あらすじ
織田信長によって一族を惨殺された怨念と、忍者としての生きがいをかけて豊臣秀吉暗殺をねらう伊賀者、葛籠重蔵。その相弟子で、忍者の道を捨てて仕官をし、伊賀を売り、重蔵を捕えることに出世の方途を求める風間五平。戦国末期の権力争いを背景に、二人の伊賀者の対照的な生きざまを通して、かげろうのごとき忍者の実像を活写し、歴史小説に新しい時代を画した直木賞受賞作品。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
司馬遼太郎の直木賞受賞作品。
秀吉が天下を統一した時代の架空の忍者の話。
忍者の道に進みながら忍者らしくない重蔵と忍者を嫌うも忍者らしく冷酷な五平の対比が面白かった。
最後の結末も史実への繋げ方が非常に印象に残った。
Posted by ブクログ
歴史作家として名高い作者だが、初期には伝奇小説で山田風太郎と人気を二分していたとか。その頃の傑作であり、直木賞受賞作。忍者の手に汗握る心理、頭脳戦が素晴らしい。史実を絡めた見事な結末は後の歴史作家としての片鱗も窺える。
Posted by ブクログ
重蔵と小萩の恋の行方が気になって、一気読みした。50〜100ページほどは時代背景と人間関係の整理で多少時間はかかったが、誰と誰が対立関係にあるかが分かれば、スラスラと読み進めることができる。
初めての司馬遼太郎。おすすめされて読んだ。自分が司馬遼太郎を読んだことがないと言うと、この『梟の城』を教えてくれたのだ。
意外と面白い司馬の忍者時代小説
司馬小説について、若い頃は明治幕末戦国期を舞台とした歴史群像物を好んで読み、娯楽時代物は食わず嫌いで読んでいなかった。しかし、歳を経て気も変わり、忍者活劇である本書を手に取る。
戦闘、陰謀そして性愛が溢れる波瀾万丈の物語で、ハリウッド映画のようにストーリが激しく起伏を起こし、片時も飽きることがない。更に、司馬特有の蘊蓄語りや優れたシーン描写も十二分に堪能できる。
初読時には、登場人物の中で誰が石川五右衛門なのかを気にしながら読み進めていくと、より面白く読めると思う。
Posted by ブクログ
解説のなかで、女の忍者を「くノ一」というのは、漢字の「女」を分解した
呼び方だというのを、この歳で初めて知った。
武士の心理、戦国時代の忍者の心理、くノ一として育てられた女性の心理などが書かれている。
本書を読んで、自分は封建制度の元に生まれていなくて、ほんとに良かったと思えた。
Posted by ブクログ
中学生のときにこれを読んで、歴史小説(これは時代小説か?)にハマり始めた。二十年経っていまの中学生に紹介するのを機に、久し振りに読み返した。やっぱり面白い。ただ、世の倫理観が、発表された昭和30年代と、私が中学生だった平成10年代といまとでだいぶ変わっているので、司馬のこのいかがわしさを現代の中学生に読ませて良いのかは惑う。少しだけ。
Posted by ブクログ
この時代に生きている人を、忍者を、本当に見てきたかのような見識と描写。
司馬遼太郎にしかなしえない、取材力と想像力を結集した最高傑作。
描かれた一人一人の思考に没入しすぎてしまう中クライマックスの、優しさというか司馬遼太郎らしさが、またカッコよすぎる。
Posted by ブクログ
1960年(昭和35年)
前半期の直木賞(第42回)受賞作
あらすじ
織田信長による伊賀侵攻である天正伊賀の乱から10年後、伊賀忍者・葛籠重蔵(つづらじゅうぞう)は隠遁生活を送っていた。仇としていた信長はすでにこの世の人ではなくなり、生きる希望を失っていたが、かつての師匠・下柘植次郎左衛門から、太閤秀吉暗殺の依頼を受ける。忍者としての生涯を華々しく終えることのみを考えていた重蔵は依頼を引き受け、秀吉暗殺に乗り出す。堺の豪商・今井宗久のもとへ向かう途中、小萩という、宗久の養女が現れ、二人は通じ、密かに愛し合うようになる。だが、彼女は重蔵を見張る役目を持ったくノ一だった。重蔵は木さる、黒阿弥らとともに、伊賀を裏切った風間五平らと対決し、秀吉の居城伏見城へ潜入する。
