーエンドではないものの、最後掬われる描写があって良かった。
Posted by ブクログ
この小説は凄いわ、展開力が。かがみの孤城の作者よね、作品の幅広すぎんか?
ムサコのタワマンっつー設定も絶妙だし、栃木の家族ってのも絶妙な設定だと思うわ。
思春期の子供に対するフォローは、両親共働きだと時間的に何か問題があったときに状況が悪化しやすいわ。
過度に女子校に入れる必要はないけど、それなりに民度の高い共学にはいれなあかんなと思った。
悪い大人に接するとこういう風に闇に落とされていくのかというプロセスがリアルだった。ほんとのところはこんなもんじゃなくてもっとエグいのだろうけど。
中学生が避妊しないのはコンドーム高くて買えないからっつー現実的な問題はちょっと気付かされたわ、親が買い与えるわけにも行かないし、確かにコンドーム高いし。
瞳
どちらかというと,「ひかり」の方に感情移入してしまった。
無知と不運と浅はかさ。
最後の最後に救ってくれたのは,目の前の澄んだ瞳。
この人の小説は,いつも最後で鳥肌が立つ。
Posted by ブクログ
すごく惹き込まれた...!
前半は不妊治療の末、特別養子縁組という形で養子を育てる夫婦の話で、不妊治療の大変さとか養子の仕組みとか、とても勉強になった。
養子に関しては、周りに反対されるけれど、どちらの意見も分かって、難しい問題だなあと思った。
血ってどこまで大事なんだろうかと思うけど、いざ当事者となると、赤の他人の子どもに愛情を注げるのだろうかとも。
この夫婦は本当に立派だと思う。
後半は中学生で妊娠した女の子の話。
複雑な心情がとてもリアルに描かれていた。
妊娠発覚するまでの、周りに対する優越感なんかが非常に中学生らしくて現実味がありました。
あまりにも不憫だったけど、最後は報われた気がして良かったです。
前半が特に刺さったなあ。気づいたら読み終わってました。
(オーディブルにて)
Posted by ブクログ
幸せな家族の、ご近所トラブル発生
→実は不妊治療の後の特別養子縁組の話だった
→産んだのは中学生で、その女性のその後の人生が描かれる
割と生々しい表現が多いので、子供とはシェアし難い話だけれど、辻村さんらしい展開で、読むの止まらなかった
Posted by ブクログ
そう来たか、と感じたのは、以前この作品をnetflixで観たことを思い出したからで、冒頭のゼンハン主人公とママ友のくだりが長くどういう意図があるんだろう?と感じていた時は理解できなかったものの、後半の主人公ひかり自身は悪い人間でないのにいろんな場面で人を信じても裏切られてしまうことが続いていることの比較なのだと、気づいた時でした。
最後、さとこがひかりを見つけたタイミングは、警察が探しに来た後のことなんだろうか?ひかりは助かっているんだろうか?
誰か教えて。
Posted by ブクログ
不妊のため特別養子縁組を利用して子どもを迎え入れる「育ての親」と、中学生で妊娠し、特別養子縁組に子どもを託す「生みの親」。
作品は、全く違う立場にいる二人の“母”の人生が交差していく物語でした。
ひかりも、佐都子も、それぞれが抱えた苦しみは想像を超えるものだったと思います。
けれど、朝斗を初めて見た瞬間や、引き取った日の出来事は、深い暗闇に差し込む光のように、二人に“朝”をもたらしたのだと感じました。
あの小さな命の存在そのものが、希望を与えてくれたのだと思います。
立場は違っても、どちらも心に大きな葛藤を抱えながら、必死に光を探し続ける。
その姿勢に気づけば涙が滲んでいました。
Posted by ブクログ
泣きました。
子どもが出来ず、特別養子縁組で赤ちゃんをゆずり受け暮らす夫婦。幸せに暮らす家族の元に「返して欲しい」と電話が来る。
実母「ひかり」と養母「佐都子」、2人の女性の人生を描いた物語です。
家族って何だろう?血のつながりだけが家族?血がつながっていたとしても、愛が無ければ家族なのか?愛があってもどうしようもないこともある?
