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本能寺の変より四年前。織田信長に叛旗を翻し有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起こる難事件に翻弄されていた。このままでは城が落ちる。兵や民草の心に巣食う疑念を晴らすため、村重は土牢に捕らえた知将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めるが――。 事件の裏には何が潜むのか。乱世を生きる果てに救いはあるか。城という巨大な密室で起きた四つの事件に対峙する、村重と官兵衛、二人の探偵の壮絶な推理戦が歴史を動かす。
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Posted by ブクログ
おもしろい。 歴史に明るくない私がこの本を手に取ったのは米澤穂信先生の本だから。 黒田官兵衛の智慧の凄まじさが伝わる。最後の最後で出てきた子息、松寿丸がのちの黒田長政で福岡を栄えさせた人。 織田信長に反旗を翻して有岡城に立て籠もる将、摂津守荒木村重が毛利の助けが来ない局面で起こる様々な難事件に翻弄...続きを読むされる話。もうだめだ、開城するしかない、という絶体絶命のタイミングで、土牢の囚人である知将、黒田官兵衛に謎を解くように請う。 “武士の中の武士“ばかりの登場人物たちが交わすヒリヒリするやり取りのなかに、殿への忠誠や家臣への慮りが交錯し、深い尊敬の念も芽生えた。
最後の50ページが私には面白かった。そこまで読んで良かったなぁと思わせてくれる内容でした。 単なるミステリーでなく、人としての生き方を問われる本だと思う。
歴史を知らない人でもミステリーとして楽しめる作品。黒田官兵衛による謎解き。読みながら、人物に関して歴史的な視点で調べるとさらに面白くなる。
読み終えて、強く残ったのは、主人公・荒木村重の「孤独」だった。 村重は有岡城の城主である。殿様であり、多くの家臣を率いるリーダーである。当然、周囲にはたくさんの人間がいる。命を懸けて戦ってくれる家臣もいる。 それなのに、村重は孤独である。 読みながら考えていたのは、「一人で決める」ということの...続きを読む重さだった。 第一章「雪夜灯籠」では、人質である安部自念をめぐる事件が起きる。 村重は自念を殺さないと決めた。しかし、その下知に背き、自念を殺した者がいる。 命令違反ならば処罰すればよい。だが、それほど単純ではない。 敵を殺した味方を処罰すれば、家臣たちはどう思うのか。処罰される者をかばう人間が現れれば、家中に亀裂が生まれるかもしれない。 正しいと思うことを命令すれば、それで終わりではない。 その決断によって、人がどう感じ、どう動き、組織がどう変わっていくのか。そこまで考えなければならない。 第二章「花影手柄」は、高槻衆と雑賀衆の話だった。 城にいるのに、武士として働く機会がない。 すると高槻衆は、自分たちは「無駄飯食い」ではないかと思い始める。周囲にも、彼らをなんとなく疎む空気が生まれてくる。 村重はそれを放置できない。 彼らに手柄を立てさせなければならないと考える。 私は、仕事はやっぱり必要なんだ、と思った。 もちろん、ただ忙しくしていればよいということではない。 人には「自分はここで役に立っている」「自分にはここにいる意味がある」と感じられる何かが必要なのだろう。 ところが『黒牢城』は、そこで話を終わらせない。 仕事を与え、実際に手柄が生まれると、今度は「その手柄は誰のものなのか」が問題になる。 仕事がなければ不満が生まれる。 仕事をすれば評価をめぐって妬みが生まれる。 村重は仕事を与えるだけでなく、人の誇りや嫉妬、評価まで考えなければならない。 組織を率いるとは、ずいぶん難しいことなのだと思わされた。 第三章「遠雷念仏」では、 黒田官兵衛が村重に、村重の命令に命を懸ける勇者も、忠義を尽くす者もいるだろうと言う。 しかし、天下の軍について村重と存分に語れる者は、ほとんどいないとも。 そして官兵衛は、この有岡城で村重の言葉を本当に理解できるのは、自分以外には誰もいないのだと言う。 ここで、村重の孤独がわかった気がした。 孤独とは、周囲に人がいないことではない。 自分のために命を懸けてくれる人がいても、孤独になることがある。 自分が見ているものを、同じ高さから一緒に見てくれる人がいない。 それもまた孤独なのだ。 忠実な部下であることと、よい相談相手であることは同じではない。 むしろ忠実であればあるほど、「殿の御意向は」と考えてしまうかもしれない。 だからこそ、村重は敵である黒田官兵衛のもとへ行く。 なぜ、敵である官兵衛なのか なぜ村重は、地下牢に幽閉している敵の官兵衛に助言を求めるのだろう。 村重は官兵衛に「答え」を求めていたのではない、 官兵衛に決めてもらいたいわけでもない。 官兵衛は村重に忖度しない。 村重の考えを疑い、ときには嘲弄し、村重自身が気づいていなかった矛盾まで突いてくる。 だから村重は、腹が立つ。 殺してしまおうとさえ思う。 それでも村重は、また官兵衛のところへ行く。 おそらく村重には、自分の考えを自分の外に出して、本気でぶつけられる相手が必要だったのではないか。 「殿のお考えのとおりです」と言ってくれる人ではない。 「本当にそうなのか」と返してくれる人。 