感想
時代劇では無い、ハラハラドキドキ
記憶に残る一冊。
Posted by ブクログ
豊臣から徳川へと天下が移り始め、再び戦乱の世へと転じようとしている最中、様々な思惑に振り回されながら、任務を全うする忍者の暗躍を描いた話。
闇討ちはもちろん、一騎討ちなど手に汗握る戦闘場面や、忍び達の偏った男女関係があったりと起伏に富んだ展開が続き、楽しみながら読めた。
歴史小説読まず嫌いを克服させてくれた一冊。
Posted by ブクログ
かなり面白い。
序盤を過ぎた頃から彼らの生きる世界に吸い込まれた。
再読したいし、司馬遼太郎の違った一面に触れた気がした。司馬遼太郎記念館に行ってみたくなった。
Posted by ブクログ
「梟の城」直木賞受賞作を司馬遼太郎記念館で購入した。古来から隠し国といわれる伊賀。伊賀国から出た郷士で本作の主人公は”忍者ハットリくん”ではなく、”葛籠重蔵”。
一般的な忍者は虚無主義をそなえており、他国の領主に雇われはしたが、食録として抱えられることはない。報酬をくれるものならどんな者の側にもつき、仕事が終わると、その敵側にさえつく。
時は織田信長からはじまり、豊臣秀吉の晩年までのころ。重蔵は老師下柘植次郎左衛門の導きにより商人今井宗久の隠密として秀吉暗殺を狙う。
重蔵と同じ師ををもちライバルでもある伊賀者風間五平が敵味方に別れて、それぞれの生き様を戦わせる。重蔵がとても男らしく不器用に忍者一筋で描かれるのに対して、五平は伊賀を裏切るかたちで前田玄以のもと200石の録を喰む。
甲賀者のくノ一小萩と重蔵の関係も最後まで楽しませてくれた。中盤で登場する甲賀者の摩利洞玄もキャラが立っていてめちゃくちゃ強く印象に残る。
誰が誰の隠密として働いているのか、今井宗久、前田玄以、石田三成、豊臣秀吉、徳川家康。混乱してくるが、終盤になるにつれ大物が情報力によりどのように世相を読み、どう世を生き抜こうとするのかも面白ポイントだ。また、物語がすすむなか、梟が忍者を指す意である事を示す描写は秀逸で思わず手をとめた。
最終章、伏見城に忍び入り秀吉の枕元に立った重蔵と秀吉のシーンはまさに情景が目に浮かぶようで最高のクライマックスだった。
忍者の姿(考え方)は男尊女卑な傾向で現在の価値観感とは若干ずれてしまうのは仕方がないところ。いや、むしろそんな世俗的歴史観を楽しめるのも読書だからこそ。私の生まれる前の直木賞作品「梟の城」は今でも古びない素晴らしい良質なエンタメ作品だ。
Posted by ブクログ
信長に滅ぼされた恨みを秀吉暗殺によって晴らそうとする伊賀忍者の物語。
人道とか倫理という概念を持たずにひたすら忍びの技を売り物にして生き伸びる伊賀忍者の生き方と、武士道とは名ばかりに地位や権力、利権を求めて強いものに擦り寄る武家の対比が面白い。
くノ一という呼称だけが先走っている感がある女性忍者の哀しい描かれ方も印象的でした。
私が生まれる前に発売された本であり、司馬遼太郎氏が初期にこのような作品を書いていたなんて以外でした。
Posted by ブクログ
秀吉の時代の末期。秀吉を討つことを命じられた伊賀忍者の葛籠重蔵と伊賀を捨てて侍になった風間五平。二人の伊賀者を中心に、冷酷な忍の物語が繰り広げられる。登場人物がどれも魅力的で、また、忍の生き方がとても格好いい。長編の歴史小説だが、あっという間に世界観にのめり込んだ。
Posted by ブクログ
たまに寝たりするけど通勤途中に読んでいるが、久し振りの司馬遼太郎は面白かった。
読み始めから引き込まれて、伊賀や甲賀忍者の習わしや歴史は、結構詳細な説明もあり漢字も難しいので、作者の調査に基づく言いたかった内容や意図はどこまで理解できたか分からないけど興味深かった。
これは子供の頃によく観てたテレビの仮面の忍者赤影やカムイの影響が少なからずあるよね、凄く格好良かったから。
実際はどうなんだとか、まあ実際は分からんけど。
ただ終盤に向けての男と女の気持ち、この様な時代の封建的な環境下だからなのか、チョット長かったな。
