あらすじ
あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。
才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり……。
自分だけの価値観を守って、お金よりも大事な何かのために懸命に努力し、近づこうと頑張って生きる人たちを描いた6編を収録。
解説・藤田香織
※この電子書籍は2006年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
カラフルぶりの作者さんの作品だったけど、全く別の方が書いてるのかと思うほど印象が違った。
さらに収録されてる6篇もそれぞれ感じが違くて、作者さんの幅の広さに驚いた。
表題作の「風に舞いあがるビニールシート」が特に印象に残ってる。思わず泣いてしまったし、切ないラブストーリーだった。
Posted by ブクログ
心あったまる。わざわざ言葉にすることでもないが、でも生きる上で実はこういうことが大切なんだよなぁ、と思わされる話ばかり。
手の痒いところに焦点があたり、細かな心の機微を表現してくれている感じ。
定期的に読みたいと思える。
Posted by ブクログ
本人にしか分からない何かを大切にする人達の6編。
6編とも全く違う話なのに、共通する切実さみたいなものが伝わってきた。
表題作はもちろん、ピュアな向学心に気付く「守護神」もお気に入り。
Posted by ブクログ
直木賞受賞した作品。
クリスマスイヴにイヴの話は、少し運命的だと思ったの。
美しいシーンは主人公に重なって泣けます。
元夫の死を乗り越えようとしてアフガン行きを決める主人公はさすが直木賞という感じ。
以下はお気に入りの文引用です。
「都会の人間はスマートに人を拒絶する。」
「自分になにができるのかと考えることは、自分の無力さと向かいあうことだ。」
「弱さを人に見せられるのも一つの徳性だ」
「粘って粘ってつないでいけば、そのうち四番打者にもなれるかな」
「エドは無言で里佳の手を引きよせ、その指先にキスをした。恐らく今までで一番優しいキスを。「いや、里佳だとわかってた」」
「突然、発作のように里佳は胸をつまらせた。平和はかくも美しい。(略)どうかこの美しさが、すばらしさが永久に続きますように。」
Posted by ブクログ
本のタイトルにもなっている「風に舞い上がるビニールシート」がダントツで、すっごく、よかった…!
さまざまな境遇や環境の人がそれぞれの短編に出てきて、森絵都さんの凄さを知った
Posted by ブクログ
いわた書店さんの選書の一冊。
2009年の作品で直木賞も受賞されてた。力強く生きる人々を描いた六篇が収録されてます。
私は天才パティシエに翻弄される彼女の話がしんどいながらも面白かったかな。あとはタイトルにもなってる風に舞いあがるビニールシートも。
頑張って褒められたいという気持ちは誰しもあるよね、それを蔑ろにされたらどうしたらいいんだろうね、ということを考えながら読みました。最終的には負けんぞ!!という気持ちなのかな。
Posted by ブクログ
とっても良かった。
それぞれの作品に個性があった。
それぞれの主人公たちが自分の譲れない、大切な物事を貫き通して懸命に生きる姿に心打たれた。
自分にも、家族・お金・健康以外に大切にしている価値観や趣味があるので、主人公たちのように、自分の人生の指針として大切にしていきたいと思った。
社会人3年目になった今、仕事をそこそこに趣味を一生懸命楽しみたい自分にとっては、「ジェネレーションX」の石津にかなり共感出来た。
「守護神」の祐介は、学生時代に文学大好き過ぎて周りから疎まれた結果、自分の大好きな文学を捨ててしまった。社会人になってから夜間大学の文学部で学び直す。
「鐘の音」の潔は、学生時代に「ブツゾー」とあだ名を付けられていたが、周りを気にせず自分の好きなことを貫き通した結果、夢を捨てて修復師の道を選んだ。
若いうちに自分の好きなこと、熱中できることを見つけて、周囲の目を気にせずにのめり込める人は凄いなと思った。自分は「守護神」の祐介タイプで、学生時代は自分の好きなことより、周りからどう思われるかを優先してしまっていたなあと感じた。
Posted by ブクログ
1つ1つの話がとても濃厚で、短編1つ終えるたびにふうと一息ついて頭を整理するほどでした。
物語の主人公一人ひとりがゆるぎない信念を持っており、凡庸になんとなく生きている自分にはそれが輝いてみえました。仕事の仕方を見直そうかな。
表題作が、9割苦しく切ない内容だったのですが、主人公が想像も及ばないほどの葛藤と苦悩をしたあとに出した最後の結論に、胸を強く打たれました。
Posted by ブクログ
タイトルが気になっていて、読みたかった本でした。
「風に舞いあがるビニールシート」
