• われら闇より天を見る
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    バタフライ・エフェクト調の佳作

    ⭐️海外小説は普段さほど読まないが、評判が良いので手に取った。⭐️本作は、どこか名作映画「バタフライ・エフェクト」のようであり、事態は思わぬ方向へ転がりつつ、ラストは感涙を免れない。⭐️なお、ミステリとしての瑕疵を指摘したレビューも散見され、それらの指摘は理解できる。しかし個人的には、全体を通じて、矛盾撞着までは見受けられず、妙趣に富むミステリ調の感動物語だと好評価した。⭐️ところで、何事も上手くいかない人生の自分なりの生きざまをどうするのか。読了後に少し考え込んだ。

    #泣ける

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    2025年02月06日
  • ソード・ワールドRPGリプレイ集スチャラカ編1 盗賊たちの狂詩曲
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    日本TRPG草創期の快作

    本書はTRPG(テーブルを囲んで会話して遊ぶロールプレイングゲーム)のリプレイ(戯曲風のゲームプレイ実況・解説)である。GM(ゲームの審判役)は前年逝去した作家の山本弘。初出は昭和末(80年代末)頃。🎲往時、カピバラKSは高校生であった。ロードス島戦記(水野良著)を友人から借りて読んだり、クラシックD&D(ダンジョンズアンドドラゴンズ)で遊んだ時にワガママなプレイスタイルを指摘されたものだ。🎲久しぶりに本書を読んで、今なお古びない面白さや意外さを楽しみつつ、昔を懐かしく思い出した。🎲

    #笑える

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    2025年01月29日
  • 韃靼疾風録 (下)
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    英雄よく人をあざむく

    ⭐️下巻は中国における明から清への王朝交代を群像劇として描く。本書は司馬最後の長編小説となったが、作話を事実と織り交ぜ、フィクションをルポルタージュに魅せる神筆には、いささかの衰えも感じられなかった。⭐️さて、大国の明は重税などによって民心を失い、流賊が横行し世は乱れる。流賊の大頭目である李自成は、租税免除などを唱えて大衆煽動を図るが、これを鄭成功は「英雄よく人をあざむく」ものと指摘する。⭐️このあたり、令和初頭の日本人として耳が痛く、苦笑せざるを得なかった。

    #ドキドキハラハラ

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    2025年01月15日
  • 韃靼疾風録 (上)
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    司馬遼太郎版「天空のラピュタ」

    上巻は司馬遼太郎版「天空の城ラピュタ」だ。少年少女の冒険譚であり、九州の片田舎から海洋を渡り中国の大草原に到るという海陸ロードノベルでもある。この間、少年少女には、多くの出会いがあるものの、いずれも初見では敵か味方か判然とせず、訝しみつつも仲を深めていき、裏切られたり、助けられたりして、旅は進んでいく🗺️ところで、誰しも人生で最も関心が高く悩ましい問題とは、良好な人間関係の構築ではあるまいか。本書はその秘訣が記されている。コミュ障必読の書と言えよう🗺️

    #ドキドキハラハラ

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    2025年01月01日
  • おらおらでひとりいぐも
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    問わず語りの桃子さん

    カピバラKSの90歳認知症老母は「誰も喋る人がいない」と言い、近所の人も「寂しそう」と言う。しかし、デイサービスを勧めると、他人に気を使うから嫌とのこと。困ったものである😔カピバラKS自身もコミュ障独身中年で、親戚とは老母介護のイザコザにより疎遠、寂しい老後まっしぐらだ。そこで本書により、おひとりさまの老後を愉しく生きるヒントを得たいと思っていた🤔その結果はさておき、主人公桃子さんは、教養ありすぎ、内省力高すぎである。可笑しくて心に刺さりまくる名調子の独白に舌を巻いた😲

    #笑える

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    2024年11月23日
  • 合本 この国のかたち【文春e-Books】
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    該博な著者の的確な指摘