血のつながる家族だからこそ生まれる葛藤、血のつながらない家族だからこその苦悩。何を大事に大切に生きるのかを考えされられた本でした。
Posted by ブクログ
辻村作品をデビュー作から読むチャレンジ中。
思わぬところでスマッシュヒット。
子どもが出てくると、弱い。
始めはママ友関係のドロドロ話かと思ったら、思わぬ方向にストーリーが移り、そこからはもう大変。
ひかりから朝斗が渡されるところでは、中学生らしい語彙力で繰り返される言葉のなかに、良い思い悪い思いが全部詰め込まれているのを感じた。
読んでいるうちに、無言電話がひかり本人なのだと気づいたところで、最後は救われるのだろうなと思った。
そうはなったけど、自覚が足りないまま沼にはまり込んだひかりには、自分で解決しないといけないことがたくさんありそうだ。
たぶん、大丈夫なのだろうけど。
Posted by ブクログ
テーマは「特別養子縁組」と「母性」、そして「“血のつながり”を超える愛」です。
最初は、穏やかで幸せそうな家族の日常から始まりますが、中盤から重い話になり、胸が締め付けるような感情になります。
読後、「親になるとは何か」「本当の絆とは何か」を長く考えさせられる本でした。
Posted by ブクログ
Audibleにて拝聴
子を産んだ中学生の女の子と、子を授かれない中年夫婦の間で行われた特別養子縁組のお話。
それぞれの立場のエピソード、特に中学生の女の子のエピソードが胸を抉る。
私の場合、もうどちらの立場になる事もないけど、ひかりの親の立場になる可能性はある。
保身ゆえに子への期待とか理想を無意識に押し付けることは、こどもを滅ぼすという事を胸に刻んだ。
最後、ひかりの人生にも朝が来ていたらいいなぁ。
Posted by ブクログ
物語の最初と終盤が繋がるのがわかりやすくて面白くていいと感じた。
「ちびたん」「この景色を覚えておこうと思った」
海辺での場面が印象に残っている。
しかも、物語の最後にその場面がそう一回回想されるのでそこは泣けるシーン!
オーディブルならではの感動を味わえた感じがする。
ナレーションの人グレイト‼️
Posted by ブクログ
オーディブルにて拝聴。朗読は瀬奈じゅんさん。
私も母と性格や価値観が違うため、特に自我が芽生えたばかりの思春期にはぶつかることが多かったので、ひかりちゃんのパートは胸が痛くなった。
血縁関係のあるひかりちゃんとその両親、血縁関係はない佐都子さん夫婦と朝斗くん。
彼らの親子関係や、朝斗くんを通してつながった佐都子さんとひかりちゃんの関係に、血縁とは何だろうと思ったし、人が人と巡り会う縁の不思議を思った。血縁があってもわかりあえない親子もいるし、たとえ血はつながっていなくても子供と強い絆を築ける親もいる。
養親となる佐都子さん夫婦はしっかりとした社会人で、また、不妊でつらい経験を経てきたせいか、考え方や対応など、懐が深くてきちんとした大人だと思った。
一方で、当作に出てくる産みの母親たちは若く、子供の頃から良い環境で育っていないのかなと想像させられ、身近に頼れる大人もいなそうで、そのコントラストが鮮やかなことにも、考えさせられた。
特別養子縁組は良い仕組みだと思うけれど、本当は、風俗で働き父親のわからない子を授かったり、ごく若く社会性や生活力がない状態で子を授かったりして、産んですぐに子供を手放さなければならないような追い詰められた辛い境遇にいる女性たちの数は、少なければ少ないほど良いんだなと感じた。
オーディオブックは初めてだったけれど、瀬奈さんの声が柔らかくすっと耳に入ってくるようで、温かく包容力があり、言葉も聞き取りやすく、とても良かった。
お芝居をしているわけではないのに、言葉の奥に表現力を感じるようで、俳優さんてすごいなと思った。
Posted by ブクログ
※ネタバレあり
辻村深月「朝が来る」
オーディブル
朗読:瀬奈じゅん
体調が悪く、何もできなかった日に、気になっていたオーディブルを聞き始めた。
辻村深月さんの「朝が来る」。
朗読は、瀬奈じゅんさん。
今までは人の音声で物語を聞くことに抵抗があったが、淡々としながらも、それぞれの役柄の特徴も加えて読んでくださった瀬奈じゅんさんのおかげで、作品を楽しむことができた。
約10時間を、3日と少しで聞き終えた。
以下、感想文です。
ネタバレ含みます。
・・・・・
話の主人公がひかりに変わってから、妙にリアリティだった。
うん、今考えても、急にリアルさが増した。
何も調べてないが、辻村深月さん自身の体験談が入っているのか、誰かにインタビューしたのか、それくらいリアルだった。
ひかりは、良い環境で育たなかった。
そのせいで、考え方が歪んだ。
その歪んだ考え方が妙にリアルだった。
側から見れば、そんな男やめなさいとわかるようなことが、わからない。
そういう人が、今の時代、なぜか多い。
また、不妊治療していた夫婦の話はもちろんリアルだった。
しかし、そういう夫婦とマッチングする母親のことはあまりメディアで見たことがなかったかもしれない。
今考えたら、ひかりみたいな子は多いかもしれないし、そのマッチングもとてもリアルだった。
ひかりの、本当に誰も味方がいないような、絶望的な感じが、いかにも物語感はあったが、同時に、実際にこういう想いをして生きている人もたくさんいるんだろうと思った。
「ひかり」という名前なのに、生活に、人生に光がない。
そう思い、絶望しながら物語を聞いていたが、