家族仲間がいて腰を落ち着けて“ここが自分の居場所“と言えるところがある。それ自体がすでに平和であり、幸せなのだ。ビニールシートが風に捲れ、煽られ、もみくちゃになって飛ばされるように、いとも簡単に自分の居場所や存在そのものが奪われてしまう世界が、今この時にも存在する。
そのような人たちを護り助けたいと願う国連職員のエドと里佳の関係を描いた章。せつないけれど最後は熱いものがこみあげてくる力強い物語でした。
お仕事小説とひと言で言い表わせないくらい、どの章も深く内容が豊かで、「守護神」「ジェネレーションX」も好きです。
新緑の風が心地よい4月に読めて良かった一冊です。
Posted by ブクログ
短編集で読みやすかった。
表題の風に舞いあがるビニールシートが一番刺さった。
それぞれの葛藤を受け入れて前に進む女性の話。
1人じゃないと思えるような本
自己実現に潜む危うさを描く
6短編全て、自己実現に潜む危うさを描きつつも、読後の余韻は爽やかという名作揃いであった。
冒頭作「器を探して」が、最も印象に残る。主人公弥生が、仕事にうんざりしつつも、いつの間にやら仕事に酷くのめり込んでいるさまは、働き盛り世代として到底他人事とは感じられなかった。
また、短編集の最後を飾る表題作「風に舞いあがるビニールシート」は、締めに相応しい圧巻のラスト1行が心に響いた。
Posted by ブクログ
大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語。
どれも雰囲気が全然違う。本当に同じ作者?って思ってしまうくらい。
「守護神」「ジェネレーションX」「風に舞いあがるビニールシート」が、特に良かった。
特に最終章は、さすが直木賞作品。胸がぎゅっと締め付けられて痛さを覚えるくらい、切ない。
Posted by ブクログ
母にオススメの本を聞いた時に紹介され、読みました。短編集で読みやすかったです。
自分の大切なものを守るために翻弄する人たち。自分もそういう何かが欲しいと思いつつ、いや平凡がいいなとも思いました(笑)
実際今犬を飼っていて、保護犬について熱心に調べたこともあるので、犬の話はグッときました、、。
草野球したい話が一番面白かったです。ええっていう展開で、気づいたら応援してました。
Posted by ブクログ
どれも楽しく読めました。
私のお気に入りはジェネレーションXです。
少し軽薄で人への配慮がない若者の石津ですが、客に対しての誠実な対応、仲間思いの姿に心打たれました。一見すると変なやつでも意外といいやつかも。敬遠している会社の同僚にも話せばいいやつもいるかもな。と思いました。
Posted by ブクログ
森絵都さんの直木賞受賞作品。
何か大切なもののために情熱を燃やす6編の短編集。
短編とはいえ、ひとつひとつが深くて考えさせられる物ばかりだった。
仏像修復師を描いた「鐘の音」が特に印象的だった。
それぞれの物語での分野が違っているのにどれも詳細で専門的で、森絵都さんの知識の広さと深さには脱帽だった。
そしてどの作品もラストは人間の温もりを感じられ、森絵都さんらしく締めくくっているところにも惹かれた。
様々な分野の世界を感じることができ、満足感でいっぱいになった。
Posted by ブクログ
同じ人が書いた作品とは思えないほど一つ一つの物語が全く違う独立した別の小説のような印象だった。共通しているのは自分の大切なもののために懸命に生きている人達。
大切なものはそれぞれ違うし優先順位をつけるのも難しい。鐘の音の潔のように手放して初めて気付くパターンもある。
表題作の風に舞い上がるビニールシート、ジェネレーションX、鐘の音が特に好き。
エドの言葉が印象的だった。
“仮に飛ばされたって日本にいるかぎり、君は必ず安全などこかに着地できるよ。どんな風も君の命までは奪わない。家を焼かれて帰る場所を失うことも、目の前で家族を殺されることもない。好きなものを腹いっぱい食べて、温かいベッドで眠ることができる。それを、フィールドでは幸せと呼ぶんだ。”
与えられた環境に感謝しながら日々過ごさないといけないなと改めて感じた。
Posted by ブクログ
子供の本読みで森絵都さんに衝撃を受けて、
まず短編から。と読んでみた。
それぞれ全然違う世界へ連れて行ってくれる。案内人が別人みたい。
人の心(特にイラっとした)の描写が好き。
ストーリーの進め方とあっと言わせるような締めくくり方も最高。
私は「守護神(題名も最高!)」と「ジェネレーションX」が特に好き。
Posted by ブクログ
それぞれの立場で、様々な悩みを抱えた人を主人公とした6つの短篇集。
どの話もよかったですが、仏像の修復に没頭する男性を描いた「鐘の音」が印象深いです。
何かを守るためには、何かが犠牲になって、それでも前向きに生きようともがく姿が美しいと思いました。
Posted by ブクログ
どの話も読後が爽やか。仕事頑張ろう!と思える話もあった。