だけど結末は読者が望んだものに近いと思う。
あ、感想書いてたら電車乗り過ごしてた
Posted by ブクログ
時代小説といえば司馬遼太郎、中でも初期の作品で、直木賞受賞作である。
中期〜後期の作品群に比し、本作はファンタジー要素が強く忍者感(?)溢れる技の数々、戦闘シーンなどエンタメへの全振りっぷりが若き日のシバリョみを感じられて面白い。
内容は、
伊賀忍者の生き残り、葛篭重蔵の元をかつての師匠が訪れ、堺の豪商・今井宗久から金で請け負った太閤秀吉暗殺の仕事を彼に命じる。 闇に生き、梟と呼ばれる忍びとしての誇りをかけ、密命を果たそうとする重蔵を待っていたのは、伊賀を裏切り、出世を望んで武士に転身した風間五平らとの戦いだった……。(ネットの拾い概要)
途中、甲賀忍者と戦ったり謎の美人くのいち・小萩との情交や駆け引きがあったり、師匠が実は二重スパイだったり、師匠の娘・木さるから想われ?たり等と、相関図がややこしくてアレ?今誰と対立して誰とつるんでるんだっけ?と混乱しつつも、基本的には、ニヒルで硬派な重蔵vs武士リスペクトすけこまし五平という正反対な2人の伊賀忍者の闘い、で間違いなさそう。
ただ、この2人最期決闘するんだろうな、という期待を裏切られ、五平はしょーもないというか、あっけない最後を遂げた(石川五右衛門がここで出てきたのはさすがシバリョだなと思ったw感心した)のにはびっくりした。
そして重蔵も…。最後なぜ秀吉を殺さなかったのか?ここ考察するの面白いと思う。殺さず、ぶん殴って終わりにした。重蔵のアバンギャルドな無頼さが際立ってカッコいいではないか。シバリョはほんとにくい演出してくれると思う。
後年の作品のファンが読んだら色々驚く本作、これはこれでアリだとおもいました。おもしろかった。
Posted by ブクログ
登場人物の腹の中が不透明な状況で敵味方が次々と入れ替わる展開は、理解するのに苦労を要した。しかし読む進めていくと共に、全体像を掴めない感覚そのものが忍者という存在を象徴しているのかなという思いが込み上げ、不思議と納得のいく読後感だった。忍者としての生き様をひたむきに貫いてきた重蔵がクライマックスで選んだ言動は人間味が感じられて温かさがあった。戦いの場面の凄惨さとのコントラストが巧みである。真っ黒なキャンバスに様々な濃淡の同色を重ねたような奥深い色彩を感じる本作品は、とても読み応えがあった。
Posted by ブクログ
ついに司馬遼太郎に手を出してしまった。大御所は、なるべく避けてきたのだけれど。はまってしまうと、抜け出せなくなりそうだから。でも、やっぱり、面白い。
Posted by ブクログ
葛籠重蔵と風間五平を対照的にすることで、正しい日本人としてのあり方を司馬遼太郎は教えたかったのだろう。
最終的に重蔵が生き残り、五平が死んだ。すなわち、重蔵の生き方が司馬にとっては正しいのだろう。
「忠義を全うするも自分なりの答えを出す」、そんな生き方は私にも格好良く映った。
Posted by ブクログ
昭和34年という高度成長期に差し掛かる頃に書かれた司馬遼太郎の直木賞受賞作。
大衆文化が拡大した時代に提供されたエンタメにも関わらず、移ろいゆく知識人も惹きつけただろう文学的香りのする作品。
本小説の世界は、信長から秀吉の時代の忍者の世界。梟はむろん忍者を指す。
葛籠重蔵と風間五平(石川五右衛門)という伊賀忍者二人に木さると小萩というくノ一の男女が織りなす忍者の世界、独特の人間関係のスパイラルを描く。
忍者の美学に殉じる重蔵が妙に魅力的に映る。伊賀を抜け、武士を志向した五平がよい対比になっている。と同時に、下忍の黒阿弥や敵の甲賀忍者洞玄など魅力的な脇役がよいバランスで描かれる。そしてそこかしこに歴史上の人物が、適切なコンビネーションと対比で配される。千利休、津田宗及とならぶ今井宗久。豊臣秀吉対石田三成。石田と島左近。
解説で村松剛が戦前の宮本武蔵とお通、朱美の関係との対応を書いているが、ある種のヒーロー物の焼き直しではあろう。
ただ、単なるエンタメというのはあたらない。やはり昭和の中期の質の高い文学的表現である。
