あらすじ
雑誌の個性に合わせて作品を書き分けた松本清張が、アウェイの女性誌で書いた小説群に着目。そこに登場する女性主人公たちを、お嬢さん探偵、黒と白の「オールドミス」、母の不貞、不倫の機会均等といったキーワードを軸に考察し、昭和に生きた女たちの変遷を映し出すと同時に、読者の欲望に応え続けた作家の内面に迫る。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
松本清張作品に登場する女性たちを当時の世相から分析する。お嬢さん探偵から悪女へ。連載媒体の違いからの指摘は何とも斬新。
変な自虐の殻を破った筆者の深読みは素晴らしい。
Posted by ブクログ
社会派ミステリー作家松本清張
若い頃けっこう読んだ
懐かしい
小倉に住み作家として認められて
東京へそこで筆一本の生活に入る
女性を時代の流れの先を行く
感覚で描いている
結婚が唯一女が生きる全てだった頃
お嬢様探偵から始まり黒い女へと
流れを見ていくと面白い
どんな人の中にも黒い欲望 傷 不幸がある
それを筆で表現した清張
凄い創造力と洞察力だったのだろう
あの目でじっと見られると
ゾクッとしただろうな
Posted by ブクログ
大好きな清張作品。大好きなのだが、何がどう好きなのかうまく説明できずにいたのを、酒井さんが言葉にしてくれた。「お嬢さんだからといって、全てが清いわけではない。エリートだからといって、常に正しいわけではない。どんな人の中にも、黒い欲望、黒い傷、黒い不幸が隠れている。これは、全ての清張作品を貫く確信である」「白そうな人の中にある黒さを見抜いたのと同様に、清張は黒そうな人の白さをも見逃さなかった。多数派の意見に流されることなく、かつ少数派や弱者が必ず正しいわけではないことを知っていた」。自らの目を信じ、その目で人間の中身をグッと見定める公平な眼差し。その視点が好きだ。立てた仮説をたくさんの例証で明かしていく酒井節は前半ちょっとくどい感じがしたが、後半になって「セクハラ全盛期の女」「覗き見る女」「清張が描く母」など新しい見解が次々と出てきて、最後まで楽しく読めた。あと、美しき新珠三千代さんと、新珠ファンのデレっとした清張さんの表紙カバーが秀逸!
Posted by ブクログ
酒井さん松本清張について書いたりするんだ〜と読み始めました。切り口もよいし、考察もよいと思いました。松本清張の生きた時代について、作品の世界を通してとてもわかりやすく解説してくれているように思う。
今後松本清張作品を読む時にとても参考になるし、その時代の社会での女性の描かれ方がわかると、今までは違和感を感じてもうすぼんやりとしていたことがこれからははっきり認識できると思う。私には役立つ本だった。
Posted by ブクログ
作家デビューは40歳と遅咲きだとは知っていたがまさかの太宰治と同い年とは知らなかった!「わるいやつら」の松坂慶子、「鬼畜」の岩下志麻、「熱い空気」の市原悦子と私の松本清張作品は強烈な映画やドラマの中の名俳優の印象が強い。黒と白のオールドミスや、お嬢さま探偵など、作品を分類し分析する鋭い洞察眼からくる解釈は、松本清張作品を実際に読むのとはまた違った面白さがある。昭和の文化や芸術は今なおとても魅力的だが、つくづく思ってしまうのは、あの時代を生きる女性として生まれてこなくて良かったということだ。
Posted by ブクログ
雑誌の個性に合わせて作品を書き分けた松本清張が、アウェイの女性誌で書いた小説群に着目。そこに登場する女性主人公たちを、お嬢さん探偵、黒と白の「オールドミス」、母の不貞、不倫の機会均等といったキーワードを軸に考察し、昭和に生きた女たちの変遷を映し出すと同時に、読者の欲望に応え続けた作家の内面に迫る。
作品分析の視点が面白い。
Posted by ブクログ
松本清張と酒井順子の組み合わせ、って塩辛と生クリームぐらいの食べ合わせ?って新聞広告でびっくりしました。「ユーミンの罪」「オリーブの罠」の系譜に「松本清張の女たち」ですよ。でも酒井順子が生クリームはちょっと言い過ぎで過去の作品に忍ばせている酒井ならではの辛口成分は確かに松本清張が描いた高度経済成長時代の物語の切り口として非常に有効だったのでありました。むしろ「女の物語」が松本ワールドを成立させるキーファクターだったのではないか?という本格的な松本清張論とさえ思いました。新しい視点ですがど真ん中の作品論の思ました。振り返ると「ゼロの焦点」久我美子からの広末涼子、「霧の旗」倍賞千恵子からの山口百恵、「黒革の手帖」山本陽子からの米倉涼子…数えきれない女優の世代交代によって松本作品群は時代を超える文学になっているかもしれません。この本でも取り上げられている「一年半待て」「地方紙を買う女」…これらの短編を中学の頃にたまたま手にした文庫本で読んで、その頃まったく未知の世界だった「女」というものに触れた気がして恐ろしくなった記憶が蘇りました。ついついコンプレックスの文学とフレームに入れられる松本清張ですが、もしかしたらジェンダー文学としてものすごく先駆けていたのかもしれません。それもこれも生まれたばかりの女性週刊誌への連載というチャレンジがあってこそ、の結果だと思うのです。現在の日本の女性作家の大活躍の源泉のひとつに松本清張がいた、という妄想もあり得なくはないかもしれない、なんて。それにしても松本清張のミューズが新珠三千代だったとは!(表紙の写真の美しさ!)松本作品ではありませんが「女の中にいる他人」という映画で新珠ファンになった自分としては、なんかうれしい!