    1巻は現代日本社会に対して、かなり切り込んだ批評もあったが、2巻からは随分丸くなった。少し首を傾げつつも、著者の豊富な知識の披瀝に惹きつけられ、物足りなさを感じることはなかった🗾全巻を通じて、最も気に入ったテーマは、仏教の歴史的足跡を辿るところである。原始仏教は、死ねばそれまでというカラッとした性格のものであった。ところが、時代を経て、死生観や現世利益とどのように向き合うこととなったのか。該博な著者の的確な指摘に、唸らされることばかりであった🗾

    #タメになる

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    2024年09月15日
  • 君の膵臓をたべたい
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    完璧なデビュー作

    難病物にハズレなし。住野よる会心のデビュー作だ🎉カニバリズムめいた印象的なタイトルで大いに興味を惹いた上、高校生男女の軽妙なコントで巧みに笑いを取りつつ、次第にシリアスさを増し心に刺さるシーンを畳みかけてくる。そのラストは難病物らしい悲嘆号泣ではなく、朗らかな想いが心に満ち満ちてくるもので、本を閉じてもなお、余韻が残る😌特に感じ入ったのは、難病少女の結末であり、人生の言い尽くせぬ不条理が込められている🥺デビュー作とは、とても思えない程に、よく完成された作品だ👏

    #感動する

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    2024年08月31日
  • 銀河英雄伝説10 落日篇
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    50年を経ても色褪せない大作

    最終篇。銀河帝国皇帝ラインハルトの華燭と不予、ユリアン達による対帝国レジスタンスの結末を描く✨本作では、流血を防ぐために卑劣な手段を用いることの是非について、帝国随一の参謀オーベルシュタインから、物語の枠を超え、読者に対しても問いかけがなされたように感じる。ユリアンは一つの答え示したが、自分はどう答えるのか。今はまだ答えが見出せない✨最後に、アニメ化新作の「ディ・ノイエ・テーゼ」を視聴中。戦闘シーンやキャラ立ちが素晴らしい。初刊から50年程を経てもなお銀英伝は色褪せない✨

    #深い

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    2024年08月25日
  • 失敗の本質
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    目的の明確化と共有が大事

    職場研修の参考テキスト。アジア・太平洋戦争における日本の負け戦から、仕事の失敗あるあるを学ぶもの😮‍💨特に学んだことは、何をするにも目的を明確化して皆で共有を図ること、判断ミスは目的不明確の時に生じ易いことである🤔ミッドウェー海戦では、ミッドウェー島確保か米空母撃滅か、レイテ海戦では、敵主力撃滅か敵輸送船団撃滅か、組織内で目的不統一のまま、ぐだぐだで作戦を遂行し、ミスが生じて負けたのだ😰さて、今まで業務の段取りは入念確認しても、目的の共有を図ったことは多くない。今後は気をつけよう🧐

    #タメになる

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    2024年08月14日
  • 銀河英雄伝説9 回天篇
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    大衆煽動家と宗教家は常に悪者か

    男女のことに疎い皇帝ラインハルトと、男女のことにズブズブの総督ロイエンタール。この二人を軸に描かれる✨さて、本シリーズは、世の中に絶対善と絶対悪は存在しないと示しつつ、大衆煽動家と宗教家には至って辛い。両者は民主主義信奉者のヤンに対する攻撃始め、悪業三昧である✨しかし、民主主義が集団意思決定で多数決を採用する以上、多数派工作に有用な大衆煽動と宗教は、民主主義と切っても切れない関係にある。民主主義の大衆が、煽動と宗教に向き合う難しさを想う✨

    #カッコいい

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    2024年08月14日
  • 銀河英雄伝説8 乱離篇
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    物語登場人物も読者も茫然自失

    巧緻玄妙の用兵術を操る楠木正成の如きヤン・ウェンリーは、寡兵をもって、ラインハルト・フォン・ローエングラムの大軍に対し、宇宙の「地の理」を生かして徹底抗戦を試みる✨このイゼルローン要塞宙域の激戦は、優れた作戦指揮による必然の結果のみならず、様々な偶然の事象を巧みに織り交ぜながら、混乱と喧騒の渦巻く戦場の雰囲気を見事に活写している✨そして激戦後、本シリーズ最大最凶のテロが勃発する。衝撃的に過ぎる展開に、物語登場人物も読者も、呆然自失に陥るしかない✨

    #カッコいい

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    2024年08月07日
  • 銀河英雄伝説7 怒濤篇
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    善玉も悪玉も大活躍!