作者は、時代の動きに敏感だったのだと改めて思う。
本書に限らず、これ以降選択したテーマは、新たなに勃興してきた「大衆」が好む時代小説であり、それでいて一途に生きた人物群の魅力を司馬らしい筆致で描いてきている。
Posted by ブクログ
『梟の城』司馬遼太郎(新潮文庫)
忍者といえば現代ではショッピングモールで手裏剣教室をやっていたり、城跡でパフォーマンスをしていたりといった存在だけど、実際の忍者はどんなはたらきをしていたのだろうか・・・。
忍の道にいる人の名前が知れ渡ってしまっては忍べないから、歴史の表舞台に出てくることはないんだけど。
本作は忍者小説でありながら、ひじょうに「人間臭い」忍者の物語だ。
忍の道を極めようとする葛籠重蔵と、忍の道を捨てて士官する風間五平、くノ一の小萩と木さるを中心に話が展開する。
冷酷非情が常であるはずの忍者が相手を殺すことに躊躇したり、色恋沙汰に陥ったりする。
信長に伊賀の里を滅ぼされた恨みをはらすべく秀吉暗殺の仕事を受けた重蔵。
豊臣家家臣の前田玄以の家臣として秀吉暗殺を企む重蔵を捕らえようとする五平。
三成の命で秀吉暗殺の裏で糸を引く黒幕を暴くために重蔵を証人として捕まえようとする小萩。
重蔵と同じ出自で重蔵と行動を共にする木さる。
秀吉暗殺の絶好の機会を得た重蔵がとった行動は・・・。
最後の石川五右衛門のくだりは、本編とは関係ないけれど、いわゆる「歴史探偵」的視点で資料をつなぐとこうなるんだろうなっていうエンタメだね。
長い物語だけど、疾走感のある展開で、闇を舞台にしているのに暗いわけでもない、面白いエンタメ小説だった。ぜひ。
歴史小説と時代小説
史実に則り、つまり史実を調べて、それなりに忠実に書くのが歴史小説。
時代背景に則り、あとは描きたいように書くのが時代小説。代表は池波正太郎さんとかね。
前者の代表格である司馬遼太郎先生の直木賞受賞作が本作。
しかしながら、これは時代小説です。直木賞受賞の際には吉川英治さんは勉強が足らんとボロカスに貶して、
海音寺潮五郎さん等の推薦で受賞したとのこと。もとは新聞の連載小説らしい。
宮部みゆきの直木賞受賞作も新聞連載らしいから結構多いのかね。
筒井康隆によると作り話を作るのが小説家の仕事で、取材して書くだけなら小説家としてカタワである、
小説家として他の分野で書いていた人が歴史小説書くようになったら、半ば終わってるとのことでした。
いや、誰とは言いませんよ。kkさんとか。出来の悪いレポート読まされてるみたいのもいるらしいからね。
本作は頭のいい人の作り話で、読み手はうまいこと引きまわされます。
もともと新聞記者で、取材して、記事にする。随筆の街道をゆくとかその典型かもです。
さて、手塚治虫先生の話でブラックジャックがあります。
カラー版の二巻の一話に奇胎なる話があるのですが、司馬先生のそっくりさんが出てくる。
大学の編成が戦後変更になって、手塚先生は司馬先生の後輩になったんでしょうが、
手塚先生、漫画家のことをゴキブリ呼ばわりされたことについて相当頭に来たみたい。
いや誰が言ったとは言いませんよ。
興味があってら読んでみてください。
お好みで。
Posted by ブクログ
最初から緊張感あふれる場面。かなり面白くスイスイと読めた。
梟の城という題名はかなりかっこいい。
司馬遼太郎の本は何読んでも惹き込まれるし、エンタメとして充分楽しめますね
Posted by ブクログ
去年忍者物にハマって色々調べてたらおすすめされてて読みたかった本。
司馬遼太郎作、そして直木賞受賞作品とあってわくわく。
これが司馬遼太郎の一作目なのかな?古い漢字や言葉がちょこちょこ出てきて少し読みづらさがあった。
忍者のことを乱破と言うの、初めて知った。
正直期待し過ぎた感があったかな。
ハラハラドキドキ大ストーリー展開!とかじゃない。
だけど面白かった。
主人公の葛籠重蔵がなんとも好もしい男。
こういうどっしり構えてる人物、時代小説に結構出てくるけどもれなく好いちゃう。読んでて気持ちの良い人物なんだもん。
