小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
冴えない大学生の主人公に彼女が出来た。
しかし、振られた。
妄想力豊かな主人公とその友人知人が、クリスマス間近い今日の都で各々蠢き、文字通り「騒動」の幕が開く。
脳内活力が間違ったほうに旺盛な主人公をはじめ、奇妙奇天烈なれど魅力的な登場人物ばかり。
有名な「鴨川等間隔の法則」を「悲しみの不規則配列」にしたり、「まなみ号」なるものが登場したり(文庫解説は本上まなみ)、例のブツ「ジョニー」が出てきたりと独特の描き方は盛りだくさん。
ラストは文字通り「大騒動」が起きる。
発想自体面白いが、このシーンの描写が素晴らしく、我が脳内に鮮明に思い描かれ、余計に笑いを誘った。
文中に「騒動」が挟み込まれる -
Posted by ブクログ
ネタバレこんなに魅力的な主人公と相棒の出てくる作品は久々に読んだなぁ。
読み始めの最初の時点で読者は主人公ピップのことを好きになるに違いない。17歳ということで本来であれば子どもの大人の間でせめぎ合っている年頃の女性なのだが、本人はそういった部分を感じさせず快活で芯のある姿が描かれていてこちらもなんだか元気をもらえた気がする。それと普通に知識も豊富で年齢に見合わない知性を感じる。……羨ましい。
続いて登場する相棒ラヴィも事件で兄を失い、当初非協力的ながらピップの人柄や事件を追う真剣さに触れ、徐々に心を開きユーモアに富んだ受け答えをして楽しませてくれる非常にいいキャラクターだった。意外に漢気にも溢れて -
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中山七里『逃亡刑事』PHP文芸文庫。
先に続編の『越境刑事』を読んでしまったので、遅ればせながら、本作『逃亡刑事』を読むことにした。
『越境刑事』より遥かに面白い。県警のアマゾネスの名を欲しいままに高頭冴子が暴れまくるのだからたまらない。
完成度が非常に高く、続編の『越境刑事』など書く必要などなかったのではないかと思うくらいだ。何しろ、本作でこれ以上無い程の最大の悪である警察組織の腐敗を描き、それに県警のアマゾネスが立ち向かい、徹底的にぶっ壊してしまうのだから、続編の必要など無いのだ。
単独で麻薬密売ルートを探っていた生田刑事が、カーディーラーのショールームで射殺される。その犯人を目 -
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読み出してすぐに不安定さを感じる。それは別に冒頭でママンが亡くなったことから話が始まるからではなく、その周辺を淡々と描写していくムルソーの一人称がそう思わせたんだと思う。判決まではどこか他人事のような一人称だけれど、判決後はある種の興奮状態のように思考が鋭くなっていく。判決がでるまで、愛するママンが亡くなったことを受け入れられず、ずっと彷徨っていたのかもしれない。
ムルソーの人間性は、証人尋問が終わったあとに彼が捉えた街の様子にあるんじゃないかなと思って思わず涙が出てしまった。
ママンのこともマリイのことも絶対大好きだったよね。言葉で表現されなくても伝わってきたよ。愛する表現が一般的な人と違 -
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漫画「花の慶次」の原作。
それまでも前田慶次(作中では慶次郎)を描いた作品はあったものの、彼を有名にしたのはこの作品。そして漫画。
もともと資料は少ないので創作の部分が多い(朝鮮渡航は完全に創作、漫画では諸事情で琉球)が、その創作部分がこの作品を素晴らしいものにし、前田慶次の魅力を作り出した。
実際もそうだったらしいが、作中の前田慶次はさらに「傾奇者」。
女はもちろん、男までも惚れさせる。
「こんな男がいたら、もっと歴史に名を残すはず」と思うかもしれないが、「逆にこんな男だからこそ歴史に名を残さなかった」のかもしれない。
個人的には「皆朱の槍」のエピソードに唸り、ラストで直江兼続が -
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また一気読み。
最初は、前作と似たような設定じゃんか、と思って少々がっかりしかけたけれど、いやいや、またもやそうくるか、となった(ありうるといえばありうるんだけど、やっぱりびっくりする)。しかも今回も最後の最後まで、そうくるんかとなってあきれた。次作がシリーズ最後になるようだけど、どんな展開を見せてくれるのか楽しみ。
ただ、ミリーの動機が「正義感」であるというような描写が何度も出てくるけれど、正直納得できない。最後の狡賢さと矛盾するように思うし。もっと割り切ったワルのほうがスカッとしそうだけどw。ストーリー展開は面白いけど、ミリーにもエンツォにも感情移入できないし信用できないw。