    魔術師ヤンによるトリッキーなイゼルローン要塞再攻略戦、若きラインハルトと老ビュコックによるマル・アデッタ会戦の激闘が描かれる✨また、地球教は激しい弾圧を受けつつも禍々しく命脈を保っているようであり、フェザーンの黒狐ルビンスキーは潜伏しつつ陰謀を張り巡らせ、大衆煽動家トリューニヒトは誰からも嫌われつつ舌先と財力で政局操作に余念がない✨善玉系も悪玉系も全ての登場人物が豊かな個性を発揮して大活躍する豪華絢爛な歴史群像物語に酔いしれる✨

    #カッコいい

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    2024年07月31日
  • 銀河英雄伝説6 飛翔篇
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    30歳過ぎで年金生活⁉️

    本シリーズ前史の地球衰退、宇宙覇権国家黄金樹王朝の退廃、そして現代での宗教テロ、新進専制国家の内訌と老民主国家の機能不全を描く。人類史は重苦しくて陰惨だ😱国家レベルの話は暗いが、個人レベルでは明るい話もある。フレデリカの花嫁修行は微笑ましい。とはいえ、市井の平穏な生活は国家の不穏な動向に踏み潰されていく😰ところでヤンは30過ぎで年金生活が可能となった。ダメな民主国家とされる自由惑星連合だが、令和日本と比べ、わりと呑気に暮らせそうである。いいなあ🙄

    #ドキドキハラハラ

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    2024年07月24日
  • 共喰い
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    性暴力「ダメ。ゼッタイ」の話

    三本立て。芥川賞受賞の表題作「共喰い」は、冗談混じりで言うと性暴力「ダメ。ゼッタイ」の話。読後、性暴力の衝動を抑え切れない人はどうすれば良いのか思案してみたが、金持ちになって風俗で発散するか、偶然の神秘的強烈体験を経て性暴力衝動が消えるか、それともいっぺん死ぬしかなさそう😱「第三期層の魚」は小学生心裡の妙を描く。同趣の作品としては、道尾秀介の直木賞受賞作「月と蟹」の方があるあるを感じた🤔「作者と瀬戸内寂聴の対談」は面白い。二人の源氏物語評や石原慎太郎評が見所。瀬戸内がナイスキャラだ🤣

    #深い

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    2024年07月24日
  • 永遠の平和へ
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    世界統一政府と多国家連合の優劣

    NHKラジオ「カント哲学と現代平和論が私たちに問うもの」(哲学者萱野稔人)を聴講のうえ読了🕊️71歳のカントによるフランス革命等を踏まえた平和論だ🕊️数多の平和運動家は、戦争の原因を悪者(権力者等)に求める。しかしカントは、人間全てに悪が内在するという現実に基づく平和論を展開する🕊️カントは世界平和の方策を、世界統一政府より多国家連合に求める。世界統一政府は覇権国の圧政支配に過ぎないからだ🕊️しかし現在、多国家連合の国連は、戦争状態を抑止できていない。カントなら、どう改善を図るのだろうか🕊️

    #深い

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    2024年07月23日
  • 銀河英雄伝説5 風雲篇
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    両雄大決戦‼️