期待し過ぎたけども面白かった。
また熟成させて再読したいな。
Posted by ブクログ
久方振りの司馬遼太郎作品。時代もので、これが直木賞受賞作品ということであるが、司馬遼太郎の作品としては、代表作とはあまり言えないのではなかろうか。
それは逆に、この作品以降も自身を超える作品を創作していっていたことの、何よりの証跡であろう。
さてこの作品は、あまり今日主役となりにくい忍者を取り扱ったもので、集団として滅びた伊賀忍者の葛籠重蔵が、豊臣秀吉暗殺を実行していくことを中心に物語は進んでいく。伊賀忍者として全てを捧げてきた矜持を持ちながらも、何処かに重蔵自身気づいていくのであるが、次第に綻びが見え隠れしているところに、まさに忍者という職業の必要性が戦国期から変化していることを表れており、また淘汰されていくもののように見え、同僚の仕官をして、生きていこうとする風間五平などの人物など現実路線に変更していこうとするものもいる。
その中で、敵味方がありつつも、単に命のやり取りに終わらせずに、簡単な葛藤とまではいかないところの心の有り様で仕事をこなしていく忍者としての姿を重厚的に描いたことにこの作品の成功が見受けられる。
今日忍者が主役となりにくいといったことには、恐らくは幻術といったアクション性だけを重視したものではなく、この作品によりある一定基準の忍者の形が出来てしまったからではなかろうか。
Posted by ブクログ
司馬遼太郎 菜の花忌
菜の花みたいな黄色花が好きだったみたい。
「中外日報」連載 1960年
織田信長により一族惨殺された伊賀忍者。
忍者の夜行性と単独性を梟と見立てる。
伊賀者として生きる重蔵と武士への道を模索した五平。対照的な生き方を選んだ二人の忍者。
豊臣秀吉の暗殺の依頼を受けた重蔵は相弟子だった五平と敵対する事になる。
戦乱の世のスパイ合戦。
戦国末期の暗闇の争い。
伊賀と加賀の忍者の気質の違い。
金で動く表に出ない忍者を小説の中央に置く。
この二人に二人の女性がたびたび絡むのだけど、思いの外、女性に甘めなのではと思ってみたり。
ラストは、五平を囮として秀吉を追い詰めた重蔵。孤高の伊賀風を貫いた重蔵が振り返る人生。
司馬遼太郎は、ひまわり師匠にお任せしようと思う。よろしくおねがいします。
Posted by ブクログ
豊臣秀吉の時代の伊賀忍者が主役の物語。堺の豪商今井宗久に秀吉暗殺を依頼された葛籠重蔵、忍者として生きることに飽き武士として出世することにした風間五平、近江の佐々木氏の子であるが甲賀忍者にやって育てられ石田三成に間者として宗久に送り込まれた小萩が主な人物。重蔵は忍として幸せな生活よりも仕事を優先する考えだったが小萩とあい小萩の愛に触れることで少しずつ考えが変わる。秀吉のところまでたどり着くも殺さなくてもそれに相当する暴力で自身の憂鬱が晴れることに気づき重蔵は生きて伊賀に帰り、最終場面では小萩と共に生活をする。伊賀を裏切った風間は重蔵を捕まえることで出世を企むも伏見城で捕まってしまい秀吉暗殺の首謀者として殺されてしまう。その際使った偽名が石川五右衛門で作者は風間五平が石川五右衛門なよではないかと考えているっぽい。
忍の術とかほんとに存在したのか不思議だけど作中ではとても鮮明に描かれていて面白かった。太平の時代では忍びの活躍できる場はないから廃れるのもしょうがないかな。
Posted by ブクログ
司馬遼太郎の実質的なデビュー作で直木賞受賞作。
忍者ものは然程好みでなかったのでこれまで手に取らずにいたが、いよいよ未読作品が減ってきたので手に取った。
敵味方が入り乱れて、気を抜くと筋が追えなくなりそうだったが、何とか読み終えた。
ラストの方で、伊賀忍者の葛籠重蔵が太閤秀吉を弑するのではなく、ポカリと殴りつける場面は、それまでの緊迫感からのズレにニヤリとしてしまった。
最後の四頁を読む迄、石川五右衛門をモチーフとした話と気付かず。。(途中、風間五平が「石川五右衛門」と咄嗟に偽名を出す場面があっても)
気持ちよくしてやられた感あり。