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Posted by ブクログ
⬛︎ 食べ物には、思い出という薬味がついている
以前、子鉄の息子の希望で「駒込方面にある、山手線内で唯一の踏切」を見に行ったことがありました。
その帰りに、電車が見えるカフェとして有名な「カフェ ノースライト」へ立ち寄り、店内に置かれていた絵本や文庫本の中から、ケーキを食べながら手に取ったのが本書でした。
下宿で一時期食事を共にしていた男性が夜逃げし数年後に再会した際、母が、当時よく食べていたラーメンをふるまうと、その男性が思わず泣いてしまう――
「食べ物には、思い出という薬味がついている」という冒頭のエピソードに心をつかまれ、途中まで読んだ時点で続きが気になり、後日あらためて購入しました。
昭和〜平成の食事にまつわる小話は、平成生まれの私にとってどこか懐かしく、でも自分が経験してきた食の価値観とは少し違う。
うまく言えないけれど、レトロな距離感があり、それがまた面白い。
合間に挟まれるイラストも優しく、テンポよくサクサク読めました。
(あとがきで「イラストを描くのは初めて」と書かれていて驚き!)
中でも一番印象に残ったのが「七歳の得意料理」という話。
幼い頃、母と一緒に作ったポテトサラダを「大成功だね」と褒められ、後日訪ねてきたおばさんにポテトサラダのサンドイッチをふるまい、「おいしい!」と感謝される。
その経験から自信をつけた森下さんは、料理を手伝おうと何度も母に声をかけるようになるけれど、忙しいときほど「あっち行って」と言われてしまう。
助けてあげたかったのに。
もう一人前として力を貸せると思っていたのに、違うんだ――
そこで初めて、大人と子どもの差を実感する。
受験期には「そんなことするなら勉強して」と言われ、その流れもあって、大学生以降は料理経験が乏しいまま今日に至る、という内容でした。
親の立場になった今、とても刺さる話だと感じました。
5歳になった息子は料理に興味を持ち始め、時々一緒にごはんを作ります。
先日は「コロッケを作ってみたい」と言われ、火入れ以外はすべて一緒に作りました。
料理のあと、息子は必ず
「おれが作った料理おいしい? 助かった?」
と聞いてきます。
「もちろん。本当に助かったし、とってもおいしいよ。ありがとう」
そう答えたときの息子の笑顔といったら。
この一連のやりとりの中で育つ自己肯定感を、
日々の余裕のなさや、親のエゴで潰してしまわないようにしたい。
忙しい日ほど、この本のことを思い出したいです。
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