    銀河帝国「常勝の天才」ラインハルトと自由惑星連合「不敗の魔術師」ヤンの二大英雄による決戦「バーミリオン会戦」を描く。両英雄による知謀の限りを尽くした大会戦は、本シリーズ最大の見せ場と言っていい✨さて、決戦前夜のこと。ヤンは「なけなしの勇気」を奮い、ヤンの悪友キャゼルヌとヤンの優等生的な舎弟ユリアンは、それを肴にウィスキーを味わう。何とも乙なシーンである✨また、謎めいた地球教総大司教が物語に始めて姿を現す。物語は両英雄の決戦で終わることなく、最大の悪役登場といった禍々しい雰囲気を醸し出しながら、一層深みを増していくのだ✨

    #カッコいい

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    2024年07月21日
  • 忘れられた日本人
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    村落自治に民主主義の祖型あり

    司馬遼太郎「私の三冊」の一冊。主に江戸期から昭和30年頃までの西日本における村の暮らしを当事者インタビューで描く📝昔の村落の運営は、直接民主主義に基づき、皆対等な立場で様々な知識を持ち寄って熟議を凝らし、意見対立による禍根を未然に防いでいた。これは民主主義の本来のあり方を示唆する。令和の民主主義は、論破至上主義とSNS上の罵倒の連鎖から、著しい断絶を生んでいるが、民主主義自体を憂うのではなく、その劣化を憂わななければなるまい📝それにしても「土佐源氏」の後家ハンターぶりは凄い。男は女に対して、例え体目当てでも、心から寄り添って、存分に甘えさせれば、そこに偽りの愛ではなく真実の愛が生まれるようだ📝

    #タメになる

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    2024年07月11日
  • 銀河英雄伝説4 策謀篇
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    神々の黄昏作戦

    銀河帝国軍最高司令官ラインハルトは、神々の黄昏作戦を発動。独立不覊の国フェザーンは重大な危機に瀕し、自由惑星連合の名将ヤンは帝国の傑将ロイエンタールを迎え撃つ🌠さて、本シリーズは社会批評の言辞が多い。策謀編の「腐敗した民主政治と清潔な独裁政治のいずれをとるか」は、本シリーズ紹介時によく引用されるものだ🌠また、「過去の美化は遠ざかる後ろ姿の女性を美女と決めつけるようなもの」や「絶対善と完全悪が存在するという考えは精神を荒廃させる」といった納得の指摘に自省を促されることも多い。ラノベ調でも教養溢れる凄本だ🌠

    #カッコいい

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    2024年07月10日
  • 銀河英雄伝説3 雌伏篇
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    白色彗星帝国対自動惑星ゴルバ

    ヤン提督の舎弟ユリアンの見事な初陣、ヤン提督の意外な口達者ぶりが明らかになる査問会そして白色彗星帝国対自動惑星ゴルバ戦の如き様相のイゼルローン要塞対ガイエスブルク要塞戦を描写✨戦闘描写については、一般に映像表現と比べて作文表現は不得手とされる。しかし本書での宇宙艦載機戦は「ビームがきらめいて闇を灼き、ミサイルの曳光が宙をぬい、艦艇の爆発光は超短命の恒星となって四方を照らす」と描かれ、修辞巧みだ✨作文表現による戦闘描写も味があって佳い✨

    #アツい

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    2024年06月27日
  • 六月十九日
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    北見けんいち派ではなく太宰治派

    ⚫️太宰治の生誕日(6月19日)に係る随筆だ。⚫️北見けんいちの漫画に、昭和20年代の世相を明るく描く「焼けあとの元気くん」がある。この作品では、親が子供に「アンタなんかウチの子じゃありません」と言うことは、例え勢いでも冗談でも、子供を傷つけるので絶対ダメという。しかし、太宰の見方は異なる。ちなみにカピバラは、北見派ではなく太宰派だ。⚫️ところで、太宰は破滅型の天才で、どうみてもハンパなく面白い奴だが、自己評価は随分違う。「いやいやアンタは面白いよ」とツッコみたい。

    #タメになる

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    2024年06月20日
  • 銀河英雄伝説2 野望篇
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    帝国と同盟が同時に内戦突入

