あらすじ
「抑止力」という考えはもうやめよう――。
イスラエル空軍で兵役を務めた著者が、イスラエルとアラブ諸国、パレスチナとの間で長く続けられてきた戦争を見つめていくうちに、「国のために死ぬのはすばらしい」と説く愛国教育の洗脳から覚め、やがて武力による平和実現を根底から疑うようになる、その思考の足跡を辿る。武力放棄を謳う憲法九条の価値を誰よりも評価するのは、平和ボケとは程遠い、リアルな戦争が絶えない国から来た外国人アクティビストなのである。母国のさまざまな矛盾点を指摘しつつ、軍備増強の道を進む日本の在り方にも異議を唱える一冊。
望月衣塑子氏(東京新聞記者)、推薦!
◆目次◆
第1章 罪深い教育
第2章 軍隊を疑う
第3章 虐殺された民族が虐殺する
第4章 「全ての暴力に反対します」
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
先週の定期検診で病院での検査と診察を終えたあと、薬局で薬待ちをしている時に、たまたまテレビに出ていたのが著者のダニーさん。紹介されていた絵本は売り切れだったのですが、こちらの新書があることがわかり書店で購入。すぐに読み始めました。
8月は何かしら戦争にまつわる本を読むときめていましたが、今年は読めてなかったので、こちらを読みました。
イスラエル-パレスチナ問題は過去に双方の学生さんを呼んだ座談会のボランティアをしたことがあり、関心のない人に比べたら、知識がある方だと思いますし、今回のガザ攻撃が始まってから他にもいくつかの本を読んできましたが、どの本よりも読みやすく、考えさせられる良書だと思います。
イスラエル人だけど、今のイスラエルのやり方には反対されて声を上げている。元兵士で自身も過去に戦闘に出ていたからこそ感じるであろう言葉。
日本の現在の政治の問題から、地域の問題、原発の問題まで。
理想論と言われて批判されようが、武器を使わない、交渉での平和実現を目指した考え方に共感しました。
抑止力という言葉に賛成の方も反対の人もいると思いますが、出来たらこの本は日本人全員の課題図書にして、読んで、自分ごととして考えるきっかけを作ってほしいと思いました。
Posted by ブクログ
実際にダニーさんの講演を聞いてから本書を読んだ。非常にわかりやすく説明されている。私はいわゆる「武力による平和」は仕方ないと思っていたけど、そう思わされていただけだなと感じた。岸田政権がアメリカからたくさん武器を買って、それらを保管するために全国各地に保管庫ができて、自衛隊の基地だって沖縄以外にもたくさんある。最近県境に保管庫ができた。うっかり爆発する可能性もあるし、私が敵ならそこ攻撃するよね…。全然ニュースでもやらないから、知らなかった、恐怖。守るために武力が必要?本当に?明らかに国力のないこの国が戦争したら正直勝てる訳ない。先の大戦でもそうだったじゃないか。日本史を学んだときに。この小さな島国から他の国の領土なんて奪える訳ないじゃんと思った。現在だってアメリカ(他国)がメリットなしに血を流して日本を守ってくれる訳ないじゃないか。武器買うよりもっとやることが絶対ある。ファイティングポーズ取ったら相手も攻撃してくるって、日常でもあるあるでしょ。対話力、政治力磨くしかない。戦争したら儲かるって、それ、嬉しい?人を殺してお金稼いで自分だけ良い暮らししたら満足?頭がお花畑って、理想を掲げないでどうする?あなたの言う現実は本当に現実?認知が歪んでない?そう思わされてない?自分の親、子供、恋人、友人に、現実見なよ戦争仕方ないよって、言える?戦地に送り出せる?もしくはあなたが行く?全部全部全部、子供でもわかること。こういうことを言うと政治の話はしない方が良いとか左寄りだとか言われる?議論の否定と人格否定を切り分ける練習しなくちゃいけない。政治の話しちゃだめなら、何から考えて学べばいい?