最後、雨なのに光が差し、本当によかった。
あさとの育てのお母さんが、ひかりの実のお母さんだったらよかったのに…と思ってしまった。
これから幸せになってほしい。
本は終わっても、自分の中で物語は続いているように思う。
Posted by ブクログ
夜の底を歩くような物語だった。
光はあるのに、容易には触れられない。
けれど、たしかにそこに“朝”は存在していた。
この作品は、子を「産めなかった」女性と、「産んで手放した」少女という、
社会の中で見過ごされがちな二つの孤独を描いている。
どちらも罪を負っているわけではない。
ただ、世界が用意した「正しさ」の形から少しはみ出してしまっただけだ。
そのわずかなズレが、人をどれほど深く傷つけるかを、
辻村深月は驚くほど静かな筆致で描き出している。
「朝が来る」という言葉は、希望の比喩であると同時に、
痛みを通り抜けた者だけが見ることのできる光の到来でもある。
それは救いというより、赦しに近い。
誰かを赦すのではなく、自分をようやく受け入れるための朝。
この物語に満ちるのは、母性の肯定でも否定でもない。
むしろ、“生むこと”“育てること”“愛すること”が、
制度や倫理を超えて、もっと根源的な「人の営み」として描かれている。
社会が押し付ける理想的な家族像の裏で、
多くの人がひっそりと抱える痛みや孤独を、
作者は真っ直ぐに見つめ、光の粒のように掬い上げていく。
読み終えたあと、胸の奥にかすかな震えが残る。
それは悲しみではなく、
暗闇の中でも確かに息づく人の強さへの感嘆だった。
朝は誰にでも訪れる。
ただし、それを迎える覚悟のある者にしか。
Posted by ブクログ
不妊治療の末に特別養子縁組を選択した夫婦と、若くして子供を手放さざるを得なかった生みの親を描くヒューマンミステリー。
序盤の不妊治療の描写がとにかく辛い。夫婦が地獄の中でもなんとか希望を掴み取ろうともがく様子が、とてもリアルに描かれていた。
そんな地獄を乗り越え、養子縁組を選択した夫婦のもとに、6年後に突如現れて金を無心してくる生みの親である片倉ひかり。読者の誰もが「なんだこの無責任な母親は」と片倉ひかりに反感を持ってしまう。
しかし、その後に語られる片倉ひかりの人生で、読者の誰もが表面的に人を判断してしまうことを反省させられる。
教師の両親もとで厳格に育てられ、姉のように勉強もできず、誰にも認めてもらえなかった思春期。初めて自分を認めてくれた人との間にこどもができてしまい、どうしたらいいかわからない中で時間だけが過ぎていく。やっと見つけた頼れる人も、みんな離れていってしまう。まさしく天涯孤独な人生。
そんな人生を投げ出そうとした最後の最後の瞬間に、大雨の中に光が差し込むかのように、佐都子と朝斗が現れる。
どんなに辛い人生でも、「朝が来る」ことを教えてくれる作品。女性の視点を言語化するのが天才的に上手な作者だと感じた。
自分の妻が現在妊娠中だが、あらためてこどもを授かることができた奇跡に感謝したいと思った。
Posted by ブクログ
何か最後はもう祈る気持ちだった。
親と子。親ガチャ。好きな言葉では無いけれど、子供は親を選べない。ありのままを受け入れることも出来ない。
誰か一人でいいから理解してくれる人がいたら救われるのに。
救うことは難しくても、支えられたらいいと思う。
支えられる人になりたいな。
みんな幸せになって欲しいと心から願った小説家だった。
Posted by ブクログ
養子縁組の話で最初はその家庭のありがちな話から実母の話へ。後半は救われない内容が続いて気分が落ちてしまう感じで最後は結局、実母ひかるは救われたのか救われなかったのかモヤモヤが残った
Posted by ブクログ
不妊治療の末、特別養子縁組で子どもを迎えた夫婦と、その子どもの本来の産みの親である女の子の話。
現実にこういうことってあるんだろうなぁ…
私は学生時代を通り過ぎ、この本で言えば特別養子縁組で子どもを迎える夫婦側の年齢に近いことや、自分は経験してないけれど、自分の周りには不妊治療を長く続けた人が何人かいるので、どちらかといえば夫婦側の方の気持ちがわかりやすかったです。
一方で本来の子どもの産みの親である女の子、ひかりちゃんに関しては彼女自身の両親がかなり彼女の人生を左右した存在であるなぁと思いました。
学生とはいえ彼女に子どもを産み育てる権利はある(と、私は考える)…けど、それは周りが相当協力しなければ難しい。
そういう現実もよくわかる。
けれどひかりちゃんの両親は向き合って話し合うことなんてしない。
現実やひかりちゃんの心、本音と真っ向から向き合うことなく目を逸らし続ける。
そして彼女の人生はどんどん狂っていく。
ひかりちゃんが20になる前に、親でなくても本気でひかりちゃんに向き合い真摯に現実を教えてくれる大人がいたなら。
ひかりちゃんが本当に心を打ち明けられるような存在がいたなら。
彼女はここまで人生を踏み外してしまうことはなかったんじゃないだろうか。
Posted by ブクログ
若干話が盛りすぎなよう気もするが、現実はこんなものだろうか
教育虐待、未成年の性教育不足、不妊、特別養子縁組
どれをとっても深刻なのに、それらが全部入り交じって、一人の少女を追い詰めて行く
これが現地にあるとしたら恐ろしい
少女の周りに、誰か一人でもまともな大人(他人も含めて)がいれば、事態は好転しただろう
最後まで読んで分かった事
全ての問題を解決する鍵は家族の中にある