    ●帝国と同盟で同時発生したそれぞれの内戦を描く。●帝国はラインハルト麾下の名将達、才器抜群の副官キルヒスアイス、鬼謀の軍師オーベルシュタイン、知勇兼備の名将ミッターマイヤーとロイエンタールといった将星の活躍が眩しい。一方、同盟はヤンが諸葛孔明のような一人舞台で魅せる。●ところで、著者は皆殺しの田中の異名を持ち、物語が進むたびに主要登場人物を次々とヤっていく癖がある。本巻でもきっちりヤってくれた。通勤電車内で本を読んでいたのだが、関連シーンで泣けてきてしまい、車内の苦笑じみた目が痛すぎである。

    #カッコいい

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    2024年06月12日
  • 銀河英雄伝説1 黎明篇
    購入済み

    名将と愚将に道義上の優劣なし

    ●帝国軍「常勝の天才」ラインハルトと同盟軍「不敗の魔術師」ヤンを軸に描く宇宙戦記。●黎明編では、アスターテ会戦での両主人公の邂逅、難攻不落を謳われるイゼルローン要塞攻略戦、撤退戦に注目のアムリッツァ会戦が見所だ。第三勢力の経済大国フェザーンや怪しげな宗教団体「地球教」の動向も興趣湧き立つ。●また、名将と愚将に道義上の優劣はないとし、愚将が味方を百万人殺すのも、名将が敵を百万人殺すのも、大量殺人者として差がないとする。この物語は、こうした蘊蓄語りが多く、社会や人生を考えさせられる。

    #カッコいい

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    2024年05月29日
  • ルームメイト
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    チョー突っ込みたくなるミステリ

    ⚫️冒頭から結末まで中だるみがなく疾走感が凄い。一昔前のTVサスペンスドラマを文芸ミステリ小説に仕立てた趣がある。⚫️さて、最終モノローグ前にあとがきが差し込まれ「ラストは、ハッキリ言って後味がチョー悪い」から「ここで読むのをやめる事」をおすすめされる。そうは言っても「ここまで読んで最後まで読まねぇ奴いねーよ」と1人でチョー突っ込んだ。⚫️余談だが、北川景子と深田恭子共演の映画版は、ミステリの核心部分において小説版を堅持しつつ、全く異なる展開に肝を奪われる見事な原作改変であった。

    #怖い

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    2024年04月25日
  • 満願
    購入済み

    米澤穂信の同名短編小説を想起

    ⚫️米澤穂信の同名短編小説と同じく女性の願望成就にまつわる掌編小説。⚫️とかく品性に欠きがちな性欲の発露を端正清楚に表現し、善悪二元論に魅せられがちな人の単純な心の内を諧謔を交えて柔く批判し、女の持つ優しさや賢さをさりげなく入れ込む。⚫️ところで、文中の「簡単服」とは、どんな服のことか分からなかった。どうやらワンピースらしい。⚫️話は逸れるが、昔はランニングとかズボンと呼んでいたものを、今はタンクトップとかスラックス・ジーンズと言う。そう言わないと、どこか恥ずかしくさえ感じる。言葉のうつろいを想う。

    #ハッピー

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    2024年04月04日
  • 52ヘルツのクジラたち【特典付き】
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    善心&カネとコネどちらも大事

    ●児童虐待といった深刻な問題を、暗く沈むことなく軽やかに描きなら、淀みなく大団円に突き進む。心穏やかに読み耽った。●さて、誰かが助けを求めて声を上げた時、誰かに優しく受け止めて貰えるのか。個人的体験では、職場のパワハラも介護のトラブルも、声を上げたところで、かえって傷つくことばかり多かった気がするのだが。●大方の見方は、自分を救うにも、他人を救うにも、カネとコネが不可欠というものではないか。おとぎ話に触れて心を豊かにし善心を高めることも大事だが、カネとコネの獲得に向けた日々の辛い努力も重要だ。要自戒。