官兵衛は、村重にとって、考えるために必要な他者だったのだろう。 若い者が異見を突きつければ、どうなるかわからない。「出すぎた杭は斬られる」という感覚がある。 村重は、 「なぜ誰も本当のことを言ってくれないのか」 と孤独になる。 しかし 「本当のことを言ったら、自分がどうなるかわからない」 と思っている。 上は孤独になり、下は沈黙する。 こうして組織の中から言葉が失われていく。 戦国時代の籠城戦を描いた小説から、現代の組織にも通じるところがある。 第四章「落日孤影」に入ると、村重の立場はさらに苦しくなっていく。 村重が家臣を叱責しても、その意図が伝わらない。 命令する権限はある。 しかし、「殿がそう言うなら」と人を納得させる力が失われつつある。 兵も民も苦しみに投げ込み、当てになるかわからない毛利を待ちながら戦を長引かせている。 最も罰を受けるにふさわしいのは、自分ではないか。 それまで村重は、誰が殺したのか、誰が命令に背いたのか、誰の手柄なのか、誰を罰するべきなのかを考え続けてきた。 つまり、判断する側にいた。 しかし最後には、 「そもそも、この状況を作った責任は誰にあるのか」 という問いが、自分自身に返ってくる。 決める権限を持つということは、結果についても引き受けなければならないということなのだろう。 そして終章で、もう一つ心に残ったものがある。 この物語の人々は、ずっと「進め」と言われ続けているように見える。 武士なら戦え。 手柄を立てろ。 役に立て。 城主なら決めろ。 迷うな。 城を守れ。 前へ進め。 しかし最後に、「進まなくても極楽はある」という考えが現れる。 これを読んで、第二章で感じた「仕事はやっぱり必要なんだ」という思いと、どこかでつながった。 人には、自分が役に立っているという実感が必要なのだと思う。 けれど、 「役に立たなければ、自分には価値がない」 となってしまってはいけない。 仕事があることによって居場所を感じることと、仕事をしていなくても自分の存在を認められること。 その両方が必要なのかもしれない。 決断は、最後には一人でする 一人で決めるというのは、大変なことなんだろう。 村重には家臣がいる。 意見を言う人間もいる。 そして官兵衛という、自分の考えを本気でぶつけられる相手もできた。 それでも最後の決断を官兵衛に委ねることはできない。 自分がどうするのかは、自分で決めなければならない。 相談することはできる。 違う見方を教えてもらうこともできる。 自分の間違いを指摘してもらうこともできる。 しかし、最後の決断と、その結果だけは、誰かに代わってもらうことができない。 それが「決める者の孤独」なのだと思う。 官兵衛は地下牢に閉じ込められている。 考えてみれば、村重も、「城主」「殿」「決める者」という牢に閉じ込められていたのではないだろうか。 なぜ荒木村重は黒田官兵衛の牢へ何度も通ったのか。 ミステリーとしての面白さとは別に、その問いを考え続けさせてくれる読書だった。
直木賞には歴史物が有利
知勇兼備の名将荒木村重が織田信長に叛逆し、有岡城で籠城。籠城中に様々な事件が起きるものの、牢に囚われた名軍師黒田官兵衛が安楽椅子探偵風に謎解きをしていく。歴史&ミステリの直木賞作品で、悪くはない。🏯しかし、米澤穂信の青春ミステリファンとしては、米澤が落選続きの直木賞受賞を狙って、受賞に「有利な」歴史...続きを読む物を、あえて執筆したような気がした。本作は軽妙洒脱な「いつもの」米澤成分が足りないのだ。果たして、受賞第一作は青春ミステリ。ライト文芸ファンの想いが垣間見れる。🏯
#タメになる
物語の前提となる序盤の状況説明に少し苦戦したが、最初の謎が提示されてからは一気に読みやすくなった。歴史を背景にしながら、やっていること自体は王道のミステリーで、こちらが疑問に思った点を登場人物も追ってくれるので話についていきやすい。特に、限られた情報だけで真相に迫る人物の存在感が強く、章を重ねるごと...続きを読むに底知れなさが増していくのが面白かった。終盤では、それまで引っかかっていた細かな点が次々に繋がり、歴史という舞台が謎や動機、人物の価値観に必要だったと分かる。最後に救いが残るところまで含めて、かなり満足できた。
久しぶりに一気読みしてしまいました。関西出身なので伊丹・池田・高槻・茨木など知っている地名が出てきたのこともありますが、非常に面白かった。 黒田官兵衛、凄すぎる!荒木村重もこんなに頭が切れるとは知りませんでした。 時代小説でありながら、現代のミステリーとも思える内容で、新感覚でした。
戦国時代の籠城の間に起きた事件に絡んだ人間模様が面白かった。 荒木村重と奧さんの間のやり取りも読み応えがあった。
歴史小説はフィクションであり、作者の捉え方で大きく変わってくると思って読んでますが、これは実に面白かったですね
よく荒木村重が黒田官兵衛を牢にいれるという設定で、ここまでの作品を書いたな⋯というところは感動 一方で犯人はじめとしたミステリー部分は分かりやすいので最後の方はいまいち盛り上がらなかった ただ、ラストもラスト、黒田官兵衛が福岡に行くくだりの繋げ方といい、話の構成は面白いと思う ミステリー作品と...続きを読むしてではなく、一つの作品として、面白い部類だと思う。新感覚
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