守護神の主人公がレポート代返のために人探しに奔走するところで、そのエネルギーをレポートに使えばいいのに。と思っていたが蓋を開ければ読書好きがたたって拘りが強く、おまけに金銭的にも苦労していてバイトに時間をとられて…と読み始めと良い意味で印象が変わり面白かった。心強い守護神に会えたからレポートは上手くいくのかな。
ジェネレーションXも事勿れ主義な主人公か?と思っていたけど、乗り掛かった船で自分に関係ない仕事に付き合ってあげてて、いい人やん!と。まさかの過去に笑った。
最初の話の主人公は仕事と恋人のどちらをとるの、というよくある話。こんな彼氏なら仕事を取るだろう、と思ってたらある意味まさかの両方取り!強かな主人公で笑ってしまった。
Posted by ブクログ
短編集は軽いものが多いけど、本誌は一編一編がとてもしっかりと書いてあるのです、真剣に読みました。そんな中にも、ニヤッとさせられる場面があってそれがまたよかったです。
Posted by ブクログ
作者は根が真面目で善い人なんだろうな…と、作者の心が伝わってくるような短編集でした。
表題作の「風に舞いあがるビニールシート」は確かに巧みで、響くものがあった。それでも個人的には「犬の散歩」が一番好きだった。自分なりの牛丼を通して世界を捉えたい。
Posted by ブクログ
仏像の話とUNHCRの話は話の内容は難しい話題なのに、読みやすい。
大学生の話は、こんなよくいそうな怠惰な大学生の話、これどうなるんだ?と思っていたけどとても人間味を感じるフワッと温かい気持ちになれた。
解説にもあったか、とても人間臭い、だからこそ面白い。
人って表面だけじゃわからないよなあ、とより感じた物語でした。
Posted by ブクログ
一万円選書の1冊。
6つの短編小説で全て違うけど強い信念を持った6人が登場する。
最初は気まぐれなパティシエに振り回される秘書が彼氏にどっちの方が重要なのかを迫られながら仕事に没頭しているお話から始まり、
保護犬を飼うために水商売でお金を稼いでいる人の話、
UNHCRの事務所で働いている人が紛争など危険地域に派遣される人と結婚しながらもがくお話。
幅広い登場人物と全然違うストーリーで伏線回収があるような話もあって飽きなかった。
仏像のお話だけあまり頭に入ってこなかったが。
個人的に最初と最後のお話がとても刺さった。
Posted by ブクログ
6編の短編集。
「守護神」が特に好き。
社会人学生の裕介がただ自分が楽をしたいためにレポートの代筆をニシナミユキに頼みに行ったと思いきや、実はかなりの文学マニアで、ギャップがおもしろかった。
裕介の勤務先のホテルのマネージャーもニシナミユキもいい人!!
好きなことに打ち込めるっていいね。
Posted by ブクログ
短編集って話が短いから
もったいないと思ってたけど
1話1話が深かった
最後の話が自分と重なる部分もあって
お気に入り。
愛にも色々な形があるんだなぁと
亡くなった方にはやっぱり、忘れないこと
思い出して話題にすることが1番いいのかな
Posted by ブクログ
違いのある短編6篇は『出会いなおし』というキーワードのみで繋がり全てが読み応えありました。人との出会い、その繰り返しで人生が彩られていくのを自分毎に思ってみたら.更に面白く感じました。
Posted by ブクログ
自分の価値観を守りお金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。真剣に取り組んでいるからこそ壁にぶちあたる。真剣に生きている人には必ず応援してくれる人や見守ってくれる人がいる。
Posted by ブクログ
表現もすごいし感動的なはずなのに、何故か文字が頭に入ってこなかった。一つ目で緩さを感じたせいかもしれない。最後の表題作がタイトル含め印象的だった。直木賞(受賞)の講評で、時系列の短編がだんだん上手くなってる、と学んだことを書き過ぎ、は深く頷ける。
・器を探して
パティシエヒロミに振り回される弥生は美濃焼を探しに岐阜へ。彼氏は怒る。瀬戸黒と出会う。
・犬の散歩
犬の里親探しのボランティアを始めた恵里子。義父母が里親になる。活動費の為スナックで働く
・守護神
レポート代筆の神ニシナミユキ。祐介も依頼するが真面目すぎるあなたは自分で出来ると諭される。
・鐘の音
仏修繕師の潔は仏と寝る程囚われるが後補され種類が違うのも見抜けなかったと今知る。その時離職し出来た娘が結婚しチャペルの鐘の音を聞く事に。
「プラモデル用のボンドやったら持ってるで」
・ジェネレーションX
出版社野田と玩具会社石津がクレーム対応で同車。石津の10年ぶり高校野球に野田も参加する事に。
・風に舞い上がるビニールシート
UNHCR職員のエドと里佳は結婚。難民救助に奔走するエドとすれ違い離婚、エドはアフガンで少女を守り撃たれる。表題=簡単に奪われる難民の命、幸せ。