    #エモい

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    2024年03月13日
  • 処刑台広場の女
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    ラスボスで驚愕

    ⚫️善悪定かならぬ名探偵レイチェルの謎めいた人物像で興味を惹きつつ、ある事件からは展開が急加速し、ラスボスで一驚するミステリ。⚫️ストーリーテリングが絶妙で映画鑑賞のような没入感に浸かることができる。ただし、登場人物が多いうえ全員毛唐だから名前が覚えきれない。このため人物相関の把握に苦慮した。⚫️登場人物を再確認のうえ、改めて早回しで読み直したところ、いくつもの巧緻綿密な伏線に気づく。二度読みはダサいと思っていたが、二度読みの面白さに目覚めた。 

    #ドキドキハラハラ

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    2024年02月29日
  • 成瀬は信じた道をいく
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    成瀬家電の謎

    ●成瀬は才器抜群で、何事かに一意専心すればその道でナンバーワンになれそうだが、何事にも興味を持ってマルチに行動しオンリーワンの道をひた進む。成瀬道は、気に入ったことを好きなように愉しみ、他人からの評価は気にしないが他人への迷惑は避けることのようだ。●ハラスメントの昭和、バッシングの平成を超える令和のスター成瀬の生き方を、見て感じて少しマネすることで、令和日本の生き辛さを吹き飛ばすことができよう。●ところで、成瀬家電の私案は077-504-8311である。どこかに考察サイトないかな。

    #笑える #憧れる #共感する

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    2024年02月07日
  • 痴人の愛 アニメカバー版
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    大正モダンの頂き女子

    ⚫️頂き女子「ナオミ」の成功譚であり、女の色香に惑溺された男「譲治」の失墜譚でもある。まあよくある話だ。⚫️男の自分としては、男の側の気持ちが分からなくはない一方、女の側に好感を持てるはずもない。とはいえ、バブル期のミツグ君やアッシー君について、世間が特に厳しく批判したワケでもないし、当人同士が納得し他所に迷惑をかけないなら、歪な男女関係でも目くじらを立てることもあるまい。⚫️本書は青空文庫で読もうと思ったが、文豪ストレイドッグスアニメ化記念値引に魅せられて、つい本を購入してしまった。書痴の愛である。

    #ドロドロ

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    2024年01月24日
  • 切り裂きジャック・百年の孤独
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    資本主義の闇を描く

    ⚫️30年以上前の高校担任国語教諭(K高T先生)による授業内での紹介本である。30余年越しの初読だが、一読驚愕。性と暴力描写が甚だしく教師が生徒に勧める本ではない。⚫️往事は、ソ連崩壊間際で社会主義の敗北と資本主義の勝利が喧伝されていた。本書は、ビクトリア朝ロンドンと1980年代西ベルリンを舞台とし、一見華やかな資本主義が持つ貧富の格差といった闇を執拗に描く。担任教諭は時流に抗し、資本主義の諸悪を適示したかったのだろう。⚫️なお、上野千鶴子「スカートの下の劇場」も推していた。パンク過ぎる。

    #ドキドキハラハラ

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    2024年01月11日
  • 女生徒
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    中二病女子の毒を吐く独白

    ●中二病っぽい女子が何気ない日常の出来事等に対し、心の奥で毒づいたり悶えたりしつつ過ごすさまを描く。●太宰は、少女の心理を美しく畳み掛ける筆致で犀利明哲に綴る。モテ男だけに、浮草の如き女心に眉をひそめることなく寄り添うことができる故だろう。●よく言われるところの「女性は女性に厳しい」理由や、非モテ男がモテない理由について、一言で決定的に要約するなど、女心のハウツー本のようでもある。●また十五年戦争期の作家として、オブラートに包みつつ軍国批判を行っている。その巧みな筆の運びに唸らされる。

    #深い

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    2023年12月27日
  • スクラップ・アンド・ビルド
    購入済み