…とか、すごく怒りが湧いてきた。でもなかなか日常的に何か行動するのは難しくて、関心を高めていくしかない。
ちなみに環境問題にも関心はあったけど、戦闘機や戦車の排気による環境破壊は生活のそれとは比較にならないと知らなかった。コツコツ節電したり企業アピール程度の環境保護より、戦争やめた方が効果がある。それも権力者はそれもわかってやってるんだから、なんだかもうやってらんない。
Posted by ブクログ
国連憲章を無視したイスラエル、アメリカによるイランへの先制攻撃/核施設への攻撃に厳しく抗議する。どの国の核武装にも私は反対するが、核施設への攻撃は核物質による深刻な環境破壊を引き起こす。アメリカとイスラエルがイランの核兵器保持に反対するならば、自国も率先して核兵器を廃絶すべきである。
最大の核保有国、最初に核兵器を使った国が自分の事を棚にあげて先制攻撃を行う事は幼児の我がままと同じであり、これは自滅への道であるばかりか全世界に対する犯罪であり、人類滅亡に直結する。世界最初の戦争被爆国の政府がアメリカに追従するのは言語道断であり、世界から軽蔑されるだろう。
本書にルビは無いが平易な言葉で分かりやすく、歴史の真実を著者の実体験をベースに書いているので、是非小中学生にもお勧めしたい。
何と言ってもイスラエルと言う国は戦前戦中、そして今の日本とよく似ている事か。
日本が中国を侵略し、満州国を建国し、満蒙開団・・・ソックリである。
「罪深い教育」戦後の日本では1953年の池田・ロバートソン会談を拠り所にそれが行われている。
そして「ゼロ戦はやと」「宇宙戦艦ヤマト」「機動戦士ガンダム」「超時空要塞マクロス」・・・・最近では「鬼滅の刃」と近未来の有権者から暴力とその最たる物である戦争への批判力を奪うための、学校教育からサブカルチャー、玩具に至るまでを利用した、策動は、巧妙かつ執拗に続けられている。
これは日本を使い捨ての砲台として次の戦争に利用しようとするアメリカと日本の戦争推進勢力の仕業である。
本書は殆ど共感できる内容だが、あと少し足りないと思うのが、このアメリカの問題。
私には日本もイスラエルもアメリカの世界支配戦略の道具に過ぎない様に見える。
イスラエルはアメリカの中東支店、日本は東アジア支店。
世界人口1%未満の超富裕層に主導された世界支配戦略=戦争推進を終わらせないとイスラエル人もパレスチナ人も日本人もアメリカ人も・・・平和と自由を得られない。
繰り返しますが、本書は是非若い世代にこそ読んで欲しい。
Posted by ブクログ
理想的で、論理的な平和論の本。普段、私があーでもないこーでもないと言葉にできずにいることを、ストレートに語ってくれた。スッキリ。著者は「想像力」の大切さを説くが、まずこの本を読むこと自体が想像力を鍛えてくれるように思う。イスラエル・ガザ情勢が未だ落ち着かない今こそ、日本の在り方を問う上でも、一読の価値がある。良書。
Posted by ブクログ
国のために兵士として戦うことが当たり前だった著者が、「武力で戦争を抑止することはできない」と考えるようになった経緯が語られている。
イスラエルではみな平和教育を受けていると思っているが、教育によって「平和のためには戦争は必要」「軍隊や兵士は国のためにすばらしいことをしている」という刷り込みが行われていることに対して、ダニーさんは警鐘を鳴らす。
戦争や兵器が必要というのはダブスタや言い訳でしかない。戦争をしないと言っていても、ひとたび武器をもてば、抑止のためにもっともっとと、果てのないいたちごっこに参加することになる。
話が通じない相手だからと頑なになるのではなく、根気強い対話により平和を作っていくことが大切だとダニーさんは主張する。
そういうダニーさんの主張を「理想論だ」と冷笑する人がいる。それに対してダニーさんは「理想だと認めるのなら、理想のために愚直であっても何らかの努力をすべき」と反論しており、なるほどなぁと唸った。理想は実現不可能なくだらないものではなく、理想だからこそ叶えるために行動していくことが大切、というのは、今の私たちにかなり薄くなっている考えのように思う。仕方ないと諦めるのではなく、難しくても目指すのを忘れてはいけない。
正直一冊本を読んだだけでは諸手を挙げて賛成とまではいかないが、どうしたら平和は作れるのか、どうしたら戦争をせずにいられるのかはずっと考え続けていかなければいけないのだということは、痛いほどわかった。
イスラエルとパレスチナの関係については知らない部分が多く、内にいた人による市民の感情などの説明はわかりやすくありがたかった。
しかし当事者でありながらここまで冷静に自分の国を批判的に見ることができるのはすごい。
Posted by ブクログ
著者はイスラエル出身で、現在は埼玉県秩父で家具や木工品を製作しながら、平和運動に取り組んでいる。本書は著者のイスラエル時代の経験を振り返りつつ、軍事力・暴力による支配を肯定する人々の心情がどのように作られるのか、なぜイスラエルの多数派が「力による平和」「抑止」という発想から抜け出せないかが平易な言葉で綴られていく。「人を殺す機械」に文化はない、という指摘が日本刀の制作者たちの前でも語られていたという場面がスリリング。