    介護虐待のメカニズム

    老祖父を介護する若者の物語。認知症老母を同居介護している身として、介護問題を考えつつ読む🤔この物語の老祖父も我が家の老母も、常々「死にたい」旨を口にする。しかし、両名ともに内心では「まだまだ自儘に生きたい」と思っているようだ。尊厳死選択の難しさを想う😓また、親子介護は嫁姑介護より惨況になるという。被介護者が自儘を言い易いからだ。老母は介護サービスを介護職員等に気を使うからイヤだと言うが、裏を返せば子供のカピバラKSには気を使っていないのだ。介護虐待のメカニズムが垣間見える😮‍💨 

    #深い

    0
    2023年12月21日
  • 窓ぎわのトットちゃん 新組版
    購入済み

    教育と戦争を語る不朽の名作

    ⚫️戦争が暗い影を落とす昭和10年代に、発達障害の小学生トットちゃんが、先進的で自由な校風のトモエ学園において明るくすごす日々を描く。昭和56年発刊の黒柳徹子による自伝で戦後最大のベストセラーだ。⚫️自分は愛知県在住である。発刊当時、管理教育の愛知県では、本書を学校図書館から締め出していたようだが、小学3年の女性担任教諭は読み聞かせをしてくれた。世評どおりの良書だと思っていたのだろう。⚫️本書は読者に障害者差別を始めとしたあらゆる差別が過ちであることを心に刻み込ませる不朽の名作である。近日の映画公開も楽しみだ。 

    #ほのぼの

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    2023年12月07日
  • そして、バトンは渡された
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    育児のすすめ

    ⚫️少子化時代の「育児のすすめ」である。何をしたら自分が満たされるのかはよく分からないから、自分のために生きることは案外難しい。しかし、自分より大事な子供のために生きることは、自分を確実に満たしてくれる。⚫️育児のある人生は幸せで、育児のない人生は多分つまらない。お金で買えない生きがいを得られる育児のコスパは悪くないのだ。⚫️さて、主人公の義母梨花について、自由奔放というより自儘独善を感じるが、周囲の男達は途方もない器のデカさで接している。現代女性の理想的男性は大度量の持ち主らしい。自分にはムリっぽい。

    #癒やされる

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    2023年11月13日
  • むらさきのスカートの女
    購入済み

    妖しい雰囲気に耽溺

    ⚫️至ってシンプルな文章にもかかわらず、妖しい夢を見ているような世界に誘われる。⚫️何が言いたいのかはワケワカメであった。読了感はTV版エヴァンゲリオンを観た後に近い。⚫️むらさきのスカートの女はコミュ障気味のようだ。コミュ障が最低限度の社会生活を営むためには、元気な挨拶と一人でも友達を作ることが必要である。友達作りはハードルが高いように思えるが、ボッチだと思っていても、黄色いカーディガンの女のように友達になりたいと思っている人は意外といるものだ。至ってシンプルな感想を持つ。

    #切ない

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    2023年10月12日
  • 月と蟹
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    中二病前夜の年頃を描く

    ⚫️小学校高学年とは、何も分かっていないようで大方のことは識っている年頃だ。そんな子供達の心象言動について、空恐ろしいほど鋭く生々しく描かれている。⚫️それにしても、養育とは難しい。この物語で、子供にとって肉親は胸襟を開ける相手ではなく、教師は登場しない。大人から子供への接し方を考え込まされる。⚫️大人は子供を少々ムリがあっても一人前に扱うことで、真に頼られる存在となり得るのかもしれない。これは大人と子供を目上と目下に言い変えても同じであろう。自分の職場での目下に対する態度が脳裏に去来し反省しきりである。

    #深い

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    2023年10月07日
  • ユリゴコロ

    ホラーでミステリでスプラッタ

    ●ユリゴコロという不思議なタイトルからして不穏当なホラー調ミステリである。先の見えない展開に翻弄されつつ、愛の不可解さや勁さの描写に心揺さぶられ、ラストで驚愕する。●凄まじいのはリスカ少女のシーンだ。余りにもスプラッタで読むに耐えられず、斜めに読み飛ばしたが、筆力に圧倒されてまともに読むことができなかったという読書体験は生涯初である。●また、出産を契機に心境が一変するシーンは、女性作家にしか描けそうもなく、男性読者の自分には唸るほかなかった。壮絶な怪作である。

    #ダーク

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    2023年09月29日
  • 推し、燃ゆ
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    正直、主人公が僅かに羨ましい

     アルコールやギャンブルと同じように推し活も、病気として治療が必要な依存症の域に達することがある。主人公は推し依存症であるが、何かに沼ることで憂き世を忘れて生きる活力を得て、そこで歯止めが効かなくなることは誰しもあり得る。
     さて、五十路の自分はつまらない人生を歩み、今はマッサージ屋で肩をほぐしてもらうこと、TRPGのニコニコ動画を観ること、ラジオで問わず語りの神田伯山を聴くことを、ささやかな楽しみに生をつないでいる。推し活に燃えたひとときに一片の悔いも残していない若い主人公が、僅かに羨ましい。

    #切ない

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    2023年09月22日
  • 梟の城
    購入済み

    意外と面白い司馬の忍者時代小説

     司馬小説について、若い頃は明治幕末戦国期を舞台とした歴史群像物を好んで読み、娯楽時代物は食わず嫌いで読んでいなかった。しかし、歳を経て気も変わり、忍者活劇である本書を手に取る。
     戦闘、陰謀そして性愛が溢れる波瀾万丈の物語で、ハリウッド映画のようにストーリが激しく起伏を起こし、片時も飽きることがない。更に、司馬特有の蘊蓄語りや優れたシーン描写も十二分に堪能できる。
     初読時には、登場人物の中で誰が石川五右衛門なのかを気にしながら読み進めていくと、より面白く読めると思う。

    #ドキドキハラハラ

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    2023年09月18日
  • 風に舞いあがるビニールシート
    購入済み

    自己実現に潜む危うさを描く

     6短編全て、自己実現に潜む危うさを描きつつも、読後の余韻は爽やかという名作揃いであった。
     冒頭作「器を探して」が、最も印象に残る。主人公弥生が、仕事にうんざりしつつも、いつの間にやら仕事に酷くのめり込んでいるさまは、働き盛り世代として到底他人事とは感じられなかった。
     また、短編集の最後を飾る表題作「風に舞いあがるビニールシート」は、締めに相応しい圧巻のラスト1行が心に響いた。

    #エモい

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    2023年09月08日
  • 成瀬は天下を取りにいく
    購入済み

    涼宮ハルヒ似の主人公に圧倒

     どこか「涼宮ハルヒ」に似た優秀で変わり者の女学生「成瀬あかり」を巡る賑やかな日常譚である。
     破天荒な主人公成瀬に対し、良き理解者の幼馴染から目一杯距離を置きたがるクラスメイトまで、世間体を気にする度合いに応じて、様々な人々がわちゃわちゃと関わっていく様をユーモラスに描き、とにかく楽しめる。
     一読して、世間の同調圧力なんてどこ吹く風で受け流しても人生にとって深刻なトラブルになるわけでもなく、人は互いに価値観が異なっても楽しいひとときを過ごせることに気づかされた。

    #笑える

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    2023年08月31日
  • コンビニ人間
    購入済み

    オンリーワンの大肯定

     現代日本の同調圧力による生き辛さを一蹴する好著である。
     評価の分かれるラストシーンについては、コンビニバイトの行かず後家である主人公古倉恵子が、他人の目を気にし過ぎず、自分の納得できる生き方に進むことを示唆したもので、オンリーワンの生を大肯定するハッピーエンドと捉えたい。
     また、本書はラノベのようにエッジの効いた会話やコンビニを水槽に見立てるなど文芸作品らしい表現技巧に優れ、ぐいぐい惹き込まれつつ読んだ。

    #笑える

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    2023年08月31日